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INTERVIEW

2023.01.26

土岐隼一のこだわりが詰まった『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』OPテーマリリース! 様々なキャラソン経験から得た“新たな表現”を語る

土岐隼一のこだわりが詰まった『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』OPテーマリリース! 様々なキャラソン経験から得た“新たな表現”を語る

2019年5月のアーティストデビューから約3年。楽曲のリリースと共にライブの経験も重ねてきた土岐隼一が、3枚目のシングルで初めてのアニメOP楽曲を歌う。現在放送中の『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』のOP「Glorious World」は“これぞアニメのオープニング!”と言いたくなるほどのド王道の幕開け感ある1曲。そんなナンバーを制作する際の話はもちろん、これまでの音楽活動で見つけた自身の歌について、そしてカップリングの1曲についても語ってくれた。

INTERVIEW & TEXT えびさわなち

新たに見つけた「アーティスト・土岐隼一」の表現

――アーティストとして音楽活動を始めてからコンスタントに楽曲制作を続けてこられていますが、そんな日々の中でのご自身の音楽観の変化や新たな感覚、気づきはありましたか?

土岐隼一 多くの楽曲を歌わせていただいてきたのですが、自分が「この歌が好き」というものもあるし、「こういう雰囲気のものを歌ってほしい」という制作側からのリクエストに応える場合もあるなかで、アーティストとしての雰囲気や方向性は定まってきています。ただ、そのなかでも毛色の違う曲とも出会いながら3年間活動を続けてきたのですが、音楽活動を始める前は自分の声に対してどういう楽曲がはまるのかがわかっていなかったんです。

――数多くのキャラクターソングを歌ってきた土岐さんだからこそ?

土岐 やっぱりキャラソンを歌うときにはキャラとして歌いますから。例えば「A3!」で僕を知ってくださった方はかわいらしい歌、「アイドルマスター SideM」の都築 圭として知ってくださる方はオーケストレーションされた荘厳な曲、「プロジェクトセカイ カラフルステージ!」ならミュージカル調と、それぞれの作品の印象から「こういう曲が合う」と言ってくださるんですけど、土岐隼一自身の歌としてはどういうものが合うのかということをあまり理解していなかったというか、自覚をしていなかったんです。でも「僕はこういう歌です」と決めなくてもいいんじゃないかと活動していくなかで思えました。声優というお仕事においても「僕はこういう役をやりたい!」というものが今のところはなくて、マネージャーさんが10年後のビジョンを考えたうえで色んな仕事をバランス良く入れてくださっているんですね。自分でマネージメントするよりも客観的に見てベストなものを振ってくださるので、そうして出会ったお仕事と向き合っていくというスタンスでこの10年、お仕事をしてきています。それと一緒で楽曲に関しても僕の好きな音楽はあるけれど、それだけじゃないものも客観的な意見で提案してもらって歌うことが楽しいんです。それに楽曲を手に取ってくれた人たちが「この曲良いね」と楽しんでくださることも実感できたので、可能性は無限大にあると感じさせてもらっています。

――そういった客観的な意見からの出会いはありましたか?

土岐 例えば「Nonfictional」と出会ってラブソングを歌わせてもらいましたし、僕の大好きなシティポップである「Home」も歌わせてもらいましたが、今回の「Glorious World」のような王道アニソンにも挑戦ができた。今思うと、キャラソンでもここまで王道のアニメオープニングらしい曲は歌ったことがなかったんです。そんな1曲ですが、公開されたときには「こういう楽曲も土岐さんの真っ直ぐな歌い方に合うね」と色んな人たちに言ってもらえて。自分でどうこう考えて決めるよりも、周囲の人たちの視点をもらって決めていくほうが気持ち良くその曲にノれるなぁと思います。

――キャラソンで様々なタイプの曲を歌われて、ご自身の歌唱表現の幅も広がってきているのでは?例えば「Paradox Live」の征木北斎は土岐さん史上最も低いであろうボイスとか。

土岐 Paradox Liveの経験がなかったら「original scenery」のラップっぽい部分は歌えなかったなと思うんです。「きっと、もっと」の明るい雰囲気も「アニドルカラーズ」の土岐結人くんのようなキャラクターをやっていたからこそできた表現だと思いますし、今回の「Glorious World」のカップリング曲「Highway Love」のような大人っぽくもスピーディに言葉が入ってくるような楽曲も色んなキャラクターで歌ってきた経験がなかったらニュアンスの表現の引き出しがなかっただろうと思います。でも、音楽活動を始めた当初はどこかキャラクターの歌い方が出てしまっているんじゃないかと悩みました。歌っている最中に「今、都築さん出てきた」とか、頭の中に「ツキプロ」の衛藤昂輝くんが出てきたりもして、このままでいいのだろうかって。でも音楽活動の先輩である豊永利行さんや羽多野 渉さんに相談をさせてもらったときに「色んなところに色んなキャラが出てくるのも土岐くんにしかできない表現なんだから、それは“土岐隼一”という歌い方になるんじゃない?」って言ってくださったんです。瑠璃川 幸くんでもないし、昂くんでもない。君の中から出てきたものなんだから、その歌い方でいいと思うと言ってもらったときにようやく悩みを飲み干せた感覚があって。だからある種、自分の中で「このフレーズに対するベストな歌い方」というものを、自分がこれまで歌ってきたものでできた表現の引き出しから使っている、というマインドになれたことは大きかったのかなと思います。

ファンタジーだけどリアルな『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』の面白さ

――今回の「Glorious World」はTVアニメ『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』のOP。非常にオープニング感のある1曲となりました。

土岐 音楽活動開始当初からそうでしたが、アニメタイアップのときは僕の「こうしたい」という気持ちはほとんどなくていいと思っているんです。楽曲を含めてのアニメ作品だと思っているので、オープニングもエンディングも「アニメのパーツ」であるべきだと考えています。歌わせていただくときにもアニメの雰囲気や世界観を、できる限り生き生きと感じられるものにしたいというのは、『真夜中のオカルト公務員』の「約束のOverture」から不文律としてずっと抱いているんですね。今回の「Glorious World」に関してもその不文律は変わっていないです。ただ今回はずっとお世話になっていて、僕のことを100%理解してくれているRUCCAさんたちとチームを組んで僕にとって初めてのオープニング曲を作るということもあって、僕からのわがままとして「ド王道のアニソンにしてください」とお願いをしました。

――この曲の王道感は土岐さんのアイディアだったんですね。

土岐 そうなんです(笑)。でもその意向はアニメの制作チームからもあったので、早いうちに方向性も固まりました。この作品はクセがありますが冒険譚でもあるので、オープニングはド王道の雰囲気を入れていこうという話になりました。そして歌詞の中では「人間不信の彼らがここからどんどん希望を掴んでいくストーリーを入れてほしいです」とお願いをしました。その2つをお伝えして作っていただいたのが「Glorious World」。音楽制作陣の皆さんも「このコード進行がいいよね」とか、RUCCAさんなら「土岐くんはこの母音で伸ばしたいだろうな」というところまでわかってくれているんですよね。RUCCAさんとは「テクノロイド」でもご一緒しているので、お会いするたびに「ここはこういう言葉がいいですよね」と楽曲についてよくお話もしているんです。だからこそサビ終わりのロングトーンや小節ごとの作詞の譜割まで文句のつけようのない超ド王道のオープニング曲になったんじゃないかと思います。

――その『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』という物語の印象はいかがですか?

土岐 小林裕介さんたち役者チームでよく話しているのは、ファンタジーでありながら関係性としてはすごくリアルだし、現実にありそうだよねということ。僕が演じるゼムくんはキャバクラに通い詰めているんですが、よく考えてみればキャバクラに行っていても仕事ができる人はたくさんいるんですよね。ゼムくんも借金をしているとか生活破綻しているわけでもなくて、ちゃんと日々やり繰りしながら通っています。それはゼムくんだけではなく、パーティーにいるキャラクターはみんな同じ。それぞれの仕事はしっかりとこなして、就業後にそれぞれの時間を過ごしているんです。それって現実の人間社会でもよくあることですよね。仕事仲間としてすごく信頼できるし、「この人は本当に仕事をしてくれる」と思っているけど、そんな相手のプライベートは特に知らないし、知っていなくても今の関係性が上手くいっていないわけでもない、というのはよくあることで。それが冒険者のパーティになっただけ。もしかしたら一番仕事をやりやすいのかもなって思いますよね。そういった現代人っぽさが表現されていて、ファンタジーだけどリアリティがある。そんな不思議な作品だなと思っています。だって彼らは12話を通して、色んな人たちをちゃんと救っていますから。王道の冒険者として。ただ、救ったあとにみんなで飲みに行くわけでもなく「お疲れさまでした!」ってそれぞれの時間へと向かうだけなんです。アイドルを応援したり、競馬をしに行ったり、キャバクラに行ったりする。職業としてド王道な冒険者たちですね。

次ページ:隅から隅まで大好きだと言いたくなる「Glorious World」

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