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REPORT

2022.12.29

自身の誕生日であるクリスマスの日に響かせた“等身大の愛美サウンド”。愛美、ライブツアー“AIMI SOUND”ファイナル公演をレポート

自身の誕生日であるクリスマスの日に響かせた“等身大の愛美サウンド”。愛美、ライブツアー“AIMI SOUND”ファイナル公演をレポート

2022年12月25日、愛美のライブツアー「愛美 LIVE TOUR 2022 “AIMI SOUND”」のファイナルにあたる東京公演が、TOKYO DOME CITY HALLで開催された。クリスマスであり、愛美の誕生日でもあるこの日、彼女と一緒にめでたい聖夜を楽しむべく多くのファンが詰めかけ、会場は完売御礼となる賑わいぶり。そんななか愛美は、今夏にリリースした最新アルバム『AIMI SOUND』からの楽曲を中心に多彩なナンバーを披露し、今の彼女が表現したい等身大の愛美サウンドを届けてくれた。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY Sayaka Yuki、Takashi Konuma

彩り豊かに駆け抜ける!これぞ愛美サウンドの真髄

開演時刻の19時を過ぎた頃、照明が暗転し、スクリーンにオープニング映像が映し出される。日の出、オーロラ、宇宙といった壮大な景色と共に、「最高の夜にしよう!」「クラップユアハンズ!」といった愛美の手書きと思われるメッセージが次々と流れ、『AIMI SOUND』収録曲「愛世界」のインストアレンジがライブ開始前の昂揚感をさらに高めるなか、バンドメンバーに続いて、愛美が手を振りながらにこやかにステージに登場。彼女は白いレスポールのギターを手にすると、最新アルバムの幕開けも飾っていた「スターリア」でライブをスタート。先ほどのオープニング映像と同様の壮大さを感じさせるギターロックチューンで、愛美の伸びやかな美声がそのスケール感をさらに大きく広げていく。上空で瞬くミラーボールが、まるで世界を照らす一番星のようだ。

歌唱後、ギターを置いてハンドマイクを手にした彼女は、「盛り上がっていきましょう!」と呼びかけて「ReSTARTING!!」を歌唱。ステージを自由に歩き回りながら、サビでは手拍子を誘ったり、歌詞を一部変えて「東京、メリークリスマス!」と歌うなど、ポニーテールを揺らしながら伸び伸びとした様子でパフォーマンスしていく。観客も、彼女のソロアーティスト活動時のイメージカラーである紫のペンライトを振って応える。

MCで「スターリア」はnano.RIPEのきみコとササキジュンに楽曲提供してもらったことに触れ、手に馴染むコードワークになっていることに、2人からの愛を感じたと語る愛美(実際にササキはTwitterで「ギター、歌に専念できるようにステキコードになっております。気づいてもらえて嬉しかったです」と反応していた。今度は赤のギブソンSGを手にし、すぅ(SILENT SIREN)が歌詞を提供した「≒」を披露……と、その前に、この曲は愛美のギターから始まるらしく「ちょっと練習していいですか?」と、出だしの部分をステージ上で公開練習。気取らず自分をさらけ出すところがいかにも愛美らしい。

そして披露された「≒」は、青春全開のポップなロックナンバー。愛美もキラキラ成分をグッと増した歌い口で楽曲の世界観を的確に表現する。そこから立て続けにライブの鉄板曲「瞬間SummerDay!」へと繋げ、オーディエンスも手拍子しながら熱狂。やはり愛美にはバンドサウンドが良く似合う。そこからツアーグッズ紹介のMCを挿み、「次はちょっと懐かしい曲」と前置きして歌われたのは、2013年のシングル曲「We’re the stars」。TVアニメ『FAIRY TAIL』のEDテーマに起用されたドラマティックなバラードだ。運命の出会いを星座に例えた雄大な楽曲を、彼女はスピーカーに腰掛けながら、感情を込めて朗々と歌い上げる。かつてより深みを増したその歌声と、彼女の当時のアーティストカラーだった赤のペンライトが掲げられた客席の光景が、歴史の重みを感じさせる瞬間だった。

そんな懐かしい楽曲に続いては、『AIMI SOUND』収録の彼女が自ら作詞した3曲を連発。バックバンドによるギターカッティングとチョッパーベースが愛美の情熱的なボーカルをさらに加熱させた「MAYDAY」、ネオンのようなライトが煌めくなか艶やかな歌声を走らせた夜のドライブチューン「アナグラハイウェイ」と疾走感あるアップ2曲で魅せたあとは、エモーショナルなバラード「LIGHTS」を熱唱。楽曲ごとに多様なスタイルと表情を見せるのが、今の愛美サウンドの真髄と言えそうだ。

ここで愛美とバンドメンバーは一旦退場。そして愛美の衣装チェンジの時間を繋ぐために、愛美の裏プロデューサーこと神宮寺愛子がスクリーンに登場。見た目は愛美と瓜二つ、これまでYouTubeやTwitterなどを通じてその姿を見せてきた、アーティスト・愛美の活動を影で支える人物(?)だ。ピンチヒッターとして急遽、生配信(の体)でファンからの質問に応じ、マーベラスな回答の連発で会場を沸かせた(好きなタイプは「すごい人」で、愛美との同時出演は「あり得ない」らしい)。

 

特技のサックスも披露!熱い楽曲が渦巻く後半戦

ライブは大石昌良が提供した「かかった魔法はアマノジャク」で再開。衣装を着替えた愛美は、ブラスをフィーチャーしたサウンドに乗せてフェミニンな歌声を聴かせる。そしてこの曲の一番の見せ場だったのは間奏パート。バンドメンバーのソロ回しに続き、なんと愛美が特技の1つであるテナーサックスの腕前を披露!だが、楽器に何かしらのアクシデントがあったらしく、なかなか思い通りの音程を吹くことができず苦戦する愛美。しかしお客さんの温かな拍手に見守られながら、何とか「Happy Birthday to You」を最後まで吹き、自らの誕生日をファンキーに祝った(ちなみにその後のMCでリベンジした際はサラッと吹き通してみせた)。

続いて愛美先生(CV:愛美)名義の楽曲「いやよいやよもすきのうち」をキュートな振り付けと共に披露し、胸キュンなひと時を作り出すと、ラストはクルッとターンして愛らしく締め。MCで新衣装をアピールし(ツアーの福岡公演で着用していた衣装にファーを付けてクリスマス仕様にしてもらったという)、バンドメンバーを紹介すると、再びスピーカーに腰を下ろして「フリクホリカ」へ。アコギとビートがチルな雰囲気を高めるなか、愛美はブレスをたっぷりと含んだ柔らかくもエモーショナルな歌声を聴かせる。Dメロ部分で半田彬倫(key)が楽器をバイオリンに持ち替えて弾くなど、サウンド面での仕掛けも面白い1曲だった。

次の曲「ラブレター」では、愛美はアコースティックギターを弾きながら歌唱。フォーキーなバンドアンサンブルに、愛美の人情味溢れる熱い歌声が溶け込み、終わってしまった恋が描かれた本楽曲をさらに感傷的なものに演出する。バックライトに照らされた愛美の眩くも切々とした姿を含め、心にグッとくる名演だった。

アーティスト活動を再開してからは積極的に作詞を行い、最新アルバム『AIMI SOUND』でも13曲中8曲の作詞を担当した愛美。本ツアーのためにも新曲の作詞を行ったとのことで、ここでその新曲「エスケープ」が披露されることに。その曲名が物語っているように、仕事や課題などのやらなくてはいけないことから「逃げ出したい!」という気持ちを曲にしたという。「みんなでこの曲を聴いて現実逃避できればと思います!」との宣言通り、パンキッシュなサウンドに乗せて歌われるのは、ときには逃げたり諦めることも必要だという気持ち。例え逃げたとしても何とかなる。そんな内容の歌詞がしんどい日々の心を軽くしてくれるような楽曲だった。

そこから間髪入れずDECO*27提供の激情的なロックナンバー「ドレス」に繋げ、その身と心に抱えた鬱屈を力強く吐き出す。そしてライブ本編は残り2曲に。再び白のレスポールを手にした愛美は、改めて観客に「声が出せないからこそ、逆に皆さんの気持ちをひしひしと感じています」と感想を語り、寂しそうな表情を見せながらも、次の曲「カザニア」を歌う。吹き抜ける風のように爽快で澄んだ歌声が願うのは永遠の時間。だが、終わりがあるからこそ、ライブという生の瞬間はより輝きを増すのだ。愛美は間奏のパートで「皆さん、今日は本当にありがとうございましたー!ツアー、緊張したけど楽しかったです。また遊びに来てください!」とメッセージを届けた。

そんな感謝の気持ちがこもった「カザニア」に続き、ライブ本編のオーラスを飾ったのは、上松範康(Elements Garden)が作曲、愛美が作詞した「不完全ドリーマー」だ。夢半ばでは諦めきれないという、強い信念と決意のこもったその歌声は、その場にいるすべての人々のくすぶった想いに火をつける。“ガムシャラ這いつくばって 掴みとってやる”という歌詞そのままのガムシャラなパフォーマンスが、そして愛美という存在そのものが、ファンにとっては何よりも勇気になるのだ。緊張も不安も振りきり、ステージの上でコブシを突き出して歌をぶつけるその姿は、本当にかっこ良かった。

次ページ:ありのままの愛美をさらけ出したアンコール「愛世界」

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