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INTERVIEW

2022.12.28

激動のアニソンシーンをトリオ・ザ・おじさんが振り返る!mora×リスアニ!スペシャル座談会(冨田明宏×青木佑磨×馬嶋 亮)

激動のアニソンシーンをトリオ・ザ・おじさんが振り返る!mora×リスアニ!スペシャル座談会(冨田明宏×青木佑磨×馬嶋 亮)

サブスク、Vシンガー、VTuber――アニメ音楽から見える激変の時代

馬嶋 あと秋クールのアニメだと、『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドが、集計時点で発売された7曲全部がシングルランキングに入ってきているんだよね。

冨田 あと、Keyのスマホゲームで今年の話題作「ヘブンバーンズレッド」の楽曲も9曲ランクイン。

馬嶋 「ヘブンバーンズレッド」の楽曲はサブスクで配信されていないから、これこそまさにmoraらしいんじゃない?

冨田 『ぼっち・ざ・ろっく!』と「ヘブンバーンズレッド」は非常にオタク向けな作品だと思うけど、ここ最近のそういったコンテンツに、いわゆるポストロック的なサウンドのギターロックが非常に多い。オルタナ、USインディー、エモコアといったジャンルで、アーティストでいえばNUMBER GIRLや、凛として時雨、9mm Parabellum Bulletといった、いわゆるジャパニーズロック。

青木 たしかに『ぼっち・ざ・ろっく!』の曲に関しては、我々の世代からすると懐かしいと思うけど、若い世代や海外のアニメファンが聴いたときには、「アニメでこんなことやっているの!?」って思うのかも。

『ぼっち・ざ・ろっく!』挿入歌「あのバンド」

『ぼっち・ざ・ろっく!』挿入歌「あのバンド」

冨田 『ぼっち・ざ・ろっく!』の挿入歌の「あのバンド」は、オリコンでダウンロードのデイリー1位になりましたが(※11月28日付)、こういったサウンドの楽曲が1位を獲るというのは、今の時代、全世界を見渡してもないですよ。ほかにも、アルバムランキング22位に入った「BanG Dream!(バンドリ!)」のRoseliaのミニアルバム『ROZEN HORIZON』などもありますね。

青木 たしかに!それこそ20年くらい前は、こういったジャンルの曲はオリコン20位に入るか入らないかぐらいの感じだったのに。

馬嶋 あの当時は、ああいったサウンドはみんな「自分だけが知っていればいい」と思っていたし、そこに価値があったからインディー文化が流行ったけど、今は「みんなでシェアしたい」という共感のカルチャーじゃないですか。それが、誰が食べてもおいしいメジャーコードのわかりやすい楽曲ではなくて、あんなに特殊なサウンドでできてしまうのは、「アニメのパワーすごいな」って思うよね。

青木 でも、アニメの外部で商売している人が狙ってできることでもないじゃないですか。アニメ好きのオタクの人たちってその辺の1ミリのずれに敏感だから。

冨田 そうなんですよ。あと多くランクインしているのは「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(以下、「プロセカ」)か。アルバムランキングに16作入っていて最高が5位。

25時、ナイトコードで。『限りなく灰色へ/アイディスマイル』

25時、ナイトコードで。『限りなく灰色へ/アイディスマイル』

青木 「プロセカ」の人気があるのはわかっているんですけど、若い子に話を聞くと、我々おじさんの想像を遥かに超えるぐらい「プロセカ」は浸透している。

馬嶋 アルバムランキング37位にサウンドトラックが入っている「ブルーアーカイブ」の人気もすごいよね。あと、個人的にMAISONdesの『うる星やつら』OP・EDテーマがランキングに入っているのがびっくりした。(MAISONdesの)ファン層はサブスクユーザーが中心なのに、ちゃんとダウンロードを買う人がいるということだよね。

青木 イントロが短くて、早めに歌に入るみたいな、いわゆる“サブスクのお作法”を守った、完全にそっち向けに作られた楽曲ですものね。

冨田 OPテーマの「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」は特にそういう曲だよね。『うる星やつら』のタイアップによって、MAISONdesを推しているような10代のユーザー層とは違う層も取り込んでいるのかもしれない。今回Vシンガー(バーチャルシンガー)の単曲は入っていないけれど、『うる星やつら』のEDテーマは花譜が歌っているし、Vシンガーも段々アニメの主題歌を担当し始めていて。ネットシーンの括りからだとAdoもそうだし、Eveやyamaもいる。

青木 VTuberだと、にじさんじのChroNoiR(にじさんじ所属VTuber ・叶と葛葉のユニット)のアニメ化が発表されましたよね。キズナアイのアニメプロジェクト『絆のアリル』もあるし、これはもういよいよアニメとして扱うしかない。来年は勢力図がまた一段階変わりそうだなと思います。

馬嶋 リスアニ!の人間として言わせてもらうと、ここにもっとアニソンシンガーが食い込んでほしいな。

青木 安月名莉子さんや、前島麻由さん、スピラ・スピカはランキングに入っていますね。

冨田 私たちの業界の人たちはここで頑張らないと。

青木 「もっとアニソンシンガーに光を!」って話を (笑)。でも、安月名さんはとても誠実に良い音楽をされている方なので、『メイドインアビス 烈日の黄金郷』のOPテーマ「かたち」がちゃんとヒットして良かったです。ただ、『メイドインアビス』はヒット作の2クール目だからわかるんだけど、一方で『異世界おじさん』の前島麻由さんのOPテーマが売れているのがすごく面白いです。「この曲は良い!」とみんなが思ってくれているという嬉しさがあるんですよね。

前島麻由「story」

前島麻由「story」

安月名莉子「かたち」

安月名莉子「かたち」

馬嶋 『異世界おじさん』自体がアガるし、楽曲もOP映像もすごく良いからね。

青木 大原ゆい子さんが『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』のアルバムが27位にランキング入りしているのも素敵。ほかにわかりやすくアニソンシンガーでランクインしているのはLiSAさんとかか。とはいえ、アニソンシンガーが主題歌を担当する場合、CDに付加価値がたくさん付いているのでダウンロード販売が伸びにくいというのは絶対にあると思います。最近のCDシングルは特典が豪華すぎませんか?シングルCDなのに、アルバムと同じくらいの特典が付いている。フル尺のライブ映像が入っていたりしますからね。今は単品でライブBlu-rayを出すよりも、シングルの特典にする方が手に取ってもらいやすいんでしょうね。

馬嶋 そうなると、このアニメ部門のランキングにおける「何を入れて何を入れない」という感覚は、最早アニメのOP・EDの実績だけでなく、すべてのキャラクターソングもカウントしないと、もっとリアルなシーンは見えてこないということだし、2010年代の感覚はもうここにはないよね。だからリスアニ!も、そういう意味では「これはアニソンである、これはアニソンではない」という領域をもっと変えていかないといけない。あと面白いところでいえば、「アイドルマスター」シリーズは今までサブスクをやっていなかったからある程度ダウンロードが売れていたと思うのだけど、一気に開放されたじゃないですか。

冨田 そうなるとランキングとして、今後はどうなるのかちょっと見えづらくなるよね。でも「アイドルマスター」のようなビックタイトルは、切りのいいところでサブスクを解禁しないと新規のファンが入ってきにくいじゃないですか。

馬嶋 全ブランドの楽曲を合計したら1000曲を余裕で超えるわけですよ。

冨田 逆に言うと、「別にすべての楽曲を一気に開放しなくてもいいんじゃない?」とも思っちゃいますよね。

青木 例えば、「大きなライブごとに今回のセットリストの全曲を開放」とかでもみんなは盛り上がる気がします。全部開放されたらされたで、どこから手を付けていいかわからないですし。

冨田 そういうサブスク解禁の流れみたいなのも続々とありますね。あと余談だけど、「SNS流行語大賞 2022」で1位にもなった『ちいかわ』のハチワレの曲「ひとりごつ」がアルバム76位に入っている。作曲・編曲はトクマルシューゴで、めちゃくちゃ良い曲です。作詞はもちろん原作者のナガノ先生。

ハチワレ(CV:田中誠人)「ひとりごつ」

ハチワレ(CV:田中誠人)「ひとりごつ」

馬嶋 えっ、トクマルシューゴなの!? 『ちいかわ』は最近まで原作者はさくらももこだとずっと思っていて(笑)、「一体なんだこれは!」と思っていたんだよ。

冨田 『ちいかわ』はかわいいキャラクターものの着ぐるみを纏った、過酷な現実社会を突きつけるアニメだからね。全員日雇い労働者だし。「ひとりごつ」だけじゃなくて、劇中の曲は全部トクマルシューゴだから良い曲ばかりなんですよ。単に子供向けとかポップだけで終わらない感じは、原作者のナガノさんっぽさがあるんだよね。

馬嶋 ちょっと「リスアニ!別冊 ちいかわ」作ろうよ(笑)。

青木 楽曲の部分だけで!?(笑)。

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