今年で「マヴラブ」から数えてCDデビュー20周年を迎え、来年には「Preious Memories」のリリースからアニソンシンガーとしても20周年を迎える栗林みな実。YouTubeチャンネルやオフィシャルファンコミュニティの開設などで意欲的な活動を見せているが、楽曲に関してもそのスピリッツが伺えるシングルが今作である。41枚目のシングルに達してなおシンガーとしての真価と未来を感じさせる1枚を前に、栗林みな実が自らの想いと意識をさらけ出す。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
――今回、TVアニメ『不徳のギルド』のエンディングテーマ「シュガー・シュガー・スパイス」を歌われました。歌唱のみというケースはこれまでもありましたが、今回はどのような経緯でそこに至ったのか教えていただけますか?
栗林みな実 まず、こういう作品があって……という話から始まり、どういうふうに主題歌を作っていくかも含めて相談をいただきました。それで私からは三好(啓太)さんに作ってほしいとリクエストし、それで進んでいきました。
――栗林さんが作詞曲を手がけるかどうかの判断も委ねられていたわけですね。そういうことは多いのでしょうか?
栗林 ここ何年間かはそんな感じですかね。私が(詞や曲を)書くときは自分から作らせてくださいと言います。
――今回、三好さんにお願いした理由は?
栗林 理由は、去年出した「Just the truth」のカップリング曲「clear」で編曲をお願いしたとき、三好さんからアニソンがすごく好きだと聞いたんですね。そのときにすごく素敵なアレンジをいただいたので、「いつかアニメの曲を作るときにお願いできたら」とずっと思っていました。今回のお話をいただいたとき、華やかな世界観を持っている方だとわかっていたので、お名前を挙げさせてもらいました。
――ということは、『不徳のギルド』に対して「華やか」というイメージが浮かんだんですね。
栗林 そうですね。女の子がいっぱい出てきてかわいいイメージがなんとなく頭にありました。あとは、「エンディングなので自由度は高いかな」とは勝手に思っていました。オープニングですと、「アニメ側からお願いされたことに答えなきゃ」というイメージがすごく強いんですけど、エンディングならちょっと遊び心があっても許されるような感覚がありました。
――アニメサイドからはどのようなオーダーがありましたか?
栗林 なんて書いてあったかな? 文章でいただいたんですけど、ショーとかミュージカルといった雰囲気の言葉が書いてあったと思います。
――作詞もほかの方に書いてもらうというのが栗林さんの意向だったんですか?
栗林 はい。歌詞もお願いしたいとは言っていました。で、候補を3人くらいいただいて、歌詞を書いた作品も見させてもらった中から「この人がいいです」みたいな感じで。かわいい歌詞をすごく素敵に書いている方だったので、作品に合っていると思ったんですよね。
――栗林さんとしては、今回の楽曲はどのような意識で歌いましたか?
栗林 「とにかく声を明るい感じにしてやるのがいいのかなぁ」と思ってやりました。
――「明るい感じ」で歌うというのは得意というか、栗林さんにとってど真ん中のイメージがあります。
栗林 そうなんですかね。私の中でのアニソンシンガーって、いろいろな種類をその都度出している職業という感じがするので、自分の真ん中がどこかはイメージできないんですよね。いくつかあるパターンの1つというか、「明るい」引き出しを開けた、という感覚ですね。
――三好さんにオファーした段階で、楽曲が自分の引き出しに合致するようなイメージはありましたか?
栗林 ミュージカルっぽい、ショーっぽいというところで、今までになかったものになるだろうな、ということは思っていました。
――楽曲をいただいたあと、練習しながらどんなことを思っていました?
栗林 とりあえず「歌いこなす」ことが前提としてあるんですけど、テンポや拍子が結構変わっていく曲なので、そこの切り替えが自然にできないといけないな、というのはありました。変わっているんだけど変わっていないように、「自然に」聴こえるようなところまでもっていく、ということがレコーディング前までにできないといけないと思っていました。
――そこまでもっていくのは難しかったですか?
栗林 難しかったですね。拍子が変わるだけならまだしもテンポも変わるので。そうするとノリが難しいですよね。感覚的につっかかる感じがするというか。
――急にブレーキかけられたような?
栗林 そうです。そこに対して耳を慣らす必要がありましたね。
――急にワルツになるところですよね。
栗林 そうですそうです。最初と最後の方に2回あって、そこでは表現というよりもスポーツみたいな感覚でしたね。運動をするときの考え方のような。
――自分がそのリズムで歌えるかどうか、動けるかどうかという。それをどうやって体に染み込ませたんですか?
栗林 もう慣れです。慣れるしかない。
――回数をこなして練習するしかない、と。練習では頭の中でカウントをとるんですか?
栗林 最初はカウントしていたんですけど、すごく難しいので覚えるしかないんですよ。覚えちゃったらそれしかなくなりますからね。
――普段歌うときはカウントを数えながら? メロディで覚えてしまうタイプではなく。
栗林 カウントをとっています。あんまりメロディだけで音楽をとらえていないですね。タテ(のリズム)で考えていますけど、でも今回は、あまり深く考えない方が逆にいい曲かな、と思いましたね。
――今も体で覚えたもので歌っている感覚ですか?
栗林 それが最近、色々なところでこの曲を歌うことがあったんですけど、やっぱりクリックを聞いたほうがいいと思ったんですよね。バンドさんとやったとき、人数が多いとテンポの取り方がそれぞれ違っているのですごく難しかったです。リハのときは、本番ではクリックはなくてもいいかと思いながら練習していたんですけど、やっぱりあったほうがいいと思いました。人間が演奏するのは大変な曲かもしれないです。
――そのときは収録だったんですか? それとも生放送?
栗林 収録でした。ライブだったらノリで全然やっちゃってもいいと思うんですけど、やっぱり収録ならちゃんと収めたほうがいいのであったほうがいいかと思いました。
――にしても、いい曲ですよね。
栗林 本当にいい曲だと思います。曲も良いですけど歌詞もとてもいいと思いました。言葉が本当にかわいらしいというか、自分では絶対思いつかない世界観なので。楽曲もそうですけど。だから、そこを表現するのがすごく楽しかったです。
――曲に関しても、ですか? 曲の構成とか?
栗林 あ、構成はホントそうですね。「こうしましょう」と言われたらそう作るけど自分からはやらないと思います。
――作らない理由はあるんでしょうか?
栗林 なんでだろう? 5年に1回ぐらいでいいかな、って(笑)。選択肢としてないわけではないですけど。
――(笑)。ほかの選択肢が優先されるということですよね。主題歌らしさでしょうか? 先ほどもエンディングなら許されるという話でしたが。
栗林 そうですね。アルバムの曲とかでたまーにならやろうかと思いますけど。
――歌詞の点で、自分から出てこないところというのは?
栗林 いや、1文字も自分が書きそうなものがないです(笑)。だから本当に楽しいと思いました。
――『セーラームーン』などの少女漫画系アニメが好きな栗林さんでも?
栗林 好きですけど、自分が書いた歌詞にこんなにかわいい世界観のものはたぶん1曲もないです(笑)。だからすごく嬉しかったですね。
――意外ですね。ただ、ZAQさんによれば、栗林さんが書く歌詞は「慈愛に満ちている」そうです。
栗林 そうなんですか? ありがたいですね(笑)。
――かわいい歌詞を書きたい気持ちはありますか? 仮に、そういうアニメの主題歌をオファーされるとか。
栗林 例えば、動物が出てくるアニメだったら「かわいい」もできる気がするんですけど……。
――それは慈愛の世界だからですね。
栗林 そっか(笑)。
――でも、自分の中にない世界を体感するのは楽しいですよね。
栗林 そうですね。私の中にないというだけではなく、現実にはないような世界だったので、難しいことを考えずに楽しめましたね。完全に癒しの世界だと思います、これは。心が楽でした。歌っていて、「運命」とか「戦え」とか「あきらめないで」とか、そういうものがなかったので(笑)。
――肩に力が入ることなく(笑)。
栗林 そう、すごく楽しく向きあえて面白かったです、色々と。
――「色々と」というのは?
栗林 撮影とかも含めて面白かったんですよね。MVではお芝居みたいなことをしたんですよ。役者さんの女の子と一緒に。ケーキとかお菓子もたくさん出てくるし。
――演技することに抵抗はなかったですか?
栗林 すごく恥ずかしかったですけど、「やらないと終わらないからちゃんとしよう」って気持ちですよね。しゃべってはいなくて動きだけなんですけど、ほとんど演技しているんですよ。歌いながらではなくて。結構いろいろなシーンを撮ったし、時間内にちゃんと終わるかなって不安でドキドキでしたね。でも面白かったです。いつも私のことを応援してくれてる人達にとっても新鮮だと思いますね。「今回はこういうMVなんだ」とは絶対に思うだろうから。
――栗林さんにとってもファンにとっても初体験なMVですね。
栗林 たぶん、楽しんで観てもらえるんじゃないかと思います。この曲にぴったりな、色がきれいでかわいい世界観に仕上がっているので。
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