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INTERVIEW

2022.07.22

【インタビュー】40枚目のシングルとなる、TVアニメ『はたらく魔王さま!!』OPテーマ「WITH」をリリース!栗林みな実が本作へ抱いた思いに迫る

【インタビュー】40枚目のシングルとなる、TVアニメ『はたらく魔王さま!!』OPテーマ「WITH」をリリース!栗林みな実が本作へ抱いた思いに迫る

9年のときを経ての再会のタイトル曲、すべてが新しい経験となったカップリング曲。記念すべき40枚目のシングルにふさわしい2曲を収録した今作に対して栗林みな実が抱いていた思いとは?アニメ主題歌を歌うことに対して、純粋な思いと強い責任に満ちたアニソンシンガーが、TVアニメ『はたらく魔王さま!!』のOPテーマと、新進気鋭のボカロPとの出会いの曲についてつまびらかに語りつくす。

『魔王さま』と中土さんのサウンドが結びついているはず

――「WITH」は「『はたらく魔王さま!!』のOPテーマをお願いします」という形のオファーだったかと思いますが、『はたらく魔王さま!』の主題歌だった「ZERO!!」と同じく、作曲・編曲を中土智博さんに、というのは栗林さんからの希望ですか?

栗林みな実 そうですね。作曲はどなたにしますか、という感じで尋ねられたとき、私の頭の中で『魔王さま』と言えば中土さん、という考えがあったので、今回もお願いしたいとお伝えしました。

――今回も中土さんと考えた理由は何ですか? 今回は自分で作曲も、という考えはなかったですか?

栗林 なかったですね。前回書いてもらった「ZERO!!」がめちゃくちゃ育っているので。歌ってきた回数も多いですし、『魔王さま』の音楽なら中土さん、というか、あのサウンドイメージがファンにあると思いました。だから、中土さんにお願いするのが絶対ベストだと思ったんですね。

――ファンの中にあるイメージを大切にした、というのが一番の理由だったんですね。

栗林 そうですね、そこが一番大きいです。

――栗林さんの、中土さん楽曲に対する信頼は篤いですが、中土さんのすごさをどこに感じますか?

栗林 まず、スカッとしたドラムの音ですね。あのシャキってした感じの。中土さんらしさといえば、私の中では一番ドラムの音がすごくピンと来ます。あと、音数がめちゃくちゃ多いと思うんですけど、すごくいいバランス感で、耳馴染みがいい重なり方をしているんですよ。それがスカッとした気持ちにさせてくれるし、とても個性的だといつも思っています。

――スカッとしているというのは響きがいいということですか?

栗林 すべての瞬間のタテの混ざり方が美しいまま流れてゆく、って感じですかね。「ZERO!!」と続けて聴くと、すごく綺麗に中土さんの世界がそこにあるんですけど、それはあの音が理由ですね。あと、コーラスの積み方もすごいといつも思っています。

――コーラスの積み方がすごいというのは?

栗林 自分の曲をアレンジしていただいたとき、コーラスがすっごく難しいと感じることもあるんですけど、難しいからこそ、全部を録り終わったときに「あ、こうなるんだ」っていう感動もすごくあるんですよ。ここにこれがあったらもっとメロが素敵になる、というアレンジを作ってくれるんですよね。

――「WITH」が届いたときの最初の感想は?

栗林 今回、中土さんは「ZERO!!」という大きな存在と、過去の自分と戦わなければいけなかったと思うんですけど、いい戦いをされたんだろうと思いました。

――その楽曲にどういう詞を書こうという意識でしたか?

栗林 『魔王さま』の曲ということで、相手が自分を信じてくれることに対する感謝、信じてくれたことでさらに自分も頑張れる気持ち、を歌いたいと思いました。その上で、中土さんの曲がすごくキャッチーだったので、より聴きやすく伝わるように、というところですね。あと、中土さんから、サビの出だしは英語がいいんじゃないか、という言葉をいただいていたので、そこから作り始めました。でも、Aメロを聴いたときの作品に対するワクワク感もそうですけど、アニメが始まるという王道の感覚があったので、自然とその世界に入って歌詞が書けたという感じでしたね。

――サビ頭の英語からとりかかったということですが、そこは苦労しましたか?

栗林 むしろ、英語詞をどうやってあのメロディに当てるのか、そこを探すのは大変だろうと予想してサビから始めたんですよ。あとからだと絶対苦労すると思って。宿題を先にやるような感覚ですね。作品の資料を読んだとき、ポイントになりそうなことをメモしていたので、それを英語に置き換えていった感じですね。さっきお話しした、自分を信じるって言ってくれたとか、信じてくれてありがとうとか、(佐々木)千穂とのやり取りを歌詞にするといいのかと思いました。

――では、その英語詞の世界観を全体に広げていくような?

栗林 そうですね。あ、でも最初に決めたのはタイトルかな? それも同じで、昔はタイトルをつけるのが最後で、それが本当に辛かったんですよね。でもそれは良くないと思ったんですよ。それで、多分ここ10年くらいの話だと思いますけど、タイトルを最初に決めることにしました。

――あとから修正したくはならないですか?

栗林 ならないですね。先に決めたらあとはもう、そこに向かって進むだけ、という感じなので。

歌からでも「なんか楽しそうなアニメ」と思ってもらえるように

――前作と、今回の2期で作品世界に対する印象で変わったところは?

栗林 真奥(貞夫)と遊佐(恵美)の二人が前よりも大人になって、人間っぽいというか。私が資料でもらったところがそうだったのかもしれないですけど、いかにもアニメらしい「戦闘」とかの印象よりも、もっと身近な感じがしたんですよね。

――前回は「ZERO!!」というOPテーマのタイトルも示していましたが、まさに人間社会でのスタートから描く内容でした。なので、魔王と勇者の対立や葛藤も作品の中で大きかったですが、今回は魔王たちがより人間社会に溶け込んでいて、その地に足のついた日常感が栗林さんの歌詞にも描かれていますね。

栗林 そうですね、本当にそんな……、全部言ってもらっちゃいましたね(笑)。

――それは、歌詞に込めた想いが伝わったということですね(笑)。

栗林 良かったです、伝わっていたということであれば。あとはやっぱり、はつらつとした感じですよね。見て楽しいアニメであることが歌でもわかってもらえるように、「なんか楽しそう、このアニメ」って思ってもらえればいいな、と感じていました。ただ、中土さんの曲ってめちゃくちゃ明るいんですけど、憂いもすごく混ざっているんですよ。音がめっちゃ明るいからあまり暗くは聴こえないんですけど。例えば、この曲もピアノだけで弾いたら暗く感じる部分が何箇所かあるんです。「ZERO!!」も明るい曲と言えないところが素敵でした。なので、そこをなんとなく感じながら、でも暗くなりすぎないように、あくまで希望が含まれた切なさみたいな歌詞にするといいんじゃないかと考えていました。

――特にそのことを意識された部分はありますか?

栗林 サビの、「愛しさをこえてゆけ」のあたりですね。サビは、前半が明るいんですけど、最後は落ち着いて終わる感じで、最後未来を見つめる強い意志みたいなものを感じました。なのでそこは意識しましたね。Aメロも、ワクワクするんだけどいい感じの緊張感があって、「あ、2期が始まるな」っていう感じがすごくあったので、2期ではあるんですけど「また新たに始まるよ」という気持ちを込めたくて、「次の物語」という言葉を使っています。

――曲に合わせて、歌詞でも明るい一辺倒にしない、ということですね。

栗林 そうですね。でも、私は声が明るいから、暗い内容の歌詞でも歌うとさらに暗くはならないですね。

――自分の歌声も加味しつつの歌詞を書かれたということですが、歌入れはどんな感じでしたか?

栗林 実はその日めちゃくちゃ体調が悪くて。前の日まで熱が出ていて、当日もスタジオに行く3時間前まで寝ていたんですよ。で、どうしようかと思ったんですけど、声はそんなに変じゃなくて。鼻声でもなく。だから録れる気がしたので(スタジオに)行ってみたんですね。そうしたら「調子はどうですか?」みたいなことを聞かれるじゃないですか? でも、体調が悪いとも言えないし、ちょっと鼻声みたいな感じだけど多分録れると思いますって言ったら、「なんで来たんだろう?」ってみたいな空気が流れたのを感じました(笑)。

――不穏な空気が(笑)。

栗林 でもディレクターさんが、鼻声って感じはしないですと言ってくれたので、「じゃあ録れるな」と思って。なんかそういう感じでしたね(笑)。でも、体力が続かないといけないのでサビの難しいところから始めて、結構バラバラに録りましたね。

――いつもは頭から通して?

栗林 そうですね。1番、2番、と順に。でも、全然普通でしたね、仕上がった歌を聴いたら。

――歌で気をつけたところはありましたか?

栗林 Dメロがめちゃくちゃ難しいんですよ。なので、どこをファルセットにしてどこを地声でやるか、ディレクターと相談して先にしっかりと決めてから録りました。

――そんなに難しいんですか?

栗林 めちゃくちゃ難しいと思いますよ。中土さんからの挑戦状ですよ、ここはきっと(笑)。

――ではレコーディングも難航して?

栗林 でも、頭の中でイメージできれば大体歌えるので。なので、どこをどう歌うか決めました。迷いがあると歌いながら「どうしよう?」と思っちゃいますけど。

――頭の中でイメージできるようにファルセットで歌う場所を決めたということですか?

栗林 なんて言うか、「どこまで高くするんだろう」という感じなんですよね。高音が何回も出てくるところが多分難しいところで。

――地声でも出るけれどファルセットで歌ったところがあるんですか?

栗林 そうですね。例えば、「守るよ」とかは。

――ファルセットか地声かの基準は?

栗林 基準はですね、サビの高音部分を地声にしていると、聴いた人がカラオケに行ったとき、「歌わなきゃ」って気持ちになると思うんですよ。そういうところをあまり作りたくないんです。歌いやすく聴こえるように届けたいです。

――歌ってもらう、ということをかなり意識しているんですね。

栗林 していますね。特に主題歌では。自分のオリジナル曲なら自分がどう歌いたいかでも判断しますけど、でもやっぱり、カラオケで歌ってもらうときのことを一番考えます。

――歌うとき、ずっとその意識は強かったですか?

栗林 どうだったんだろう……。でも「ZERO!!」のときは考えなかったと思います。なんだろう、ちょっと優しい人間になったんですかね?(笑)。

――(笑)。それは歌ってほしいという気持ちが強くなったということでしょうか?

栗林 そうですね。「歌えないから歌わない」と思ってもらいたくないんですよ。もうちょっと身近な存在でありたいというか。

――『はたらく魔王さま!』の1、2期の間の変化と同じですね。

栗林 ホントですね(笑)。

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