INTERVIEW
2022.07.19
2020年はすべてのアーティストにとって苦難の年――アーティスト・ZAQにとっても「なにもしてなかったですね」という1年となってしまったが、一方で作家・ZAQとしては様々なインプットと経験を得て、新たな挑戦にも満ちた時期でもあった。ZAQ10周年記念連載インタビューの第6回では、「ZAQ」という存在と真摯に向き合った1年を振り返ったあと、『ようこそ実力至上主義の教室へ 2nd Season』OPテーマ、そして盟友である内田真礼をフィーチャリングしたカップリング曲についてもクローズアップしていく。
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――まず、2020年を振り返っていきたいですが、ついこの間の出来事ですよね。
ZAQ この間ですね(笑)。
――しかも、コロナ禍真っ只中ということで記憶も鮮明かと思いますが、2020年にはどのような印象が残っていますか?
ZAQ めちゃめちゃ病んでいました。外出できないこともそうですけど、曲が作れない、ライブもできない、アーティストとしてどういう立たずまいでいればいいのかまったくわからず。しかも、周囲の人も同じだったのでなおさら私もわからなくなり、途方に暮れていましたね。
――そもそもとして、アニメスタジオでの制作自体が進まない状況でしたからね。
ZAQ 本当に。ずっと家に籠って、でもゲームすらする気が起きなかったです。ただ、早くから動き始める人もいたじゃないですか? Twitterで行われていた「#うたつなぎ」もそうですし、家でできるライブをするとか。でも、私はそこまで気運が高まらず、自分は音楽しかやりたくないし、できることも音楽しかないし、と改めて自分自身に立ち返りつつ、着々と楽曲作りを進めていました。とにかく、リリースのタイミングがないというのが一番しんどかったですね。リリースできたときにはすべて爆発させよう、という想いでした。
――2020年のリリースは第2期『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』OPテーマの「イノチノアカシ」のみでしたが、今お話に出たように着々と曲作りを進めていた時期だったんですか?
ZAQ 「イノチノアカシ」も作ったのは2019年なので、2020年には自分の曲を書いていませんでした。でも、そのなかで(2021年4月期放送)『スーパーカブ』の劇伴というお話をいただいたので、そこで色々と勉強をしようというタイミングではあったんですけど、ただ気持ちがどうしても乗り切らないところがありました。というのも、このまま表には出ない職業作家になっていくのか?という葛藤があったんですよね。プロデュース側に回るとか、外に気持ちを出すことはなかったものの色々と考えていました。友達の中にはバイトを始めた歌手の子もいて、「そうだよね、生活していくうえでは考えていかないといけないよね」と思わされたシビアな1年でしたね。
――たしかに「自分」を顧みる機会になって、どうしても「歌いたい」人がInstagramなどでライブを始めていました。
ZAQ そうなんですよね。正直、自分の中では「歌いたい」よりも「自分の音楽を聴いてほしい」がかなり大きくなっていたんですよ。ということを周りの人にだけ、ポツポツと伝えていましたけど、音楽を辞めてしまった子が結構周りにいて、それもダメージが大きかったですね。たしか、そのタイミングでmotsuさんとお会いしたんですよ。motsuさんはクラブミュージックで一時代を築き上げた方ですけど、イベントやライブがなくなるなかで自分の音楽の新しい道を一所懸命考えて、配信や楽曲提供といった地道だけど新しい作業を始めていらっしゃったんです。それに私も感化されて「やっぱり地道に作ることだな」という思いで、いただける仕事はありがたくコツコツやっていました。『荒野のコトブキ飛行隊』のキャラソンを作っていたのも2020年ですね。
――先ほど「勉強」という言葉が出ましたように、当時は勉強やインプットに励む人も多かったです。ZAQさんはいかがでしたか?
ZAQ 結構、ルーティンとして色々なサブスクで楽曲を聴くというのは始めていて、『スーパーカブ』がクラシック寄りのアニメということもあり、自分の原点であるクラシック音楽に立ち返っていましたね。イタリアのカンツォーネとか。コンサートでやるような音楽よりももっと劇伴っぽい雰囲気の、小編成の弦楽四重奏といったものを聴いていました。あと、スタジオにほとんど入れなかった時期だったので、ミュージシャンとのやり取りがすべてリモートワークのような空中戦になり、そこでの学びはすごくありました。「こうやるのか?」みたいな。あとは、その頃に事務所に入って。
――Tom-H@ckさんが設立したTaWaRaですね。
ZAQ 数年はフリーだったので、作家として事務所から仕事がくるというのがほとんどなかったんですよ。しかも、Tom-H@ckさんの会社ということでアニメに準ずるサブカルやアイドル関連のお仕事が多かったので、作家として挑戦の思いで、Jポップに挑戦したり、1ヵ月に2曲出すみたいなことを頑張ったりしました。でもコンペは全部落ちましたね。それでも、(グループ会社であるCAT entertainment所属の)えなこさんのように、新たな出会いも色々ありました。
――制作活動では充実した1年だった?
ZAQ そうですね……でも、とにかくモチベーションを上げることが難しい年だったんですよ、2020年は。世間を見ていても、生きることに必死で楽しむことを忘れていると思っていましたし。そこから「月灯」という曲が出来たんですけど。
――月曜ドラマ「青きヴァンパイアの悩み」のOPテーマですね。
ZAQ コロナ禍が関わる内容のドラマだったので、楽曲も重い雰囲気になっていて、サビでも“生きる すでに奇跡の上にいるのに 輝きたい 欲張りな現”と歌っています。リリースは2021年でしたけど。
――初のドラマ主題歌はいかがでしたか?
ZAQ いやぁ、難しかったですよ。発注は、「Serendipity」みたいにアッパーでキラキラした曲を、と言われていたんです。となると、どうしてもアニソンらしい派手な構成になっちゃうんですけど、実写ドラマなのでアニソンっぽくならないことも考えました。しかも、(アニメのTVサイズである)89秒で作ることに慣れていたのですが、30分ドラマということでOPが短くて30秒とか45秒だったんですよね。だから、めっちゃ悩みました。
――2020年に気持ちのアガることはありませんでしたか?
ZAQ いや、ホント、何もなかったんですよ。何かないかと思って、スケジュールを今見直しているんですけど……。あ、引っ越しました、
――それはコロナと関係なく?
ZAQ 関係なく、です(笑)。あとは『D4DJ First Mix』の第12話でアニメデビューしました(笑)。ZAQ本人役としてラッパーで登場したんですよ。「D4DJ」との出会いも結構大きかったかな?
――というと?
ZAQ アプリのテーマソングになる、「LOVE!HUG!GROOVY!!」というキャラクター36人の自己紹介楽曲(「LOVE!HUG!GROOVY!!」)を俊龍さんや(俊龍が所属する)ハートカンパニーさんと一緒に作ったんですけど、その作り方が面白かったですね。コライトだったので、サビの前半を俊龍さん、後半をZAQという新しいやり口だったので楽しかったです。
――聞けば聞くほど、気持ちの落ち込みとは裏腹に作家としては充実していた2020年のようです。シンガーとして表に出ることは少なくとも。
ZAQ ですね。だから、めっちゃダイエットを頑張った1年でした。「表に出ない今しかない!」と思って(笑)。病院行って遺伝子検査やって、1年で14kg落としたんですよ。あと、歯の矯正もしましたね。
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