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INTERVIEW

2022.07.01

【10周年記念連載】第5回:ZAQ 第六弾「TENSION ENCHANTER」――9ヵ月連続リリースとともに10年間を振り返る!

【10周年記念連載】第5回:ZAQ 第六弾「TENSION ENCHANTER」――9ヵ月連続リリースとともに10年間を振り返る!

デビュー10周年を記念して、ZAQを迎えて音楽活動を振り返っていく連載企画も佳境に入りつつある。まず、振り返るのは2018、2019年。アニソン作家としてZAQ自身が「一番ピークともいえる」と語る2年である。そして、9ヵ月連続リリース第六弾である「TENSION ENCHANTER」に話が移れば、思いもがけないところから誕生した楽曲の背景を知ることに。これまでの連載を超える、最大ボリュームとなったインタビュー第5回をお届けする。

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『中二病』に対するZAQからのラブレター

――ZAQさんにとって2018年、2019年といえば、以前に関わった『中二病でも恋がしたい!』や『トリニティセブン』が集大成となる劇場版アニメ化を見せ、新たに『荒野のコトブキ飛行隊』でまたOP・EDテーマとキャラクターソングを一手に引き受けた年でもあり、アニソン作家として大きな飛躍を遂げたと感じさせました。まずは、「映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-」の主題歌「JOURNEY」から。以前、超えられないと自身で感じていた「Sparkling Daydream」の域に再び達したという実感を得たとおっしゃっていましたが。

ZAQ 「JOURNEY」はまず、「旅立ち」というタイトルだけが決まっていて、それでTake 3くらいは作ったと思います。そのあとで、ジャズコードを使いつつもめちゃめちゃJ-POPに振り切った曲、というところを目標地点に定めました。ただ、この頃は自信に溢れていたのか、「Sparkling Daydream」を意識することよりも、シングルとしてリリースする1枚に収録される3曲、劇場版の主題歌である「JOURNEY」と挿入歌の「Please,Take on me♡」「こころのなまえ」の2曲で、ちゃんと『中二病』を締めようという気持ちが大きかったですね。

――結果としてZAQ史上に残る名ポップスが生まれた、と。

ZAQ 「Sparkling Daydream」の明るさは受け継ごうと思いました。それでいて1曲としても独立させる気持ちで。ただ、この曲はコード進行やメロディの使い方など、ZAQが培ってきた作曲術をフル活用しているんです。「これこそがZAQがZAQたるメロディ」みたいな。自分の中では必殺技を連続で繰り出した感覚がありました。

――ただ、テクニックは目立たせず、ストレートなJ-POPのポジションを外れてはいないですよね。

ZAQ その通りですね。かなり明るくてお洒落なコードを使いながら、ブラスアレンジで明るく見せて、ドラムもハメながら、でも4つ打ちを使う、という曲なので。こういう曲では8ビートでいきそうなところを、サビの4つ打ちで疾走感を加速させているんです。だから、疾走感は意識したかもしれないですね。「Sparkling Daydream」でZAQが評価されたのはそこだったので、最終形態である「JOURNEY」では疾走感を絶対失わないように、という想いでした。

――J-POPに振り切ろうと考えたきっかけは?

ZAQ それはですね、脚本を読んだときに決めました。映画の内容がめちゃくちゃ明るくて、主人公とヒロインが逃避行する様子がとてもかわいく描かれていたんですよ。特に内田真礼扮する小鳥遊六花が(笑)。しかも、OPテーマということで映像と共に流れるとは聞いていたので、六花がかわいく踊るような絵を想像しながら作りました。

――『中二病』の最後を締め括る1枚に、というお話がありましたが、「こころのなまえ」は一挿入歌でありながら、まさに集大成感のある曲でした。

ZAQ 「こころのなまえ」は私にとっても思い入れがすごく深い曲ですね。発注としては、「大団円の楽曲」「壮大なバラード」というものだったんですけど、私も同じ気持ちだったんですよ。『中二病』では「Sparkling Daydream」などの主題歌からキャラソンまで多くの楽曲を作らせてもらい、その後、ほかのアニメに楽曲を提供したりZAQとしてライブなどの活動を行ったりという寄り道もしましたけど、2期で『中二病』に帰ってきて、また全キャラソンを書かせてもらい。思い返してみれば、ZAQは『中二病』と共に歩いてきたようなものなので、その成長記録を表現したかったんです。ただ、六花の成長記録でもあって。「Sparkling Daydream」では六花の「片思いでどうしよう、どきまぎー、きゃぴきゃぴ♪」みたいな感情を表現しましたけど、「こころのなまえ」では「恋が愛に変わる」という一節があるように、六花が初めての彼氏との付き合い方にドギマギ迷いながらも、最後にようやくチューに辿り着いたところを描きました。「女の子としても成長してきたよ、ありがとう」という歌になっているんです。だから、ZAQから『中二病』へのラブソングでもあるし、六花から勇太のラブソングでもあるんです。

――脚本を読んですぐ、自分と『中二病』を重ね合わせることを考えたんですか?

ZAQ めちゃめちゃ意識しました。「こころのなまえ」こそ歌詞が先だったと思います。「Sparkling Daydream」の前から私の『中二病』は始まっていて、『中二病でも恋がしたい! Lite』でOPテーマとなった「君へ」はデビュー前に作った曲なんですよ。それもあって、「こころのなまえ」のDメロ“始まりの種は君のとなりで花を咲かす 夢が醒めても君はいる 時はたっても 色裾せない 声の意味は 変わらないよ”では、今までに書いたZAQ曲を回収しているんですよね。挿入歌の「始まりの種」と「君のとなりに」。それから「夢」はドリーム、つまり「Sparkling Daydream」のことなんです。声も2期のOPテーマ「VOICE」のことですし。で、“醒めても君はいる 時はたっても色褪せない 声の意味は変わらないよ”と歌っているんです。

――曲の最後では、“ねえ、ずっと一緒にいたい”と告白もしていました。

ZAQ そうなんです!そして、今年は『中二病』が10周年なんですよね。何かあればいいなって思うんですけど。あと、私はいつか誰かの結婚式で歌をうたうのが夢で……。

――意外です、何度もお願いされていそうなイメージでした。周りの方があまり結婚式を挙げていませんか?

ZAQ いや、周りは結構結婚してて、してない人がもういないくらいなんですけど、「歌って」とは言われたことがなくて。一度頼まれたことはあるんですが、そのときは「こころのなまえ」を作る前だったので、持ち歌にラブソングがなくてお断りしちゃいましたね。だから、「こころのなまえ」で結婚式に参加したいんです。

――そう聞くと、ZAQさんにラブソングのイメージはあまりない……あえてですか?

ZAQ いや、マジで恋愛の曲が下手くそというか書けないというか(笑)。世の中のソングライターはみんな、恋愛をテーマに3分で曲が書けるんじゃないかというくらい、世の中には素敵なラブソングがあるなかで、ZAQは片想いでしどろもどろになっている様子しか書けないんですよ。

――あるいはドロドロしているか。

ZAQ そうそう。どちらかだけ。だから、ラブソングを書くとZAQがどんな恋愛をするのかバレちゃうんですよ。

――でも、『中二病』では書けた?

ZAQ それは、六花は恋愛下手ですし初恋だったので。「恋が何かわからない、ううーっ」となっている様を書けば良かったんですよね。両想いで「君がいて幸せだよ」みたいなものは苦手です。恋愛を歌詞にどう起こすかはまだわからないので、みんなすごいと思います。『中二病』みたいに仮面をかぶってかっこつけるほうが私はすごく向いています……今、言葉にして初めて自分でも自覚した!(笑)。

アニメに楽曲を提供する中で得た経験

――『中二病』と『中二病』2期の間にほかの作品に曲を提供し、という話が出ましたが、その間には『アイドルマスター ミリオンライブ! 』や『ラブライブ!』といった作品が含まれており、非常に大きな糧となる寄り道だったと思います。ご自身としてはどのような思いでしたか?

ZAQ おっしゃる通りで、『アイドルマスター』や『ラブライブ!』を乗り越えた私としては、紅白歌合戦のテーマソングを書いてくださいと今言われても、「よっしゃ、頑張るぞー!」ってなれますね。

――『アイドルマスター』や『ラブライブ!』の楽曲は発注がきたのでしょうか?それともコンペで?

ZAQ いや、ZAQはコンペに一度も受かったことがないので。今現在なお。

――それもまた意外なお話ですね。出したことはあるということですね?

ZAQ めっちゃあります。すごいアーティストにばかり書いているわけじゃないんですけど。(笑)。

――ただ、『アイドルマスター』や『ラブライブ!』はファンが多い作品ではあったので、大多数を満足させる楽曲、という意味では気合も入ったのではないですか?

ZAQ 『アイドルマスター』に関しては作詞がメインで、ZAQがポンっと入っていってもキャラクター性さえ尊重されていれば受け入れてもらえるところはありました。最近は曲も書かせていただけるようになりましたけど、私が書く曲は全部とんちきというか、少し変わった曲ばかりで。松田亜利沙役の村川梨衣さんが歌った「アイドルは、かく語りき」や、野々原 茜役の小笠原早紀さんが歌った「AIKANE?」とか。だから、おちゃらけ担当みたいな感じでした。「アイドルマスター」のファンの方々は間口が広くて、どんな曲も受け入れる力を持っていると思っているんですよね。で、『ラブライブ!』はもう、「畑(亜貴)さんの歌詞が乗っかれば何でも神曲になるから大丈夫」と当時プロデューサーだった方に言われていました(笑)。

――まあ、その通りですね(笑)。

ZAQ それに『ラブライブ!』の方は参考曲ももらっていましたし、「大団円みたいに終わりたい」「だから明るいけど泣きメロの曲で」と言われてもいたので。たしか、最初の曲タイトルは「ハロー、グッバイ」だったと思います。

――大団円に向けて見据えられていたわけですね。

ZAQ それにあの曲はEFFYさんの力がめちゃめちゃ大きくて。ちょうど「僕たちはひとつの光」のサビのメロディを作っているとき、飼っていた子猫を亡くしたんですよ。隣の部屋でミギャって声がして。「なんだろう?」と思ったら心臓発作だったみたいで……だから当時曲を完成させるのがしんどくて。なので、メロディとコードだけ書いて、編曲はEFFYさんにお任せした部分もありました。最後に(高坂)穂乃果のAメロで締めるというのも編曲でつけてもらったところです。

――でも、EFFYさんも初の『ラブライブ!』曲でしたよね。

ZAQ そう。そうなんですよ!「僕たちのひとつの光」でバーンって評価を受けて、その後Aquorsでたくさん楽曲書くようになって「すごーい♪」って見てました。なので、「僕たちはひとつの光」で素晴らしいストリングスを書かれることがわかったので、“Animelo Summer Live”のテーマソングや「こころのなまえ」でもEFFYさんに編曲で入ってもらったんですよね。EFFYさんが作る楽曲って譜面がとても綺麗なのでミュージシャンが喜ぶんですよ。弾きながら無理がなくて、メロディとしても美しいし、指示も的確。私も勝負曲ではEFFYさんにアレンジをお願いしていますね。

――『荒野のコトブキ飛行隊』についても、どのような経験になったか教えてもらえますか?

ZAQ 『コトブキ』は最初から、キャラクターごとに全部キャラソンを出すから全部ZAQにトータルプロデュースとしてお願いするつもり、と最初から言われていたんですよ。

――音楽に造詣の深い水島 努監督の作品ですが、その点では何かありましたか?

ZAQ そうなんですよね。リテイクが多めにあるから覚悟しておいて、と言われていたんですけど一発で通ってしまって。なので、あまりそこで大変だった感覚がないんですよ。ただ、OPテーマにはマカロニウエスタンのようなサウンドを入れてほしい、派手にしてほしいと言われていたので、「よし!やってみたかったビッグバンドに挑戦だ!」という気持ちになりましたね。バジェット的な意味でも今しかできないと思って(笑)。だから、(代表的なリゾネーター・ギターの)ドブロギターを入れて、ギターはもう1人お願いしていますし、ブラスアレンジも入れさせてもらいました。派手に作るという命題があったので、ワクワクしていましたね。実は(OPテーマの)「ソラノネ」は、『カウボーイビバップ』の「Tank!」みたいな曲を作るつもりだったんですよ。イントロの掴みで絶対に離さないような、あのかっこ良さを聴いたときの衝撃は忘れられないですね。

――TVシリーズ、ゲーム、配信アニメ、劇場版と『コトブキ』では数々の楽曲を生み出しました。

ZAQ いやあ、本当に……自分が歌ったのは「ソラノネ」と(ゲーム『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』イベントテーマの)「カゼノワ」だけですけど、全曲で作詞作曲しているので。ただ、キャラクターソングの方はアレンジは絶対別の方って決めていて、それぞれのキャラクターに合わせたアレンジの方向性を決め、リファレンスとなる楽曲の提示もしながら進めていったのでプロデューサーとしての一面も育てていただきました。

――特にどのような面で成長できたと感じていますか?

ZAQ 声優さんのレコーディングにもほぼすべて立ち会えたので、ディレクションの進め方、能力の引き出し方については特に勉強になりましたね。当然ですが、歌が得意な方も苦手な方もいるなかで、キャラクターに寄せつつも一番キラっとした成分を歌から引き出すにはどうすればいいのか、という部分をやり取りのなかで見つけていけたのはすごく大きな経験でした。特に瀬戸麻沙美さんとの出会いは大きくて、彼女は音楽への造詣が深いんですね。歌心がすごくわかっていらっしゃるというか、フェイクやがなりの使い方とかも全部上手くて、歌い方がアーティストなんですよ。ソウルやR&B調の歌い方もめちゃめちゃ上手でした。ディレクションしながら体が熱くなって、私は“かかっちゃって”いましたね。瀬戸さんがソロデビューするときは絶対スタッフに入りたいと思いました。

次ページ:ZAQのテンションを上げる“2人”をモチーフに生まれた新曲

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