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2022.06.25

【ライブレポート+本人コメント】バーチャルアーティスト・長瀬有花が初の試みで見つけたもの――全編三次元(実写)の無料配信ライブ「SEEK」レポート

【ライブレポート+本人コメント】バーチャルアーティスト・長瀬有花が初の試みで見つけたもの――全編三次元(実写)の無料配信ライブ「SEEK」レポート

様々なバーチャルアーティストが在籍するRIOT MUSICに所属し、二次元と三次元を行き来する活動を続ける長瀬有花。彼女の配信ライブ“SEEK”が6月25日(土)に開催された。

これまでの彼女は二次元のバーチャルな姿と、三次元でのリアルな姿との両方を使い分けてパフォーマンスを行ってきたが、今回の“SEEK”は「次元を越えたその先」をテーマにした、自身初の全編三次元の姿での無料配信ライブ。公演前には特設サイトなどを使った謎解きも展開され、公式Discordコミュニティには情報共有チャンネル「seek情報班」も開設。参加者で協力して謎を解き明かすと、今回のライブに関わる様々なクリエイターの情報や、公演前に散発的に行われるゲリラライブのヒントなどが次々に浮かび上がる仕組みになっていた。

なかでも複数回行われたゲリラライブは、夜の公園やどこかの高架下などを舞台に三次元の姿で行われ、行きかう車の音まで拾った臨場感溢れる映像で、彼女が同じ世界のどこかで暮らしていることを改めて伝える雰囲気だった。そうして新たなライブや情報をリスナー自身が見つけて辿り着くという体験そのものが、“SEEK”の重要なテーマとなっている。

配信ライブ本編は、視聴者が長瀬有花から受け取ったフライヤーを手に、ライブハウスへ入場する、臨場感のある主観視点からスタート。ノスタルジックさと近未来的な雰囲気がないまぜになったスペースを舞台に、スピッツの「ロビンソン」とBUMP OF CHIKENの「車輪の唄」のカバーから、アコースティックギターを持ったギタリストとの2人編成でしっとりとはじまった。

2曲を終えると、ここで初めてMC。「“SEEK”には、あなたが自分を見つけ出してくれたあの瞬間を、思い出してもらえたらなぁという思いを込めています。現代はインターネットの中で日々たくさんの作品が飛び交い、それらを片手間に大量に手に入れることができる時代です。だからこそ、ここではたった1つのものを、自分の意志で探し出すことの楽しさを、味わってもらえたらいいなと思っております」と、公演に込めた思いが語られた。

続いて同じくアコースティックな雰囲気のまま、今回が初披露となる新曲「みずいろの君」を披露。音源でのアレンジがどうなるかはわからないものの、アコギならではの音の隙間をたっぷりとった演奏と、自身でも“だつりょく系”と称するふわふわと漂うような彼女のボーカルが戯れるような雰囲気の楽曲で、彼女の声そのものの魅力が伝わってくる。続く相対性理論「ミス・パラレルワールド」のカバーでは、アコギに合わせて彼女がピアニカを演奏。相対性理論のやくしまるえつこから大きな影響を受けているであろうことを感じさせた。

ここからは1stアルバム『a look front』にも収録されていた、ファンにはお馴染みのオリジナル曲「駆ける、止まる」「ライカ」「異世界うぇあ」を披露。どちらもこの日のためにアレンジが変更されており、なかでも「ライカ」は、原曲から大きくテンポを落とし、音響的なフォークトロニカ風のアレンジでエモーショナルな感情の高ぶりを強調する雰囲気になっている。また、「異世界うぇあ」では彼女がステージからフロアに降り、壁際まで広く使ったパフォーマンスで演奏を盛り上げた。

ライブ終盤には、1年と少しの間に新たな変化が起きつつある自身の活動や、「いつまでも新しい感動に出会えるように頑張りたい」という気持ちを伝え、「これから出会うあなたも、長瀬有花は、いつでもここで待っています。安心して探し出してくださいね」とMC。続いてサカナクションのカバー「ユリイカ」が始まり、音響的な音の広がりを活かした序盤から、徐々にビートが高揚していくようなこの日だけのアレンジに乗せて歌を披露した。

最後は、この日初披露となる2つめの新曲「微熱煙」を披露。この楽曲は瀬名航が提供し、サビに向けてどんどん疾走感が増して盛り上がっていく演奏や、楽曲に負けない彼女自身の歌の熱量が印象的な、ドラマチックで心打つキラーチューン。ふわふわとたゆたうような楽曲が多いイメージもあるこれまでのレパートリーに、ひと際ダイナミックな感情表現の楽曲が加わった印象で、これからの代表曲になっていきそうな雰囲気がある。

さらにエンディングでは、カッティングギターを活かしたディスコファンク風のオリジナル曲「今日とまだバイバイしたくないの」のインストが流れ始め、2番からは長瀬がサプライズで歌唱(YouTubeでは1コーラス分しか公開されていないため、フルサイズは初公開となる)。終演後、ブラウン管テレビに感謝のメッセージと”PRESENTED FROM THE FUTURE 汽元象レコード(KIGENSHO RECORDS)”とRIOT MUSICとも違うレーベル名のようなものが表示され、余韻を残すなか配信ライブ“SEEK”は終幕した(なお、本ライブのアーカイブ映像が、本日6月25日24時より公開される予定)。

バーチャルアーティストでありながら、同時にリアルの姿で活動するシンガーでもある彼女にとって、全編三次元の姿で披露したこの日のライブは、“SEEK(=探す)”というタイトル通り、これまで自分を見つけてくれた人々への感謝や、これから自分を見つけてくれるだろう人々への期待を、よりリスナーに近い場所で届けるようなライブだった。

TEXT BY 杉山 仁
PHOTOGRAPHY BY 梁瀬玉実

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