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2022.04.26

【ライブレポート】「皆さんを肯定したり安心させられる表現者になっていきたい」――“伊藤美来 Live Tour 2022 『What a Sauce!』”東京公演レポート

【ライブレポート】「皆さんを肯定したり安心させられる表現者になっていきたい」――“伊藤美来 Live Tour 2022 『What a Sauce!』”東京公演レポート

4月16日、東京国際フォーラム ホールAにて、声優・伊藤美来によるライブツアー“伊藤美来 Live Tour 2022 『What a Sauce!』”の東京公演が開催。1年ぶりのツアーのファイナルとなったこの日のライブは、アーティストデビューから約5年間の歩みを振り返るベストライブの色合いももった充実の内容に。加えて、今後に向けた決意も明確に宣言され、彼女の活動の中でもターニングポイントの1つに数えられるであろう一夜となった。

大会場に“降臨!”サプライズとともに幕開けた充実のステージ

開演前はステージいっぱいに幕が張られており、セットはシークレット。ファンが期待に胸を膨らませるなか、ラテン風のパーカッションメインのインストが場内に流れ始める。そしてサーチライトに照らされダンサー4人のシルエットが浮かび上がったところでスクリーンが落ちると、伊藤がなんと、ステージ上空から“降臨”!このサプライズには、ファンも歓声の代わりに一段と大きな拍手をもって、喜びとともに迎え入れる。そしてインストからそのまま「No.6」へと突入し、ライブ本編がスタート。ホーンの映えるポップなナンバーで、いきなり場内を虜にしつつ盛り上げていく。2サビ明けの間奏部分ではダンサー4人と縦一列になったりとフォーメーションを活かした見せ場も作り、後奏のダンスも5人でピタリと揃えて魅せていくと、続いてもホーンが活きるナンバー「Shocking Blue」へ。凛とした響きにぐっと方向転換した歌声に加え、要所はピシッと決めつつもどこか麗しさや美しさを感じさせるダンスパフォーマンスでもって、サウンドに沿ったスタイリッシュな世界を形作ってみせた。そこからまたもガラリと楽曲のテイストを変えてみせたのが、続く「閃きハートビート」。キラッキラの笑顔で、MVでも見せたダンスも織り交ぜつつ、とびきりキュートなステージを展開。ただそのなかでも、サビの非常に複雑なメロディを乗りこなしながら振付の一手一手を正確に決めていくという高いパフォーマンススキルには、改めて唸らされた。

こうして冒頭3曲に持ち歌の中から比較的アッパーなナンバーを続けて、ファンのボルテージを上げつつライブの世界に惹き込んでみせた伊藤。この日初のMCパートでは、3年半前の国際フォーラム ホールCでのワンマンライブ“Live is Movie”を思い出しつつ、感慨深さも口にする。また、ツアータイトルに込めた想いについても改めて「色んな味のする楽曲を通じて、楽しい気持ちでお腹いっぱいになってもらえたら」と説明したところで、ライブ再開。そのコンセプトに直接的になぞらえてのものだろうか、「Morning Coffee」からしばらく“食べ物”絡みのタイトルの曲が続いていく。

その「Morning Coffee」は、リリース時から歌声にあったピュアさや振付の要所要所に乗せたキュートさを残しつつ、歌声にプラスされたほのかなオトナ感やステップの運びの巧みさなど、今ならではの表現に。決して見せびらかさず、しかしスキルの高さあればこそのステージをみせていく。そして曲名にちなんで、朝らしいひと伸びを「Pistachio」のイントロ中に挟んで“目覚め”を感じさせると、彼女の後ろでは2階部分がステージになっているターンテーブルがゆっくりと反転。レストランや店員に扮したダンサーが登場し、開店を迎えるというストーリーが展開していく。伊藤もステージ上をゆっくり移動しながらこのキュートなラブポップを愛らしく歌いゆき、2サビ明けにはそのレストランへと“入店”。着席したところで、続けて聴こえ始めたのは「パスタ」のイントロだ。2階ステージの側面部分のLEDに、落ち着いた雰囲気のレストランの映像が映し出されるなか、ゆったりとリズムにたゆたいながら一人で歌う伊藤。Bメロ中盤からはじわじわと歌声をクレッシェンドさせたり、落ちサビではふわっと柔らかく包み込むように優しく歌うことで、自ら手がけた歌詞に込めた意志を歌声にも反映してみせた。また、1サビ明けに店員へオーダーすると、2サビ後にはパスタが到着。後奏で実食を試みる……が、なかなかうまくパスタを巻けず、少々失敗気味に。ちなみに直後のMCにて、ツアーの1公演目・大阪公演では頬張りすぎて喋れなかったという経験を踏まえての結果であることも、合わせて語られていた。

MCではほかにもその「パスタ」について、アーティストデビュー5周年記念シングルとして初めて作曲に取り組んだ際の裏話も披露。さらには“5周年”という話題から、この5年間における自身の感じ方の変化についても吐露。経験を積んだからこその表現への欲や、「今だからこそ歌える曲」についての話を繰り広げたところで、続いては大人っぽさや甘酸っぱさを感じさせる曲のゾーンへ。

まずはちょっと大人なミドルナンバー「気づかない?気づきたくない?」から。サウンド的には少々ダンサブルさも感じさせる曲ではあるものの、ここでは歌にほぼ専念。サビ後半部分で活かしたファルセットや中盤でスタイリッシュに決めたラップなどから、歌唱直前に言及したオトナ感を強く感じさせていくと、ステージを夜のようなムードが包み、「土曜のルール」へ。そのムードへ良好にマッチングしつつも、彼女ならではのかわいげも時折ちらりとのぞく絶妙なバランスで、オンリーワンの歌声を響かせファンを改めて魅了していく。そしてさらにもう1曲、メロウなミドルナンバー「ルージュバック」も歌唱。この曲も直前までのステージや歌声がまとうムードを保ちつつ、サビに少々盛り込まれた振付も、的確にリズムを捉えてまっとうしていく。また、落ちサビでの声の震え具合や大サビ終盤にあらわになった強めの感情など、楽曲が描く女性像やその想いに絶妙にマッチした歌唱表現を最後まで見せていた。

ここで伊藤は一旦降壇。ダンサーによるパフォーマンスタイムを挟み、ステージ奥のスクリーンには“ONE DAY DREAM”と題された映像が上映。伊藤とのショッピングデートを思わせるショートムービーとなっており、様々な色の服装で七変化をみせた後、試着室から顔だけを出したカットで映像は終了。ライブの後半とその衣装、それぞれへの期待をさらに高めたところで、「傘の中でキスして」のイントロとともに衣装チェンジを終えた伊藤が登場。客席とステージがブルーに染まるなか、ミドルテンポのポップスをキュートに、それでいてしとやかさも醸しながら歌っていく。

歌唱後、またもステージを離れたかと思ったら、すぐさまブルーのメガホンを持って再登場する伊藤。スポットライトに当たって「よーい、アクション!」と声をかければ、「恋はMovie」の始まりだ。この曲はそのまま伊藤が“監督”として、スタッフに扮したダンサーとの掛け合いを、表情豊かに展開していくショーのようなナンバーに。サビではすっかり定着した振付をファンと共に踊り、一体感も生み出していく。さらにこの曲の披露中、伊藤が立っている2階ステージがゆっくりと転回。そんななかでも笑顔でクラップを促し、しっかりステップを踏みながら歌ってみせた。

次ページ:優しさ、そして頼もしさを生んだ、5周年ならではの力強い宣言

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