REPORT
2022.04.26
曲明けには、着替えたばかりの2着目の青い衣装をフィーチャーしてのトーク。ステージ両端まで歩いて行ってできるだけ近くでそれを見せ、ファンとのコミュニケーションを取っていく。そんな衣装のメインカラー・青といえば……ということで、発売直後のニューシングル「青100色」の披露へ。
歌唱前のMCで「原点回帰の曲」と自ら語っていたとおり、楽曲に非常によくマッチする、彼女の歌声がもつピュアさをしっかりと出しての歌唱。その一方で、サビの中盤から終盤にかけての三連符や早口といった高い要求に応える技術面や、聴く人それぞれに寄り添うようにA・Bメロでふわりと優しさが込められた歌声などからは、しっかりと成長も感じることができた。
そんな最新曲から続けたのは、なんとデビュー曲「泡とベルベーヌ」!やはりこの曲には欠かせないイノセントさは健在な一方で、歌詞に沿った表情を色濃くつけたBメロ部分の歌唱や、全体として柔らかさをもたせた歌声は表現面での成長を伺うことができるものに。この2曲を並べたからこそ、より伊藤の成長が浮き彫りになっていたように感じられた。
そんな感慨に浸る間もなく、「まだまだ疲れてないですかー!?」との煽りに続き、最新シングルのカップリング曲「La-Pa-Pa Cream Puff」からラストスパートへと突入。ファンのクラップに支えられながら、サビ直前の脚をぴょこっと上げる振付など、歌声に加えパフォーマンス面でもキュートさをバッチリ表現し、続く「ミラクル」でもペアでハートマークを形作るダンサー二人との掛け合いも交えるなど視覚面でもファンを楽しませ続けていく。その光景がファンの高まりを生んだか、「all yours」ではイントロでの曲のリズムに合わせたクラップの響きが、この日一番の大きさに。伊藤もサビではマイクを持たない側の手を用いて、ファンのクラップを先導していく。
そうして会場内の一体感を高めに高めて曲を締め括り、ダンサーを送り出すと、いよいよ本編は残り1曲。その歌唱を前に、伊藤が今の心境を語り始める。開演を迎える前に感じていた緊張などにも言及しつつ、やはりメインとなったのはファンへの感謝。この日も緊張していた自分を支え勇気を与えてくれたこと、この5年を通じてたくさんの愛情や夢をもらってきたおかげで活動を続けられたこと――それらについて「感謝してもしきれない」とまとめる。
そして「皆さんの声のおかげで私は、自分に自信を持つことができるようになったり、自分を肯定できるようになりました。なのでこの5年を区切りに、ここから先は私が皆さんを肯定したり安心させられる、そんなアーティスト・役者・表現者になっていきたいと思います!」と力強く宣言し、ラストナンバー「ワタシイロ」へ。いつものようにファンは思い思いの色を灯し、伊藤に向けて掲げていく。そんな数多の光をゆっくりと見回しつつ微笑みながら歌う姿は、直前の宣言と結びつくことで早速ファン一人ひとりの想いを優しく肯定するかのよう。たまらない優しさと頼もしさをもって、それぞれの“ワタシイロ”に寄り添っていく――そんな感覚も覚えさせられたなか、本編は締め括られた。
歌唱後、伊藤が降壇し、暗転のなかアンコールを求めるクラップが響き渡ると、ライブTシャツを身にまとった伊藤が再登場。改めてこの日のライブを振り返りつつ、ツアーファイナルということでステージセットに込めた仕掛けも同時に種明かし。昨年のツアー“Rhythmic BEAM YOU”を彷彿とさせるキューブや、2ndアルバム『PopSkip』のリード曲「PEARL」にちなんだ真珠風のライトをステージ上に多数据えていたりと、5周年を記念したツアーにふさわしい仕掛けが多数あったことを明かしていく。言及されなかったステージ上方の、映画のフィルムを模した装飾なども含め、隅々まで彼女の今までの足跡を反映したステージセットになっていたのだ。
そんな振り返りに続いて、アンコール1曲目として歌われたのは「孤高の光 Lonely dark」。直前の「盛り上がっていきましょう!」との言葉通りのハイテンポかつシリアスな曲を、まっすぐで高音まで伸びやかな歌声をもってしっかりと歌い、改めてファンを惹き込んでみせると、「またみんなと絶対に会いたいです!みんなと私は“Best friend”ですよー!」と呼びかけてから、ラストナンバー「君に話したいこと」がスタート。歌詞になぞらえて直前に「Best friend」と呼んだファンとの繋がりを改めて示すように、ここでも客席を見回しつつステージをゆっくり歩きながら、ファンと笑顔で視線を交わして繋がっていく。最後には2階ステージからメインステージへと降りて“ベスフレポーズ”で締めくくり、去り際には「みんな、また会おうねー!」とオフマイクで叫び、自身二度目のツアーを締め括った。
重ねた年月と研鑽による高い技術が実現した、満足度の高いものとなった今回のライブ。それをここまでのものへと引き上げたのは、ライブ中に語った「ファンを肯定したり安心させられる表現者になりたい」という想いだったのではないだろうか。例えばその発言の直前の「all yours」で若干前傾気味になりながらクラップを煽っていた姿にも、今振り返ればその姿勢が現れていたように思う。それを、この5年間を総ざらいするようなライブできっちりみせてくれたことで、“声優アーティスト・伊藤美来”への期待はますます高まった。この日を境に引っ張られる側から引っ張る側に回った彼女が、果たしてこれからどんな変貌をみせるのか。これからも一歩一歩着実に進んでいくであろう彼女の歩みに、さらに注目していきたい。
TEXT BY 須永兼次
●“伊藤美来 Live Tour 2022『What a Sauce!』”東京公演
2022.04.16@東京国際フォーラム ホールA
【SET LIST】
M1. No.6
M2. Shocking Blue
M3. 閃きハートビート
M4. Morning Coffee
M5. Pistachio
M6. パスタ
M7. 気づかない?気づきたくない?
M8. 土曜のルール
M9. ルージュバック
M10. 傘の中でキスして
M11. 恋はMovie
M12. 青100色
M13. 泡とベルベーヌ
M14. La-Pa-Pa Cream Puff
M15. ミラクル
M16. all yours
M17. ワタシイロ
EN1. 孤高の光 Lonely dark
EN2. 君に話したいこと
伊藤美来 オフィシャルサイト
https://columbia.jp/itomiku/
伊藤美来 オフィシャルTwitter
https://twitter.com/infoitomiku
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