幅広い音楽ジャンルに独特のカラーを織り交ぜ、様々な楽曲をアニメシーンに投入してきたZAQ。2022年はそんな彼女にとってアーティストデビュー10周年という節目となる年であり、その瞬間に向けてカウントダウンが始まる年明けの1月から、9ヵ月連続で楽曲をリリースすることが発表された。リスアニ!WEBでは来るべき2022年10月24日というデビュー10周年記念日に向かって、毎月連続でインタビューを敢行していく。
ZAQ10周年企画インタビューの第2回は、2013~2014年頃を振り返ってもらいつつ、最新の配信シングルでオリジナル曲の「ANTHEM」に対する想いを語ってもらった。前回のインタビューも合わせて、踏みしめて登ってきたZAQの姿を感じてほしい。
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――先日YouTubeで「ZAQの日特別版」の生配信が実施され、まさにデビューからの10年を振り返る内容でもあったと思いますが、どういった流れから今回の配信番組が決まったんですか?
ZAQ 2015~2016年くらいから、毎年恒例として3月9日は「ZAQの日」という特別な日にしようと、アルバムを引っ提げたツアーとは別にライブをやっているんですね。やっぱり、ZAQから「今年度も1年ありがとうございました」「音楽ができて幸せです、ありがとう」と伝える場所が欲しかったので。でも、コロナ禍ということで一昨年の“ZAQの日vol.4”は日程と場所(2020年3月9日、代官山LOOP)が決まっていたものの中止となり、せめて今年は配信でもできたら、ということを2月中旬くらいに私から提案しました。ただ、最初は携帯1つで撮るインスタライブくらいのイメージだったんですけど、色々と協力してくださる方々がいて、ああいう形での配信になりました。
――音楽制作プロダクションのハオックや作詞家である松井洋平氏などの協力を得て、ライブもトークも充実した番組になりました。
ZAQ おかげで感謝の気持ちは伝えられたと思います。本当にZAQは喋らないですからね(笑)。インスタライブなどをする人間でもないので、コミュニケーションをとれるシーンが得られて良かったです。
――前回のインタビューで、やるほどにライブが好きになるというお話をされましたが、ライブができていない渇望感もあったのでしょうか?
ZAQ かなりありましたね。19thシングル「イノチノアカシ」のc/w曲「Closed Ovation」は、「喝采が欲しい、喝采が欲しい」「みんなと一緒にライブがしたいのになんでだよ!?くそぉっ!」という内容なんですけど(笑)、今回の「ANTHEM」もライブへの飢えを込めていますし、とにかく欲しがっていますね、今のZAQは。
――また、昨日のライブでは「自己肯定感」というワードが幾度か登場していました。ライブはそこが達成できる場所という感覚もありますか?
ZAQ やっぱりワンマンライブは「答え合わせ」なんですよね。ZAQの作る楽曲がみんなに受け入れられているか、曲を好きだと思ってもらえているか、どういう表情をみんながしているか、というのはライブでしか絶対に得られない感覚なんです。熱量も温度も匂いも顔も声も、みんなが音楽を楽しむ様子を自分の五感を研ぎ澄ませて感じ取る場ですね。私はこの曲を作って正解だった、という実感を得られることで自己肯定感にも繋がりますし、ZAQが音楽をリリースする理由にも繋がっています。みんなの本当の気持ちを教えてもらえる場所、答え合わせの場所が“ライブ”だと思っています。
――その機会が失われていたわけですね。
ZAQ その通り。なので2021年は「しゃがみの時期」と呼んでいます。
――準備期間、ということですか?
ZAQ そう。2022年にドン!と派手に飛び上がるための1年だったんです。なので2021年のCDリリースも1枚だけでした。そのぶん、みんなの言葉に飢えていて、自分が音楽をする実感が感じられない1年でもあったんですね。「このまま音楽家として生きていけるんだろうか」という気持ちになりました。やっぱり音楽が好きであり、音楽を好きなみんなが好きなので。
――今回は10周年記念連載の2回目ということで、2013~2014年頃について振り返っていただこうと思いますが、第1回目に取材させていただいたとき、ディレクターからのリテイクが嬉しいという話をされていました。今のお話も、楽曲を通じてコミュニケーションをとるZAQさんの特性が表れていますね。
ZAQ そうですね。2012年の『中二病でも恋がしたい!』に始まり、2015年くらいまでは毎期でタイアップをいただいていたんですけど、誰かのために楽曲を作ることが楽しいと気づき始める時期でもありました。最初は、自分のポテンシャルを見せつけてやるという気持ちで進んでいたのが、楽曲提供を重ねることで色々な人と関わり、様々なアニメの作品に出会い、ディレクションやリテイクが好きになりました。リテイクが欲しいから最初は大げさに足し算しまくった曲を作り、やり過ぎと言われたら減らす、みたいなアプローチに変わりましたね(笑)。だから、リテイクをもらって落ち込む人の気持ちがわからないんですよ。互いに良いものを作りたいに決まっているので、同じ目的に向かって擦り合わせていく作業も楽しさしかないです。
――『中二病でも恋がしたい!』『中二病でも恋がしたい!戀』以外は毎期異なるアニメタイアップ作品でしたね。そこで鍛えられた部分もありましたか?
ZAQ 実は、あまりなかったかもしれないですね。当時、(元ランティス副社長の)伊藤善之さんがプロデューサーとしてZAQの方向性を決めていたんですけど、タイアップソングに関するやり取りも伊藤さんを通してでした。伊藤さんが「こういう作品があって、こういう面白い曲を作りたいと思っているんだけど作れそう?」って言ってきたら私が「やります。それはZAQが正解だと思います」と答えて。「じゃあ出しましょう」「作りました」っていう感じで、ものすごいスピードで制作が進んでいきました(笑)。音楽への造詣もZAQへの理解も深くて、ZAQが唯一師匠と呼ぶ方なんですよね。
――その当時から変わらない部分はありますか?昨日の配信ライブでも話題に出ましたが、好きなコードとか。
ZAQ コードですか?最初の5年くらいはコードにめちゃくちゃこだわっていました。ジャズのコードもすごく勉強しましたね。とにかくアニソンはコードが命だと思っていたので。もっと言うと「転調」ですね。2010年代前半って、転調があってこそドラマチックという流れがあったので、コードの転調や美しさにメロディが乗る感じでアニソンを展開させていこうとしていました。そこも実は伊藤さんが語っていたことで、ZAQはそのマインドにすごくリスペクトがあったんですよ。だから2010年代前半は、コードの部分でZAQの捻くれている感じを出してやろうと思っていました。普通の人が使わないコードを使うというか、尖りたかったんですよね。教室に1人はいたじゃないですか?みんなが聴いている音楽をあえて聴かない、そんな私かっこいい、みたいな。それを20代でやっていたわけです(笑)。
――その頃のアニソンは、色々な要素が混ぜ込まれた楽曲が人気を博していましたね。
ZAQ 私が「アニソンってすげぇ!」と思ったのはまさに今おっしゃっていただいた部分です。クラシックしか勉強してこなかった私にとって衝撃だったんですよね。ヒャダインさんとかがそうでしたけど、魔術のようにポン!と転調するというか、「このコードからこのコードになんて自然に跳ぶんだろう?」と思っていました。こういう天才たちがいる世界に入りたいと思ったのがアニソンを目指すきっかけだったので、今もコード進行を面白くしたい気持ちはあります。
――昨日の配信ライブなどで、今触れてみると当時の楽曲について、自身ではどのように感じますか?
ZAQ 子供から大人になった気分ですかね。子供ってやりたいことをそのままやるじゃないですか?それと同じで、当時の曲の譜面を見ると「なんでこんなところにこんなコードを入れるんだろう?」と思えて面白いんですよね。ボーカルとぶつかってすごい不協和音なのにこれを良しとしている、昔の自分ってかっこいい、みたいな感覚に陥りますね(笑)。置きにいっていないメロディや譜割、構成、コードの積み方の大胆さなどは見習いたいですね。今は大人になったぶん、何分何秒くらいでこういう展開がきたらドラマチック、という感じで楽曲全体を俯瞰で捉えることができますけど、2015年くらいまでのZAQは、Aメロで1曲、Bメロで1曲という感覚だったのでガタガタなんですよね。だから、5枚目のシングルくらいまでは特に「曲が変態」って言われていましたね(笑)。
――5thシングルの「VOICE」は『中二病でも恋がしたい!戀』のオープニングテーマでしたが、一転してダークな世界観を打ち出しました。
ZAQ ZAQが最高潮に捻くれていた時期なので。どうせ(『中二病でも恋がしたい』オープニングテーマ)「Sparkling Daydream」みたいなのをみんな期待してるんでしょ?みたいな(笑)。
――その頃の自分を褒める意味で、どれか1曲に陽の目を与えるとしたらどの曲を選びますか?
ZAQ え?全部です!ZAQがみんなに与えたい印象ってどれも違う楽曲ばかりなんですよ。「Spakling Daydream」は私がやりたいアニソンの王道を提示した曲でした。でも、「Alteration」は、「私はピアノが躍る楽曲が得意なんです」「こういうピアノのアプローチでドラムがバキバキの四つ打ちだったらかっこいいでしょ?」というアプローチで作った曲で、「激情論」はZAQが初めて表題曲でロックをやりたいと始めた楽曲なんですよ。「エキストラレボリューション」は聴いてすぐにわかる通り、こういう声も出せるZAQ、を打ち出していて、きゃりーぱみゅぱみゅさんが全盛期でもあったので、ああいうピコピコした楽曲にかわいくノるというところに挑戦しました。「VOICE」は先ほどもお話ししたように「Sparkling Daydream」からの続きというところですごく悩みましたけど、2小節ごとに転調していてリズムも攻め攻め、ストリングスも暴れまくってるというジェットコースターみたいな展開に初めて挑戦した楽曲でもありました。
――反抗心もありつつ。
ZAQ 「Sparkling Daydream」みたいなのはやらないけどね、みたいな(笑)。捻くれていましたね。「OVERDRIVER」は私のルーツであり得意なHip-Hopを提示していて、アニソンに女の子ラップを入れたくてやってみたんですよ。「Seven Doors」は、私が結構同人CDを聴くのが大好きなので、榊原ゆいさんのようにメタルっぽくてかっこいいけどアニソンとしても成立するような楽曲を意識していました。片桐烈火さんとか彩音さんとか。
――毎シングルで、挑戦、挑戦、挑戦の時期でしたね。
ZAQ そうですね、10枚目の「hopeness」(2016年2月3日リリース)くらいまではそういうアプローチでした。これはAの自分、これはBの自分、これはCの自分……という感じで、ZAQってこんなに面白い人間なんだよ、とアピールしていく時期でしたね。
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