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INTERVIEW

2021.12.28

【インタビュー】自分の小さな好きを叶える場所に――活躍としても活躍する小笠原 仁が1stシングル「TURBO」リリース。自身のモチベーションや楽曲に込めた想いに迫る

【インタビュー】自分の小さな好きを叶える場所に――活躍としても活躍する小笠原 仁が1stシングル「TURBO」リリース。自身のモチベーションや楽曲に込めた想いに迫る

メディアミックスプロジェクト「from ARGONAVIS」の登場バンド・GYROAXIAのボーカリスト・旭 那由多役としても活躍する声優の小笠原 仁が、ついにソロアーティストデビューを果たした。音楽が、そして歌うことがずっと好きだったという彼が満を持してスタートさせる音楽活動。その大きなステイトメントとなるのが、1stシングル「TURBO」だ。卓越したボーカルとともに自身を深く描いたこの1枚とともに、アーティスト・小笠原 仁の姿に迫る。

“音楽が好き”というモチベーションの先にある音楽活動

――1stシングル「TURBO」によってソロアーティスト活動がいよいよ本格的に幕を開けたわけですが、アーティスト活動のお話があったのはいつ頃でしたか?

小笠原 仁 「そういうことをやりたいよね」っていう構想を聞いたのは3、4年くらい前で、お話がまとまって実際に活動の方針を決めていこうと方向性が定まっていったのは2020年の中頃から末にかけてだと記憶しています。

――3、4年前くらいからそんな話があったんですね。

小笠原 最初はうちの事務所の音楽制作の案件で、とある曲の仮歌を歌える人を探していて、そこで「もしよろしければ」って手を挙げたんですよね。もちろんそれは仮歌なので世に出ることはなかったんですが、そのデータが社長のところにいって、「いつかアーティストとしてもやってみたいね」って言われたのが3、4年くらい前だったんです。

――それはGYROAXIAで活動する以前のことですよね?

小笠原 そうですね。当時はデビューしたばかりで役もほぼもらっていなくて、キャラクターソングもやってなかった頃だった気がします。

――そうしたきっかけがあるなかで、小笠原さんの中ではアーティスト活動をやってみたいという意欲はあった?

小笠原 まだ当時は目の前のクリアしていくこととか、そもそも養成所に通っていた頃なので、次のレッスン大変だとか、来週のお仕事の台本を読み込もうとか、声優の声を当てるお芝居の仕事にぐっとフォーカスしていた時期で。社長に歌を褒めていただいて、「次に繋がればいいな」っていうぼんやりとしたものはあったんですけど、かといってアーティスト活動というイメージを明確に持っていたかというと、当時はなかったですね。

――そこから現在、アーティスト活動の中で目指すビジョンというものは生まれてきましたか?

小笠原 自分がなりたいアーティスト像や、アーティストをやるにあたっての大きな主題はまったく定まっていないです。ただアーティストデビューの話がきたときに、アーティスト業と声優業という時間を上手く分配しながら主軸を作っていくということだと思ったので、そのとき断る選択肢もあったと思うんですけど、二つ返事で「やります」って返したのは純粋に歌と音楽が好きだったからですね。

――なるほど。

小笠原 好きという原動力がいわゆる最大のモチベーションなので。さらに歌と音楽というフィールドでやらせていただけるのであればそれは喜ばしいことだし、断る手はないなと思ったので、じゃあアーティストとして始動します、曲を作りますってなったときに、意外と自分の曖昧な部分と向き合うことがあって。

――自分の最大のモチベーションだけではないものと向き合わなくてはならないと。

小笠原 表現者として、お芝居であればキャラクターだったり演じるものが存在して、自分の表現のベクトルがある程度大きな矢印が出来ているなかで自分のベストや成長した先を模索していくという感じなんですよね。ただアーティストとして音楽をやるにあたって、サウンド面や、それこそ作詞にも挑戦させていただくことになったときに、ソロアーティスト活動では最初の一手目が自分にあるんだなって。そこに気づいたときに「これではまずいな」と思い、自分の中の定まらなさや迷っている気持ちをちゃんと等身大に書いてしまおうと思って作詞したのが、6月に先行配信したのが「Only one thing」でした。

――アーティスト活動を始める想いをそのまま曲にするというのは、実にアーティスト的というか。作詞という経験はいかがでしたか?

小笠原 実際にステージ上でこれをパフォーマンスするとなったときは気恥ずかしさがやっぱりあったなって思います。さっき言ったような想いを等身大で綴ったときに、普段人と話しているときとかSNSで発信したときでもこんなに真っ直ぐに書かないだろうなって。それを書き上げてしまったとあとで気づいて。朝起きて、スッキリした頭で読むと恥ずかしい、みたいな(笑)。だからこそ嘘はないと思うんですけど、自分で改めて振り返ってみて嘘がないなって思えば思うほど、自分ってこういう考えだし、こういう感情をこれだけの大きさで持っていたんだって、ある種自分を見直すきっかけになった作詞経験だったと思います。

――そうしたなかで改めてアーティスト活動の楽しさというものが湧いてきました?

小笠原 もちろん楽しかったですけど、親が音楽好きだったので、自分も小さい頃から音楽や歌うことが好きという延長線上に、作詞活動、音楽制作活動が乗っかっていたんだなって気づきましたね。歌うのが好きなことと音楽に携わることが好きっていうのは別のベクトルなのかなと最初に思ったんですけど、これは一緒のものだなって気づいてからは結構するすると自分の意見もまとまるようになって、制作ラインに関わらせていただくことは積極的にやっていきました。スムーズに良い案が出てきたかは置いておいて、やっぱり楽しいの一念で臨んでいます!

一番楽しく一番面白い、一番気持ち良い曲

――それではほかの「TURBO」収録曲についてもお伺いします。まずは表題曲となる「TURBO」ですが、こちらは佐伯ユウスケさんとの共作となりました。

小笠原 ユウスケさんとは個人的にラインをする仲でもあったので、曲を作ることが決まったときに「どんな感じしたいかイメージある?」って聞かれて、「難易度は置いておいて、とにかく自分が今作れる一番楽しい曲一番面白いわちゃわちゃでアッパーな曲を作りたいです」と伝えたんです。もちろんそれだとあまりにもふんわりした伝え方だったので、ユウスケさんの曲や、自分がこういうイメージですっていうリファレンスっぽいのも何曲か挙げさせていただきました。ユウスケさんも経験豊富でハイセンスな方なので、「任せとけ!」ってすぐに楽曲制作に取り掛かってくださって。そうして上がってきたデモは、CDとして世に出る音源とほぼ同じものでしたね。

――それを聴いたときの小笠原さんの感想は?

小笠原 本当に素晴らしい、佐伯ユウスケさんの新曲が出たなと(笑)。ここから自分が口出せることがあるのかなって。歌詞は共作で、デモではスキャットで埋められているところも多かったので、ここはユウスケさん節に自分らしく乗っからせていただいた歌詞にしたいなと思って作詞しました。あとはやっぱり佐伯さんのボーカルと自分のボーカルって声質が違うし、佐伯さんの声質で聴いたデモが素晴らしかったとしても、これが僕の声質のボーカルになったときに崩れるバランスというものが存在するから、それを考えたときに、これは後々変えていかなきゃいけないな、と考えましたね。

――そこから2人で微調整していったと。

小笠原 基本的にボーカルRECを終えたあとに佐伯さんとのやりとりで多かったのは、色んな箇所箇所のロー感を足していくという作業でした。足したロー感の音色にこだわったりとか、ここの部分にこのパートにあったスラップベースが欲しいですとか、ブリッジの完成音源だとダブステップ調になっているのが、デモでは普通にリズムギター的なブリッジになっていたんですけど、そこをよりお祭り感を出す感じはどうでしょう、みたいな話をしながら詰めていった感じですね。

――「TURBO」は佐伯さんらしいテクニカルでアッパーな仕上がりとなりましたが、そうしたなかで小笠原さんの作詞、そしてボーカルに関してはどのように臨みましたか?

小笠原 この曲に関しては僕が作詞を担当したパートはそこまで多くはなかったんですが、要所要所ラップっぽいところは僕が担当したんです。そういう歌詞を書くときや、ボーカルRECのときに一番大事にしたことは、この曲は歌詞に意識を向けずに聴いても聴感だけで気持ち良くなれる曲にしたい、っていうところが一番大きな自分なりの曲のゴールでした。例えば外国人の方が聴いて、日本語はわからないけれど気持ち良い音のハマり方をしているなとか、常に気持ちい良いメロディのボーカルワークで動かし方をしてるなとか、歌詞の感じで言えばリリースの母音の感じとか……音楽に酔ってもらえるような、言ってしまえばストレスフリーな曲?

――ストレス、ですか。

小笠原 音楽を聴くにあたって曲に感動したり曲の意味を考えたり、聴くたびに何かしらの負荷がかかっていることは良いことだとは思うんですよね。それって音楽でもお芝居でも必要だと思うんですけど、この「TURBO」という曲に関しては、そういうものを一旦取っ払って、その先の情報を知りたい方は歌詞を読みながら聴いていただくのもいいのかなって。なので最初にボーカルを録ったときは正直歌詞がわからなくてもいいなと思っていました。

――たしかに「TURBO」のMVがYouTubeにアップされていますが、外国からのコメントもありますよね。そこは小笠原さんの狙いにフィットしているのかなと。

小笠原 とてもそれは嬉しいと思いますね。

――それが特に序盤のファンキーな要素に感じられるところで、そこからブレイクが入ってのサビで一気にハイトーンで突き抜ける辺りは小笠原さんらしいボーカルだなと。

小笠原 ああ……あそこは死ぬかと思いました(笑)。この曲はデモできたときのキーそのままで歌っていたんです。ユウスケさんからも「キーの調整はいくらでもするからね」って言われたんですけど、デモで聴いたキーが一番かっこいい現象が起きて、これは自分の頑張りでどうにかなるのならこの魅力のままで作っていきたいなと。実際ボーカルRECも難儀したんですけど、良いものができてよかったなと思います。

――サビでは楽しく気持ち良く、という狙いと共に、小笠原さんの魅力が出た仕上がりになっているかなと。

小笠原 でも、さっき外国の方が見てくださっているという話が出ましたが、は~って身が震える思いもするというか。というのもサビの歌詞は前半を僕が担当しているところがあるんですけど、聴感を重視しすぎて、若干造語っぽい英詞になっていて、これいつかつつかれるかなってビクビクしているんですよ(笑)。これも意味としても通るのかな、だからそういうツッコミがないのかな、怖いな怖いなっていう毎日を過ごしています(笑)。

――そこもまたバイブス重視と。そしてMVの話がありましたが、曲に合わせたダンスもかっこよく決まっていますね。

小笠原 ありがとうございます。ダンスはできないんですけどね(笑)

――ダンス経験はなかったんですか?

小笠原 ないです。でも僕が歌うことを好きになったきっかけって、憧れからなんですよね。B’zの稲葉浩志さんもそうですし、憧れ先行で色んなものを始めがちだなって。それでダンスでいうとマイケル・ジャクソンが好きで、僕の母がマイケルの「Thriller」「Beat It」「Bad」などのショートフィルム(MV)をVHSで持っていて、それを母親が観ているのを「かっこいいな」って思って、小さい頃母親の棚から引っ張り出して自分でも観ていたんです。なのでこういう動きでこういうリズムの取り方をしていたらかっこいいだろうな、っていう憧れだけの教科書を開いて今はやっている感じですね。だから自分で観ているとすごく拙い感じだし、こうして映像になって皆さんに喜んでもらえているのを見ると、ダンスもちゃんと形になるように自分の活動の中で磨いていけたらいいなと今は思っています。

――曲に合わせたリズムの取り方も素直にかっこいいと思いますし、今後それがダンスとして昇華されていくのも期待したくなりますね。

小笠原 音楽をやっていないとダンスなんて自分の人生に紐づけて極めることってなかなかないので、この機は逃さず新たな武器は手に入れたいですね。

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