INTERVIEW
2021.12.29
耳が聞こえず、剣も握れないほど非力な王子・ボッジと、彼の味方として付き添う暗殺集団「影の一族」の生き残り・カゲの冒険を描いた、十日草輔のマンガを原作とするファンタジー作品『王様ランキング』。2021年10月の放送開始とともに人気を集め、今や海外でも支持を広げている話題作だ。今回は、ボッジ役で初の主演を務める日向未南、そしてカゲ役を演じる村瀬 歩のメインキャスト2名による対談をセッティング。2022年1月から始まる第2クールの放送を前に、これまでの物語と見どころを振り返ってもらった。
――まずはお2人が『王様ランキング』という作品に出会ったきっかけと、作品に触れたときの印象について教えてください。
日向未南 私はまだ(アフレコ)現場にも行ったことのない頃に、今どんな作品が流行っているかを調べるために、本屋さんでピックアップされているマンガを1巻ずつ購入して色んな作品を読んでいたんです。そこで出会ったのが「王様ランキング」で、マンガとしての見せ方がすごくお上手だし、かわいらしいイラストからは想像できないようなストーリーの濃さで、そのギャップにも惹かれてノンストップで読んだ記憶があります。その1年後くらいにオーディションのお話をいただいて、運命的と言うと大げさですけど、タイミングの良さを感じました。
村瀬 歩 僕はネットの広告とかでよく見かけてはいたんですけど、オーディションを受けるまではどんな話なのかよく知らなくて、オーディションに受かってから原作を読み始めました。想像していたよりも人の思惑が渦巻いていたり、一見悪く思える人も視点を変えるとその人にとっての正義で動いていたりしていて、日常的にもそういうことはよくあるよなあと思いましたし、自分の視野をすごく刺激された作品でした。
――そのようにキャラクターの心情が丁寧に描かれているのが、本作の魅力の1つです。お2人は日向さん演じるボッジについて、どのような人物と捉えていますか?
日向 ボッジは泣く描写が多いんですけど、すごく強い子という印象があります。色んな逆境があって、城の人たちから白い目で見られていたりするなかでも、子供ながらに周りを気遣っていたり、誰かを助けたい気持ちを持っているのはすごいことだと思いますし、私にとっては憧れのような存在です。そして、何よりもかわいいですよね(笑)。マンガでもかわいいですけど、アニメではそういう表情や仕草の見せ方がより際立っている印象で、今はより一層かわいいなあっていう気持ちが強いですね。でも男の子としてのかっこ良さも持っていて、絶妙なバランスだと思います。
村瀬 ボッジは頑固だし、自分の初志を曲げないで持ち続ける強さがあって、周りの人にバカにされたり自分が挫けそうになっても、そこに立ち向かっていくところが、すごくヒロイックだと思います。普通に考えると「いや無理でしょ」となるような状況でも立ち向かう姿に、みんな胸を打たれるんじゃないかと思いますね。
――一方、村瀬さん演じるカゲはどんな人物だと思いますか。
村瀬 小さな頃はお母さんの愛情を一身に受けて天真爛漫だったけど、王国の人たちに裏切られ、散々な生活をしてきたので、基本的には心の内を閉ざしていて。でも、ボッジに出会うことで、閉ざしていたものが開いていって、ボッジのことを第一に考えるようになる。僕は第二話の「どんなときでもお前の味方でいたいんだ」というセリフが一番彼らしいのかなと思っていて。「味方」というのは、ただ優しくするだけではなくて、相手が間違えそうになったり、悩んでいるときに、その人以上に相手のことを考えて、怒ったり泣いたり喜んだりできる人だと思うんです。なので今のカゲは、ボッジの味方でいることが自分の目的であり、生きる意味でもある子っていうイメージです。
日向 カゲは社会の裏側のことも色々見てきて経験が豊富なので、賢いキャラクターという印象があります。最初の頃は簡単には他人を信じないけど、ボッジの純粋さに打たれて、どんどん壁がなくなっていくことにより、元々の天真爛漫な部分や無邪気さが出てくるので、私はそのギャップにとても癒されています(笑)。村瀬さんも、最初の頃とボッジの味方になってからで演技の仕方を変えているというお話を以前に聞いて、素敵だなあって思いました。
村瀬 ありがとう(笑)。
――演技について具体的にお話を聞きたいのですが、日向さんはボッジのかっこ良さやかわいさを表現するにあたって、どのようなことを意識しましたか?
日向 悔し泣きするシーンが多いので、それが女々しく見えないように、「悔しくてたまらない、でも成長したい!」ということを意識していました。第一話と第二話のダイダ戦でも、ドーマスに「それは王の剣ではない」と言われるまでは、ダイダを真っ直ぐに見て「やるぞ!」という気持ちでかっこ良さが出るように意識しましたし、かわいさの部分では、第一話でカゲに自分の言葉を聞き取ってもらえるのが嬉しいことを伝えるシーンで、無邪気に真っ直ぐ笑うように心がけました。
村瀬 結構前のことなのにしっかり覚えているね。
日向 第一話と第二話は本当に気合いが入っていて……もちろん今も入っていますけど(笑)、本当にいっぱいいっぱいで、自分なりにプランを立てて挑んでいたので、すごく記憶に残っています。
村瀬 初めてのことだらけだしね。
――村瀬さんは声優の先輩として、日向さんの演技を横でご覧になっていていかがでしたか?
村瀬 実は自分が初めて主役を演じたときと同じスタジオで収録していたので、そもそも色んな縁を感じていたんですけど、昔の自分も多分こういう感じで先輩に見守られていたんだろうな、っていう気持ちのほうが強くて、なんかポケーッと見ていました(笑)。
日向 いえいえ!私にとって村瀬さんの存在はすごく大きかったです。気にかけてくださっていることは伝わっていたので、もし自分が変なことをしたとしてもきっと止めてくれるはずと思って。
村瀬 カゲと一緒だ(笑)。
日向 最初の頃は「皆さんに迷惑をかけないようにしよう」という気持ちが強かったんですけど、だんだん「ああ、迷惑をかけてもいいんだ」「なら思い切りやってみよう」と思えるようになって。
――そう思えたのは村瀬さんや現場の空気感のおかげ?
日向 そうです。最初はカチンコチンだったので。
村瀬 すごかったよね(笑)。
日向 キャストの皆さんが大先輩の方々だったので、私のディレクションで何時間も待たせてしまったら……と考えると本当に怖くて(苦笑)。でも、だんだん「あれ?先輩方、優しい……!」というのがわかって、そこからは一旦自分の思った通りの演技をできるようになりました。
――村瀬さんはカゲを演じるにあたってどんなことを心がけていましたか?
村瀬 役割的に難しくて。主人公はボッジですけど、彼は言葉がしゃべれないじゃないですか。でも、カゲは(ボッジの言いたいことを)理解しているから、実質カゲがストーリーテラーとして動かなくてはいけない。そのうえ通訳もするし、自分の意見も言うし、ほかの人に対して反応もするので、やらなくてはいけないことが多い役なんです。ただ、お芝居しているときはそこをあまり意識しなくて、台本を読むときに「ここはこういう視点に寄る」ということを意識しました。
――村瀬さんのカゲの演技は絶妙で、心を閉ざしていたときの意地悪な雰囲気を残しつつ、憎めないかわいらしさがありますよね。
村瀬 ありがとうございます。でも、それは絵の力も大きいと思います。マンガだともう少し冷たい印象があるかもしれないですけど、それがアニメーションとして動くと、目がより雄弁に色んなことを語るというか、カゲというキャラクターが立体的に浮かぶので、愛嬌やかわいらしさも感じやすいのかなと思っていて。
日向 でも、変なことを言っていたら申し訳ないんですけど、村瀬さんの声は女性的とまでは言わないまでも、凜とした綺麗さがあるじゃないですか。最初の頃のカゲは刺々しさがまだ残っているんですけど、そこに村瀬さんのかわいらしい演技の要素が絶妙に合わさって、刺々しさとかわいさの絶妙なバランスが出来上がっているように感じていました。
村瀬 嬉しい。ありがとう。
日向 アニメを観ていると「ほかにこの声を出せる人がいるのかな?」って思うんです。自分でやってみてもハマらないし、ほかの方の声で想像してもハマらなくて。「もし村瀬さんがカゲを受けていなかったらどうなってたのかな?」って思うくらい、ほかの声が想像できないです。
村瀬 それこそ役との出会いというか、選んでいただいたありがたさですよね。何かのボタンのかけ違いで、みんな全然違う役をやっていた可能性もあるし。
日向 でも、私はほかの人が演じるボッジを聞いてみたいです。どんな解釈をするのか気になってしまって。一度アニメが放送されてしまったら、みんなその解釈になるじゃないですか。その前のオーディションの段階のものを見てみたかったです。
村瀬 まっさらな状態でね。そういう意味では色んなボッジを見たからなあ。
――ボッジのオーディションでは、先にカゲ役が決まっていた村瀬さんとの掛け合いがあったという話ですね。
村瀬 そうなんです。ボッジ役は最後に決めることになっていて。
――ちょっと聞いてみたいのですが、村瀬さんは色んな方が演じるボッジと掛け合いしたなかで、日向さんのボッジに光るものを感じたりしましたか?
村瀬 まず印象に残ったのが、めちゃくちゃ緊張していたんですよ(笑)。
日向 多分つついたら割れるような状態でした(笑)。私はその当時、スタジオに行った経験もほとんどなくて、ただのファンに過ぎなかったので、入ったら本物の村瀬さんがいらっしゃって、ほかにも色んな方が周りで見ていて、「えっ、ここでやるの?」という感じで緊張してしまって。
村瀬 茫然自失で本当に倒れそうな感じだったよね。だから最初は「この子、大丈夫かな?」って思ったんですけど、芝居が始まったらだんだん温まってきて、「ああ、良かった、ちゃんと動いてる」みたいな(笑)。
日向 あまりにも緊張していたので、そのとき自分がどんなことを言ったのかも、村瀬さんがどんなお芝居をされたのかも、全然記憶に残っていなくて……。
村瀬 だろうね(笑)。オーディションでは色んなキャリアの人がボッジ役を受けていて、日向さんと同じくらいの新人の子もいたんですけど、これは何が良い悪いとかではなく、日向さんと掛け合ったときに「ああ、ボッジはこういう感じなのか、なるほど」って、自分の中で腑に落ちたところがあって。その意味では印象に残っていましたね。
日向 私もその初めての掛け合いのときの記憶が欲しいです(笑)。
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