INTERVIEW
2021.09.03
2019年に結成した声優ユニット・DIALOGUE+が、待望の1stフルアルバム『DIALOGUE+1(読み:ダイアローグワン)』を9月1日(水)にリリース。アニメ主題歌に起用されたシングル曲に加え、新曲やライブですでに披露されてきた未音源化曲、さらにはデビューシングルを歌い直した「はじめてのかくめい!2021」も含む13曲収録の、盛りだくさんの1枚となっている。リスアニ!WEBでは本作のリリースを記念し、メンバーと結成当初からDIALOGUE+のプロデュースを手がける田淵智也の対談インタビューを、4回にわたってお届け。
第1弾となる今回は、内山悠里菜・稗田寧々の二人が登場し、この2年間を振り返りつつ、アルバムへの取り組みや聴きどころについても語ってもらった。
――今回は初めてのフルアルバムをリリースされるということで、作品のお話を伺う前に改めてDIALOGUE+について振り返っていきたいと思います。皆さんの初顔合わせは「はじめてのかくめい!」のレコーディングだったとのことですが、まずはその際のお互いの印象からお教えいただけますか。
内山悠里菜 私、そのときはとにかく必死だったという記憶しかなくて……与えられた曲に対して必死すぎて、周りが全然見られなかったんです。だから田淵さんの最初の記憶は「ダイアローグ+インビテーション!」のレコーディングで、田淵さん曲が流れているときにすごく体を動かしていたのをブースから見て、「楽しそう……!」と思ったっていうものです(笑)。
稗田寧々 たしかに、私もいつも見る(笑)。
田淵智也 逆に僕から見ると、そのときの内山さんは何を聞いても返ってくるのに5秒くらいかかっていたから(笑)、本当に必死だったんだろうなと感じた。でもそういうことがあるのは全然わかるから、良い音楽にするために僕は盛り立てられればと思っていて。たとえ返答に時間がかかったとしても、とにかく色々聞こう……みたいなことを心がけていた記憶はあります。
稗田 私も最初のレコーディングは、すごく緊張していました。レコーディング自体も声優になってからまだ片手で数えられるくらいの回数しか経験がなかったし、学生のときからずっと田淵さんの楽曲がすごく好きで「いつか一緒にお仕事できるように頑張ろう!」みたいな気持ちも持っていたので、お会いしてレコーディングも見てもらえることにすごく緊張して……不思議な感覚でした。
田淵 稗田さんは「音楽が好きな子」と聞いていたとおりの印象だったし、割と最初の頃からあっけらかーんと色々しゃべる子だったイメージがあります。「こんなバンド好きで」とか「こんな音楽好きで」って、聞いてもないのにいっぱい返ってきたし……。
内山 あはは(笑)。
稗田 ……あれ、ディスられてます?(笑)。でもたしかに、最初の頃からよくしゃべっていたと思います。
――それからの2年間で、お互い新しく見えたところや印象の変化はありましたか?
内山 曲について「どう歌うか」とか「どうイメージするか」みたいなお話をするなかで、田淵さんの考えがすごくポジティブなことに気づいたんですよ。しかもそれが、私が曲をもらったときの最初の考えとは違うことが多くて。ファンの方について考えるときも、「どう楽しんでもらえるか!?」みたいに全部ポジティブなんです。それを通じて「田淵さんって、こういう考え方をして曲を作っているのかな?」みたいなことをすごく考えた時期があって。そこから田淵さんに影響されて、楽曲に対しての気持ちの入れ方みたいなものが変わった時期がありました。
田淵 内山さん……歌というか、音楽好きになりましたよね?
内山 はい……(必死に涙をこらえながら)あ、泣きそう……。
稗田 ね。今私もちょっときた……。
田淵 それこそ最初必死だった人が、仕事として歌に向き合ってくれるようになっただけでもすごく安心したのに、内山さんはさらにそこから自分で好きになる努力をしてくれている。そこがすごく「良いな」と思っています。今って八人全員が、自分で考えて成長の軸を見つける時間だと思っているんですよ。上から言われたことをただなぞるだけが別に正解じゃないし、そうすることで見た目的には質の高いものができたとしても、人間としての成長に繋がらないから。でも内山さんは割と早いタイミングから、表情1つにしても「笑って歌っていなければいけないなら、鏡を見ながら歌ってみよう」みたいな努力や試行錯誤を自分でやれていた。そうやって自分で伸びしろを頑張って探そうとしていると、ある日突然ボカーン!と個性の出し方とか目立ち方が見つけられる、大きな成長の瞬間がくるはずなんです。内山さんは、その予感ができる人になりました。
稗田 私はこの2年間を通じて、田淵さんって人に対しても音楽に対してもすごく真摯に向き合う方なんだな、と感じました。ご一緒する前の普通のリスナー目線ではライブでめちゃくちゃ暴れているイメージが強かったんですけど(笑)、レコーディングやリハでは楽曲についてはもちろんユニットや芸事をする人間としてのあるべき姿とか色んなことに関して話していただきますし、私の話や質問もすごく真摯に聞いてくださるんです。
田淵 稗田さんは最初から歌が上手い子だったので、いついかなるときも音楽的な支柱として存在していてくれないと困るというポイントがすごく多くて。それってすごくプレッシャーも大きいはずなのに、そこで負けない根性のある子で良かったなと思っています。そのうえで、日々自分がやるべきことも探してくれている。そういう意味での責任感の強さは、この2年間で強く感じるようになったところですね。
稗田 あと私、この2年間で田淵さんの“音楽好き”の度合いが次元を超えている感じがしまして。田淵さんってずっと音楽のこと考えてます?お会いするたびに「こんなに音楽好きな人、見たことない!」っていうくらいの熱量を感じるんですけど……。
田淵 それは、半分合ってるけど半分違うんです。僕、自分の好きな音楽のことを考えるのはすごく得意で。自分のバンドに対してもそうですけど、考える時間って愛の総量や実際のクオリティに直結すると考えているんです。だから僕、稗田さんほど幅広く音楽好きなわけじゃないけど、好きなものに関して考える時間は多分圧倒的に長い。DIALOGUE+の八人のことを考える時間も、僕が日本で一番長いと思っています。
稗田 わー!
田淵 僕はどのファンの人たちよりも、「こういう音楽にしよう」とか「こういうふうに八人がなればいいな」と考えてきた自信がある。そうなると僕はそれを実現させるために、同時並行で音楽だけじゃなくて、それ以外のあれこれも勉強しなきゃいけなくなるんです。それもまた、“考える時間”だと思うんですよね。
――さて、『DIALOGUE+1』にはデビュー曲の再レコーディング版、「はじめてのかくめい!2021」が収録されています。内山さんと稗田さんに、この曲を改めて歌ったときのお気持ちなどをお聞きしたいのですが。
内山 私は……何よりまず「楽しかった!」と思いました。歌っているとライブで披露したときの景色が浮かんできてすごくイメージもしやすかったですし、田淵さんから「本当に、楽しそうに歌うようになったね」と言っていただけたこともすごく印象に残っていて。そう考えると最初のレコーディングのときって本当に必死だったんだなぁ……とわかりましたし、改めて「レコーディングしたあとに『楽しかった!』と思えるって、いいなぁ」と感じました。
田淵 傍から見ていてもその楽しさはすごく感じたし、内山さんは歌い方から何から明らかに変わっていた。歌い出しがソロなのも相まって、余計にその変化を感じたんですよ。2年間「音楽って楽しまないと、楽しさは人には伝わらないのだ」ということを一緒に考えながらやってきて、ステージで元気を与えられる存在になった……というところがちゃんと出た、良い歌い出しでした。
稗田 私、2年前はさっきも言ったように緊張もしていたし、「頑張って歌わなきゃ!」みたいな気持ちもあったのである意味必死ではあったんです。でも今回は、ライブで振付もやりながらずっと歌ってきた2年間の経験が、全部詰まったレコーディングにできた気がしています。
田淵 稗田さんは元々初期値が高かったんだけど、いわゆるカラオケ的な“上手い”だったんです。そこに、お客さんを見ている感じとかユニットの中での立ち位置、あとさっきも言った責任感みたいなものが備わって、歌にも出たような印象がありました。
稗田 たしかに「2021」のレコーディングのときは、お客さんはすごく見えました。それに何度もお客さんの前で披露している曲なのもあって、やっぱり最初よりも笑顔で歌っていたと思います。
田淵 その表情の違いって、僕は大きいと思っていて。レコーディング中に「笑って歌っていた」という事実って、その感情が心から出ているということだから、すごく大事なはずなんです。それもきっと、「ステージに立って人に歌を届ける」というマインドに変わってきたからなのかもしれませんね。
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