INTERVIEW
2021.07.28
アニソンボーカルユニット・Mia REGINAのニューシングル「月海の揺り籠」が、7月28日にリリースされた。TVアニメ『白い砂のアクアトープ』のEDテーマとして制作されたこの曲は、同作のOPテーマ「たゆたえ、七色」と同じく草野華余子がプロデュースを担当。草野自らが作詞・作曲を、編曲を中山真斗が手がけ、神秘的かつ美しい深海を感じさせるバラードを生み出した。今回はこの曲のリリースを記念して、Mia REGINAの霧島若歌・上花楓裏・ささかまリス子の三人と草野の対談を敢行。この曲が初顔合わせとなった両者の印象や、この曲を生み出すにあたってのそれぞれの想いやこだわりについて語ってもらった。
――Mia REGINAさんと草野さんは今回が初タッグとなります。まずはお互い、元々どういった印象をお持ちだったのかお聞きしたいのですが。
ささかまリス子 私たちにとってはLiSAさんの楽曲でも馴染みがあるお名前ですし、特に私はLiSAさんの「DOCTOR」という曲がすごく好きでよく聴いていたので、「ライブで盛り上がる曲を書かれる方だなぁ」というイメージがありました。
上花楓裏 私も、かっこいい曲を書くイメージがあって。なので今回の曲が「しっとりした曲だよ」と聞いたときには「どんな曲を書いていただけるんだろう?」と思い、曲を聴くのがとても楽しみでした。
ささかま あとは「音楽をすごく愛しているクリエイターだ」という噂を聞いていまして……。
草野華余子 いい噂だ(笑)。
霧島若歌 私も以前からお名前は存じておりまして。「いつか機会があったら、お願いできたらなぁ」という気持ちはあったんですけど、まさかこんな形で、しかもこんなに素敵な楽曲でご一緒できるとは思わなかったので、とっても嬉しいです。
草野 私はMia REGINAさんの楽曲を書かせていただくということで、今まで発売されている楽曲をすべて聴かせていただきまして。そのなかで、フルレンジでハイトーンでガーッ!と歌うようなパワー系の楽曲が多かったように感じたんです。なので最初はアニメサイドの皆さんの発注と合わせて、「この『かっこいいお姉ちゃんたち』にどんな曲をあてればいいんだろう?」というところはすごくドキドキしながら考えていました。
――そんななか、今回特に意識したことはなんでしたか?
草野 1つキーワードがあるとするならば、“大人感”。皆さんそれぞれキャリアもあって、比較的ボーカルグループとしての像も完成しているように感じたので、「普段は声を張ってかっこ良く振る舞っているお姉さんグループの三人がダウナーな楽曲を歌ったらこういうふうになる」というところで整合性を取れればと思いました。
――草野さんは『白い砂のアクアトープ』のオープニング・エンディングともにプロデュースされています。エンディングである「月海の揺り籠」に関しては、どういった要素を込めたいというお気持ちがありましたか?
草野 オープニングを“太陽”、エンディングを“月”にして明確に対比させたいという想いも持ちつつ、特にエンディングでは葛藤に疲れた主人公の女の子たちを癒せるような楽曲にしようと心がけました。2曲で編曲の方のバランスを見たり共通のキーワードを入れられたりと、2曲ともやらせていただくからこそ、対になっているものを作れたように思います。
――その“月”をはじめとするイメージは、Mia REGINAの皆さんに直接伝えられたんでしょうか?
草野 そうですね。一人あたり2時間ずつディレクションさせていただくなかで、「主人公のこういう状態のシーンを描きたいから、そんなに元気に歌わないで」ということなどを話させていただいて。そのなかで、それぞれの対応力の素晴らしさを感じました。
――逆にMia REGINAの皆さんは、楽曲を受け取ったときにどんなイメージが浮かびましたか?
ささかま 『白い砂のアクアトープ』の絵を先に見てはいたので、本当に美しい描写そのままの楽曲だなと思って。ED感もすごく納得できましたね。楽曲の中で描かれている水深と心がリンクしているところも、素敵だなと感じました。
霧島 事前に「オープニングと対になるような楽曲にしたい」というお話や、夢を諦めてしまったキャラクターの陰の部分も描いた曲だと聞いていたので、「鬱々とした感じになるのかな?」という想像もしていたんですよ。でも実際いただいた楽曲には、落ち込んだところを優しく包み込むような暖かさみたいなものがすごく感じられて。月明かりの優しさや月が変わらず見守ってくれているような印象を、うまく表現できるよう頑張ろうと決めました。
上花 私も、まさに“深海”という感じがしました。そこから歌ううえで歌詞を改めて読み込んで、色々とイメージを膨らませていったように思います。
草野 皆さんが言ってくださっている“深海”っていうのは、まさにキーワードで。悩んでいるときに無理やり海面で息をしようとして、上に上がろうとバタ足をしてもどんどん辛くなっていくだけなんです。私自身もすごく落ち込んで、人生で一度だけ音楽を辞めようと思ったときがあって、そのとき「頑張れ」と言われることの苦しさや辛さも感じましたし、「一度休みたい」という気持ちになってからもう一度立ち上がれるようになるまで、風の行方や波のゆらぎ、心の声に身を委ねる時間も人生には必要なんだな、と思ったんです。
――ご自身の経験も反映された部分があるというか。
草野 はい。『白い砂のアクアトープ』も、主人公がアイドルを辞めて、直感で沖縄に行っちゃって、流れ着いた水族館で色々な出会いがあったり事件が起こったり……という作品なので、監督や制作チームの方々との最初の打ち合わせの中で「私は『夢を諦めたっていい、夢や目標は人生の中で変わっていっていいんだよ』ということを歌っていきたいんです」と伝えたら、「ぜひそれを書いてください!」とおっしゃってくださったんです。それで、「海の底で一度ゆっくり、また泳ぎたくなる日までは休んでいていいんじゃない?」みたいな優しさや、何もかも失くしてしまった人が聴いても救いのある曲にしたいと思いました。なので、Mia REGINAさんのアーティスト像とアニメの制作チームの皆さん想い、そして自分のコアの部分が1本の線で繋がった瞬間に作れた曲のように感じています。
――そういった想いも反映した言葉であり、サウンドをもつ楽曲になった。
草野 そうなんです。ただ、今回監督からいただいた“深海”というイメージって、私が表現しようとするとどうしてもピアノメインのものになってしまいそうに感じて。そこでまず、メロディラインと伴奏のコードをシンプルに鍵盤で組んだものを、編曲の中山真斗さんに送らせてもらいました。ただ、以前ARCANA PROJECTさんの「天運ヘキサグラム」という楽曲でタッグを組んだとき、作曲した意図を「こうしたい」と事細かに伝えて作らせてもらったので、今回は逆に、全部彼に委ねました。「深い海の底を月明かりでたゆたいながら、どこに辿り着くかもわからないけど今はただ眠っている」というイメージだけを伝えたんです。そうしたら、大きな指針としては変えてほしいところは何もない、最高のアレンジを上げてきてくださいました。
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