- ClariSの歴史を振り返るにあたり、ひとつだけリスアニ!だけが語れるエピソードがある。そう、ClariS前夜、アリス☆クララ時代の出来事だ。
2009年10月、時代はニコニコ動画に初音ミク関連の楽曲が多数アップされ、supercellのryoやkz(livetune)など、現在のアニメ・シーンで活躍する音楽クリエイターが頭角を現していた頃。
当時中学1年生だったアリス☆クララはひっそりと、「ブラック★ロックシューター」「アメフリ」などの人気曲を「歌ってみた」動画にアップしていた。
まだまだ幼さを残す声ながら、少し背伸びして大人っぽく歌唱している点が実に初々しい。そのティーンエイジャー特有の真っすぐさ、純粋さに心惹かれた我々は、2010年4月に向け創刊準備中だった雑誌「リスアニ!Vol.01」の付録CDに、彼女たちを起用しようと考えたのだった。
楽曲制作は、当時から親交のあったkz(livetune)にお願いすることにした。アリス☆クララも「アメフリ」「ファインダー」を歌っており、彼の曲が大好きだとは、事前に本人たちからも聞いていた。
そうして出来上がったのが、「DROP」。「北海道の春」をテーマにしたキラキラサウンドと、まだ吐く息が白くなる「春の寒さ」をイメージしたエアリィな歌唱が、アリス☆クララの透明で純真な魅力を倍増させた。
- 「DROP」の完成度に想像以上の感銘を受けた我々は、続けて2010年7月の「リスアニ!Vol.02」にも、同じ座組みでCDをつけることにした。
「君の夢を見よう」は、切なく淡い恋心を描いたkz(livetune)渾身のバラード。インタビューでクララが「まだ経験したことのないような恋の歌ですけど、歌詞の切なさはすごく感じました」と語ったことが、微笑ましく思い出される。また、この曲のレコーディングで我々リスアニ!は、初めて実物のアリスとクララと会うことができた。
2010年の3月、今からちょうど5年前の札幌に飛び、某プロユースのレコーディングスタジオを訪れたとき、アリスとクララはロビーのデスクで春休みの宿題に励んでいた。「ああ、本当に中学生だったんですね!」「国語のドリル、手伝いましょうか?」が、我々編集部とふたりの最初の会話だったのである(笑)。
さて、このように「リスアニ!」付録CD企画を実施していた裏で、もうひとつ、大きな出来事が水面下で進行していた。そう、アリス☆クララのメジャーデビュー、つまりはClariS誕生の話である。
この件に関しては動き出しは早かった。
「DROP」を機にアリス☆クララの存在を知ったアニプレックスのプロデューサーから、さっそく打診があったからだ。TVアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のプロデューサーは、「劇中のヒロインである妹=高坂桐乃が女子中学生であり、アリス☆クララも現役の中学生だったことにまずピン! ときた」と当時のインタビューで語っている。これはアリスもクララも編集部の人間も誰もが願ってもいなかった、完全に想像を超えた展開だった。
しかし考えてみれば、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のEDテーマは“ニコニコ動画を通じた公募”という、斬新な取り組みが行われていた(結果的にやしきん、yamazoなど現在も活躍するクリエイターを多数発掘)。だから同じくニコニコ動画出身であるアリス☆クララがOPテーマを担当することも、ある意味自然な流れだったのだ。プロデューサーの耳を惹きつけた彼女たちの歌唱力もさることながら、時代も、ふたりの追い風になっていたのである。
2010年10月、アリス☆クララはClariSと名を改め、TVアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のOPテーマ「irony」でメジャーデビューを果たす。
そして現在へと繋がる、快進撃が始まるのである。
次週に続く…