TEXT BY 永堀アツオ
DISH//が手がけたTVアニメ『逃げ上手の若君』のオープニングテーマ「プランA」がアニメファンの間で作品との親和性が高いと話題になっている。
映画「東京リベンジャーズ」シリーズの花垣武道役をはじめ、俳優としても活躍する北村匠海(vo、g)、矢部昌暉(g、cho)、橘 柊生(key、DJ)、泉 大智(ds)からなるDISH//は2011年に結成された4人組ロックバンド。TVアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のEDテーマ「I Can Hear」「FLAME」をはじめ、『銀魂 銀ノ魂篇』のOPテーマ「勝手にMY SOUL」や『僕のヒーローアカデミア』第5期OPテーマ「No.1」など、特にジャンプ作品のアニメソングを数多く手がけてきている。
今回の『逃げ上手の若君』も『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征が描く、「週刊少年ジャンプ」で大人気連載中の歴史スペクタクル漫画で、鎌倉幕府滅亡から始まる一人の少年の物語となっている。
物語の舞台となるのは西暦1333年の日本。武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利高氏(後の尊氏)の謀反によって滅亡する。全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた鎌倉幕府の正統後継者である北条時行は、神を名乗る神官の諏訪頼重の手引きで燃え落ちる鎌倉を脱出。逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく。「戦って」「死ぬ」ことこそが武士の誉れとされた時代において、敵から「逃げて」「生きる」ことで英雄となった時行の生涯を、史実をもとに描く。果たして、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。
楽曲について、泉は「和のテイストをかなり入れ込んだジャパニーズロックを意識しました」と語り、北村は「逃げる事が最善の瞬間もある。最善であることが物事への戦い方として1番かっこいいんじゃないかと思うんです。そんなプランAがあって良いと思って作りました。楽しんで欲しいです」と続けている。
改めて、楽曲のクレジットを見ると、作詞が北村、作曲がDISH//とメンバー全員が制作に携わっていることが分かる。サウンドは4つ打ちのダンスロックとニューウェーブと祭囃子が混ざり合った、泉が言うとおりの“ジャパニーズロック”となっており、戦の出陣の合図を鳴らす法螺貝やドラなどの楽器のほか、侍たちが士気を上げる鬨の声のような“ウォーウォーオー”という雄叫びや、馬を走らせる時のような“ハッ、ハッ、ハッ”というコーラスも入っている。この遊び心は、おそらくサウンドメイクの中核を担っている橘と泉の二人によるものだろう。
そして、作詞を手がけた北村が「オープニングということは、始まりなので作品の全体像や登場人物みんなのことを思いながら、自分も仲間の一人になったような気持ちで歌詞を書いていきました。僕ら的にはぴったりな曲ができたんじゃないかなと思います」と語っていたように、アニメに寄り添った歌詞が展開されている。
現在、YouTubeにアップされているミュージックビデオのコメント欄には、歌詞についての考察が溢れている。ここからは作品のストーリーを追いながら、歌詞を紐解いていこう。
まず、“アロマチックな歴史通り ドラマチックな教科書通り”という歌い出しは、北条時行は香しい歴史の中に実際に生きていた人物であることが、“教科書”という現代の言葉を意図的に使って表現されている。“いけない。いけない。踊れない日々です。”では、教科書に綴られている華々しい顛末以外にも、歴史上の人々は我々が知りえない踊れないような日々を過ごしている、ということが描かれている。
続くBメロの“結末はやるかやられるか運命通り”というのは、時行の物語は史実を基に描かれているため“運命通り”にしか進まない。ただ、マンガだからこそ“抗い、歌い、走り出す”こともできるのだ。“ダメージなんかへっちゃらか 楽しんでいるのさ 充実感と理想現実を”は、アニメ第1話の「生きる悦びにときめいた」という時行のセリフや、第2話での諏訪頼重による時行評「一歩間違えば致命傷 捕まれば即死 そんな窮地を心の底から楽しめる生存本能の怪物」という言葉とシンクロしていた。“ダッとガッと 掴みに行くのさ”は、脱兎(ダッと)のごとく逃げながら、天下を掴みに行く(ガッと)という時行の強い意志が描かれているのではないかと思う。
そして、サビの“プランAだろ 迷いないだろ 晴れた色々 背中を預けた貴方と僕の滑走路”。このフレーズは、第2話で初めて仲間と共に戦ったシーンが由来になっていると北村本人が語っている。続く“プランAだろ 迷いないだろ 生きてこそだろ”では、時行の生き様を描くとともに、現代に生きる我々へのメッセージが込められている。“逃げが勝ち”であり、“逃げて勝ち”なのである。
ここで気になるのは、サビにも多く使われている「プランA」である。果たしてどんな意味があるのか。一部からは、北村が歌う「プランA」が「run away(逃げろ)」に聞こえる、さらには「Alive(生きる)」の頭文字なのでは、などと多くの考察がなされており、一見シンプルなタイトルには色々なギミックが盛り込まれていることが推察される。
北村は「逃げる事が最善の瞬間もある。最善であることが物事への戦い方として1番かっこいいんじゃないかと思うんです。そんなプランAがあって良いと思って作りました」というコメントを寄せている。アニメでもオマージュされた某ロールプレイングゲーム風の選択画面では、「たたかう」「じゅもん」「にげる」「どうぐ」というコマンドが現れる。これを鎌倉~南北朝時代の武士に置き換えると、プランAが「たたかう」で、プランBが「にげる」になるだろう。しかし、「嫌な事からは正々堂々逃げるのが我々の血筋さ」と時行の兄・邦時が語ったように、頼重が「逃げ上手で仇を討て」「鬼ごっこで天下を取り返せ」と促すように、DISH//も第一の選択肢であるプランAが「にげる」でも良いのだと背中を押している。
時行を主君とする郎党“逃若党(ちょうじゃとう)”の1人である巫女の雫が「(時行は)心に決めた大事な事からは決して逃げない」と時行を評しているが、本当に譲れない大事な目的を達成するために、時には逃げることが重要にもなってくる。それは、現代の私たちの胸にも響く共通のメッセージでもあるのだ。
かつて北村は、ライブで「生きるのは辛いし、大変だけど、やっぱり生きるって最高ですよ。明日があるって最高です。生きるって素敵なことだと思います」と語っていたことがあった。辛かったり、苦しかったり、どうしようもなくなった時は、逃げてもいい。「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乱世を乗り越えていく時行の生き様は、DISH//の姿勢とも重なる最大のメッセージなのではないだろうか。敵から逃げることで英雄となっていく時行の行く末はもちろん、逃げることを知っている彼らがロックバンドしてヒーローになっていくストーリーを世界中のアニメファン、音楽ファンと共有していきたいと思う。
●配信情報
「プランA」
配信中
配信はこちら
https://dish.lnk.to/Plan_A
●リリース情報
「プランA」
9月4日発売
【初回生産限定盤/CD+Blu-ray+ブックレット】
品番:SRCL-12940~1294
価格:¥9,900(税込)
【通常盤/CD】
品番:SRCL-12942
価格:¥1,000(税込)
【期間生産限定盤/CD+Blu-ray】
品番:SRCL-12943~12944
価格:¥2,200(税込)
<CD>
M1. プランA
作詞:北村匠海 作曲:DISH// 編曲:新井弘毅
ほか
<Blu-ray/初回生産限定盤>
「DISH// HALL TOUR 2023 “TRIANGLE”」
2023年6月29日(木)東京ガーデンシアター公演
M1.沈丁花
M2.No.1
M3.FLAME
M4.B-BOY
M5.マチネソワレ
M6.スパゲッティ
M7.缶ビール
M8.ブラックコーヒー
M9.五明後日
M10.猫
M11.エンドロールは悲しくない
M12.キット
M13.KICK-START
M14.揺れてゆく
M15.FLY
M16.勝手にMY SOUL
M17.JUMPer
M18.万々歳
M19.SAUNA SONG
M20.ウェディングソング
M21.愛の導火線
M22.真っ白
<Blu-ray/期間生産限定盤>
01. TVアニメ「逃げ上手の若君」ノンクレジットオープニングムービー
02. 「プランA」 Music Video
03. 「プランA」 MAKING of the Video
●ライブ情報
『DISH// ARENA TOUR 2024-2025』
【東京】有明アリーナ
2024年11月30日(土)開場15:30/開演17:00
2024年12月1日(日)開場14:30/開演16:00
公演に関するお問い合わせ:DISK GARAGE(https://info.diskgarage.com/)
【大阪】大阪城ホール
2025年1月8日(水)開場17:30/開演18:30
2025年1月9日(木)開場17:30/開演18:30
公演に関するお問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888 11:00〜18:00(日曜・祝日は休業)
<チケット料金>
指定席/着席指定席/着席皿ファミリー//席 9,800円(税込)
※小学生以下は保護者(高校1年生以上)同伴に限り入場可能。
●作品情報
TVアニメ『逃げ上手の若君』
©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
放送中
【スタッフ】
原作:松井優征(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:山﨑雄太
シリーズ構成:冨田頼子
キャラクターデザイン・総作画監督:西谷泰史
副監督:川上雄介
プロップデザイン:よごいぬ
サブキャラクターデザイン:高橋沙妃
色彩設計:中島和子
美術監督:小島あゆみ
美術設定:taracod/takao
建築考証:鴎 利一
タイポグラフィ:濱 祐斗
特殊効果:入佐芽詠美
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:有沢包三/宮地克明
編集:平木大輔
音響監督:藤田亜紀子
音楽:GEMBI/立山秋航
音響効果:三井友和
制作:CloverWorks
【キャスト】
北条時行: 結川あさき
雫: 矢野妃菜喜
弧次郎: 日野まり
亜也子: 鈴代紗弓
風間玄蕃: 悠木 碧
吹雪: 戸谷菊之介
諏訪頼重: 中村悠一
足利尊氏: 小西克幸
<イントロダクション>
少年は逃げて英雄となる―――
鎌倉幕府滅亡から始まる一人の少年の物語
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征が描く、「週刊少年ジャンプ」で大人気連載中の歴史スペクタクル漫画がついにアニメ化!
鎌倉幕府滅亡の後、北条家の生き残り・北条時行が動乱の世を駆け抜ける!アニメーション制作は『ぼっち・ざ・ろっく!』などを手掛ける「CloverWorks」が担当、監督は『ワンダーエッグ・プライオリティ』で副監督を務めた山﨑雄太、シリーズ構成に『その着せ替え人形は恋をする』の冨田頼子、キャラクターデザインに『劇場版ポケットモンスター ココ』で総作画監督を務めた西谷泰史など奇才たちが集結し、美麗かつ迫力の映像で歴史の一片を紡ぐ!
<プロローグ>
時は西暦1333年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利高氏の謀反によって滅亡する。全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる鎌倉を脱出するのだった……。逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。
英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。
DISH// 公式サイト
https://dish-web.com/
DISH// 公式X
https://x.com/dish_info
DISH// 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/dishSMEJ
TVアニメ『逃げ上手の若君』公式サイト
https://nigewaka.run
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