キュートなルックス、圧倒的な歌声の魅力。「空は高く風は歌う」「Overfly」「アイヲウタエ」などを収録した春奈るなの1stアルバム。

雑誌『KERA』の人気読者モデル出身であり、第4回『全日本アニソングランプリ』ファイナリスト。美しさと実力を兼ね備えたシンガー、春奈るな。

2012年5月、梶浦由記が作詞、作曲を手がけたTVアニメ『Fate/Zero』2ndシーズンのEDテーマ「空は高く風は歌う」にてメジャーデビューを果たし、『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編のEDテーマ「Overfly」、「アイヲウタエ」（TVアニメ『〈物語〉シリーズセカンドシーズン』EDテーマ）と立て続けにシングルをリリース。

これらヒット曲を収録した1stアルバムが『OVERSKY』。デビュー前に『リスアニ！』誌上で発表されたプレデビュー曲「微熱の月」も収められており、彼女の歌声の変化も感じられる。小柄な体からは想像できないほどの豊かな歌声があふれんばかりに響いてくるアルバムだ。

「空は高く風は歌う」

TVアニメ『Fate/Zero』2ndシーズンのEDテーマとなったデビュー曲は、TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のEDテーマが大好きだったという春奈るなにとって憧れのアーティスト、梶浦由記が作詞、作曲を手がけている。森空青によるアレンジも梶浦サウンドらしさが漂う雄大なものとなっている。

ハイレゾでは、スケールを増した空間が広がり、ヴォーカルを囲むように楽器が並んでいる。荘厳なストリングスやアクセントとなる瞬発力のあるビート、ハープシコードのような煌びやかな音色も印象的だ。重心はやや低め、滑らかなヴォーカルは耳元に近く濃厚に響く。語尾にも感じられるKalafinaのような抑揚の付け方もよく伝わり、落ち着いた雰囲気を保ちつつも、秘めた力強さを表わすサビの歌唱に圧倒される。

音像はクリアでサビ部分のコーラスの美しさが却って、物語の悲哀を描いているよう。広大な空間から一転、ヴォーカルも消え、残るピアノで閉じられるエンディングは、音の静けさが孤独と終焉のイメージを巧みに演出している。

「Overfly」

『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編のEDテーマとなる2ndシングル。作詞・作曲・編曲を担当したSakuは、今作収録の「Clumsydays」「狂想リフレイン」、また2ndアルバム『Candy Lips』に収められている『ソードアート・オンラインII 』ファントム・バレット編のEDテーマ「Startear」も手がけている。

ハイレゾでは機敏なドラミングとベースラインが曲の躍動感を増しており、リズム隊が前に浮かび上がってくるよう。中低域は増しているが、もたつかずしゃきっとしたスピード感。芯のあるリズムを持続させ、サビにて一気に解放させる展開が見事だ。

ダイナミクスを生かしつつ程よいコンプレッションも効かせたメリハリのあるサウンドと仕上がっている。「空は高く風は歌う」と比べると、ヴォーカルの重心は高めでしなやか。力強さと儚さが交差する巧みなニュアンスがしっかりと伝わってくる“高く高く”のどこまでも伸びる歌声が美しい。

「アイヲウタエ」

TVアニメ『〈物語〉シリーズセカンドシーズン』「猫物語（白）」「傾物語」のEDテーマ。作詞・作曲・編曲は、人気クリエイターのじん（自然の敵P）。まさに物語の語り部が〈物語〉を語るというコラボレーションは、期待以上の好内容で、躍動感が弾けるロックが清々しい仕上がりとなっている。

ハイレゾでのポイントは「勢い」。無茶とか無防備とかお構いなしに駆け抜ける青春の衝動を表わすイントロの荒々しいギターから、その勢いのよさが伝わってる。それぞれのパートの分離感もよく、颯爽としたサウンドが疾走を続ける。タイトなドラムのキレも心地よい。それらとは一見対照的な、中西亮輔のアレンジによる流麗なストリングスもギターに呼応しながらともに物語の世界観を描いており、そのスリリングな展開がひときわ鮮やかだ。

ヴォーカルは等身大の春奈るなを映し出しており、活き活きとした表情が伝わってくる。しっとりとした歌唱のイメージが強い春奈るなだが、ポップなサウンドとも歌声の相性は抜群で、ヴォーカリストとしての引き出しの多さが窺える。

春奈るなが作詞を手がけた柔らかなポップス「ぼくというきみへ」、キュートでミステリアスな雰囲気のナンバー「狂想リフレイン」、幻想世界にヘヴィなリフが炸裂する「終焉の魔法、終天の真意」、名バラッド「暁が過ぎるまで」など、シングルだけでは収まりきらない春奈るなの魅力がたっぷりと詰まった今作。彼女のみずみずしい歌声をハイレゾはダイレクトに伝えてくれる。