Aimerの9枚目となるシングル「ninelie EP」。タイトル曲の「ninelie(ナインリィ)」は、2016年4月よりフジテレビ “ノイタミナ” 枠にて放送された『甲鉄城のカバネリ』のエンディングテーマに使用され、この作品の劇伴を手がける澤野弘之がカップリング曲「Through My Blood <AM>」とともに作曲・編曲、プロデュースを務めている。Aimerと澤野弘之とのコラボーレションは、『機動戦士ガンダムUC』の「RE:I AM」「StarRingChild」に続いて3度目。期待に違わず壮大な世界が広がるサウンドに仕上がっている。
『甲鉄城のカバネリ』のオープニングテーマ「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」を担当するEGOISTから、Aimerともかねてから親交のあるヴォーカリスト、chellyがゲストヴォーカルとして参加している。静かな歌声とサウンドが形作る音の繭が次第に膨らみ、やがて羽化するような……緩やかに壮大な翼を広げる、澤野弘之らしいダイナミックさに魅了される。
この曲のCDとハイレゾとの違いを簡単に簡単に表わすとしたら、それはスケール感。靄がかかる中に残響が揺らめぐイントロ部分は、音響を構成する粒子の密度が高く感じる解像度。そして、その音の靄がもっと奥に、その後に繰り返されるピアノの音がより手前に聴こえてくるのがハイレゾの方。振りかざされるドラムスティックの宙をよぎる幅も広く、神秘的なAimerの世界を作り上げる精緻な音と深い空間が印象的だ。
広がったダイナミクスレンジが声量の微細な強弱を捉えており、抑揚が繊細に伝わってくる。語頭や語尾、ブレスに疲弊感を漂わせつつも、想いを届けずにはいられない、力を振り絞って歌っている姿が、ハイレゾでは感じられる。ミニマルなフレーズと共に声が微熱を帯び、chellyの歌声が支えるように寄り添うように加わり、ヴォーカルがひとつの奔流となって溢れ出す雄大なサビの熱量の高さが圧巻。
こちらも澤野弘之作曲・編曲によるカップリングナンバーで、トライバルさを内包したビートとラウドなギターによる『甲鉄城のカバネリ』の世界観をも投影したヘヴィネスなサウンドが轟く。澤野作品でもおなじみのドラム:山内 優、ベース:田辺トシノ、ギター:飯室 博、ギター&チェロ:伊藤ハルトシのメンバーにキーボードの澤野弘之が演奏に加わる。
音圧の強さで迫力がすぐさま感じ取れるのはCDの方だが、定位が立体的になり、空間の距離感が何処となく映像的なイメージを喚起させるハイレゾ。重いドラムは打撃力が深く、もったりと土着的な質感。またギターの輪郭は鋭く、音世界に引き込まれる強烈な響き。荒々しい息吹がなおいっそう暴れているといった感じだろうか。ヴォーカルは音の渦に呑み込まれず、その獰猛なサウンドを飼いならしているような余裕の歌声が前に出る。英語詞の歌唱だけにオルタナゴシックやシンフォニック系にも近づくようなタフなヴォーカルが魅力的だ。
「ninelie」「Through My Blood <AM> 」の重厚なサウンドから一転、青春ドラマのエンディングテーマを思わせる爽やかなミディアム・ポップスは、作曲・編曲が飛内将大、プロデュース・編曲が玉井健二と、Aimer作品でもおなじみagehaspringsのクリエイターが手がけている。
定位良く音が整理され、より明快な印象をもたらすハイレゾ。じゅわっとしたギターの音のにじみや、右サイドのピアノの輝きにもリアルさが増した分離感と解像感。この曲も音の強弱の違いがより伝わり、シンプルなサウンドで始まる2番目の途中から入ってくるドラムのアクセントやピアノのフレーズにも活き活きとした様子が感じられる。そして充実した低域がAimerのハスキーなヴォーカルにふくよかな艶を与える。いつになく明るい表情はリズミカルなサウンドに弾むように感じられる。
Sony Music Labels Inc.
2016.05.11FLAC 96kHz/24bit
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1.ninelie / Aimer with chelly (EGOIST)
Lyrics & Music & Arrangement by HIROYUKI SAWANO
2.Through My Blood <AM> / Aimer
Lyrics by cAnON. Music & Arrangement by HIROYUKI SAWANO
3.スピカ / Aimer
Lyrics by aimerrhythm Music by MASAHIRO TOBINAI
Arrangement by KENJI TAMAI, MASAHIRO TOBINAI
4.ninelie (TV size) / Aimer with chelly (EGOIST)
5.ninelie (instrumental)
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