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REVIEW&COLUMN

2017.11.22

ASCA「KOE」レビュー

ASCA「KOE」レビュー

TVアニメ『Fate/Apocrypha』2ndクールEDテーマは、この曲でメジャー・デビューを飾るASCAが担当。揺るぎない存在感とエモーショナルな歌声が放つ迫力に圧倒される。

 

9月30日より2ndクールの放送が始まり、物語は佳境を迎えているTVアニメ『Fate/Apocrypha』

2ndクールのEDテーマ「KOE」を歌っているのは、シンガー・大倉明日香のソロ・プロジェクト、ASCA(アスカ)。第5回「全日本アニソングランプリ」にて1万組以上の出場者の中からファイナリストに選ばれた大倉は、2013年、TVアニメ『さくら荘のペットな彼女』2ndクールのEDテーマ「Prime number~君と出会える日~」を発表。2016年にはミニ・アルバム『デイズ』をiTuensにて限定配信、そして、2017年、ASCAとしての活動をスタートした。「リスアニ!」Vol.30の付録CDに収録されたプレ・デビュー・ソング「RUST」を経て、この「KOE」でメジャー・デビューを飾った。デビュー・シングルとなる「KOE」には表題曲のほか、「リインカネーション」「最低な朝と名付けたのは」を収録している。

「KOE」

春奈るなや藍井エイル、trysail、瀧川ありさらの楽曲で知られるSakuが手がけたこの曲は、優雅でクラシカルなストリングスと激しさを秘めたバンドサウンドとの、ダイナミックなアンサンブルで構成されている。相対する要素をかけ合せることがサウンドのテーマになっているようで、深く刻むように奏でるストリングスに絡む電子音や、荒々しくかき鳴らすエレキギターと叙情的なアコースティックギターの音色が空間を二分するように響くパートなど、それぞれの音が拮抗しながらもまた互いに呼び合ってるような、不思議な緊張感がある。それらは複雑に絡み合いながら刻々と変化を続け、一気に視界が開けるように鮮やかな展開を迎える。絶妙な均衡を保ちながら楽曲に幾つも見せ場を盛り込んだSakuのセンスが巧みである。

ハイレゾは分離感が強く、それぞれ楽器の音が明瞭に伝わってくる。音のキレもよく、エネルギッシュなサウンドへと没入するような感覚がある。ドラマチックなメロディーに乗り、心の機微を映し出すボーカルは、儚く消えてしまいそうな出だしのニュアンスから芯の強さを前に押し出したサビの抑揚まで、声のグラデーションも深い。後半に差し込まれた〈いらないよ いらないよ〉から始まるフレーズの、あきらめにも似たけだるげな気持ちが、でもやはりあきらめきれない方へとぐっと持ち上がってくる様子や、サウンドと一体化する終盤のエモーショナルな歌唱、そして、そこへ折り重なるように言葉を続け、あえて感情の軸を元に戻して幕を閉じる潔さなど、テクニックに裏付けられたボーカルの表現力が素晴らしい。歌声の熱量をダイレクトに届ける、ハイレゾの豊かな情報量が感じられる。

「リインカネーション」

作詞・作曲・編曲は、ClariSや西沢幸奏、ナノ、沼倉愛美らへ楽曲提供を行っている重永亮介。ASCAの誌上デビュー曲「RUST」も手がけている重永だが、ここでは楽曲のもつ世界観を壮大なスケールで写しとり、重厚なサウンドを構築している。ストリングスをバンドサウンドに重ねながらも、「KOE」とはまた違ったアプローチをとっており、よりシンフォニックな仕上がりだ。また〈無重力の空が手招く〉〈感情のホログラム〉といった言葉が楽曲に深い奥行きを与えており、「物語」をイメージさせるアレンジや展開と相まって、SFファンタジー作品のED主題歌といった趣さえ感じさせる。

全体的に重々しい雰囲気が立ち込めているが、その支配を打ち破るかのようにボーカルは鋭く力強い。渦巻く不安や恐れから〈飛び出して〉のフレーズが突き抜けるような開放感を生み出し、揺るぎない声が放つ存在感の強さに圧倒される。ミュージックビデオでは、デジタルアーティスト・watabokuによる書き下ろしイラストを使用しており、ASCAのイメージをまた別の角度から表現している。

「最低な朝と名付けたのは」

作曲・編曲は、春奈るなや藍井エイル、中島 愛らの楽曲を手がている津波幸平が担当。性急に奏でられるロックチューンに流麗なストリングスを交え、疾走感のあるサウンドを作り出した。今回のASCAの楽曲に共通する「バンドサウンド+ストリングス」という手法を用いながらも、作品や物語性を強く意識させる「KOE」「リインカネーション」とは異なる方向へとサウンドを展開。リアルな若者像へと焦点を結んだ大塚利恵による歌詞も、その舵取りを担っている。

タイトルはサビのパートから取られており、〈生まれて来るはずだった感情たち 葬った〉など、心の葛藤をあらわにする鮮烈な言葉の数々が並ぶ。鬱屈とした感情をすべてさらけ出しながら、逃げ出したくなる自分の気持ちと対峙し、もがきながらも前へと進む宣言をする、その歌詞は再生をイメージさせる「リインカネーション」と同様に、あらたなスタートを切ったASCAにも重なるようだ。写真家・新保勇樹とのコラボレーションによるミュージックビデオには、モノクロの画像にその姿が焼き付いている。

ASCA
KOE

Sony Music Labels Inc.
2017.11.21

FLAC 96kHz/24bit

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mora

 収録曲

 1.KOE
   作詞・作曲・編曲:Saku

 2.リインカネーション
   作詞・作曲・編曲:重永亮介

 3.最低な朝と名付けたのは
   作詞:大塚利恵 作曲・編曲:津波幸平

 4.KOE –Instrumental-

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