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INTERVIEW

2025.04.17

「内田雄馬の音楽は、聴いてくれたあなたが主役」――。2作同時リリースされたニューシングル「シンギュラリスト」「ハートエイク」から紐解く内田雄馬の想い。

「内田雄馬の音楽は、聴いてくれたあなたが主役」――。2作同時リリースされたニューシングル「シンギュラリスト」「ハートエイク」から紐解く内田雄馬の想い。

声優として、アーティストとして、表現を日々更新していく内田雄馬。自身が主演を務めるアニメの主題歌をそれぞれ表題に据えた、12thシングル「シンギュラリスト」(TVアニメ『クラシック★スターズOPテーマ)と13thシングル「ハートエイク」(TVアニメ『#コンパス2.0』エンディング主題歌)を同時リリース。気鋭のクリエイターと共に制作された色とりどりの5曲の新曲に加え、対バン企画『VS YUMA』のテーマソング「Chemi-story」を一挙に届けた意欲作となっている。それぞれの楽曲に込めた思いや2年ぶりのツアーについて迫る。

INTERVIEW & TEXT BY 逆井マリ

挑戦の詰まった、色とりどりの楽曲たち

──まず、今回のシングルにはどのような気持ちで向かわれたのでしょうか?

内田雄馬 ありがたいことに、どちらのシングルにもタイアップがついていて。結果「2枚で1つ」という意識で考えていったのも、自分の中では新しいチャレンジでしたね。また、「Chemi-story」以外はすべて新曲というのも、新たなチャレンジでした。「Chemi-story」を作ってくれたSHOWさん・Dirty Orangeさんたちは長くお世話になっていますが、それ以外の楽曲は、初めてご一緒する方々にお願いしていて。そういう意味でも、新しい挑戦がぎゅっと詰まった1枚になったと思っています。

──ではTVアニメ『クラシック★スターズ』(以下、『クラ★スタ』)OPテーマの「シンギュラリスト」からお伺いさせてください。Elements Gardenの上松範康さんが手掛けられたパワフルな楽曲ですね。

内田 最初に聴いたとき、この楽曲に巻き込まれていくような感覚がありました。『クラ★スタ』の劇中歌はクラシック音楽をモチーフにした楽曲ですが、、「シンギュラリスト」にも、クラシックの要素を感じさせるギミックも随所に入っていて。その発想力の豊かさに驚きましたし、限界を突破していくようなエネルギーを持った曲になっていると思いました。その分、自分としても歌いこなすための準備が必要だなと。

──内田さんの中で、どのような準備があったのでしょう?

内田 ロックがベースにありつつも、ラップも入っていてと、矢継ぎ早に変化していく曲なので、その展開にしっかり自分が乗っていくことが大事だと思いました。1つ1つの音をしっかりと掴んでいきたいなと。ただ、丁寧に歌いすぎると今度はパワーがなくなってしまうので、パッションやパワー感を失わないようにしつつ……と、技術的にもかなり難しいコントロールが必要だったので、レコーディング当日に向けて、アプローチを考えていました。でも、実際にスタジオに入って歌ってみると、意外とスムーズに進んだ感じもありましたね。歌っていると血が湧くような感覚のある曲で。きっと物理的にも、色々な筋肉を使っていたと思います(笑)。

──カップリングに収録されている「春の夜風」はtonunさん提供曲です。

内田 僕が元々tonunさんの楽曲がすごく好きでよく聴いていたんです。今回、新曲を5曲制作するにあたって、純粋に「自分が好き」という気持ちを大切にしてみてもいいのかなと思って。それでtonunさんにオファーさせていただきました。そしたら快く引き受けてくださって、本当に感謝しています。tonunさんのサウンドって、優しく包み込むような雰囲気があって、聴いている人にそっと寄り添ってくれるような楽曲が多いんですよね。特にこの「春の夜風」はそのニュアンスが存分に出ている印象です。自分がその世界観に入っていくことで、「こういう音楽もいいよね」と聴いている人とその想いを共有できたらなと。

──レコーディングの際には実際にお会いされたんですか?

内田 はい、初めてお会いしました。内田の現場では基本的にはプロデューサーがディレクションをしているんですが、tonunさんも参加してくださって。、うなずきながら見守ってくれて。やはり初対面は緊張しますが、その音楽の通りとても優しい方でした。

──そして、もう1曲のカップリング曲「Color Your Life」は明るい印象のある曲です。

内田 全体のバランスを見たときに、ポジティブなメッセージを明るくダイレクトに届けたいという気持ちがあって。それでsumeshiii a.k.a. バーチャルお寿司さんに制作していただきました。前向きで、ちょっとファンクな要素もあって。自分の人生を少し楽しくしてくれるような、そんなサウンドを目指して作りました。

──「Color Your Life」や、「ハートエイク」に収録された「アトリエ」をはじめ、今回のシングルは“色”にまつわる言葉が散らばっているようにも感じます。次の全国ツアーのタイトルは“YUMA UCHIDA LIVE TOUR 2025 アトリエ”。これは偶然なのでしょうか?

内田 「Color Your Life」はライブのテーマが見え始めた頃に制作した楽曲なんです。最後に出来た曲ということもあって、色を意識した曲になりました。一方で「アトリエ」はその前に作っていた曲で、“色”というテーマを引き出すきっかけにもなった形ですね。

──でもまさに、色々な色に彩られたシングルになっていますよね。そして、内田さん自身の色の進化もまざまざと感じさせると言いますか。特にもう1枚のシングル「ハートエイク」にそれが反映されているように感じました。

内田 ありがとうございます。「ハートエイク」はTVアニメ『#コンパス2.0』のED主題歌ということで、ボカロPのバルーンさんに楽曲制作をお願いしました。『#コンパス』では、それぞれのキャラクターに合わせてボカロPがテーマソングを手がけているという背景があって、今回のエンディングも作品サイドから「ボカロPの方にお願いしたい」というオーダーをいただいていたんです。そこで、チーム内で相談してバルーンさんにオファーをさせていただきました。

──「ハートエイク」が届いた時はどのような印象がありましたか?

内田 物語性が強くて、世界観にグッと引き込まれる力があるんですよね。だから「この世界にどう入り込むか」というのは自分の中でも大事にしたいポイントでした。実際、収録の際にはバルーンさんもスタジオに来てくださって、一緒にディレクションにも関わってくださったんです。細かなニュアンスの確認を重ねながら作り上げていきました。歌を作りつつも……どちらかというと、表現の解釈について話し合いつつ。

──歌でありつつもお芝居を固めていく感覚に近いものと言いますか。

内田 そうですね。声優として日々お芝居をするなかで「どう解釈して、どう表現するか」というのは常に考えているんですが、それにすごく近いアプローチで歌に取り組むことができました。自分にとっては一番馴染みのある手段でもあるので、そうしたアプローチで歌に向き合えたのはとてもありがたかったですし、バルーンさんが僕の表現を引き出してくださったことで、いいチャレンジができたと思っています。

──「アトリエ」もまた、攻めの1曲に感じられました。

内田 今まで自分がやってこなかったアグレッシブな曲をやってみたい、という想いから生まれた曲です。「静寂を打ち破るような、そういう衝動的なサウンドを作りたい」とお伝えして、necchiさんにお願いしました。気づかないうちに決め込んでしまっていた枠組みや常識を壊していけるような、内面にある衝動に向き合うような、そんなイメージで作っていきました。

──「アトリエ」の中に出てくる“破壊と創造”という言葉がとても印象的でした。まさに今の内田さんのモードが反映されたのかなと。

内田 今の自分にとってもすごく力をくれるパンチラインでしたね。むき出しの言葉が飛び交っていて、それがすごく自然に衝動として出てくる感覚がありました。まさに攻めの1曲と言いますか。今までの自分の音楽とはまったく違う方向だと思います。でも、声優という仕事って、本当に色々な役を演じて、色々な人の気持ちを知って、それを表現していくものなので、そのためにはやっぱり、自分の中にたくさんの“色”を取り込んでいきたいなと思っています。ただ、長く続けていると、その“色”が1つのイメージに集約されてしまうことがあるようにも感じていて……。

──確かに、良くも悪くも固定されていってしまうものがあるのかもしれませんね。

内田 そうなんですよね。もちろんそれも個性の1つではあるんですけど、そこに留まってしまうと、新しい感性や刺激がどんどん減ってしまう気がして。だからこそ、音楽でも新しい刺激に出会うこと、チャレンジを重ねることが、自分自身を広げてくれると思うんです。自分の中の知らない部分を掘り下げていくことが、人生を面白くしてくれる。そんな想いで「アトリエ」を制作しました。

──「変化を恐れない」というのも、アーティスト・内田雄馬のかっこ良さの1つのようにも感じます。

内田 ありがとうございます。変化を恐れたり、心地の良い場所に留まったりというのも人間としてわかりますし、そういう時間があってもいいと思うんです。でも時間はどんどんと過ぎていくし、時代も変わっていくじゃないですか。立ち止まっていると、気づかないうちに置いていかれることもある。逆に、自分が少しでも歩いていれば、どこかには辿り着けると思うんです。

──聴き手にとっては、内田さんの音楽活動が、“一歩を踏み出す勇気”を後押ししてくれるような存在になっていると感じます。

内田 そうあったらいいなと。生きていると、楽しいこともあればつらいこともあるじゃないですか。喜怒哀楽すべてがある中で、僕はやっぱり同じように汗水たらして生きている人間の1人として、そこに寄り添える音楽を届けたいと思っているんです。キラキラした世界観の音楽も素敵ですけど、自分が音楽をやるのであれば、現実に生きる人たちの力になる表現を届けていきたいなと。様々な気持ちの中で、様々な状況の人に寄り添えるような、そんな音楽を届けていきたいと思っています。

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