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REPORT

2025.04.05

守乃まも&神聖かまってちゃんのロックンロールは鳴りやまないっ!対バンツアー“魔物大戦 vol.2”東京公演ライブレポート

守乃まも&神聖かまってちゃんのロックンロールは鳴りやまないっ!対バンツアー“魔物大戦 vol.2”東京公演ライブレポート

守乃まも主催ライブ“魔物大戦 vol.2”東名阪ツアーの最終公演が、3月24日に東京・LIQUIDROOMで開催された。2023年に舞台『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』の主人公・後藤ひとり役を務めて脚光を浴び、2024年よりアーティスト活動を本格化させた守乃まも。同舞台でも披露したギターの腕前はもちろんのこと、作詞・作曲やジャケットなどのアートワークも自らこなす彼女だが、その音楽の根幹にあるのは“バンド”であり、“守乃まも”という名前も実は彼女自身のことを指すだけでなく、彼女を中心としたバンド名でもある。そんな守乃まもの音楽観に多大な影響を与えたバンド・神聖かまってちゃんとの初対バンが実現した本公演。バンドという名の2匹の魔物が暴れ倒す、ライブハウスならではの熱気と興奮に包まれた一夜となった。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY ATSUSHI

衝動と衝動のぶつかり合い!神聖かまってちゃんのライブ

2024年3月に行われた前回の主催ライブ“魔物大戦 vol.1”は、『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するライブハウス・STARRYのモデルになったことで知られる聖地・下北沢SHELTERで行われたが、今回は同会場よりもキャパ的にかなり大きいLIQUIDROOMでの開催。しかしながらフロアは立錐の余地も無いほどの観客で賑わっており、改めて注目度の高さに気付かされた。そんななか、ピアノのSEが流れ始めると、神聖かまってちゃんがステージに登場。メンバーは、の子(Vo、Gt)、mono(Key)、みさこ(Dr)、そしてサポートを経て2024年に正式加入したユウノスケ(Ba)の4人。まずはドリーミーなギターロック「おはよう」でノスタルジックな感傷を喚起させると、続いての子のボイスチェンジャーを使った(ヘリウムガスを吸った時のような)高音ボイスが印象的な「夕暮れメモライザ」へ。、中指を立てて遠慮なく「ファッキュー」と投げかける姿はあまりにもロックだ。

激情渦巻く高速パンクロック「僕ブレード」で上着をぶん回して脱ぎ捨てたの子は、続いてギターを弾きながらアドリブで一節かますと、「リッケンバンカー」「躁鬱電池メンタル」と夏の淡い情景が燃え上がる2曲を立て続けて投下。特に後者の衝動にまみれた絶叫と痙攣的なギターソロは鮮烈だった。

ライブは、再びボイスチェンジャーを用いた「死にたい季節」で再開。いわゆる“ムシ声”的な独特の高音ボイスと、ピアノを軸にしたアンサンブルが不思議なイノセントを演出する。そしての子が「おっさんおばさん!ガキンチョ!じじいばああ!お前ら、全員いけるかー!」と檄を飛ばすと、一直線に突き進むようなロックンロール「22才の夏休み」に突入。かと思えばの子自身がレア曲と語っていたバラード調の「ハワイ」では、観客に「お前らは昆布だ!」と呼び掛けて、フロアの誰もが手を上げてゆらゆらと振る光景を作り出して緩急をつける。その後、「イエーッ!」や「イエ(家)系ラーメン!」といったコール&レスポンスで再度会場の熱を引き上げると、ヒップホップ調のラップ曲「フロントメモリー」へ。「今日はまもちゃんと対バンだよ」とアドリブのフレーズを交えたり、マイクを咥えてボイスパーカッション風の音を出したり、挙句の果てにはズボンを脱いでパンツ姿になったりと、文字通り剥き身のパフォーマンスで会場を熱狂させ、最後は正拳突きしながら「イエーッ!」と絶叫しまくって締め。の子が途中のMCで「ライブに意味なんていらねえんだよ、ただの衝動のぶつかり合いだろ!」と語っていた通り、演者と観客の隔てなくお互いの衝動がぶつかり合うライブだった。

パンクと哀愁とカオスが入り混じった守乃まものロックンロール

転換タイムを挿み、いよいよ守乃まもの出番。TVアニメ『クレヨンしんちゃん』のOPテーマとして知られるPuppy「年中夢中“I want you”」をオープニングSE代わりに行進でステージに入場した守乃まもとバンドメンバー一同は、守乃のホイッスルを合図に敬礼。守乃はパンダ、他のメンバーも各々が別のぬいぐるみを持参しており、それらをステージの目立つ位置に置いてスタンバイする。バンドメンバーは、『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』の音楽コーディネートを務めるKuboty(Gt)、フレンズの長島涼平(Ba)、縄田寿志(Key)、山﨑聖之(Dr)の4名。いずれも“魔物大戦 vol.1”から参加しているほか、守乃の1st EP『まもってほしいの。』の演奏も担当している、彼女の良き理解者と言うべきミュージシャンたちだ。

ライブは、6/8拍子の優雅なリズムと躁的なシンセをはじめとしたバンドのワイルドなアンサンブルがマリアージュした「Dendrobium」でスタート。守乃は「Happy ENDじゃ終わらせない!」のMVで弾いていた自前のフライングVを胸に抱えながら、サビでは髪を振り乱しながら激しく歌う。歌声にはエフェクトが強めにかかっており、ステージにぬいぐるみが並ぶ光景を含め、まるで不思議の国に迷い込んでしまったような、あるいは守乃の頭の中を覗き込んでしまったかのような感覚に陥る。

歌い終えて、声にエフェクトがかかったままの状態で「ありがとうございます」とひと言伝えた守乃は、続いてアーティストデビューを飾った初オリジナル曲「いちごジャムにチーズ」を披露。ここから歌声はノーエフェクト、プレーンがゆえにハートにそのままぶつかってくるような歌と言葉、そして軽快なテンポのガレージロックが会場を揺らせる。そして現時点では未音源化の楽曲へ。どこかレイジーな雰囲気のゆったりと聴かせるナンバーで、ブルー系の照明に浮かび上がる守乃の姿とひたむきな高音を交えた歌唱が印象的だった。

MCでは、花粉症らしく突然「ルパフィン飲んでる人!」と観客に呼び掛けてみたかと思えば、登場時に使用したホイッスルを客席に投げ入れるふりをしてみたり、スマホの縦動画で拡散されることを恐れたりと、予測不能のフリーダムなトークで会場を沸かせたり惑わせたりする。舞台『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』を観たことのある人ならわかると思うが、それもまた彼女の味であり、大きな魅力なのだ。

守乃の「次は悲しい曲をやるので、静かにしてください」という言葉に会場が「はーい!」と応えると、これもまだリリースされていない楽曲へ。2本のギターによる寂しげなアルペジオのフレーズが絡み合い、ワルツ調のメランコリックなサウンドが紡がれていく。まるで思い出の中で踊っているような歌声も胸をギュッと締め付ける。感傷を高らかと解放するようなロングトーンで楽曲を締め括ると、続いてはピアノが印象的な弾むポップチューン「ぼくは悪魔でも」に。だが、明るめな曲調の中にもどこか哀愁が滲むのが、守乃の生み出す音楽の特徴。片想いをモチーフにした本楽曲でも、すれ違う想いの切なさが心のひだをくすぐる。

そこから、サビでの力強くエモーショナルな歌い口とKubotyによる泣きのギターソロが印象深かった未音源化の楽曲、モッズ直系のノリの良いロックンロール「Dogma95」と続け、後者では守乃とKubotyが背中合わせでギターを弾き合って盛り上げる場面も見られた。その後、ツアーグッズとバンドメンバーの紹介を経て(ちなみに守乃まもバンドのメンバーは全員“〇〇(楽器名)のまもさん”という名前で呼ばれる)、憂鬱を吹き飛ばすような勢いに満ちた「僕らの憂鬱」、サイレンのようなシンセ音がカオスを演出する未発表曲とアッパーなナンバーを連続で畳みかけ、ラストスパートをフルスロットルで駆け抜けていく。そして最後はフライングVが似合うハイパーなロックンロール「Happy ENDじゃ終わらせない!」。楽曲に入る前に守乃は一瞬ステージ袖にはけて、同楽曲のMVで使用されたぬいぐるみをいっぱいに詰め込んだ袋を持参して再登場。そのぬいぐるみを客席に投げ込みつつ、曲中ではバンドメンバーに体当たりするようにぶつかったりと、ひと際アグレッシブにパフォーマンス。Kubotyがギターソロを弾いている間、ステージを左右に走り回る姿も何だか愛らしい。最後は大量のぬいぐるみを客席に投げまくって、ただのハッピーエンドではない、最高のハッピーエンドでライブを締め括った。

次ページ:の子とのコラボレーションが蘇らせた“あの時の衝動”

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