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INTERVIEW

2025.04.01

約3年ぶりとなるオールスタンディングZeppツアー、「SQUAD JAM」を終えたばかりのReoNa。このツアーでも楽曲が披露され、昨年12月に神崎エルザ starring ReoNaとしてリリースした2ndミニアルバム『ELZA2』の楽曲に関してのスペシャルインタビュー

約3年ぶりとなるオールスタンディングZeppツアー、「SQUAD JAM」を終えたばかりのReoNa。このツアーでも楽曲が披露され、昨年12月に神崎エルザ starring ReoNaとしてリリースした2ndミニアルバム『ELZA2』の楽曲に関してのスペシャルインタビュー

絶望系アニソンシンガー・ReoNaとアニメの関わりの原点、それは2018年に放送された『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(以下、『GGO』)』に登場するキャラクター・神崎エルザの劇中曲を歌うことだった。あれから6年、TVアニメ『GGO』第2期の放送に伴い、ReoNaはOPテーマ「GG」を担当するのみならず、神崎エルザ starring ReoNaとして新しいエルザの楽曲を次々と届けて話題を集めている。そして今回、神崎エルザ starring ReoNa名義としては2枚目のミニアルバム『ELZA2』が完成。『GGO』およびエルザに対する強い気持ちとReoNa自身のこれまでの歩みが交差した、2人の新たなタッグ作に込められた思いをぜひ感じ取ってほしい。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

ReoNaとして大事な言葉を今回エルザに託させてもらいました

――神崎エルザ starring ReoNa名義としては約5年半ぶりの新作。久々に再会して、改めてエルザはどんな人間だと感じましたか?

ReoNa なかなか意地悪だなと思います。これまでの作品もそうだったのですが、エルザはいつも試練を与えてくる感じがするんです。いつもどこかに気配を感じますし、「そんなに簡単には作らせないわよ」と言っている気がして。

――やはりエルザの楽曲を歌うのは、一筋縄ではいかないんですね。

ReoNa 最初のミニアルバム(2018年リリースの『ELZA』)を制作していた当時の私は、まだ右も左もわからない状態で、最初はアニメの中で自分のお歌が流れることが信じられなかったのですが、その『ELZA』がたくさんの人の元に届いて、いろんなところでお歌を聴いてもらうことができて。エルザと『GGO』という作品がReoNaにくれたものがすごく大きい分、今回は制作していくなかでプレッシャーを感じましたし、今も皆さんに早く受け取ってほしい反面、ちょっとした不安も抱えているような心境です。

――個人的に気になるのが“ReoNa”と“神崎エルザ”の歌にはどんな境界が存在するのか、ということで。『ELZA』のレコーディング当時のReoNaさんはまだデビュー前で、いわば体当たりで歌う側面もあったと思うのですが、それから6年の活動を経てReoNaとしてのスタイルを確立したなかで、再びエルザとして歌うとなったとき、例えばスイッチを切り替えるような感覚があるのでしょうか?

ReoNa そこは私自身もすごく慎重に考えた部分でした。今回の制作期間中、改めて『ELZA』をたくさん聴き返したのですが、今おっしゃっていただいたように『ELZA』での私は体当たりで歌うこと、その時の精一杯をお歌に込めることしかできなかったけど、だからこその煌めきがお歌にギュッと詰まっているように思うし、その部分を好きだと言ってくれる人もきっといるだろうなと思って。なおかつ、現実の私は『ELZA』から6年の時間が過ぎているけど、『GGO』の作品世界は“セカンド・スクワッド・ジャム”から“サード・スクワッド・ジャム”までの数か月しか経っていないので、そう考えたときに、みんなに“エルザのお歌”だと感じてもらうためにはどうすればいいのか、っていう。

――考えたうえで導き出した答えは?

ReoNa さっきエルザはちょっと意地悪という話をしましたけど、今回も結局体当たりするしかなかったです。楽曲ごとにまったく色の違う素敵なお歌が毎回挑戦状のように届いたからこそ、当時の私が「今の自分ができる最大のお歌を込めたらそれがエルザの歌になるはず」と思っていたそのままの気持ちで歌えば、それがエルザらしさを作ってくれるんじゃないかな、作ってくれてたらいいなと思います。

――エルザの曲を歌う時は、ある種のがむしゃらさが必要なのかもしれませんね。今回、『ELZA2』の制作を進めるにあたって、アニメ制作サイドとはどのようなお話しをしたのでしょうか。

ReoNa 2期のアニメでは、原作小説の“サード・スクワッド・ジャム”と“ワン・サマー・デイ”のエピソードを描くというお話を聞いて、そこから細かくすり合わせながら制作を進めていきました。ReoNaチームもみんな『GGO』が大好きなので、お話をいただいた段階から、そのエピソードにはどんな楽曲が合うか、エルザならどういう楽曲を書くかを考え始めていて。“サード・スクワッド・ジャム”は豪華客船で戦うところから連想して(ヘンデルの)「水上の音楽」をモチーフにすることを考えてみたり、原作小説にもエルザの楽曲に関する描写があったので、そういう部分からイメージを膨らませていきました。みんながエルザに感情移入して、自己投影するところから始まった気がします。

――なるほど。ここからはミニアルバムの全曲について収録曲順でお話を伺っていきます。1曲目の「Oh UnHappy Day」は、今お話いただいた「水上の音楽」をモチーフにした楽曲で、アニメの最終話でオンエアされました。ReoNaさんが届け続けてきた言葉“Hello, UnHappy”を連想させるタイトルですね。

ReoNa ReoNaとして大事な言葉を今回エルザに託させてもらいました。ReoNaとエルザは性格や感情の発散のさせ方は全然違いますけど、不思議と似ているところがあるんですよね。「Prologue」(2019年にリリースされた神崎エルザ starring ReoNa名義のシングル)で原作者の時雨沢恵一先生が書き下ろしてくださった小説でも感じたのですが、そこで描かれたエルザの生い立ちの部分や、デスゲームに捉われ続けながらも豪志やレンと出会って、今は心の底からゲームを楽しんでいるところは、1人ぼっちから始まったReoNaが、エルザと出会って、お歌をアニメと一緒に届けられるようになって、色んな人と出会ってお歌を紡ぐようになった6年間の歩みと重なるところがあると思うんです。その意味でもエルザと一緒に紡がせてもらった楽曲だと思います。

――ご自身にとって大切な言葉を、ReoNa名義ではなく神崎エルザ starring ReoNa名義の楽曲に託したのは、やはりエルザや『GGO』に対する想いの強さがあるからですか?

ReoNa そうですね。制作の過程で“Hello, UnHappy”という言葉を散りばめてみようという話になったのですが、私はそれに対して何の迷いもなくて。そうすることで、きっとエルザも抱いているはずの「ついてないね、今日は」という想いを伝えられるのであれば、何のためらいもなかったです。エルザは(劇中に登場するVRMMORPG「ガンゲイル・オンライン」で)最強と言われているはずなのに、レンには何度戦っても勝てないんですよね。だからこそ「ついてない」と歌うのはまさにエルザだと思いますし、ケイさん(作詞を担当したハヤシケイ(LIVE LAB.))がそういう気持ちも乗せてくれました。

――それをゴスペルのスタンダードソングである「Oh Happy Day」にかけつつ、クワイアと共に歌うところは、エルザ曲というよりもむしろReoNaさんの要素を感じるところでした。“エルザらしさ”と“ReoNaらしさ”の融合と言いますか。

ReoNa ああ、確かにそうかもしれないですね。ただ、今回は意図的に何かを変えたり踏み出そうという意識は実はなくて。さっきもお話したように、アニメの中のエルザは前作から3ヵ月しか経っていないので、チームでも“進化させない”というキーワードで制作を進めていたんです。でも、前作はハヤシケイ(LIVE LAB.)さん、毛蟹(LIVE LAB.)さん、rui(fade)さんと制作したなかで、今作はReoNaが今まで歩んできた道のりの中で出会った新しいクリエイターの方たち、小松一也さんやPan(LIVE LAB.)くんにも参加してもらったことで、自然と進化したというか踏み出せた部分が出てきたんじゃないかなと思います。

――なるほど。確かに「Oh UnHappy Day」の編曲を担当した小松さんは、ゴスペル風のコーラスが入る「シャル・ウィ・ダンス?」をアレンジした方でもありますものね。先ほどエルザとReoNaは違うようで似ているというお話もありましたが、今回のミニアルバムはそのお互いの“近さ”が自然と形になった作品なのかもしれないですね。

ReoNa 2枚目のミニアルバムということで、エルザのお歌を7曲も作れたことによって、より解像度が上がる部分だったりとか、より解釈が広がる部分が生まれていたらいいなあと思います。

――2曲目の「Girls Don’t Cry」は、ライブイベント「神崎エルザ starring ReoNa ×ReoNa Special Live “AVATAR 2024”」で完全新曲としてサプライズ披露された先行配信曲。エルガーの「威風堂々」がモチーフになっています。

ReoNa この楽曲は、アニメの第8話で(新渡戸)咲がレン(主人公の小比類巻香蓮)に向けて語っている神崎エルザの新曲についてのセリフ(「このクレイジータイムに生きる女への応援歌ですよ」)が根幹になっています。あのシーンのバックで流れているのは「Toxic」ですけど、咲が興奮して語っていたお歌は、今回のミニアルバムに入っているべきだろうということで生まれた楽曲になります。

――力強くも軽やかな楽曲になっていますよね。

ReoNa 吹き抜けてくる感じと言うか、今までにない爽やかさを感じて、私自身も最初に楽曲を受け取った時にすごくワクワクしたんですよね。(作詞・作曲を担当した)ケイさんがまたエルザを連れてきてくれた感じがして。(編曲を担当した)宮田“レフティ”リョウさんとの出会いをくれた楽曲でもありますし、神崎エルザらしいけど、文字通り、今を生きる女の子への応援歌になったと思います。そして、何より私はこのお歌がすごく大好きなんです。

――ReoNaさん自身も1人の女性として、この楽曲に励まされたり元気をもらえる部分はありますか?

ReoNa やっぱり自分に向かって歌いかけてくれている感じがして、嬉しいですよね。でも、“AVATAR 2024”で披露したときも感じたんですけど、エルザは女の子好きな女の子と言いますか、レンちゃんに対しても結構イチャイチャするところがあるんですよね。そんなエルザが、女の子たちにしっかり寄り添おうとするお歌。エルザとだから紡げるお歌だと思いますし、その意味でもまた1つ広げてくれたお歌です。

――そして先ほど話題に上がった第8話の挿入歌「Toxic」は毛蟹(LIVE LAB.)さんが作詞・作曲・編曲を担当。ラヴェルの「ボレロ」をモチーフにしつつ、高揚感のあるナンバーに仕上がっています。

ReoNa 実は『ELZA』を制作していた当時、エルザに向けて作ったお歌がたくさんあったのですが、全部を込め切ることはできなかったんですね。それから6年越しでついに日の目を見ることになったのが、このお歌になります。歌い出しの“堕ちた 堕ちた”のところから毛蟹さんがめいっぱい『GGO』のことを考えて書いたものなので、いつかは聴いてほしいと思いながら温め続けていたのですが、アニメ2期で花開いて嬉しいです。

――「Toxic」は“毒”という意味ですが、どんなイメージで作られた楽曲なのでしょうか。

ReoNa エルザと言うよりも、ピトフーイ(神崎エルザが「ガンゲイル・オンライン」で使用しているアバターの名前)のテーマソングになります。前作で言うと「Disorder」もピトフーイのテーマソングだったのですが、「Disorder」が相手を容赦なく殺しまくる一面を表現していたのに対して、「Toxic」はピトフーイの名前の由来になった毒を持つ鳥とエルザを重ねていて。独特の毒々しい感じが詰め込まれたお歌になったと思います。

――第8話で楽曲が流れた際は、アニメの展開にピッタリとハマっていたのも印象的でした。

ReoNa あの第8話のシーンは、フィルムスコアリング的な手法で制作していて、エルザが悔しがってギターを弾き始めるところに合わせてアコギの音がハマるように、イントロから調整しているんです。映像に合わせて音を紡ぐ毛蟹さんの素敵なところが反映されたお歌になりました。

次のページ:エルザにとってもReoNaにとっても、今じゃないと歌えていないお歌

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