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REPORT

2025.03.27

アニメ音楽のトレンドを語るうえで欠かせないガールズバンドアニメの盛り上がりを“MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」”を軸に探る

アニメ音楽のトレンドを語るうえで欠かせないガールズバンドアニメの盛り上がりを“MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」”を軸に探る

近年のアニメ音楽のトレンドを語るうえで欠かせないほど大きな潮流となっているのが、ガールズバンドを題材にしたアニメ作品の盛り上がり。リスアニ!では、2022年11月発行の「リスアニ!Vol.50」でいち早くガールズロック×アニメ音楽特集を組んだほか、WEB記事やライブなどを通じて、それらの作品の音楽的な魅力をつぶさに紹介してきた。本稿では、そのムーブメントの中心にいる2組のバンド、MyGO!!!!!トゲナシトゲアリが作品の枠を超えて対バンした記念碑的かつ重要なライブ“MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」”を回想すると共に、さらに大きく交差していく周辺の動向を探る。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 冨田味我

まずは改めてここ数年の主なトピックを振り返りたい。近年のガールズバンド作品ブームの嚆矢となったのが、2022年10月クール放送のTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』と結束バンド。同年12月にリリースされた結束バンドの1stアルバム『結束バンド』は音楽ファンの間でも広く話題となった。2023年には次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!」発のバンド・MyGO!!!!!の結成を描いたTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』が放送。日本のみならず中国でも社会現象とも言える人気を集め、2024年には総集編に新規カットを追加した劇場版2部作が公開されている。さらに同年にはTVアニメ『ガールズバンドクライ』と劇中に登場するバンド・トゲナシトゲアリが大きな話題に。その勢いは2025年になった今も加速していく一方だ。

いずれの作品にも共通しているのが、バンドのいびつで特別な運命共同体としての在り方を細やかに描くアニメそのものの面白さと、それぞれのバンドのリアリティを追求するべくこだわり抜いて制作された楽曲の音楽性の高さ、そして作品世界の枠を超えたリアルライブ展開だ。特にMyGO!!!!!とトゲナシトゲアリは、キャストが実際に歌唱のみならず楽器演奏を行うスタイルのため、「あのアニメのバンドが目の前でライブをやっている」という不思議な実在性と没入感があり、ライブ自体が他では得難い特別な体験となっている。

次元の垣根を越えた作品世界の拡張、あるいは現実とアニメの融和による新しい物語の創出。まさにMyGO!!!!!が掲げているキャッチコピー「”現実(リアル)”と”仮想(キャラクター)”が同期するバンド」そのままの状況がステージにて実現しているわけだが、それだけでなく本来は交わるはずのなかった作品同士の同期が成されたのが、2025年1月12日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催されたMyGO!!!!!とトゲナシトゲアリの対バンライブ“MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」”だ。

TVアニメ『ガールバンドクライ』の放送終了から間もない2024年7月5日、両作品の合同記者会見において開催が発表されたこのライブイベント。それ以前にも、MyGO!!!!!の楽奈役の声優・青木陽菜(Gt.)が自身のSNSでトゲナシトゲアリの楽曲「雑踏、僕らの街」のギター弾き語りカバー動画を公開したり、トゲナシトゲアリの凪都(Key.)が自身のSNSでMyGO!!!!!の楽曲「迷星叫」をキーボードで演奏したカバー動画を公開するなどしていたが、お互い直接の交流はなく、まさかの展開に発表当時大きな注目を集めた。その後、10月4日にXのスペース配信「トゲマイトーク」でMyGO!!!!!から青木と愛音役の立石 凛(Gt.)、トゲナシトゲアリから井芹仁菜役の理名(Vo.)、河原木桃香役の夕莉(Gt.)、ルパ役の朱李(Ba.)が参加して親交を深めるなか、ライブ当日を迎えた。

チケットは即ソールドアウト、生配信も実施された本公演の先攻を務めたのはMyGO!!!!!。1st LIVEの頃から演奏してきた彼女たちにとって大切な最初のオリジナル曲「迷星叫」でライブの幕を開けると、まるで青春のように楽しくも忙しなく駆け抜けていくパンクロック「歌いましょう鳴らしましょう」でオーディエンスの熱気を最大限に引き出す。その後のMCは各々が担当するキャラクターとして会話を進行。アンコールでのMCを除き、ステージでは常時キャラクターをその身に宿してパフォーマンスを行う。それがMyGO!!!!!のスタイルであり、”現実(リアル)”と”仮想(キャラクター)”が同期するバンドの所以だ。

愛音と立希(Dr./CV:林 鼓子)の微笑ましいいがみ合いを含め、いつも通りの和気あいあいとしたMCから一転、立希の力強いドラムソロから始まり、燈(Vo./CV:羊宮妃那)の「もっともっと声出していけますか!」という呼びかけで一気に火が付いたパワフルなロック「砂寸奏」でのライブ運びの上手さ、そこから流れるように演奏された「処救生」での勇ましさと頼もしさからは、今やアリーナクラスの単独公演を成功させるまでのバンドになった彼女たちの成長と進化が感じられる。それは続いて披露されたライブでの人気曲「影色舞」も同じで、かつてよりも安定感とグルーヴを増した演奏、ステップを踏みながら歌い演奏するメンバーたちの表情からも、ライブを心から楽しんでいることが伝わってくる。

続くMCでライブタイトルの“Avoid Note”について、コードの中で不協和音的に響く音、音楽理論的にはあまり使われない音を指す言葉であることに触れ、「じゃあおもしれー音ってこと?」(楽奈)、「周りに上手く馴染めない。私たちも同じかもしれない。でも、だからこそ生まれる音とか、私たちにしか作れない一瞬があるんだと思う」(燈)と、バンドとしてステージにかける想い、一瞬一瞬のかけがえのなさについて語る。

そしてMyGO!!!!!のライブは早くも後半戦。楽奈のアグレッシブなギターソロをイントロダクションに「無路矢」に突入し、燈の真摯な歌声と楽奈のホイッスルボイスが交差しながら、言葉が遥か上空へと無限に舞っていく。そこからそよ(Ba./小日向美香)の地を這うようなベースラインも印象的な「潜在表明」で燈が感情を解き放つようなポエトリーリーディングをぶつけて会場を圧倒すると、前年12月の日比谷野音公演“MyGO!!!!! 7th LIVE「こたえなんてなくても」”でライブ初投入された新曲「孤壊牢」を披露。同ライブではそよが欠席していたため、5人揃ってのパフォーマンスは今回が初となる。客席も“Hey! Hey!”と声を上げて盛り上がると、最後はMyGO!!!!!らしいメロコアチューン「音一会」で締め。激走する2ビートの中で一体になっていく感覚はこの楽曲特有のものだ。終盤で燈が「みんなと一緒なら進むことができる、迷子でもいい、迷子でも進めー!」と叫んでラスサビに雪崩れ込み、最後はみんなで“wow wow”と声を合わせて歌う感動的な景色を生み出してライブの幕を閉じた。

続いてはトゲナシトゲアリの出番。メンバーのうち美怜(Dr.)とは活動休止中のため、ドラムとキーボードはサポートを迎えた体制となる。この日のライブで印象的だったのが、ステージにセッティングされた透過スクリーンを用いた演出。2024年9月13日に行われた“トゲナシトゲアリ 2nd ONE-MAN LIVE 凛音の理” でも導入されていたもので、楽曲ごとにアニメーションや様々なグラフィックを投影して『ガールズバンドクライ』ならではの世界観をステージに作り上げていた。

1曲目に披露されたのは「雑踏、僕らの街」。TVアニメ『ガールズバンドクライ』のOP主題歌にして、エモコアやボカロック以降の激情的かつテクニカルなバンドアンサンブルを有した、彼女たちの音楽性を象徴するような楽曲だ。ギュッと詰め込まれた言葉の弾丸を力強く放つ理名の鮮烈な歌声、透過スクリーンの前に並び立ち、アニメの映像や派手なグラフィックを背にして歌い演奏する3人の姿は圧巻のひと言。そこからTVアニメ第11話の挿入歌「空白とカタルシス」へ。後ろのスクリーンにはアニメのライブシーンが映し出され、アニメと現実のステージが交差していく。

だが、MyGO!!!!!とは違って、トゲナシトゲアリは元々音楽軸で活動していたメンバーで結成され、『ガールズバンドクライ』が声優デビュー作。そしてTVアニメ放送が始まる前からリアルなバンド活動先行でライブ経験を積み重ねてきた事もあってか、リアルライブではキャラを背負わず本人としてステージに立つのがトゲナシトゲアリの特徴。MCでも仁菜・桃香・ルパではなく、理名・夕莉・朱李として自己紹介を行う。どこかゆるっとした雰囲気の和やかなトークも彼女たちの魅力だ。しかし楽曲が始まるとバンドマンとしてのかっこいい佇まいに豹変。アニメの劇中で何度となく使用された楽曲「空の箱」を第1話ラストの仁菜・桃香による印象的な演奏シーンをバックに披露すると、そこから第3話の挿入歌「声なき魚」へ。曲の終わりには理名がアニメの仁菜のセリフをもじって「なんか、すごい……!MyGO!!!!!だ!」とつぶやく、対バンならではのサービスもあった。

その後のMCで各々の好きなアニメ作品を語る3人。その流れでTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の話題になり、仁菜は楽奈、夕莉は愛音、朱李はリズム隊のそよと立希が推しだと語る。しかも朱李はアフレコでルパを演じる際、ルパのミステリアスなお姉さん的なキャラクターを作るにあたって、そよから学んでいたことを明かして会場を沸かしていた。

センチメンタルかつエモーショナルなTVアニメ『ガールズバンドクライ』のED主題歌「誰にもなれない私だから」でライブを再開すると、第5話の挿入歌「視界の隅 朽ちる音」では、作中で仁菜、桃香、すばるが結成したバンド・新川崎(仮)の面々が着ていたTシャツの「不登校」「脱退」「嘘つき」という文字が透過スクリーンに映し出される。そして後半戦。ここまではアニメとの結びつきを踏まえた選曲と演出だったが、ここからはアニメ以外のオリジナル楽曲を次々と披露していく。華麗に躍動するピアノと鋭いギターが絡み合うアップナンバー「傷つき傷つけ痛くて辛い」、明暗の効いたクールな照明演出のもとさらにアップテンポで迫る「サヨナラサヨナラサヨナラ」と激情感ある楽曲を続け、リアルバンドとしての本領をアピールする。

そしてラストスパート、朱李が5弦ベースに持ち替えると、理名が「私たちの始まりの歌」と告げてバンドの原点の楽曲「名もなき何もかも」を披露する。爆発力のあるドラムとアグレッシブなベース、どこか影を帯びながらも激しく存在を主張する理名の歌声が会場のテンションを引き上げると、そこから間髪入れず人気曲「爆ぜて咲く」に繋げてオーディエンスのボルテージは最高潮へ。サビの“爆ぜて咲いた”というフレーズでは大合唱が巻き起こる。ラスサビでは理名が夕莉と朱李の方へと駆け寄って同じマイクで“爆ぜて咲いた”と歌う場面もあり、会場の誰もが笑顔の花を爆ぜて咲かす。ラストは理名もギターを手にしてアニメ最終話の挿入歌「運命の華」で華やかに締め。終盤には3人がステージ中央に集結して楽しそうに弾き合う姿も見られ、バンドとして一緒に音を奏でることの素晴らしさを改めて実感できる瞬間だった。

アンコールではこの日だけの特別な共演が実現。まずはトゲナシトゲアリに燈が加わったツインボーカル編成で「雑踏、僕らの街」を歌う。MyGO!!!!!楽曲にはあまり見られない早口なフレーズを歌う燈が新鮮で、2人の声が重なる箇所での熱のこもった響き合いも素晴らしかった。続いてMyGO!!!!!がスタンバイすると、そこに仁菜役の理名が加わってTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』のOPテーマ「壱雫空」をコラボレーションする。燈の強くしなやかなミックスボイスと理名のパンチの効いたハイトーンの相乗効果は抜群で、パンキッシュなサウンドと共に一気に駆け抜けて、作品の壁を越えた初めての対バンライブを締め括った。

声優とバンドを両立しながら活動する者同士という共通項のみならず、不器用だったり繊細な感情に寄り添ってくれる音楽という意味において共鳴する部分も多いMyGO!!!!!とトゲナシトゲアリ。仮に不協和音だったとしても、一緒に音を出すこと自体に意味があるかもしれないし、きっとその組み合わせでしか奏でられない音がある。それがバンドという形態の本質であり、避けるべき音とされる“Avoid Note”にもまた、その音なりの価値が存在するということなのだ。

そしてお互いに信念を持って活動するガールズバンドたちの協奏は今後も続く。MyGO!!!!!は因縁多きAve Mujicaとの初めての合同ライブ“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”を4月26日・27日に神奈川・Kアリーナ横浜で開催。現在放送中のTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』で描かれる物語の先に、どのような別れ道が待っているのか、見逃せない公演となっている。

一方のトゲナシトゲアリも、4月27日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催されるイベント“『ガールズバンドクライ』2nd Anniversary LIVE”にて、アニメの劇中に登場したバンド・ダイヤモンドダストとのライブを開催。ダイヤモンドダストはこれが初ライブとなるため、どのような形態でのステージになるかはまだわからないが、楽しみなところだ。

さらに別作品同士のコラボとしては、2022年にリリースされたドラマチックRPG「ヘブンバーンズレッド」発のラウドロックユニット・She is Legendとトゲナシトゲアリによる対バンライブ“ She is Legend×トゲナシトゲアリ 「SOUL & CRY」”が5月15日に東京ガーデンシアターで開催。She is Legendは劇中ではガールズバンドとして描かれているが、リアルではボーカル担当のXAIと鈴木このみにサポートバンドを迎える形でライブを行っている。

また、現在のブームの礎を築いた『バンドリ!』は今年2月で10周年を迎え、ライブやリリースの予定が目白押し。その中でも大ガールズバンド時代の最大の立役者であるPoppin’Partyは自身3度目となる日本武道館公演“Poppin’Party 10th Anniversary LIVE「ホシノコドウ」”の開催を5月26日に控えている。きっと今年もたくさんのガールズバンドたちが、我々にキラキラドキドキを届けてくれることだろう。

<セットリスト>
MyGO!!!!!
M1. 迷星叫
M2. 歌いましょう鳴らしましょう
M3. 砂寸奏
M4. 処救生
M5. 影色舞
M6. 無路矢
M7. 潜在表明
M8. 孤壊牢
M9. 音一会

トゲナシトゲアリ
M10. 雑踏、僕らの街
M11. 空白とカタルシス
M12. 空の箱
M13. 声なき魚
M14. 誰にもなれない私だから
M15. 視界の隅 朽ちる音
M16. 傷つき傷つけ痛くて辛い
M17. サヨナラサヨナラサヨナラ
M18. 名もなき何もかも
M19. 爆ぜて咲く
M20. 運命の華

トゲナシトゲアリ×燈 from MyGO!!!!!
EN1. 雑踏、僕らの街

MyGO!!!!!×井芹仁菜 from トゲナシトゲアリ
EN2. 壱雫空


●ライブ情報
MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」
DAY1 : Petrichor / DAY2 : Geosmin
開催日:2025年4月26日(土)・27日(日)

時間:
DAY1:Petrichor
2025年4月26日(土) 開場16:30/開演18:00(予定)
DAY2:Geosmin
2025年4月27日(日) 開場15:00/開演16:30(予定)
会場:神奈川・Kアリーナ横浜

詳しくはこちら
https://bang-dream.com/events/mygo-avemujica2025

『ガールズバンドクライ』2nd Anniversary LIVE
開催日:2025年4月27日(日)
時間:会場17:00/開演18:00
会場:TOKYO DOME CITY HALL

詳しくはこちら
https://girls-band-cry.com/live/post-10.html

 She is Legend×トゲナシトゲアリ 「SOUL & CRY」
開催日:2025年5月15日(木)
時間:開場18:00/開演19:00
会場:東京ガーデンシアター

詳しくはこちら
https://girls-band-cry.com/live/post-14.html

Poppin’Party 10th Anniversary LIVE「ホシノコドウ」
開催日:2025年5月26日(月)
時間:開場17:30/開演18:30(予定)
会場:日本武道館

詳しくはこちら
https://bang-dream.com/events/ppp_live2025

©BanG Dream! Project ©東映アニメーション

関連リンク

バンドリ!公式サイト
https://bang-dream.com

MyGO!!!!!公式X
https://x.com/bang_dream_mygo

YouTube「バンドリちゃんねる☆」
https://www.youtube.com/@bang_dream_official

アニメ『ガールズバンドクライ』公式サイト
https://girls-band-cry.com/

トゲナシトゲアリ – agehasprings Officiel Web Site
https://ageha.agehasprings.com/archives/artist/togenashitogeari

トゲナシトゲアリ – UNIVERSAL MUSIC JAPAN
https://www.universal-music.co.jp/togenashitogeari/

トゲナシトゲアリ公式X
https://x.com/girlsbandcry

ガールズバンドクライ公式YouTube
https://www.youtube.com/@girlsbandcry

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