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INTERVIEW

2025.03.27

asmi、富田美憂、市ノ瀬加那、楠木ともり、北澤ゆうほらとの既存曲の他、HACHIや吉乃を迎えた新録も収録!MIMiNARI、1stフルアルバム『freq.』リリースインタビュー

asmi、富田美憂、市ノ瀬加那、楠木ともり、北澤ゆうほらとの既存曲の他、HACHIや吉乃を迎えた新録も収録!MIMiNARI、1stフルアルバム『freq.』リリースインタビュー

コンポーザーのnariとshamによる“記憶を音楽にする”をテーマにした音楽プロジェクトのMIMiNARIが、初のフルアルバム『freq.』を完成させた。固定のボーカリストを立てず、楽曲ごとにその世界観にマッチした歌い手とコラボレーションして様々な“記憶”を音楽にしてきた彼ら。本作には「言えない feat. asmi」「厭わない feat. 富田美憂,市ノ瀬加那」「眠れない feat. 楠木ともり」「クランシック feat. 北澤ゆうほ」といったアニメタイアップ曲のみならず、HACHIや吉乃ら気鋭のシンガーを迎えた新曲を収録。多彩かつ個性豊かな彼らの音楽の魅力に触れられる1枚となっている。本作に込めたこだわりについて、2人にたっぷりと話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

MIMiNARIの“切なさ”を纏った音楽が届ける“周波数”

――これまでEPを4タイトル発表してきましたが、フルアルバムは今回が初になります。制作にあたりどんな作品にしたいと考えましたか?

sham 初めてのアルバムということで僕たちの名刺代わりになる、MIMiNARIが辿ってきた約3年間の道筋を網羅できる作品を目指して制作しました。MIMiNARIのアーティスト像をしっかりとお伝えできるラインナップ、そして作品としてのストーリー性にも重きを置いた曲順を意識しています。

nari 2023年にリリースした「眠れない feat. 楠木ともり」が僕たちにとっての代表曲になった頃から、アルバムのビジョンが見えてきて。これまでは単曲でのリリースが中心だったので、1曲に集中して制作をすることが多かったのですが、今回はアルバムという形態だからこそ向き合える楽曲にも取り組みました。それこそ新曲の「東京愛’s feat. 吉乃」は「られない feat. Such」、「想い槍 feat. Sanghee」は「会えない feat. 相沢」からの文脈を意識して制作して作ったものになります。

――なるほど。タイトルの『freq.(フリークエンシー)』の由来は?

sham まず僕たちのユニット名であるMIMiNARI(耳鳴り)に通じる言葉であること。そして僕たちの最大の特徴は、楽曲ごとに歌い手とサウンドメイクが変化することを踏まえて、それらの音楽が皆さんの耳に波形となって届いていくイメージを込めて、“周波数”を意味する英単語の『freq.』と名付けました。

nari “frequency”だと言葉的にも見た目的にも少し固い印象があったのですが、省略語の“freq.”であれば字面としてもポピュラーなので、このタイトルにしました。かっこつけ過ぎるのもあまり僕たちらしくないので(笑)。

――楽曲によって歌い手だけでなくサウンドが大きく様変わりするなかで、逆にお二人が一貫して意識している“MIMiNARIらしさ”はありますか?

nari 特別意識しているわけではないのですが、僕らの作る楽曲には“切なさ”が常にあることが、MIMiNARIらしさに繋がっていると思います。それがロックサウンドやトゲのある楽曲だったとしても、サウンドや歌詞、アレンジのどこかに“切なさ”を纏っている。そこはMIMiNARIを結成する以前からあった僕らの共通点でもあると思います。

sham 底抜けに明るい楽曲というよりも、なぜか切なさが滲み出る楽曲が出来てしまうんですよね。なんでなのかは僕らもわからないのですが(笑)。

――今回のアルバムには新曲だけでなく、これまでのアニメタイアップ曲もすべて収録されています。特にTVアニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』のEDテーマだった「眠れない feat. 楠木ともり」は、主演の声優・楠木ともりさんが歌唱を担当した相乗効果もあって大きな話題になりました。

sham サウンドの転機になった楽曲はいくつかあるのですが、色んな方々からの反響をいただいたという意味では、やはり「眠れない」は大きかったです。MIMiNARIが大切にしてきた切なさや儚さを保ちつつ、変拍子を用いたり、浮遊感のサウンドを取り入れた、それまでの活動とは一線を画した楽曲ではあったのですが、以降の制作の指針になった感触があります。

――アニメ主題歌やタイアップ曲を作る経験についてはどのように感じていますか?

sham よく言われる「制約の中にクリエイティブが生まれる」ということを身をもって感じています。わかりやすいところで言うと、アニメの主題歌には89秒という物理的な尺の制約がありますし、映像とのマッチングや作品に寄り添いたい想いもあるなかで、どうMIMiNARIというユニットを表現していくか。そしていかに予定調和を崩して驚きを提供できるか。色々な意味で勉強になりましたし、その後の制作にも活きていると思います。

nari 楽曲制作の際は映像をイメージしてメロディや歌詞を作ることが多いのですが、アニメタイアップの場合は作品やシナリオという極上の素材があるので、僕たちの能力以外の何かをグッと引き上げていただいた感覚がいつもあるんです。その経験が結果として他の楽曲にも派生しているように思います。

――MIMiNARIはデビューから一貫して“〇〇ない”というタイトルの楽曲を発表してきて、2024年10月リリースの「クランシック feat. 北澤ゆうほ」(TVアニメ『魔王様、リトライ!R』EDテーマ)以降はその法則に捉われないタイトルになりました。それ以前と以後でどのような意識の変化がありますか?

nari “〇〇ない”シリーズの途中から、「これはしんどいことになるぞ」ということに気付いたんですよね(笑)。タイトルのネタを絞り出す大変さもあるのですが、歌詞を書く際にその曲のタイトルとは直接関係ない“〇〇ない”というフレーズを使いにくい、という制限も実はありまして。僕たちとしても“〇〇ない”をテーマにした楽曲制作が自然と身についてきたところではあったのですが、デビュー2周年を区切りとして、その縛りにこだわらない楽曲制作に切り替えました。でも、逆にめちゃくちゃ難しくなりまして(笑)。

sham そう、選択肢があり過ぎるんですよね(笑)。

nari 「クランシック」はその1年以上前に出来上がっていたのですが、楽曲タイトルを付ける時は、“〇〇ない”とは別の縛りを設ける可能性も含め一番話し合いました。“〇〇ない”というフレーズは発音を含めてすごく使いやすかったのですが、自由性が高まったことで歌詞のハマり具合を考える部分で難しくなりましたね。

sham ただ「クランシック」以降は、最初の頃と比べてより等身大の音楽表現が出来るようになってきた感覚が個人的にはあって。それこそ1st EPの『言えない EP』や2nd EP『厭わない EP』の頃はすごく気合いが入っていて、もちろんそれはそれで良かったのですが、今は背伸びせず、萎縮もせず、いい意味で肩の力の抜けた楽曲制作が出来ています。

――ということは今回のアルバムに収録の新曲も肩肘を張らず作れたわけですか?

sham そうですね。いい意味で柔軟になってきて、ジャンルを問わず色んなサウンド感の楽曲を作っています。世の中のトレンド感も恐れることなく取り入れつつ、MIMiNARI流にアップデートする技術も上がってきたように感じていて。

nari 正直、曲自体は難しいので、聴いている人からすると「伸び伸びと作っている感」は伝わっていないかもしれませんが(笑)、単純に活動していく中で僕らがスキルアップしたこともあって、以前は難しく感じていたことも自然体でやれるようになったのが大きいです。そのベースがあったうえで、色んなスパイスをまぶしていく。以前はずっと強火で火にかけていた感じだったのが、今は引き算の考え方になってきました。

これまでの活動や過去曲の文脈から生まれた新曲たち

――ここからはアルバム収録の新曲を軸にお話をお聞かせください。アルバムは代表曲の「眠れない」で始まり、2曲目はリードトラックとなる新曲「スペクトル feat. HACHI」。オリエンタルなフレーズが耳に残るポップなナンバーです。

nari オリエンタルっぽさは意識して制作しました。3曲目の「酔えない feat. Anonymouz」やこれまでの曲にもそういう要素を散りばめていたのですが、この曲ではより印象的に取り入れていて。そもそも今回のアルバム用の新曲は、まずアルバムタイトルを決めて、既発曲を並べていくなかで「この曲とこの曲の間にはこういう曲が欲しいな」という発想で作っていったので、「スペクトル」も先に曲名を決めたうえで制作したんです。「スペクトル」は色で周波数を可視化するという意味合いで付けたのですが、その色合いの変化を四季や恋といったテーマに落とし込んでいくなかで、歌詞に中国語を取り入れることにして。アジア感のあるサウンドも含めて、全部が紐づいた楽曲制作になりました。

――そのカラフルな曲調を深みのある歌声で表現されているのが、バーチャルシンガーのHACHIさんです。

sham 「スペクトル」に関しては、「眠れない」の系譜に連なる楽曲を作る、というサブテーマもあったので、浮遊感や変拍子を取り入れた楽曲になっているのですが、そもそもMIMiNARIにおける“オリエンタル”の元を辿ると「眠れない」だったと思うんですよね。そこから「酔えない」などでブラッシュアップしていくなかでこの曲に辿り着いたので、「眠れない」の時に作り上げたボーカルの音像感にもう一度トライしたいと思い、かねてから楽曲を聴いて魅力に感じていたHACHIさんにお願いしました。楽曲を整えていく際にも、HACHIさんの吐息がふんだんに入った歌声を想定していました。

――ただ、HACHIさんがこういう曲調の楽曲を歌うのは新鮮でした。普段歌っている楽曲にはあまりないタイプだと思うので。

sham 確かにそうかもしれないですね。

nari これは全曲通して言えることですが、僕らはそのシンガーの方が普段やっているのとは違う表現が出来る楽曲をあえてオファーしているところがありまして。HACHIさんもお会いした時、「自分の楽曲にはあまりないかっこいい楽曲なので、ぜひ歌いたいと思いました」と言ってくださって。いい意味の違和感、新しい引き出しをシンガーさんにも楽しんでいただけていると思いますし、それが聴いてくださる方にも伝わればと思って制作しています。

――でも、新鮮なのに不思議と合っているのがMIMiNARIのマジックですよね。レコーディングではどんなやり取りがありましたか?

sham HACHIさんが歌詞をすごく紐解いてくださったのが印象に残っています。レコーディング前に歌詞の意味合いや伝えたいことを質問してくださったり、当日もこの楽曲の主人公の年齢感といった細かいディテールを聞いてくださって。それらを歌のニュアンスに活かしてくださったからこそ、楽曲にフィットするボーカルになったんだと思います。

nari そういう深掘りの時間があったにも関わらず、レコーディング時間はMIMiNARI史上最速で終わったんですよ。「いつもこんな感じなんですか?」と聞いたら「いつもはもっと早いです」とおっしゃっていました(笑)。

――分厚いブラスサウンドも大陸っぽさが出ていていいなと思いました。

sham 今回はホーンセクションも生で録りました。

nari 生だとこんなに変わるんだな、と思いましたね。

――そして先ほど「られない」からの流れを意識して制作したとお話ししていたのが、吉乃さんを迎えた5曲目の「東京愛’s」。

sham 1年くらい前に“デモ曲チャレンジ”という、毎週1曲、サビのパートだけをSNSにショート動画でアップする企画をやっていたのですが、それと同じように毎週と言わずとも新曲をアップしていきたいなと思って、4th EP『クランシック』の制作後に先行でショート動画を発表したのがこの楽曲だったんです。その時のボーカルは打ち込みのAIだったのですが、たくさんの反響をいただいて、「歌ってみた」で歌わせて欲しいというお声もいただいたので、今回、フルサイズ化してアルバムに収録しました。

nari そのAIのボーカルを気合いを入れて打ち込み過ぎまして(笑)。ガナリ声とかもたくさん入れてしまったので、そのハードルの高い曲を歌っていただける方として、吉乃さんがすぐ思い浮かびました。

――吉乃さんはガナリ声が印象的ですが、色んな声音で歌える七色の歌声の持ち主ですものね。

sham まさにセクションを多くすることを意識して楽曲を作り上げたので、それが結果的に吉乃さんの七色の歌声を引き立てるような形になっていれば嬉しいですね。

――アップテンポでギラギラした曲調も吉乃さんにマッチしている印象です。

nari ありがとうございます。吉乃さんとはリモートでのやり取りだったのですが、ボーカルのミックスに関してもイメージをお伝えしてくださって。右チャンネルから左チャンネルに動く感じであったり、ボリューム感を徐々に上げていくようなミックスアレンジをご提案いただきました。

――6曲目の「インスタント・ラヴ feat. natsumi」は、2ndシングル「見えない feat.natsumi」を歌っていたnatsumiさんが2度目の登板になります。

sham この楽曲の制作の起点としては“振り付けをイメージしやすい楽曲”というテーマが大枠にありました。それを元にMVを制作したり、皆さんが踊ってくれるような曲を作りたいなと。その前に制作した「クランシック」や「あこがれ feat. Myuk」はサウンドとメッセージ性が振り切っていて重ためなテーマだったこともあって、もう少しライトに聴いてもらえるような作風、僕ららしい切なさはありつつ疾走感のある曲にしたいと考えて。それでリズムから制作した結果、ラテンミュージックっぽい軽快な曲になりました。

sham 最初はもっとレゲエっぽいリズムだったのが、色々とこねていくうちにラテンっぽくなったんですよね。そこからメロディを付けていくにしたがって、natsumiさんの歌声がふと浮かんできたんです。「見えない」とは全然違う曲調なのですが、メロディライン自体は少し90sというか平成っぽさのあるところが、natsumiさんの透き通った歌声、ふわっと中和するイメージに合うだろうなと思って。

――この楽曲もブラスサウンドが印象的ですが、これも生演奏ですか?

nari はい。この頃からブラスも生にこだわるようになりまして。やっぱり印象が相当変わるんですよね。ただ生演奏だけでなく、サンプリングも貼っているところが、この曲のポイントだと思います。

sham 生音を録ったうえで、それをエディットして切り貼りしています。

次のページ:生演奏主体の楽曲に息づく2人のミュージシャンシップ

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