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INTERVIEW

2025.03.20

守乃まも、1st EP『まもってほしいの。』に込めた創作とバンド音楽への情熱、舞台版『ぼっち・ざ・ろっく!』の経験について語る!

守乃まも、1st EP『まもってほしいの。』に込めた創作とバンド音楽への情熱、舞台版『ぼっち・ざ・ろっく!』の経験について語る!

2023年と2024年に上演された舞台『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』で主人公の後藤ひとり役を務め、ぼっちそのものと言っても過言ではない演技とギターヒーローさながらのライブ演奏で話題を集めた、守乃まも。作詞・作曲のみならずジャケットのアートワークやMVのディレクションも自ら手掛け、独自のアーティスト性を発揮している彼女が、1st EP『まもってほしいの。』をリリースした。リスアニ!初登場となる今回は、自身の音楽的ルーツ、創作の源泉からEPのこだわり、3月24日に行われる東名阪ツアー“魔物大戦 vol.2”千秋楽公演への意気込みまでを取材。守乃まもの“説明書”代わりとなるインタビューをお届けする。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 三橋優美子

寂しい人に寄り添う優しい音楽――バンドとパンクに惹かれる理由

――『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』を拝見した時、こんなにも後藤ひとりに適任の人がいるんだと思って驚きました。

守乃まも ありがとうございます。でも、わたし的には自分とは全然似ていないと思っていて。たしかに周りからは「似てる」とよく言われますし、舞台を見に来てくれた家族や古い知り合いにも「いつものまもだった」と言われたんですけど、多分、それは挙動が似ているからで、性格は全然違っているんです。ただ、演技のお仕事は初めてで、絶対に無理だと思っていたんですけど、逆に後藤ひとりさん役以外は出来なかったと思うので、その意味ではありがたかったです。奇跡でした。

――性格の違いについてもう少し詳しく聞いていいですか?

守乃 後藤ひとりさんは私よりも協調性がある方だと思うんです。女の子とバンドを組めていること自体がすごい。私も以前にバンドを組んだことがあるんですけど、バンドは向いていないと思って辞めたので。

――なぜ向いていないと感じたのですか?

守乃 バンドをやっていた当時は、私が曲も歌詞も全部作っていて、ギター、ベース、ドラムス、キーボードを入れたデモを自分で完成させてから、「これをコピーしてください」っていう感じでメンバーに渡していたんです。ジャケットやフライヤーのデザインも全部自分でやっていたし、その頃は自分が一番偉いと思っていたので、メンバーへの当たりもすごく強くて。年頃だったのもあって、今思い返すと最悪でしたね、私は。だからその時やっていたバンドは終わらせたんです。でもバンド自体は好きだから、ライブをやるときは絶対にみんなで音を合わせたくて。今はバンド形態でライブをやらせていただいているので、心から感謝しています。

――舞台でも後藤ひとり役としてギターの腕前を披露していましたが、守乃さんはどんな経緯でバンドやギターに興味を持つようになったのでしょうか。

守乃 両親が音楽好きなので、家ではずっと音楽がかかっていたんです。ビートルズ、キャロル・キング、山下達郎、大瀧詠一、サザンオールスターズとか、邦楽・洋楽問わず色んな曲を小学生の頃から自然と耳にしていて、私もいいなあと思ったビートルズのコンピレーションアルバム『The Beatles 1』とジャック・ジョンソンの黄色いアルバム(『In Between Dreams』)をずっと部屋でかけていて。それで小学3年生の頃、お父さんがイーグルスの「Hotel California」のタブ譜をくれて「試しに弾いてみなよ」と言われたのが、ギターを触った最初でした。その時にビートルズの「Something」も練習していたんですけど飽きて辞めてしまって。でも小学6年生の時にTHE BLUE HEARTSに出会って衝撃を受けて、自分からギターを弾きたくなって、バンドスコアを買って毎日練習するようになりました。そこから好きなバンドのことをすごく調べて、いろんなバンドのスコアを買ってコピーするようになって。

――THE BLUE HEARTSのどんなところに惹かれたのですか?

守乃 それがわからないんですよね。お兄ちゃんが借りてきた『SUPER BEST』を一緒に聴いたんですけど、とにかく衝撃がすごくて。「リンダリンダ」はその前から知っていたんですけど、確か「人にやさしく」を初めて聴いた時にすごくかっこよくて、そこからあまり覚えていないんですけど、気付いたらギターを弾いていました。

――楽器的にはギターに魅力を感じたんですね。

守乃 お兄ちゃんが弾いているのを見てかっこいいなと思ってたので、始めるならギターかなと思って。やっぱりボーカルとギターに目が行きがちでしたし、とにかく(甲本)ヒロトさんみたいになりたかったんです。服も似ているのを買ったりしていたんですけど、当時は小学生だったのでよくわからなくて。

――余談ですが2024年3月に東京・下北沢SHELTERで開催した主催ライブイベント“魔物大戦 vol.1”では、ヒロトとマーシー(真島昌利)がTHE BLUE HEARTS解散後に結成したバンド、THE HIGH-LOWSの長袖シャツを着ていましたよね。

守乃 あっ、そうです!THE HIGH-LOWSもザ・クロマニヨンズも順番に追っていったので。あの服はデザインがかわいいので買っちゃいました。初めて行ったライブもザ・クロマニヨンズで、小学6年生だったんですけど、泣いちゃいました。本当に存在するんだと思って。すごくかっこよかったです。

――その頃からバンドに対する憧れが芽生えた?

守乃 はい。もともとバンドの形の音楽が好きなんです。一人で歌っているよりもバンドでやっているほうがすごく楽しそうなので。結果的に自分はできなかったんですけど。とにかくその雰囲気、形がいいなあと思います。ジャケットとかも4~5人で並んでいるのがかっこいいじゃないですか。

――確かに。自分で楽曲を作り始めたきっかけは?

守乃 自分が一番目立ちたいから全部作っちゃおうというのもありますし、他の人と作業するのは苦手だから、全部自分で作るようになりました。高校生の時に、同い年の子とスタジオに入ったんですけど、その日に持って行った新品のギターのネックが折れて、その帰り道にスマホを落としてバキバキに割れて、帰ったら楽曲制作のために持っていたノートPCも落ちてバリバリに割れていた、すごく不運な日があって。そこで「ヤバイ!」と思ってちゃんと曲を作り始めました。

――どういう流れですか(笑)。

守乃 その頃は周りのみんな進路が決まっていたんですけど、私は別に就職もしたくないし、「これはちゃんとしなくちゃいけない!」と思ったんです。

――それで音楽の道を目指したわけですね。「自分が一番目立ちたい」という発言もありましたが、目立ちたい気持ちが強いんですか?

守乃 はい、昔から。最近やっと抑えられるようになったんですけど、昔は本当にすごかったです。子供の頃から絵を描くのが好きで、保育園でも自分の描いた絵を誰かに見せたり、あげたりしていました。思い出すのも痛いです。なんでこんなに承認欲求が強くなったのかはわからないですけど、多分、音楽が好きになってから、憧れの人になりたい気持ちによって肥大化されて化け物になってしまったんだと思います。

――音楽以外のカルチャーで刺激や影響を受けたものはありますか?

守乃 ゲーム音楽が好きで、特に「クロノ・トリガー」の音楽は、兄弟がやっているのを隣で見ていて「めっちゃ曲よくね?」と思ってピアノでコピーしていました。「ポケモン(ポケットモンスター)」の初期の音楽もいいのが結構あって。あとは映画。特に洋画は雰囲気からしていいじゃないですか。BGMもいろんな音楽がかかって記憶に残るし。小学生の頃は「ショーシャンクの空に」を観ている自分がかっこ良くてずっと観ていました。あとは「グーニーズ」と「スタンド・バイ・ミー」も大好きで。

――おお!自分も大好きです。

守乃 いいですよね!冒険心が止まらないです。「スタンド・バイ・ミー」は自分たちでお金を持ち寄って冒険する感じがいいし、リバー・フェニックスさんがめちゃめちゃかっこいいなあと思いながら何回も観ていました。「グーニーズ」も観るとワクワクしますよね。「自分の家にも宝の地図があるのでは?」と思って押し入れの上とかを覗いてましたもん。宝石のおもちゃを買ってきて「グーニーズ」のラストみたい!って喜んだり。生クリームのスプレーとか食べ物までかっこよくて、ひとつひとつのアイテムが心をくすぐります。だから映画っぽい曲を作りたいというのは、自分の中にずっとあります。特に「Dogma95」は映画っぽくしたいなと思って作った曲で。

――そういえばEP収録曲「ぼくは悪魔でも」の歌詞にも“終わったはずの映画何度も観ちゃうし”というフレーズが出てきます。これまでのお話を聞いていると、音楽にせよ映画にせよ、かなり上の世代の作品が好みですよね。

守乃 両親とお兄ちゃんお姉ちゃんがいるので、そこは家族の影響が大きいですね。そこから自分なりに進化していった感じで。それと小さい頃は“周りと違う自分がかっこいい”モードだったので、みんなが好きなものとは違うもの、昔のもののほうがかっこよく見えたというか。レコードも小学生の頃から集めていました。ビートルズとかクラッシュとか。でも好きなものってそういう入り口でいいと思うんです。

――小学生でレコード集めとは早いですね。ジャケ買いとかもしますか?

守乃 します!この間、グリーン・デイのライブに行ってきたんですけど、物販でLPを売っていたので買っちゃいました。いろんな作品のレコードがあったんですけど、『Insomniac』のキラキラしたデザインのジャケットがかわいいなあと思って。ライブ音源が追加されているLP(『Insomniac 25th Anniversary Remastered Orange Vinyl 2LP』)でした。

――グリーン・デイも好きなんですね。

守乃 はい、兄の影響で。小3からTHE BLUE HEARTSと出会う小6までの期間はお兄ちゃんと一緒にグリーン・デイとかサム41、オフスプリング、ELLEGARDENのDVDをよく観ていて。なかでもグリーン・デイはすごくかっこいいなあと思いながらぼーっと観ていました。この間のライブもかっこよかったです。

――守乃さんの楽曲を聴いていても感じますが、パンクが好きなんですね。

守乃 ですね、精神的にもかなりパンク寄りだと思います。きっと自分でストッパーをかけなかったら「ピー!」って規制されるような発言をもっと言っていると思うんです(笑)。パンクロックが刺激的とか強いものとは思っていないんですけど、優しいなあと思うんですよね。寄り添ってくれるから好きです。

――パンクは刺々しさや反骨精神の塊みたいなイメージが強いですが、それを「優しい」と表現するのは素敵ですね。

守乃 もちろんかっこいいんですけど、でも寄り添い感があって優しいんですよ。でもかっこいい。もしかしてギャップ萌え? でも、作っている人たちのことまで追いたくなることが、パンクロックには多いように思います。

――自分のどんな気持ちに寄り添ってくれますか?

守乃 生きているとムカつくことって誰にでもあるじゃないですか。別にそれを周りに言うわけじゃないですけど、そういう気持ちにも寄り添ってくれますし、これは私もそうなんですけど、周りにどれだけ友達がいたとしても、寂しい人は寂しいと思うんです。その孤独感、音楽といるだけでいいやっていう気持ちに寄り添ってくれると思います。

――音楽を聴いたり作っている時は寂しさを感じない?

守乃 聴いている時は最強!っていう気持ちです。作っている時は勢いとかでバーッと作るので気分とかは何もないかも。自分の曲が好きなんですけど、自分で聴き返すことはあまりないし、日々の排出物みたいな感じなんです。それを誰かが聴いてくれて、いいと言ってくれている今の環境はすごいことだと思うので、日々感謝して生きていかなくてはいけないと思っています。

次ページ:これが守乃まもの説明書!色んな空想と衝動が詰まった1st EP

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