INTERVIEW
2025.03.25
TVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』(以下、『天久鷹央』)のEDテーマに起用されたゴスペラーズの新曲「will be fine feat. Anly」は、メンバーの安岡 優が作詩、黒沢 薫が作曲を手がけたミディアムバラード。ゲストボーカルにシンガーソングライターのAnlyを迎え、ゴスペラーズとの6人のハーモニーを堪能できる。ゴスペラーズの面々に「will be fine feat. Anly」の制作過程に加え、心に残っているアニソンなどについて聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之
――新曲「will be fine feat. Anly」は、TVアニメ『天久鷹央』のEDテーマ。作曲は黒沢さんですね。
黒沢 薫 作曲したのは数年前で、“デモのデモ”みたいな状態でずっと取ってあったんです。僕のなかですごく好きな曲だったので、なんとか形にしたいなと思っていたんですけど、『天久鷹央』のEDテーマに起用していただけることになって。「やっと曲になる!」とすごく嬉しかったですね。その後、Anlyさんとデュエットすることになり、メロディをちょっと作り直して。Anlyさんはしっかり下のほう(低音)の響きが出せる人なので、我々と歌うことをイメージしつつ、落ち着いた感じにしようかなと。音の高さとしてはそこまで上げてないんですよ。
酒井雄二 ゆとりというか、余裕が見せられる曲ですよね。
黒沢 そうだね。EDテーマだし、そういう雰囲気のほうがいいのかなと。
――そして作詩は安岡さん。どんなテーマで歌詩を書かれたんでしょうか?
安岡 優 アニメの製作スタッフの方に原作の小説とコミカライズ版、アニメの台本をいただいて。まずはそれを読ませていただくところから始めました。最後に流れる曲なので「(歌詩が)最後のセリフになる」という気持ちで作品に没頭したんですけど、そこでこれはチームワークの物語なんだなと感じたんです。天久鷹央という天才が1人で事件を解決するのではなく、若い人からベテラン、色んな立場の人がそれぞれの専門性や持てる力を発揮することで、真相に近づいていく。それを歌に落とし込みたいと思ったんですよね。今回はAnlyさんと一緒に歌っていますし普段ゴスペラーズがやっている音楽もチームワークがとても大事なので、自分たちの内面を歌える曲にして、そのうえでエンディングにふさわしいものにしたいと考えながらまずはタイトルを決めました。
――タイトルの“will be fine”は“きっと上手くいく”“大丈夫でしょう”といった意味ですね。
安岡 『天久鷹央』は医療ミステリーなのですが、患者さんにとっては「良くなりますよ」というお医者様の一言が実は一番の薬なんじゃないかなと考えて。アニメの一話分が終わって、この曲を聴き終わった時に、「良くなりますよ」という思いが残ってくれたらいいなと思ってこのタイトルにしたんです。
――村上さんは「will be fine feat. Anly」という楽曲をどう捉えていますか?
村上てつや もちろんAnlyさんの存在は大きいですよね。彼女はとてもいいシンガーで、媚びない良さといいますか、しっかり芯があるんですよ。これまでにライブでご一緒したこともありますが、この曲にAnlyさんの歌声が入ってくることで、さっき安岡が言ったチームワーク感を非常に強力にしてくれていて。彼女の音楽的な佇まいもそうですけど、この楽曲のチームに必要な人だなと実感していますね。
――確かにAnlyさんの歌の強さは、この曲の芯になっていますよね。
村上 そうですよね。すごく出番が多いわけではないんだけど、Anlyさんの歌が聴こえてきた瞬間に空気が変わるんです。やっぱり素晴らしい存在だなと思います。
酒井 この曲の話をするにあたって、サウンドプロデュースを担当したYaffleさんのアレンジについても話しておきたいです。まずYaffleさんから「こんな感じでどうでしょう?」とコーラスのラフが送られてきたんですよ。普段のゴスペラーズだったらやらないようなラインや音域も使われていたんですけど、それを聴いた時に「このまま歌ってみるのも面白いな」と思って。サウンド全体の奥行きも“Yaffle節”だし、あちらの土俵で戦ってみたくなるようなアレンジと言いますか。その対戦がすごく楽しかったし、沁みるサウンドになっていると思います。
――Yaffleさんは今をときめくクリエイターなので、ゴスペラーズとのタッグは確かに意義深いですよね。
黒沢 実はずっとやってみたかったんですよね。タイミングを計っているところはありました。元々のデモとはまったく違う、Yaffleの世界でサウンドを作ってくれて、それがすごく良かったです。
酒井 アニメを観て「EDテーマ、ゴスペラーズなの?豪華なラインナップじゃん」ってSNSで投稿している方も結構いて。豪華な制作陣、キャスト陣のアニメなんですけど、しっかりエンディングを務めることができたんじゃないかなと。皆様に感謝です。
北山陽一 Anlyさん、Yaffleさんもそうですけど、それぞれ強固な自我を持っていて。「ゴスペラーズさんに合わせます」「お任せします」ではなく、むしろ新しいゴスペラーズを提示してくれるような人たちだと思うんですよ。もしゴスペラーズらしさというものがあるとして、僕らに「お任せします」と言われて曲を作ったらどうしても自分たちの内側で作ってしまう。今回はそうじゃなくて、外側にいる人たちと影響し合うことができたし、我々の境界線や領土を広げてもらった感覚もあります。
――元々ゴスペラーズは、表現の幅を貪欲に広げ続けている印象があります。
北山 そこも自分たちの面白いところというか、「これまで築き上げたものがいいよね」というタイプのメンバーが1人もいないんですよ。もっと変化したり外に刺激を求めようとする人ばかりなので。そういう意味で今回の曲はいつも通りの僕らのままで、今までとは毛色の違うステップを踏めたんじゃないかなと思っています。
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