2025年2月28日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて、茅原実里のワンマンライブ<Minori Chihara LIVE “Message”>が開催された。2023年夏に山梨県富士河口湖町とのタッグで開催された<富士河口湖町制20周年記念花火大会 茅原実里 LIVE 2023 “We are stars!”>にて音楽活動を再開し、国内外問わず数々のフェスやイベントに出演。昨年には聖地・河口湖ステラシアターにてデビュー20周年を記念した<茅原実里 20th Anniversary Live “Historical Parade”>を成功させた茅原。そんな彼女にとって、このワンマンライブは、音楽活動再開からの2年あまりの活動を総括し、新たな一歩を踏み出す重要なステージでもあった。数々の名曲たちと共にステージに立ち、そこで彼女は何を語ったのか。新たなストーリーを紡ぐ茅原実里の“Message”に耳を傾けよう。
TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY 草刈雅之
茅原実里の都内でのワンマンライブ開催は、活動休止前の2021年に立川ステージガーデンで行われたオーケストラコンサート“Graceful bouquet”以来4年ぶり。開演前の会場には、客入れBGMとして都会の喧騒がうっすらと流れ、どこか緊張感が漂っていた。
開演を迎えると、アコースティカルなBGMが流れ、ステージ後方のLEDモニターには蛍のような光がゆらめく。山本陽介(g、バンマス)、二家本亮介(b)、青山英樹(dr/Rockon Social Club)、柴﨑洋輔(key/PENGUIN RESEARCH)で構成されたCMB(茅原実里バンド)が登場し、BGMに合わせて演奏を始めると、後方の光は線となって文字を描くようにうごめき、“いま、伝えたいことがある。いまだから伝えられることがある。”というこのライブのコンセプトへと変化。最後には“Message”というライブタイトルが大きく映し出された。オルタナ調のバンドサウンドのなかに「Re:Contact」のリフレインが聴こえてくると、拍手と歓声のなか茅原が登場する。その姿はグレーのシックな衣装で、我々がよく知る煌びやか印象とはまた異なる落ち着いたムードだ。そしてスタンドマイクの前に立つと、バンドサウンドのなか「Re:Contact」の最初のフレーズを歌い出した。その出立ち同様に、凛々しくも力強い歌声が会場に響き渡る。この日のCMBのサウンドはオリジナルのストリングス主体のものとは異なり、バンマスである山本のギターと柴﨑のピアノを前面に押したものだった。久々の参加となる山本をはじめ新メンバーで構成されたCMBは、バンドサウンドにより重点に置いたコシの強い音像となっており、そこに溶け込むような茅原のボーカルがパワフルに響く様はとにかく新鮮だ。我々が期待している21年目の茅原実里というものが早くも垣間見え、彼女の強烈なステイトメントとなって耳に飛び込んでくるものがあった。
そんな衝撃的な幕開けの後、LEDモニターに雪の結晶が大写しされれば、鳴らされる曲はアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』で茅原が演じた長門有希のキャラクターソング「雪、無音、窓辺にて。」だ。大歓声と共に白いペンライトが光る客席の向こうで、山本のギターが光るアレンジのなか、茅原は長門のように冷たい印象のボーカルを聴かせる。客席の熱量とステージ上の冷えた緊張感という対比がたまらない。最後には、モニターに見覚えのある少女、長門の姿が映し出されるというこれまた衝撃的な映像演出と共にパフォーマンスが終わる。
青山のパワフルなドラムが響き、茅原が「ここはLINE?」と問いかけると観客が「CUBE!」と応える。そんな会場名でのコール&レスポンスが何度か続くと、「LINE CUBE SHIBUYA、いっくよー!」とお馴染みの号令で「SELF PRODUCER」へ突入。あまりに緊張感溢れる開幕2曲だっただけに、ポップなこの曲に入って少しホッとさせられるものがあった。茅原もハンドマイクに切り替えて前方に躍り出た山本、二家本と共にステージ端へと歩いていく。ピンクのペンライトに切り替えた観客によるサビ前の“大好き!”のシンガロングも聴かれ、彼女のブライトな魅力がここで発揮されていった。そしてキラキラとしたサウンドが印象的な「KEY FOR LIFE」を1コーラス披露すると、そのままメドレー形式で同じ藤末 樹作曲の「FEEL YOUR FLAG」へ。「KEY FOR LIFE」と同じサビメロディが聴かれるこの曲、もちろん客席ではタイトル通りフラッグがはためく。
茅原実里のライブにおける“旗曲”がしっかり聴かれるという、彼女らしいライブ空間が覗かれたかと思えば、ここからはまたボーカルの表情が異なる楽曲が続く。ライブでは珍しい「凛の花」はバンドらしいアレンジとなっており、そこに乗る持ち前の包容力のある歌唱が耳に柔らかなタッチで届いていく。そこからの「みちしるべ」でもドラマチックなサウンドと共に聴こえる、噛み締めるような歌声が温かい。歌い終わって深々とお辞儀したあとは、LEDに大きく空が映し出される中での「会いたかった空」でエモーショナルな歌唱を聴かせる。
MCを挟まずに、再びマイクスタンドを手にして披露されたのはロッキンなサウンドの「恋」。この日のCMBはこうしたロックな茅原実里楽曲と実によく合う。続いてノイジーなギターから始まったのは、アニメ『D.C.II~ダ・カーポII~』白河ななかのキャラクターソング「Glorious Days」。パンキッシュなサウンドで会場を沸かせ、中盤では豪快なワインドアップでタオルを客席に投げ込んだ。
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