REPORT
2025.03.05
2022年4月24日、さいたまスーパーアリーナにて開催された“fripSide Phase2 Final Arena Tour 2022 -infinite synthesis:endless voyage-”において初お披露目となってから、第3期fripSideの活動は約3年の月日が経過した。その間にコラボも含む4枚のシングル4枚のアルバムのリリース、そして47都道府県ツアーを含む数々のワンマンやフェス出演など、八木沼悟志、上杉真央、阿部寿世の3人はfripSideとしての精力的な活動をこなしてきた。
そして2025年2月16日、fripSideは約2年以上にわたって続けてきた47都道府県全国ツアーのフィナーレとして、東京・豊洲PITのステージに立った。上杉、阿部という若いシンガーの成長の場として続けてきたライブハウスツアーの、そして第3期fripSideとして約3年の集大成としてのこのステージで彼らが見せたものはなんだったのか。未来に向かって高らかに鳴らされた唯一無二のデジタルサウンドとオーディエンスの“共鳴=Resonance”、その模様をレポートしていこう。
TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ
開演間近、会場となった豊洲PITの正方形型のフロアには多くのファンが詰めかけている。横に開けた視界には、早くもfripSideのトレードマークであるオレンジ色のペンライトが煌々と輝いていた。そんななか、暗転と共にいよいよライブの幕を開けるオープニングSEが場内に流れ出す。バンドメンバーと八木沼、そして上杉と阿部のボーカリストが続々とステージに向かうなか、客席のオレンジはより光度を増してステージ上へと向いていった。そしてお馴染みの“This desire is bound in the melody”のサウンドロゴと共に始まったのは、第3期fripSideのデビュー曲となる「dawn of infinity」だ。
今回の47都道府県ツアー“fripSide concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024-2025 supported by animelo”では、セミファイナルとなる札幌公演まで1曲目は最新アルバム『infinite Resonance 3』収録の「Starlit Moment」だった。しかしファイナルとなるこの日の冒頭は、2022年4月24日の初お披露目の際にも披露され、現編成でもっとも演奏されたこの楽曲を持ってきた。これにはセットリストを作成した八木沼の中にも第3期始まりの楽曲から、という強い想いがあったに違いない。そしてその冒頭の上杉と阿部からあのメロディが歌われた瞬間、客席からは一瞬どよめきが聴かれたあと、「この曲しかない」という八木沼の思いを汲み取ったかのようにとてつもない歓声をぶつける。そして広大なフロアには、その思いを光にしたようにオレンジ色のペンライトがまばゆいばかりに輝く。そのオレンジの光1つ1つがまるでこの3年間を歩みそのものである――そう思わせるような感動的で圧巻の空間が一瞬にして形成されていった。
そしてステージ上の上杉と阿部はというと、第3期独自のチャームでもあるダンスもキレ良く、どこからリラックスした印象も感じられた。3年前に比べてキチッとした、一方では硬い印象もあったようにも感じられたステージングも、2人の息を合わせながらもその範囲内でそれぞれの動きを見せているようにも見える。こうした2人のフロントアクトの成長をもっともわかりやすく見せるのも、やはりデビューシングルとなった「dawn of infinity」が打ってつけだったのだ。アグレッシブでメロディアスなバンドサウンドと豊かなボーカルを聴かせる「dawn of infinity」のあとは、そのままシングル「dawn of infinity」収録の「Regeneration」へ。分厚さを増したサウンドの中で2人のボーカルが堪能できる1曲。2022年にリリースした最初のシングルから2曲を披露して、改めてfripSideの進化を見せる素晴らしいオープニングとなった。
最初のMCでも阿部と上杉、そしてワンマンでは2024年11月以来の出演となる八木沼が大さとしコールを促しつつ、大歓声のなか自己紹介。その後八木沼が47都道府県ツアーを振り返りながら「たくさんの経験を積んできて、今日は(ボーカリスト)2人とも全力を出し切り、僕とバンドも全力を出し切りますので、今日は最後までよろしくお願いします」と語ったあとは、早くも続いてのセットへ。まずは物悲しいミディアムの「Solitude in Autumn」から。阿部の切ない歌い出しから続く上杉の熱量の高い歌唱と、2人の個性が心地良くリレーされたあと、サビではその2つの声が重なる見事なハーモニーを聴かせる。また最後の八木沼のシンセソロから大島伸彦のギターソロまで、美しい余韻を聴かせる1曲だ。そこから季節は秋から冬へ、「Winterfade」と続く。ステージ上のミラーボールが優しい光を放つなか、客席もまた白いペンライトを光らせる。改めて八木沼によるバラードは絶品だが、そこで聴かせるボーカルも相まってエモーショナルな空間が形成され、これもまた長いアウトロが聴ける最後までうっとりさせる。拍手のなか続いて披露されたのは2023年のアルバム『infinite Resonance 2』からの「Freezing rain」へ。同じバラードでもこちらは2人の高揚していくボーカルが素晴らしい。ミディアム~バラードと3曲続けて、改めてfripSideが持つ豊かなエモーションを堪能できたブロック序盤となった。
そこから阿部がステージを後にして、上杉のソロ曲「Salvation」がスタート。客席も上杉のイメージカラーであるピンク色のペンライトで埋め尽くされる。そのなかでミステリアスな雰囲気のなかで鍵盤をバックに静かで低い歌い出しから、地鳴りのようなバンドサウンドが加わると、上杉のボーカルも一気に力強さを増す。中盤のハイトーンなどシンガー・上杉真央としての著しい成長も感じさせる堂々としたステージだった。
そしてそこから再び阿部も加わって、MCを挟まずにこのブロックが継続される。ここで『iR2』リードトラックの「Invisible Wings」で再びアッパーなビートを取り戻すと、そのまま「killing bites -version2024-」へ。バンド、ボーカル共にまさに噛みつくような獣的アグレッションを聴かせ、爆音のなか長きにわたる中盤ブロックを走破した。3曲目から実に6曲連続という長いセットは、1年前の2024年1月8日に行われた“fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-”でのPhase 3のステージを思い出させるが、そうした休みのないセットをこなすタフさというのも、今の彼らの持ち味となっているのだ。
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