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INTERVIEW

2025.03.04

かわいいだけじゃない!大渕野々花×川谷絵音が生み出したTVアニメ『ベヒ猫』OP主題歌「最上級の心」のSランクに重たい愛の歌に迫る

かわいいだけじゃない!大渕野々花×川谷絵音が生み出したTVアニメ『ベヒ猫』OP主題歌「最上級の心」のSランクに重たい愛の歌に迫る

川谷絵音とのタッグで『ベヒ猫』らしい危うい愛の歌が爆誕!

――その“ANIMAX MUSIX 2024 FALL”のステージで初披露されたのが、TVアニメ『べヒ猫』のOP主題歌となる新曲「最上級の心」。大渕さんがアニメのオープニングを担当するのは初めてです。

大渕 お話をいただいた時は「オープニング主題歌を歌える!」と興奮しました(笑)。オープニングとエンディングでは担っている意味合いが違うと思いますし、前作の「朱く染めて心臓」でエンディングを担当させていただいた時は、次回が楽しみになるような、小説で言うところの読後感を意識しつつ「続きか見たい……!」と思っていただけるような歌をお届けできたらと思っていたのですが、今回はオープニングということで、たまたまテレビを観ていた人にも「あれ?なんだか面白そう」と興味を持っていただけるような、これから始まる雰囲気を満載にした歌声をお届けできたらと思いました。

――しかも今回の楽曲を作詞・作曲・編曲したのが、 様々なバンドや音楽プロジェクトで活躍している川谷絵音さんということで。

大渕 Neruさんの次は川谷さんに書いていただけるなんて……今世に良いことがありすぎるので、私はもう来世には期待していません(笑)。というのもNeruさんは小学・中学時代に出会って大好きになった方、川谷さんは高校・大学時代に出会って大好きになった方で、その時期の私に音楽を通して色んなものを与えてくださった存在なんです。

――大渕さんが川谷さんの音楽のファンであることを踏まえてのオファーだったのですか?

大渕 いいえ、なので余計に驚いてひっくり返りました(笑)。ちなみに「朱く染めて心臓」の時も、私からはまったく何もお伝えしていなかったのでびっくりして。“ANIMAX MUSIX 2024 FALL”でこの曲を初披露した際には、歌う前に川谷さんのお名前を出したところ会場がざわついて。そんな方に楽曲を書いていただいて本当に光栄です。

――今回、制作はどのように進められたのでしょうか。アニメ主題歌なので川谷さんも作品に寄り添ったものを意識して制作したと思うのですが。

大渕 楽器レコーディングを見学させていただいた際に川谷さんとお話しさせていただいたのですが、転生アニメ・異世界ものがすごく好きで「以前から主題歌を書きたいと思っていた」とおっしゃっていて。なので川谷さんならではの恋愛要素の入ったソングライティングでありながら、やっぱりどう考えても『ベヒ猫』の歌になっているんですよ。その意味では多方面の人に色んな刺さり方をする楽曲だと感じました。

――大渕さんは『ベヒ猫』にリリ役の声優としても参加していますが、この楽曲のどんな部分に『ベヒ猫』らしさを感じましたか?

大渕 まずサウンドの面で言うと、今回は川谷さんに馴染みのあるミュージシャンの方々が演奏を担当してくださったのですが、楽器録りの際の空気感がまさしく冒険者パーティーだったんです。『ベヒ猫』では登場人物のみんなが戦う時に真剣に敵に立ち向かうように、レコーディングの最中は良い緊張感の中で皆さん1つ1つの音にこだわって臨まれていたのですが、休憩時間になるとすごく朗らかな空気感になって、私にも優しく話しかけてくださって。それが『ベヒ猫』のパーティの日常シーン、出会う人たちに優しく接するところともすごく重なりましたし、レコ―ディングされた音を聴いても、見事な連携プレーで色んな音が聴こえてくるサウンドを生み出してくださっていて。そういう部分に『ベヒ猫』らしさを感じました。

――歌詞の面で言うと?

大渕 この曲の歌詞は全体の印象として、危うさも孕んだ勢いのある愛を感じさせる内容になっていると思うんです。“穏やかな愛”“温かな愛”“かわいいだけの愛”ではなくて、どこか「おやおや?」となるような、手放しでは喜べない危うさを感じさせるところがあって。そこがヒロインのアリアちゃんをはじめ、色んなキャラクターたちの過激な愛を象徴している楽曲だと思いました。ワード1つ1つを拾い上げても、“生まれ変わっても最新回を一緒に見ようよ”は転生アニメらしさを感じますし、“傷”というワードが散りばめられているのも、冒険には付きものの物理的な傷を思わせると同時に、精神的な傷と愛の話にも捉えられる内容になっていて。ダブルミーニングどころか色んな意味合いで聴けるところが素敵だと思います。

――そう、パッと聴きはアイドル然としたキュートな楽曲かと思いきや、どこか行き過ぎた愛の歌というところに、前作のシングルで小林 私さん提供の「夢.jpeg」というクセの強い楽曲を歌っていた大渕さんらしさを感じました。

大渕 ありがとうございます!多分そういう部分が一番出ているのが2番のラップのパートで、ここは私もこだわりをもって臨みました。最初は川谷さんが作るラップ楽曲のイメージ、淡々としていて抜け感がある、いい意味で抑揚を引き算したラップが浮かんできて、ファンだからこそ「私もあの曲っぽくやりたい!」と思っていたのですが、声優・大渕野々花がアニメのOP主題歌を歌わせていただくのであれば、セリフめいたニュアンスがこもっていたほうが、よりアニメのことを考えたものになるのかな、と思い直しまして。川谷さんがこれだけ『ベヒ猫』のことを思って、最上級の心をもって書いてくださったのであれば、私自身も『ベヒ猫』のオープニングとしてより良い歌い方を考えなくてはならないと思って、川谷さんらしさと声優である私が歌う曲としてのセリフ感のバランスにこだわって録りました。

――そこは主人公のアリアの二面性と言いますか、ベヒーモスのタマに対する過剰な愛情を意識して歌ったのですか?

大渕 はい。原作を読んだ時に感じたアリアちゃんの過激さ、さらに他の登場人物の意外性や過激な一面もすべて踏まえられるといいなと思って。そのどれかを強く意識するというよりも、すべてをふんわり意識する感じで臨みました。

――1番は基本的にキュートな歌い方をされていますが、2番のラップパートでより過激になっていく対比が素晴らしいなと思って。

大渕 レコーディングに際して考えていたのは、アリアちゃんたちに迫られてすごく困っているタマちゃんの「や、やばい……!」という反応で、タマちゃんがタジタジになるような歌い方になるよう意識していました。

――特に“ああ、もう我慢できない”と繰り返す箇所の、だんだん気持ちが高ぶって我慢できずに想いが溢れ出すようなアプローチが最高でした。

大渕 ありがとうございます!あの部分に関しては、最初はもっとラップっぽいアプローチで抑揚をつけていたのですが、もっとしゃべる感じで歌ったほうがいいかも?と思いまして。よりセリフっぽく「我慢できない」とはっきり言うように叫ばせていただきました。

――イントロの「ヤーッ!」という掛け声もキャッチーでいいですよね。

大渕 そうなんです!私も初めて楽曲を聴かせていただいた時に、すごくトリッキーなイントロだと思っていたら、急に掛け声が入ってきたので、「ええっ、何これ!」と思って。そうしたらすごくかわいいサビが始まったので、もしこの楽曲を擬人化したらすごくモテそうだなと思いました。

――モテそう?それはどういう意味ですか……?

大渕 すごく印象的でキャッチーなので、瞬間的な求心力を持っているけれども、一度会っただけではどんな人なのか全貌が把握しきれないので、また会いたくなってしまう人と言いますか。つまりは「もう一度聴かせてください!」となってしまうような部分もあれば、掴みきれないところもあるし、聴く度に発見がある。その意味でまさしくモテる曲だと思いました。すごく奔放な曲だと思います。

――なるほど!それはいい例えですね。実際に聴けば聴くほど深みが感じられて、ラスサビの“生まれ変わっても最終回を一緒に見ようよ”という部分は、愛が強すぎてすごい曲だなと思いました。

大渕 その前の“傷だらけだけど痛くない あなたがいれば大丈夫”の部分は、私の声優という職業に対する気持ちを思い出して一番気持ちが入りました。子供の頃から憧れていた世界、念願が叶っての声優活動なので、今はすべてが楽しいのですが、例えば異常なまでの喉の渇きとか大変なこともあって(笑)。でも「このお仕事をできること自体が幸せだから大丈夫!」と思えますし、その自分が抱いている人生における真っ直ぐさみたいなものを、このフレーズに重ね合わせることができて。「きっとこういう気持ちで“あなた”のことを歌っているんだろうな」と感じながら歌うことができました。

――いい話ですね。

大渕 しかも、歌詞の中に1回しか出てこないんです。繰り返されるわけではないからこそ際立つ切実さがあって、本当に大事なことを言っているんだと思いました。もちろん繰り返されるフレーズもキャッチーで大切ですけど、このたった一度きりのフレーズが本音なんだろうなと思って。すごく刺さりました。

――この楽曲のタイトルにちなんで、大渕さんが思う“最上級”の愛を感じるものについて聞いてみたかったのですが、今の話からするとそれは“声優のお仕事”になりますか?

大渕 確かに!でも、私、「最上級のものはなんですか?」と聞かれたら「それはやっぱり辛いものでしょ!」と思っていました。今のお話を聞いたらそんなことは言えなくなっちゃいましたけど(笑)。

――いやいや、辛いものの話も聞いてみたいです(笑)。

大渕 、私にとっての最上級の愛しているものは激辛料理です!(笑)。本当に大好きで、何も考えなければ毎日食べてしまうくらいなんです。今は私の胃に対して最上級のいたわりが必要だと思い始めているので制限するようにしているのですが、お店に入ってメニューに唐辛子マークとかが付いているものがあると、ついついその料理を頼んでしまって。でも、激辛料理と同じくらいホットな気持ちを持ってお仕事を愛しているのも本当です!

――上手くまとめましたね(笑)。

大渕 ヤバい!きれいにまとめ過ぎて嘘くさくなっちゃったかも(笑)。

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