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2025.02.20

結束バンド、キャスト4人による演奏が実現!刹那の煌めきが詰まった初アリーナワンマン「結束バンドTOUR “We will B”」レポート

結束バンド、キャスト4人による演奏が実現!刹那の煌めきが詰まった初アリーナワンマン「結束バンドTOUR “We will B”」レポート

結束バンドによるライブツアーの追加公演「結束バンドTOUR “We will B”」が、2月15日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザメインアリーナで開催された。TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の劇中バンドとして誕生し、今やロック系の音楽フェスにも出演する人気アクトとなった彼女たちにとって、初めてとなるアリーナ会場での単独公演。キャストの青山吉能(後藤ひとり役)、鈴代紗弓(伊地知虹夏役)、水野朔(山田リョウ役)、長谷川育美(喜多郁代役)、そして音源収録と同じバンドメンバーが勢揃いし、これまでの総決算にして次の未来に繋がる素晴らしいライブを届けた。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 田村 与

アニメの名シーンをバックにした今までにない結束バンドのステージ

チケットは完売して会場は満員御礼、さらに劇場でのライブビューイングやストリーミング配信も行われた今回のライブ。開演前BGMとして邦楽ロックの楽曲が多数流れるなか、アニメ音楽のファンにも馴染み深いであろうクイーン「We Will Rock You」が流れ出すと、観客は手拍子を打って始まりへの期待を高めていく。ツアータイトルの“We will”にもかけつつ、バンドの意気込みをそのまま伝える粋な選曲だ。そして楽曲がブライアン・メイのギターソロのパートに差し掛かり、伝説的ギターヒーローの演奏が大音量で鳴り響いたところで、結束バンドのライブではお馴染みのブルージーなSEに切り替わってついにライブが開幕する。

まずステージに登場したのは、三井律郎(Gt)、比田井 修(Dr)、高間有一(Ba)、akkin(Gt)から成る演奏メンバーたち。結束バンドの音源の演奏(レコーディング)および編曲を担当してきた、オリジナルメンバーと言うべき面々だ。そしてステージ背面の大型スクリーンにTVアニメ第1話「転がるぼっち」の冒頭のシーンをはじめとしたアニメのダイジェスト映像が映し出されるなか、バンドはその冒頭シーンを彩っていた菊谷知樹による劇伴曲「私なんか」をゆったりと奏で始める。バンドのロゴを背負ってきたこれまでのツアーとは明らかに異なる、アニメーションとリンクした演出が、本公演が特別なものになることを予感させる。

そして三井がライトハンド奏法を交えたテクニカルなギターソロを披露して会場を沸かせると、結束バンドのメインボーカル担当・喜多郁代役の長谷川育美がステージに登場して、TVアニメのOPテーマ「青春コンプレックス」でライブ本編の幕を開ける。グレー系のシックな衣装に赤い髪飾りを指し色に入れた彼女は、のっけから気合いの漲った歌声を会場中に解き放ち、サビでは観客も大合唱して熱狂。スクリーンに映し出されたアニメのオープニング映像もライブの始まりを熱く盛り上げる。ラストに長谷川が「結束バンドです」とひと言告げると、そのまま流れるように次曲「ギターと孤独と蒼い惑星」へ。ステージからは火柱が上がり、照明による光線が縦横無尽に放たれる。アリーナ会場ならではの派手な演出の数々に、結束バンドがビッグな存在になったことを改めて実感できた瞬間だった。

だが、結束バンドは決してハングリー精神を忘れない。長谷川のいつも以上に逼迫感を感じさせる歌唱が“何者か”になりたい強い気持ちを星まで届けると、続く「ひとりぼっち東京」では胸の内に宿した“青い炎”を熱く燃え上がらせる。その情熱と冷静を併せ持った青を引き継ぐように、長谷川とバトンタッチしてステージに登場したのが、結束バンドのベース担当・山田リョウ役の水野朔。tricotの中嶋イッキュウが楽曲提供したTVアニメ第4~7話のEDテーマ「カラカラ」を、アニメのエンディング映像をバックにしながら、時に儚く、時に力強く、リョウらしいミステリアスな二面性を湛えたアプローチで表現していく。

その後のMCで「下北沢から来た結束バンドです!」と挨拶した水野は、「こんなにもたくさんの皆さんの前で、結束バンドの一員として立てることが、とてもとても幸せに思っております」と感謝の気持ちを伝えると、続いてツアーに向けて制作されたEP『We will』より、大木伸夫(ACIDMAN)が書き下ろしたリョウのソロ歌唱曲「惑う星」を披露。高間による凶暴極まりないベースソロで幕を開け、バンドのアグレッシブな演奏と水野の前曲よりパワフルさを増したボーカルが会場を高揚感で満たしていく。

そして現実の下北沢の街並みを捉えた実写映像がインタールード的に挿まれて、再び長谷川がステージに立つと、谷口 鮪(KANA-BOON)が楽曲提供したTVアニメ第1~3話のEDテーマ「Distortion!!」へ。冒頭3曲でのシリアスな表情から一変、笑顔を浮かべながら楽しそうに歌う彼女の姿に、会場も満面の笑みとクラップで応える。スクリーンに投影されたエンディング映像のかわいらしいアニメーションも込みで、結束バンドおよび喜多ちゃんのポップで愛らしい一面を感じられる瞬間だった。

続くMCで、ライブの冒頭から気持ちが高ぶってしまい、一旦ステージからはけた時に裏で自分に「落ち着け」と言い聞かせたものの、結局「Distortion!!」でテンションが上がってしまったと語る長谷川。「まだまだ序盤なので、早速次の曲を聴いてください」と告げて、結束バンドの楽曲の中でも随一の爽快さを誇る「僕と三原色」を披露する。後藤ひとりのイメージカラーであるピンクと、色の三原色でもある伊地知虹夏のイエロー、山田リョウのブルー、喜多郁代のレッドが混然一体となっていく映像、その4色を強調した照明、終盤でシャボン玉が飛ぶステージ演出も素晴らしく、彼女たちの青春を感じさせる1曲になっていた。

そこからEP『We will』より石原慎也(Saucy Dog)提供の喜多郁代のソロ歌唱曲「milky way」に繋げ、満天の星空や無数の流れ星を彷彿させる映像と光の演出と共にロマンチックな歌声を会場いっぱいに広げると、再び下北沢の風景映像を挿み、今度は結束バンドのギター担当・後藤ひとり役の青山吉能が登場。同じくEP『We will』より、佐藤千亜妃が書き下ろした後藤のソロ歌唱曲「夢を束ねて」を届ける。スクリーンには歌詞にも描かれている“茜色(=夕方)”の景色が映し出されるなか、青山は言葉の一つ一つを大切に噛み締めるように歌い紡いでいく。オレンジとピンクが入り混じったような夕景の色合いのもと、柔らかに歌う彼女のおろし髪にしたシルエットが、後藤ひとりそのもののようにも見えて、何だか胸が温かくなる。

再び長谷川にスイッチするとバラード調の「秒針少女」を切々と歌唱。冒頭の一節をakkinのアコースティックギターのみを伴奏に歌う場面もあり、改めて長谷川の歌唱力と歌心を感じさせる名演だった。そして訪れた熱狂の時間。三井が「秒針少女」のしっとりとした余韻を切り裂くように、TVアニメ第8話「ぼっち・ざ・ろっく」の結束バンド初ライブのシーンで後藤が弾いたアドリブのギターソロを再現すると、そのまま「あのバンド」へと雪崩れ込む。炎やスモークの演出を交えながら、ある種の陶酔感を感じさせる熱いパフォーマンスが観客の心に火を付け、リミッターを越えて加速していく。あの日のSTARRYで繰り広げられた何十倍もの広さの会場で、何百倍あるいは何千倍ものオーディエンスをエキサイティングさせる光景は圧巻のひと言だ。さらにその結束バンド初ライブの3曲目に披露された楽曲という設定で制作された『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』のOPテーマ「ドッペルゲンガー」をアニメの映像を背にしながら披露。幻だったあの日の光景が補完されていくかのごとき体験だった。

次ページ:キャストによるバンド演奏も!サプライズ尽くしのWアンコール

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