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INTERVIEW

2025.02.21

「ビビリの気ぃ遣いい」なナナヲアカリが新曲に込めたのは「絶対に残業したくない」という思い!?「明日の私に幸あれ」リリースインタビュー

「ビビリの気ぃ遣いい」なナナヲアカリが新曲に込めたのは「絶対に残業したくない」という思い!?「明日の私に幸あれ」リリースインタビュー

ノスタルジーと今がリンクする「わかんないセブンティーン」

――カップリング曲として今回のシングルにはご自身が作詞作曲、タイヘイ氏による編曲の「わかんないセブンティーン」が収録されています。

ナナヲ 昨年やっていた“ナナヲアカリワンマンライブツアー「BLUE×PINK」”の最終公演の日、私の誕生日に配信リリースした曲です。バンドメンバーでバンマスの(黒田)タイヘイさんの編曲で、思い入れもあったので配信だけだとちょっともったいないという……。それで半分私のわがままで入れてもらいました(笑)。

――モチーフや風景がはっきりと存在する楽曲ですが、どのように作詞作曲されたのでしょうか?

ナナヲ 私が20代ラストの1年を迎える29歳の誕生日の日にリリースする曲だったので、すごく人生を振り返りながら作りましたね。人生で一番楽しかった、無敵の状態だった時期ってやっぱり17歳辺りだったなと何度思い返しても思うので、まだその時の感覚が残っている間に曲にしておこうと思って書きました。

――歌詞には仰る通りの無敵感がありました。でも音とメロディは過ぎ去ったものの風景というか、ぼやけ始めている感じがして。

ナナヲ セピア感めっちゃ出てますよね。

――今10代の子が聴けば真っ直ぐに自分たちのことのように捉えられるでしょうし、それを経た人間からするともう自分の手からこぼれ落ちたもののようにも聴こえます。音的にはどこか懐かしい感じもあって。

ナナヲ ちょっとローファイで一昔前のものが若い子たちの間でも流行ってるじゃないですか、Y2Kしかり。自分の感覚でいうとそういう過ぎたものが今のセブンティーンとちょうどリンクするなって思い、古っぽく聴こえるけど古く感じないラインを目指してタイヘイさんと話し合いながら詰めていきました。

――渦中であり途中の感情を成長してしまってから書くのは難しくないんでしょうか?

ナナヲ 難しかったというか……。最初はサビの歌詞がもっと達観した感じだったんですが、Aメロの若い部分から急に説明になっちゃってたというか……なんだろう、ちょっとちぐはぐになっちゃって……。それこそ「キュートフィクション」のような、伝えたいメッセージを含んだ大人びたことを言ってしまっていて。これは達観しすぎだなと思い、昔の自分に意識を巻き戻して書き直したんです。「当時の私は絶対こんなにわかってなかったわ」みたいなことを考えながら。

――10代を振り返った時に、今の自分とあまり変わらない感覚でもいれてしまうから「まぁ高校生の自分でもこれくらい考えてただろう」と思ってしまうんですけど、ちゃんと向き合うと「いやもっとバカみたいだった気がするぞ」となりますよね。

ナナヲ そうなんですよ!感覚はずっと自分だから、同級生とかと会うと14歳くらいのテンションで話しちゃうんですけど、やっぱり精神性は限りなく大人になっていて。(歌詞を書いている最中に)「危ない危ない」って当時の感覚に立ち返るようにしていましたね。

――立ち返るためにやったことはありますか?

ナナヲ 当時の写真を見たり、とっておいたノートを見たりとか……黒歴史に触れる感じでしたね(笑)。私は女子校だったので歌詞の“校庭で見かけたあの人が眩しくって死ねるの”とかはフィクションなんですけど、精神性としては「些細なことで傷ついて些細なことでときめいてた」みたいな歌詞にしました。女子校だったから尚更、理科の先生とか訳わかんない理由で人気だったりするんですよ(笑)。「痩せてる」とか「色が白い」みたいなしょうもない理由で「めっちゃかっこいい!!」って。そういう時代でしたね。

――逆に「些細なことでの傷つき」はどのような?

ナナヲ 友達のことを呼んだけどリアクションがなかったことに対して「無視された」と思ってその日1日話かけられなかったり(笑)。それで「私なんかしたっけ!?」ってぐるぐる考えて疑心暗鬼になって。それで翌日に普通に挨拶したら「おはよー!」って返ってきて、「良かった、無視されたんじゃなかった」……って。他にも歌詞にローファーとかスカートのプリーツとかが出てくるんですけど、当時はママがちゃんと靴磨いていきなさいって言ってきたりとか、アイロンかけてプリーツをきれいにしてくれたりしたんですけど、ちょっとかかとをつぶしてたほうがオシャレとかあって、わざとプリーツをぐちゃぐちゃにしてスカートを折ったりとか。そういう当時の思いが散りばめられてます。

――ちなみに当時のナナヲさんは、学校の中でどんな立ち位置にいたんでしょうか?

ナナヲ 私は本当に中間にいて。陽キャすぎるところに居続けるとなんか合わなくて、ちょっと変な空気になっちゃうこともわかってたから回遊魚のように(笑)。いつもその時々のちょうどいいところにいました。

――「わかんないセブンティーン」で描かれているこの子は、どこにいるんだろうと思ったんですよ。

ナナヲ 人気者ではないですね(笑)。ちょうどいいところにいる子なんだと思います。中間、当時の自分と同じです。

――ボーカルレコーディングで気をつけたことなどはありますか?

ナナヲ これは本当に、1ミクロンの力みもなく歌うことですね。感情的なものというよりかはサウンド面との調和のことを考えて、脱力して、脱力の中にもかわいさと切なさを内包できる歌になるように心がけて歌いました。

――自分がもうそこから離れた大人だからといって、エモを乗せてしまっては違いますもんね。

ナナヲ そうですね、それはクドいじゃないですか。(曲の中で描かれる)この子はなんもわかってなくていいなっていう。

――現役の若いファンの方にしても、過ぎ去った世代の方にしても、受け取り方に正解はないと思うのですが、どう届いたら嬉しいなどはありますか?

ナナヲ ドンピシャ世代の子、今学生をやっている子には「私の曲だ」って思ってもらえたらいいですね。「やっぱりみんなこういうこと思うんだな」なのか「私の曲がある!やったー!」なのかはわからないですけど、自分の歌だと思ってもらえたら嬉しいです。過ぎ去った人は過ぎ去った人で、例えば男性だったら全然わかんないことなのかもしれないですけど、歌詞じゃなくて曲が持っている雰囲気を楽しんでもらうほうが心地良い曲なのかなと思います。深く考えるというよりも空気のように流れているというか、自分がたまに思い返す思い出くらいうっすら流れているものという立ち位置の曲になったほうが「わかんないセブンティーン」がその人にとって長生きしそうな気はしています。

――確かに向き合いすぎると切ないまでいきますけど、なんとなく流れているぶんにはノスタルジーって心地良いもののはずですもんね。

ナナヲ そうですね、「あったなぁ」くらいでいいんじゃないかと思います。「二度とは戻らない」みたいな重たい感じではないので。

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