声優アーティストとしてそれぞれ確かな実力と人気を誇る東山奈央と安野希世乃がタッグを組んだユニット・ぽかぽかイオンが再始動!3年ぶりの2ndシングル「リミー」をリリースする。TVアニメ『Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます』(以下、『ベヒ猫』)のED主題歌として制作された楽曲の他、2人が作詞と作曲を担当した楽曲も収録されている。それぞれの曲の制作プロセスを聞くとこのユニットに対する2人の想像以上のコミットぶりや互いの親密さが伝わってくる。テンポよく進む“ぽかぽかでイオイオ”なインタビューをお届けしよう。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
――ぽかぽかイオンは春になると活動をするユニットだと公式結成された3年前に伺って以来、毎年春が近づく度に活動を心待ちにしていました。まずは今回の再始動の経緯について聞かせてください。
東山奈央 リリース自体は3年ぶりにはなるのですが、Instagram LiveやXスペースで配信などはしていたんですよ。
安野希世乃 あとは私の2024年3月のソロライブ“安野希世乃 4th LIVEツアー 2024 ~まるごとしぼり100% Re:FRESH~”に奈央ちゃんにゲストとして出演してもらって、ぽかぽかイオンの「やじるし→」を歌ったりと我々の中では火種を絶やさず、ゆるゆると過ごしてきたんです。
東山 「2人が集えばそこはぽかぽかイオンです」というスタンスで、本当に楽しくやらせていただいてきました。あとは折に触れてスタッフの方にもぽかぽかイオンでまた音楽活動をしたいという気持ちを伝えていたところ、今回ご縁があって『ベヒ猫』のED主題歌を担当させていただけることになり、満を持しての2ndシングルリリースという運びになりました。
――お仕事だけではなくプライベートでも互いをよく知っているお二人だからこそ、火種を絶やさずユニット活動を継続できたと言えそうです。
東山 そうですね。プライベートの延長線で生まれたようなユニットなので、仲良く居心地のいい空気感がぽかぽかイオンにはあると思っていますから。
安野 その空気感はこれからも大事に育てていきたいし、私と奈央ちゃんが作る“ぽかぽかでイオイオ”なフィールドを領域展開して、一緒に気持ち良く、楽しくなってもらえる場所を作ることを目指していきたいです。
東山 もちろんお仕事なのでしっかりやるんですが、緊張感とはまた違うリラックスした空気感に皆さんを巻き込んでいって、みんなで幸せになろうねと。
――ご自身でもその活動を楽しみにできているのでは?
安野 そうですね。今作「リミー」のジャケット周りを撮影する時には私たちの希望を反映していただいて、泊りがけの撮影合宿を組んで頂けて。特典のフォトブックは古民家宿で撮影したんです。あれはご褒美のような2日間でした。
東山 入口に立った瞬間に木の良い香りがしてくる素敵な古民家宿さんだったんです。そこで実際に寝泊まりをして、希世乃さんと布団を2つ並べて寝る直前まで一緒にお話しながら1泊2日の楽しい旅をさせていただきました。
――では、そんな「リミー」について伺っていければと思います。MVでは「Re-me」との表記も見られますが、タイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか?
東山 作詞・作曲・編曲をしてくださった白戸佑輔さんが曲名を決めてくれたんです。白戸さんいわく「Re」が「生まれ変わる」、「me」が「自分自身」ということでした。TVアニメ『ベヒ猫』の主人公である騎士様が転生してアリアの元で新たな生活を始める際に、ただ生まれ変わるのではなく、アリアが側にいるからこそ自分の存在に新たな意味が与えられていく。そんな作品の要素に重きを置いてこのタイトルにしたそうなんです。(曲をもらった時についていた)メモ書きには「自分をやり直すのではなく、大切な人の側で自分が変わっていくという温かさを込めたタイトルです」と書かれていました。
――隣にパートナーがいることで自分自身が刺激を受けて変わるという意味では、ぽかぽかイオンのお二人とも通じる部分がありそうです。
安野 そうですね。私はあらゆる場において奈央ちゃんから刺激を受け取っているといっても過言ではありません。奈央ちゃんは自分自身を表現するのがとても上手なんです。どんなシチュエーションでも自分を見失わず、色んな空間に合った東山奈央が自然と湧き上がってくる感じがあって。そんな姿から受け取っているものがたくさんありますし、ぽかぽか担当の奈央ちゃんがそういう表現をするなら、イオン担当の私としては別の角度から行ってみようみたいなことも考えさせられて。対照的になるにはどんな表現をすれば良いか、位置づけを考えるヒントをいつも頂いています。
東山 希世乃さんは私の良いところをたくさん話してくれましたけど、私としてはそのままそっくりお返ししたいくらいで。希世乃さんは私が気づかなかった部分にたくさん気付いてくれて、「それは思いつかなかったな」と思わせてくれるんです。結果的にお互いが持ち寄ったものを組み合わせることでより良いものが作れているシーンがたくさんあって、息ピッタリで。希世乃さんとこうしてバディを組ませてもらっていることが本当に人生の宝物すぎます!お互いに持っている要素が違ってデコボコではあるのですが、大事にしているところは似ていて、パーソナルな部分で同じ方向を向いて生きてる夫婦みたいな感じ(笑)。トークの相性も良くて、本当に希世乃さんが相方で良かったなと思います。
――素敵なコメントをありがとうございます。「リミー」はミニマルに始まって、2番からはストリングスが入り、ピアノロックのように展開していきます。曲の印象はいかがでしたか?
東山 最初はアニメのED映像を作るためのデモ音源を1コーラスだけいただいたんです。その時は打ち込み音源になっていたのですが、その後本番用にいただいたフルコーラスの音源は生楽器で演奏した曲に差し替わっていて。それを聴いた時は音の分厚さや豪華さに驚きました。
安野 私は生演奏用の弦の収録を見学させていただいたんです。そこで広がりがありつつ包みこまれる素晴らしいカルテットに感動しました。絶えず流れていく近未来的な一定のリズムがある中でピアノや弦が躍動し、音の密度も精度もある。メリハリがとても効いた曲だなと思いました。
――レコーディングでのディレクションで印象に残っているものはありますか?
東山 「アラジンみたいにマジックカーペットに2人で乗って、ワーッと街中や大自然の中を自由に飛び回るように」と、ディレクションしていただいたのを覚えています。この曲にぴったりな表現で、景色が一気に掴めました。
安野 カーペットの上にいるんだけど実はすごい速度で進んでいて、周りの景色がキラキラ流れていく疾走感のある光景のイメージをしましたね。あとは「異空間にいるのかな」と思うぐらいの広い空間にいながら、その中にいる私たちは息がかかるくらいの近さにいるイメージもあって。その広さと近さのギャップが印象的な楽曲だと思いました。なので肌触りさえ感じられそうな距離感を大事にしながら、歌としては結構息っぽく、距離を意識しながら歌いましたね。
――冒頭のブレスなど、すぐ側にいるかのような温かさを感じられました。
安野 聴いてくださる方と私と奈央ちゃんがすごく近くにいる感じを受け取っていただければと思っています。そこはタイアップ作品のスキンシップの多さと絡めた部分でもあります。
東山 『ベヒ猫』の監督さん(平川哲夫)が第1話のアフレコの際に「みんなにオキシトシン(スキンシップなどによって分泌される幸福感を覚える脳内物質)を感じてもらえるアニメにしていきたいです」とおっしゃっていて。仲間との絆やスキンシップも楽曲の1つのテーマになっていると思います。なので本楽曲のMVは決して「わざとイチャイチャ感を出している」のではありません(笑)。普通は誰かとあの距離感になったらやっぱり照れとか気まずさが生まれちゃうと思うんですけど、我々はずっとこのままでいられるくらい落ち着く感覚があって、そうした幸福な部分が映像に詰まっています。
安野 奈央ちゃんは強く抱きしめたら壊れちゃいそうだから、私としては繊細に取り扱いたい思いもあって最初はドキドキでした。
――MVではパントマイムのシーンも印象的でした。お二人の関係性あっての演出だったかと思います。
安野 あのシーンの最初はフレームがあるだけで、そこで何をするかは私たちに委ねられていたんです。そうしたら奈央ちゃんがリードしてくれて、「まず手を合わせて……」とパントマイムの動きをその場で作ってくださったんです。
東山 ぽかぽかイオンでの活動やワルキューレでの経験も踏まえて、お互いにやりやすい動きがわかるので提案もしやすくて、その場で演出を作り上げていきました。お互いの距離感や呼吸も息もピッタリ合って、ちゃんとそこに1枚の透明なパネルがあるように見える動きを作ることができました。
安野 時間が限られた中で仕上げなければいけないタイミングだったからこそ、より2人のバランス感覚の良さみたいなものを感じましたね。これは共演経験がある息の合う2人でないと生み出せないクオリティだったと思います。本当に、奈央ちゃんに助けられました。
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