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INTERVIEW

2025.02.14

キャラクターの担当声優ってどう決まるの?ユニットは?――5年ぶりの単独ライブ控える『温泉むすめ』の場合

キャラクターの担当声優ってどう決まるの?ユニットは?――5年ぶりの単独ライブ控える『温泉むすめ』の場合

目下、毎週のように全国各地でキャラクターを演じる声優が出演する大型ライブやイベントが開催されている。しかしその声優がどのような流れで決定されるのか、詳しく知るファンは少ないだろう。
今回は温泉地をモチーフにした地域活性化プロジェクト『温泉むすめ』でプロジェクト全体を統括する総合プロデューサーの橋本 竜と、声優が携わる業務全般(音声収録やイベント)などに携わるキャスティングプロデューサーの吉村尚紀による対談をお届けする。同プロジェクトの130いる“温泉むすめ”のキャラクターにそれぞれ存在する声優はどう決まるのか、ユニットはどのように結成されるのか。そして2025年3月15日に東京・飛行船シアターで開催される、約5年ぶりの単独音楽ライブ“温泉むすめ ライブ「FUSION☆FUSION!!」”でデビューする新ユニット・VUCCAについても語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY はるのおと

『温泉むすめ』キャスティングの3つのパターン

――『温泉むすめ』では、どんな流れでキャラクターの担当声優が決まるのでしょうか?

橋本 竜 その話をするために、まずはキャラクターを作る過程から説明しますね。最近は温泉地さんの方から「自分たちの温泉地のキャラクターを作りたいです」というご連絡をいただいてから作り始めることがほとんどです。その後、所定の審査を経て、提携している原作ライターたちに基本的なプロフィールを作ってもらい、その設定案をベースに温泉地さんと検討してキャラクターの設定を完成させます。それを元にキャラクターのコンセプトや設定と相性が良さそうなイラストレーターさんを探して発注、ラフが上がったタイミングで吉村さんと相談して声優のキャスティングを始めます。ただ、キャスティングの流れにも3つパターンがあって、その1つがオーディション。吉村さんが各声優事務所にラフや設定、キャラクターの代表セリフ等をお伝えして、事務所から推薦いただいた方々の課題セリフが収録された音声データ(通称:オーディションテープ)を聴いて選んでいくというパターンで、温泉地でのエピソードやダンス動画、歌唱サンプルなど自己アピールを織り交ぜてエントリーする方もいます。

『温泉むすめ』キャラクターラフ

――何社くらいに声をかけられるんですか?

吉村尚紀 絞り込む時は20社ぐらいにすることもありますが、全方位に新たな逸材を見つけたいときは100社以上に声がけすることもあります。ありがたいことに参加したい方がたくさんいるプロジェクトに成長できましたので、もし人数無制限に各社から推薦いただくとしたらおそらく1,000名以上の応募がくると思いますが、その全員を審査するのも大変で。だから『温泉むすめ』のコンセプトに合うような方を事務所に少し絞り込みをお願いして事務所の推しを何名か出していただいています。

――そのコンセプトに合うという点についてはあとで詳しく伺うとして、1キャラクターあたり、何人くらいオーディションされていますか?

吉村 もちろんキャラクターによってエントリー数に違いは出ますが、オーディションとして声がけした際、応募があった方は全員検討していまして。そこから絞り込みしていくと最終的に検討するのはだいたい3~5人くらいですね。

橋本 2つ目のパターンとして、こちらから指名をさせていただくこともあります。例えば出身地やその土地に所縁があるなど地域性を重視する場合で、山中湖温泉の温泉むすめ山中湖 忍の時は山梨県出身の河野ひよりさんにお声がけさせていただきました。

吉村 彼女に関しては、「『温泉むすめ』になりたい」と言っているという噂が僕の耳に入っていたのもありました。

橋本 事務所などを経由してそういう話を聞くことは意外と多くて。南房総日由美役の徳井青空さんは自分が別現場にいるときにご要望をいただきました。3つ目として吉村さんから推薦いただくパターンもあります。『温泉むすめ』は2025年で8周年を迎えますが、温泉地を継続的に盛り上げるためにできるだけ長くプロジェクトを続けたいと考えていまして……。そのため、現時点で第一線で活躍されている方ももちろんありがたいですが、伸び盛りというか、伸びしろのある方をアサインしたいという思いが最近はあります。なので、他の案件などで将来的に起用が決まっている情報やイベント出演情報などを幅広くキャッチして、検討材料としています。

吉村 僕自身、音響制作やキャスティングをする株式会社オブジェクトの代表でもあるので、そこで培っているお付き合いや情報網が役立っていますね。

――オーディションの流れは『温泉むすめ』が始まって8年の中で変化していますか?

吉村 最初にできたユニットであるSPRiNGS(すぷりんぐす)の9人を決める時は全方位の事務所に声をかけてたくさんの候補者をイチからオーディションをしました。そして、ある程度絞り込んだ方を二次オーディションとしてスタジオオーディションに来ていただき、演技・歌唱審査の後、面談をして人となりも含めて検討をしました。これが一番カロリーをかけたケースです。近年はオーディションをすることもあれば、「この人にこの役をお願いしよう」と声がけするケースもあり、比率としては半々といった感じですが、どちらにせよ必ずお会いして面談はしています。

『温泉むすめ』のキャスティングで一番重視されるのは……

――面談ではどんな話をされるんでしょうか。やはり温泉にまつわる話とか?

橋本 確かに「温泉は好きですか?」とか、あとは温泉にまつわるエピソードを聞いたりはします。それで「家族や友達と行きました!」とか「あそこの温泉に行ったことがあります!」とか、そういうエピソードトークが出てくるかどうかは気にしています。やはりラジオやイベントなどでご自身の温泉体験や思い出について話してもらう機会もありますので。

――では『温泉むすめ』ならではのキャスティングの特徴や選ぶ基準はありますか?

橋本 抽象的な答えになってしまいますが、一番の基準は人柄です。マナーや受け答えがしっかりしているとか。ある意味、人間力と言い換えられるかもしれません。重視する理由としては、温泉むすめにキャスティングされるということは温泉地の代表としてその地域の期待を一身に背負うことになるし、実際に温泉地に行って現地の皆様と交流する機会が多いからです。現地の方々が「うちの温泉むすめが来た!」と喜んでくださってるところに「よろしくお願いします!」と腰を低く、丁寧に対応してもらえる方だと温泉地の方も安心すると思うんです。その上で、演技力や歌唱力、ビジュアルやステージパフォーマンス、ファンサービスなども含めて総合的に検討しています。

吉村 地域によっては声優自身も観光大使にもなるといった、普通の声優活動の枠に留まらないところまで関わってもらう『温泉むすめ』の活動ならではですね。温泉むすめはその町の看板娘的な感じに愛でられることになりますから。玉造 彗役の田澤茉純さんはプライベートで玉造温泉に行って現地の人に「おかえり」と言われたりするような関係性を築かれていて。他にも草津結衣奈役の高田憂希さんや飯坂真尋役の吉岡茉祐さんなど、多くの声優がプライベートで現地に行かれているようで、本人からも報告をもらいます。

――『温泉むすめ』はキャストが歌唱するイベントなどもあります。歌のスキルはどの程度重視するのでしょうか?

橋本 歌の上手い下手よりは、世界観設定にもある「アイドル」の衣装が着れるか、そもそも歌えるかどうか、ステージングができるかといったことは各事務所にオーディションの参加条件として伝えています。

吉村 声優さんの一番の武器はやっぱり演技力なので、歌はその次になります。常に歌をやるコンテンツではないですしね。前提条件をクリアした後、やっぱり総合的に重視することになるのは担当するキャラクターの温泉地へ愛情を持っていただけるかという「人となり」です。

――ありがとうございます。次にユニットの話を伺いますが、『温泉むすめ』はSPRiNGSから始まって様々なユニットが生まれています。それぞれのユニットに誰を所属させるかはどう決まるのでしょうか?

橋本 ケースバイケースなので一概には言えませんが、ユニットの構想が立ち上がった時にまず吉村さんに相談しています。例えばOH YOU LADY?(おーゆーれでぃ)だと“昭和”や“ノスタルジック”というユニットのコンセプトや楽曲が決まっていたので、それを上手く表現できるキャラクターを選びつつ、同じようにそのコンセプトを体現できそうな声優さんを選びました。新ユニットのVUCCA(ぶっか)の場合はユニットの枠に囚われず「先輩達の曲、かっこいいから歌っちゃいました」みたいなノリで何でも歌う後輩ポジションのコンセプトがあり、このユニットには今後行うライブやイベントに出演してもらいたいので、そういった表舞台の機会に関心が高いことを加味して人選しました。

吉村 僕と事務所の距離感というのもあるし、あとは今、新たな変化も迎え、更に踏み出す「『温泉むすめプロジェクト』にどんどんコミットしていきたい」という意欲も重視しました。

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