2024年11月より東名阪を巡ったfhánaのライブツアー“fhána The Look of Life Tour ’24-’25”の千秋楽が、1月13日、東京・ヒューリックホール東京で開催された。リスナーの日常や生活に寄り添うことを意識して制作された5thアルバム『The Look of Life』のリリースに伴う今回のツアー。fhánaとふぁなみりー(fhánaのファンの呼称)、お互いの旅路が交差するライブという特別な空間において、音楽が側にある人生の素晴らしさを改めて実感させてくれる時間が、そこにはあった。
TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY 笹原清明
会場のヒューリックホール東京は劇場型のゆったりとしたイベントホール。ステージが暗転すると最新アルバムの冒頭を飾ったインスト曲「Introduction (life is coming back)」が流れ出し、明滅するライトが日常と非日常の境を曖昧に溶かしていくなか、佐藤純一(key、cho)とkevin mitsunaga(サンプラー、etc)、そしてサポートを務める中西(HoneyWorks/g)、本多 秀(インナージャーニー/g)、目黒郁也(b)、北村 望(ds)の演奏メンバーが登壇。一拍置いて、アルバムのアーティスト写真と同じ水色の衣装を着たtowana(vo)が登場して両手を大きく広げると、ライブは2023年リリースの1st EPの表題曲「Beautiful Dreamer」で幕を開ける。佐藤もギターを手にしてギター3本体制。爽快かつアグレッシブに突っ走るアンサンブルに乗せて、towanaは凛とした歌声を響き渡らせる。ガラスのように繊細かつ美しい高音の伸びも絶好調だ。
2曲目の「現在地」でも佐藤は引き続きギターを演奏。初っ端からロック的なカタルシスを伴った2曲で会場のボルテージを引き上げると、今度は佐藤の躍動感溢れるピアノを合図に「Runaway World」へ。サビの佐藤が歌唱するパートではオーディエンスも大合唱。高揚感に満ちた曲調、歌詞のポジティブかつ真っ直ぐなメッセージを含め、いまや彼らのライブには欠かせないナンバーに仕上がっている。
アッパーな立ち上がりから一転、MCはいつも通りの緩い雰囲気で進行。新年の一発目をライブで始められたことを喜ぶと、ここからは最新アルバム収録の新曲を続けて披露。「深夜2時のテンションで作った曲」(佐藤)と語る「city dream city」では、kevinが事前に振付のレクチャーを行って、サビではふぁなみりーと共にノリ良く踊りながらハイテンションに盛り上がる。楽曲の後半ではkevinがステージ中央に出てきて反復横跳びのような動きを見せて、towanaが思わず笑ってしまう場面も。fhánaでは珍しいダークな曲調の「Matching Error」では、照明によってステージの色がカラフルに切り替わっていくなか、towanaがどこかトゲを含んだような妖しいアプローチで観る者を惑わす。どちらの楽曲も彼らにとっての新境地と言えるだろう。
そして佐藤のボーカルからスタートした「Spiral」。kevinもラップで加わり、交差する3人の歌声とバンドが紡ぐ心地良いグルーヴが波のように伝播していく。towanaの動きに合わせてふぁなみりーがライブグッズのフラッグを振る光景も温かだ。その後のMCで、お正月はどんなふうに過ごしたかという話題になり、kevinとtowanaは仕事もしつつ「寝正月」だったと語るなか、佐藤は楽曲制作をしていたとのことで「すごい曲ができたんですよ」と告白。まだ詳しいことは何も話せないとのことだが、続報を楽しみに待ちたい。
佐藤は次に披露する楽曲「天使たちの歌」(TVアニメ『義妹生活』OP主題歌)について、この楽曲を制作したことで最新アルバム『The Look of Life』の着想を得たと語る。これまでは壮大なテーマやモチーフの楽曲を歌うことの多かったfhánaが、より近い距離感でふぁなみりーの生活や心に寄り添えることを目指して作られたアルバム。その発端となった「天使たちの歌」を、towanaは時にスカートの裾を掴んではためかせながら優雅に歌い紡いでいく。バンドのまばゆい音像を含め、まるで天上の調べのように人々の日常を祝福した彼らは、続けて「Last Pages」をパフォーマンス。この楽曲では光の演出が特に素晴らしく、バックライトを浴びて光の中に溶ける演者たちの姿、光に溢れたステージと真っ暗な客席との明暗の対比、ラスサビで一瞬だけ暗闇を挿む演出が、towanaのセンチメンタルな歌声と併せて記憶に焼き付いていく。音と光のスペクタクルで魅せる、fhánaならではのステージだった。
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