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2024.12.27

Ave Mujicaの誕生から現在までのストーリーを追体験することでその実像に迫る――彼女たちの再誕の儀式“Ave Mujica 4th LIVE「Adventus」”を振り返る

Ave Mujicaの誕生から現在までのストーリーを追体験することでその実像に迫る――彼女たちの再誕の儀式“Ave Mujica 4th LIVE「Adventus」”を振り返る

次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」発のリアルバンド、Ave Mujicaの単独公演“Ave Mujica 4th LIVE「Adventus」”が、12月15日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザにて開催された。2023年6月に行われたライブ“Ave Mujica 0th LIVE 「Primo die in scaena」”で初めて公の場に姿を現し、同年夏に放送されたTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』の最終話でキャストを公開。仮面を被ったミステリアスな風貌、ゴシックメタルを基調とした重厚なバンドサウンド、寸劇の要素を織り込んだ“マスカレード(仮面舞踏会)”と呼ばれるライブ――あらゆる面において従来の「バンドリ!」のリアルバンドとは一線を画する存在として注目を集めてきた彼女たちが、過去最大規模となる会場で繰り広げた“Adventus(到来・来臨)”が意味するものとは何だったのか。その全貌に迫る。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY ハタサトシ、関口佳代

破壊と再生を繰り返してきたAve Mujicaの新しいバースデイ

会場の外では寒風が吹くなか、冬を忘れるほどの熱いパフォーマンスを見せつけたのが、ゲストアクトとして登場したRoselia。彼女たちは前日の12月14日に同会場でライブ“Roselia「Stille Nacht, Rosen Nacht」”を開催、そのゲストアクトとしてオープニングを務めたのがAve Mujicaだった。そのお返しとばかりに、前日のライブで初お披露目となった新衣装を着た5人の薔薇たちは、冒頭から人気曲「FIRE BIRD」を披露してオーディエンスの心に火を付ける。

その後のMCで、Roseliaにとってはこの日が年内最後のライブということで、ボーカルの湊 友希那(CV:相羽あいな)が「2024年の集大成をここにぶつける」「短い時間だけど、私たちの本気、その目に焼き付けて」と意気込むと、「Determination Symphony」「THE HISTORIC…」を畳みかけていく。後者の曲中ではメンバーのコール&レスポンスを呼び掛けて会場の熱気と一体感をさらに上昇させると、間奏でブレイクパートを挿むライブならではのアレンジで見せ場を作った「PASSIONATE ANTHEM」、友希那の生命力に満ちた歌声とメンバーたちのコーラスが重なり合って大きく咲いた愛と絆の歌「Floral Haven」で締め。貫録すら感じさせるステージで、後輩バンドのワンマンに花を添えた。

ちなみにRoseliaがこの日披露した楽曲のうち、「Determination Symphony」と「PASSIONATE ANTHEM」は、Ave Mujicaが0th LIVEでカバーしていた楽曲。それを意識しての選曲かは定かではないが、お互いへのリスペクトが感じられる粋なセトリだったように思う。

そしてこの日のメインアクト、Ave Mujicaのマスカレードが幕を開ける。会場のBGMと照明が突然落ちると、不穏なイントロダクションが流れ出すと同時にステージ上にはスモークが立ち込め、オブリビオニス(Key./CV:高尾奏音)、アモーリス(Dr./CV:米澤 茜)、ティモリス(Ba./CV:岡田夢以)、モーティス(Gt./CV:渡瀬結月)、ドロリス(Gt. & Vo./CV:佐々木李子)が順番に登場する。全員が0th LIVEで着用していたのと同じ黒いローブをまとっているが、その時とは違って最初からフードは被っておらず、本公演のキービジュアルと同じ格好だ。

1曲目は「黒のバースデイ」。2023年4月、まだバンド名以外はほぼ謎のベールに包まれていた頃のAve Mujicaが、初めて世に放った最初のオリジナル曲だ(また、メンバーたちが初めて音合わせをした楽曲でもある)。オブリビオニスの流麗かつパッション溢れる指捌き、ティモリスの太くうねる5弦ベースとアモーリスの力強いオープンハンドが下支えするリズム、モーティスが7弦ギターで刻むメタリックな重音、そして同じく7弦ギターを弾きながら物語を紡ぐように表現豊かなボーカルを聴かせるドロリスのカリスマティックな佇まい。そのすべてのピースが見事に合致して、Ave Mujicaという稀有なバンドの誕生を高らかに告げる。

そこから間を置くことなく、Ave Mujicaにとって重要なモチーフである“月”をテーマにした「ふたつの月  ~Deep Into The Forest~」へ。冒頭で背中合わせになってギターを弾くドロリスとモーティス、曲中でシンクロした動きを見せるオブリビオニスとドロリスなど、“2人(≒ふたつの月)”を想起させる見せ方が何かを暗示しているかのようだ。そして驚かされたのが、続いて披露された寸劇パート。これまでのマスカレードの寸劇は、事前に収録された音声に合わせて芝居を行う形式が基本だったのだが、本公演では舞台上のキャストが生で演技を披露したのだ。プレスコ形式の演出はオブリビオニスたちが“人形”という設定ともリンクするものだったが、今年10月に開催された3rd LIVE“Veritas”で“真実”を見つけたと思しき“人形”たちのストーリーを踏まえると、この生演技にも意味を見出したくなってしまう。

オブリビオニスの「私たちと一緒に踊りましょう。虚ろで退屈な、この世界に身を委ねて」との言葉を合図に、ライブは「Choir ‘S’ Choir」で再開。ステージがグリーンのライトに染まるなか、バンドの激情的な演奏と神秘的なクワイアが交差して、得も言われぬ光景が現出する。そしてメンバーが1人ずつ右手を上に掲げる仕草も印象的だった「神さま、バカ」。ドロリスが嘆きにも似た歌声を響かせるなか、モーティスはDメロで神様に祈るように手を合わせて天を仰ぎ見る。オブリビオニスの鬼気迫るインプロヴィゼーションから始まった「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」では客席から怒号のようなコールが巻き起こり、ドロリスの「“Adventus”やれますか?」という煽りからヘドバンパートに突入し、ティモリスとモーティスはステージの両ウイングまで移動、オブリビオニスはキーボードを逆サイドから弾くなど、狂乱のパフォーマンスで会場を圧倒した。

次のページ:衝撃のサプライズと“Adventus(到来・来臨)”が意味するもの

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