毎年秋に長野県佐久市にて行われるシーン屈指の野外フェス“ナガノアニエラフェスタ”が、今年も9月21、22日の2日間にわたって開催された。すでに報じられているように、2日目の開催中に起こった事件によってイベントは残念ながら途中で中止となってしまった。しかし、この2日間で見せたアーティストのパフォーマンス、そしてこのイベントの素晴らしさを知ってもらいたく、2日目の途中まで行われたテンペストステージの模様をレポートしていきたいと思う。
TEXT BY 澄川龍一
“ナガノアニエラフェスタ 2024”の会場は、長野県佐久市にある駒場公園。入場ゲートをくぐった左手側には小~中規模のギリシャ劇場・通称“ファントムステージ”があり、そこから物販を右手に細い道を通っていくと、広さ10,000平方メートルの多目的広場、通称“テンペストステージ”へと繋がっていく。
“アニエラフェスタ”のメインステージとなるテンペストステージには、大きなビジョンが1つある巨大なステージを向こうに、開演前から多くの人たちがすでに待機していた。ステージから視線を右に向けると、小高い芝生のエリアがあり、そこもすでに多くのオーディエンスがレジャーシートを敷いて座っている。“アニエラフェスタ”らしい光景がすでに見られており、なるほど都市部のフェスにはない、のどかな空間が見られていた。
そして定刻通りの正午、いよいよ“ナガノアニエラフェスタ2024”が幕を開ける。トップバッターを飾るのはTRUEだ。“アニエラフェスタ”での第一声は「S.O.S」で、会場全体に“S.O.S!”のシンガロングが聴かれる。サビの終わりには“おいでよ“Tempest””と、テンペストステージにぴったりのフレーズも見られ、まさに“アニエラフェスタ”らしい幕開けを飾った。そこから「BUTTERFLY EFFECTOR」のイントロが流れると会場の至るところから歓声が聴こえる。この曲は、TRUEが2019年に出演した“アニエラフェスタ”でもとてつもない熱狂を生んだアンセムとして知られており、観客も待ってましたとばかりに広場を駆け、TRUEもエネルギッシュなステージを見せながらも観客を煽っていく。その後のMCで「冒頭2曲で汗びっしょりだね」と微笑むTRUEは、実は長野県生まれ。縁の深い土地でライブができ、また自身がTRUEとして活動10周年を迎えたことを心から楽しんでいるようだった。そこから10周年記念ソング「TRUE」を力強く聴かせたあとは、「アニエラの皆さん、まだまだ元気残ってるでしょ?」と言って「Divine Spell」とアッパーな曲が続く。TRUEの力強くも抜けの良い歌声は野外にぴったりだ。最後はアコースティックギターを手にして「フローズン」を披露。トップバッターにふさわしい、さすがな圧巻のステージを文字通り駆け抜けた。
<セットリスト/TRUE>
01. S.O.S
02. BUTTERFLY EFFECTOR
03. TRUE
04. Divine Spell
05. フローズン
テンペストステージの続いてのアクトは斉藤朱夏。1曲目に「パパパ」を披露し、“アニエラフェスタ”のオーディエンスからクラップを誘う。サビでは一斉に手をパーに開いて一体感を演出していた。そこからアッパーなロックサウンドの「ゼンシンゼンレイ」でパワフルな歌唱を聴かせれば観客も負けじとシンガロングで返し、これには思わず斉藤も「すごいねー!」と舌を巻く。初めましての観客もいるなかで、今日のライブで自身を「“好き”じゃなくて“大好き”になると思います!」と堂々と宣言したあとは、お馴染みのシンガロングも聴かれる「だらけ。」、「まだまだいっぱい、いっぱい遊んでいきましょう!」と言ってからの「イッパイアッテナ」と楽しい斉藤朱夏ワールドが続く。かと思えば「セカイノハテ」では凛々しい表情を見せ、開放感のあるボーカルを聴かせる。最後には疾走感溢れる「もう無理、でも走る」を披露、再び楽しい空間を作り上げて、「また遊ぼうねー!」と叫んであっという間のステージを終えた。
<セットリスト/斉藤朱夏>
01. パパパ
02. ゼンシンゼンレイ
03. だらけ。
04. イッパイアッテナ
05. セカイノハテ
06. もう無理、でも走る
野外フェスには打ってつけな心地良い風が流れる昼下がり。しかしテンペストステージの熱量は上昇する一方だ。そんななかヘビーな轟音と共に登場したのは鈴木愛奈だ。「Apocalypse Day」で一気に独自の世界観に染め上げ、ドスンとしたサウンドに観客もヘッドバンギングで応え、ステージ上の鈴木は神秘的な歌声を聴かせる。そこからセットは一転してカラッとしたロックサウンドの「Dash and Go!」へ。これには観客も解き放たれたように、思い思いに広場でサウンドを堪能している。“アニエラフェスタ”の開放的な空間に「野外楽しいねー!」と自身も楽しんでいる様子を見せたあとは、幻想的なサウンドの「果てのない旅」へ。清涼感あるボーカルは澄んだ長野の空気にもよく合う。そして「波紋」でもシンフォニックなサウンドに抜群のボーカルが聴かれる。幻想的ななかで存在感を見せたあとは、「祭リズム」で野外フェスらしい“祭サイド”に展開、ここでは一転して彼女のルーツである民謡の歌唱がさえわたる。観客も“ソーランソーラン”のレスポンスだ。最後には「ヒカリイロの歌」のなかで「超たのしー!」と叫ぶ鈴木。彼女ならではの祭を存分に楽しんだようだった。
<セットリスト/鈴木愛奈>
01. Apocalypse Day
02. Dash and Go!
03. 果てのない旅
04. 波紋
05. 祭リズム
06. ヒカリイロの歌
“アニエラフェスタ”といえばテンペストステージ以外にもファントムステージでのライブや、フードスペースでの食事など、絶えず観客が回遊して楽しむようにできている。そんななかテンペストステージでは井口裕香の登場を告げるアタック映像が流れ、「Shining Star-☆-LOVE Letter(Summer ver.) 」の歌い出しと共に井口がステージに登場するやいなや、回遊していた観客が一気にステージ前へと駆け足で集まりだした。その光景に井口も、歌いながら「よっといでよっといで!」と手招きする。彼女もまたその歌声同様チャーミングに、そして自由にこの“アニエラフェスタ”のステージを楽しんでいるようだった。そこからMCを挟んで披露されたのは、ライブではひさびさとなる「Open Sesame!」。凛々しい声を聴かせたあとは「Prologue」でも野外によく通る歌声を響かせる。小気味いいラップも聴かせるスタイリッシュな「GYOZA」でほっこりしたあとは「Grow Slowly」へ。待ってましたの代表曲に観客も盛り上がりを見せると、井口も「もっと跳ねなさいよ!」と煽る。最後は「おなじ空の下で」を壮大に聴かせ、キュートにコミカルに、しかし抜群の歌唱力を見せるバラエティ豊かなステージを終えた。
<セットリスト/井口裕香>
01. Shining Star-☆-LOVE Letter(Summer ver.)
02. Open Sesame!
03. Prologue
04. GYOZA
05. Grow Slowly
06. おなじ空の下で
“アニエラフェスタ”は地元から地方からと様々な観客が集まるフェスである。そのなかには子供と一緒に来た観客も多く、その小さな来場者たちが目当てにしていたのは、このあとのプリキュアシンガーズのステージだろう。そんななか最初に鳴らされたのは、現在放送中の『わんだふるぷりきゅあ!』より「わんだふるぷりきゅあ! evolution!!」だ。吉武千颯のハイパーアクティブなステージも素晴らしい、まさに“わんだふる”な幕開けだ。そこから吉武、石井あみ、後本萌葉、北川理恵が揃って挨拶したあとは、石井による「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」、そして北川の「Dokkin◇魔法つかいプリキュア!Part2」、さらに再び石井が加わっての「大好きのキズナ」へとノンストップで続いていく。そしてここからは吉武と石井による「ヒロガリズム」からエンディング主題歌コーナーがスタート。アクティブな前半戦を経て、スタイリッシュな様相も呈しながら会場を踊らせていく。そして石井と後本が「FUN☆FUN☆わんだふるDAYS!」を聴かせたあとは北川と吉武によるアッパーな「あこがれ Go My Way!!」を鳴らしてさらに会場を盛り上げ、「Happy≒Future」「しあわせえぼりゅ~しょん♡」と、再びノンストップで駆け抜ける。劇場版を含む歴代プリキュア楽曲を横断するゴージャスなセットリストの最後は、こちらも『わんだふるぷりきゅあ!』ボーカルアルバムから「CLAP & CHANT!~アイノウタ~」が全員で披露される。タイトルどおりクラップとチャントが響き渡るEDMは、どこか壮大なエンディングを感じさせる。長い歴史と、幅広いファンを繋ぐ、さすがプリキュアと思わせるステージだった。
<セットリスト/プリキュアシンガーズ>
01. わんだふるぷりきゅあ!evolution!!
02. ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~
03. Dokkin◇魔法つかいプリキュア!Part2
04. 大好きのキズナ
05. ヒロガリズム
06. あこがれ Go My Way!!
07. FUN☆FUN☆わんだふるDAYS!
08. Happy≒Future
09. しあわせえぼりゅ~しょん♡
10. CLAP & CHANT!~アイノウタ~
様々な音楽が自由に鳴らされる“アニエラフェスタ”、続いてはバーチャルアーティストの松永依織のステージだ。テンペストステージに設置されたモニターから挨拶した松永は昨年の“アニエラフェスタ”に出演が決まっていたのだが、当日の急な雷によって直前で出演中止となった過去がある。そんな昨年のリベンジも込めて勢いよくスタートしたセットは、まず結束バンド「ギターと孤独と蒼い惑星」、さユり「花の塔」のカバーを披露。いずれも堂々としたライブ感溢れる歌唱が実に魅力的だ。そしてその後に披露されたのが、オリジナル楽曲の「Awaken Now」。ヘビーなトラックのなかで、パッション溢れる歌唱が素晴らしく、昨年を取り返す以上の、松永依織というシンガーの実力をしっかりと示したステージとなった。
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