REPORT
2024.12.16
毎回、あっと驚く演出とフルパワーのパフォーマンスでファンを魅了するLiSA。今年9月より全国8都市を巡ってきた全国アリーナツアー“LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~[SWEET&SOUR]”は、LiSAの2024年を締め括るにふさわしい、贅沢でゴージャスな2daysをプレゼントしてくれた。ライブで今まで歌われたことのなかった楽曲も盛り込まれ、新旧のLiSAナンバーを“混ぜ混ぜ”して、美味しすぎるカクテルを振る舞ってくれたこのツアー。ファイナル直前となった東京公演、11月30日の“[SWEET]”と12月1日の“[SOUR]”は、初めての国立代々木競技場第一体育館での開催に。2日間のめくるめく豪華なパーティをフルレポート!
TEXT BY 阿部美香
PHOTOGRAPHY BY 平野タカシ
今年4月、LiSAの聖地・日本武道館でデビュー13周年の幕開けをお祝いしたワンマンライブ“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”から、このアリーナツアー“~COCKTAiL PARTY~”は、既にスタートしていたといっていい。シングル「QUEEN」のリリースインタビューでLiSAは、ツアーのコンセプトを“色んなものを混ぜ混ぜしたカクテルパーティー”だと言い、“正直、色んなものが混ざりすぎてるかも?”と笑っていた。その言葉には、1つも嘘がなかった!
17時半を回り会場が暗転すると、LiSAワンマンではお馴染みのプロローグムービーが流れ出す。夕陽が照らすアパートメントの一室で1人の女性がベッドから起き上がる。顔の映らない彼女はシャワーを浴び、チェックの服に着替えてルージュを塗ってハイヒールを選ぶ。走っていく車の後部座席に乗り込んだピンクヘアがチラリと見えると、それがLiSAなのだと直感する。走る車が到着したのは、噴水を石畳が囲むロータリーになった繁華街に立つビルの前。春の日本武道館ライブでもキーワードになっていたLiSA の13周年を象徴する“ROUTE 13”、“COCKTAiL PARTY”、“[SWEET]”のネオンサインが輝き出し、入口に視線が吸い込まれると同時に、ステージから強烈なバンドの音が放たれる。輝かしいライトを浴びてそこに立っていたのは、ピンクの髪をツインテールに結い上げ、タータンチェックのミニドレスを着込んだLiSAと、バーの店員風のフォーマルスタイルでキラキラのポンポンを手にしたカクテルダンサーズ!
「Rally Go Round」のイントロのリフにのせて「行くよー!」とLiSAがシャウトすると、代々木第一体育館が揺れんばかりの大歓声とクラップが出迎える。「代々木―!」と声を挙げ、飛び跳ねるLiSA。みんなでキュートにラインダンスを決めると、一段と大きな声でLiSAが「ようこそ、この代々木へー!東京店、開店でーす!」と、パーティーのスタートを告げる。続く「Hi FiVE!」。“Hello, Hi FiVE!”と客席と掛け合いながら、何度もLiSAは左手を高く挙げて振り下ろし、オーディエンスとステージから“Hi FiVE=ハイタッチ”を交わす。オープニングからいきなり襲い来る多幸感に、カッと体が熱くなる。
大歓声に包まれて胸にじっと手を当て客席を見回し、ツアータイトルを告げて笑顔で手を振るLiSA。この場所を東京と呼ぶか、代々木と呼ぶかで悩みながら、「私たちはこのカクテルパーティーをこれまで12公演行ってきました。12公演泥酔してきた私たちのこのカクテルパーティー、東京に帰ってきました!」と宣言。「スイートな甘い夜に酔いしれる準備はいいですか?じゃあ、まずは乾杯から始めましょう」と言って、カクテルグラスをかたどったペンライトを客席と一緒に掲げて、一緒に「乾杯!」をコール。「今日はスイートな夜、みんなの声聞かせてー!」と「妄想コントローラー」がスタートすると、ファンにはもお馴染みのサポートバンド“わんたんにゅーメンズ”――ゆーこー(柳野裕孝/ba)、PABLO(gt)、いくちゃん(生本直毅/gt)、ゆーやん(石井悠也/dr)、アッキー(白井アキト/key)、Nona*(岩村乃菜/cho、per、Fl)から、ドラム以外のメンバーがステージ前に。わちゃわちゃと楽しそうにLiSAとスイング。続く新曲「MAKE A MiRACLE」では、客席と“GO! READY GO!”をコール&レスポンスしながら、ギターのPABLOと生本を引き連れ花道を歩いてセンターステージへ。軽快なロックを響かせながら、「今日ここ、初めての代々木体育館でみんなとミラクルをたくさん起こしたい、力貸してくれる?代々木体育館揺らすよー!」と言って、オーディエンスと一緒にせーのでジャンプ!メインステージに風を切って走って戻ったLiSAが、「最高!」と笑顔を見せた。そして、白井アキトのピアノの音がイントロに繋がり、オレンジのライトの中からLiSAが鍵盤ハーモニカを奏で出したのは「sweet friendship」。柔らかいLiSAの歌声に切ない気持ちが溢れた。
ここで一気に雰囲気が変わる。ジャジーなピアノから始まったインプロビゼーションが、徐々に過激さを増して始まったのは「蜜」。ステージ中央の床がせり上がり、その上で妖しい表情のLiSAが体をくゆらせながらセクシーに歌い舞う。背後の巨大LEDスクリーンでは、LiSAの周りをピンクの蝶が舞い跳んでいる。どうやらこのパーティーは、妖しい時間に足を踏み入れてしまったようだ……そんな想いを抱いていると、妖艶な「蜜」はノイジーなアウトロで終わり、ブラスの音と共に派手なビートが鳴り響く。ラテンの香りがする曲をバンドが演奏し始め、白衣を羽織った男性ダンサー2人が花道をセンターステージへと歩んでいく。客席を見回しフロアに降りて……何やら物色しているようだ。一体、何が始まるのか?と固唾を呑むと、1人の女性観客がエスコートされてセンターステージに上がり、椅子に座らされる。演奏が止み、ドラムカウントとシンセサイザーの音と共にスタートしたのは「DOCTOR」!メインステージのポップアップから、白衣のダンサーズに合わせたような白いシャツ姿のLiSAが登場し、皮肉な声色を込めて歌いながらセンターステージで拘束されている“彼女”の元へ。マイクを握り、回り込んで顔をのぞき込み、歌を途切らせることなく、頬を寄せ、見つめ、“甘蜜の闇”へと誘うLiSA。恍惚とした表情で“彼女”はLiSAに絡め取られていった。
バータイムの妖艶なショーは、“彼女”の退場と共に鳴り響くサイレンの音で断ち切られ、LiSAが白いシャツを脱ぎ捨てる。真っ赤に染まった「Bad Sweet Trap」。体に張り付いたミニドレスから伸びる片足にはストッキングと黒いガーターベルト。突き刺さるような歌声を放つLiSAが、“ちょっと黙っててよ!”と怒鳴りつけ、再びメインステージへと戻ると、ラストで“チャオ!”とオーディエンスに皮肉な笑みを投げて手をひらつかせる。妖艶さと激しさが入り混じるひとときに、すっかり翻弄された。妖しげなLiSAの女っぷりは、ムーディでチルな「わがままケット・シー」でセクシーな魅力を増していく。吐息交じりに官能的なダンスを踊るこの曲で、さらに観客を骨抜きにしていった。
ここでショータイムは次のターンへ。バーのざわつくSEとピアノ演奏をバックに、センターステージでカクテルグラスを持ったバーの店員2人が、忙しそうに立ち回っている。スクリーンの文字を介して交わされる会話で、彼らが日本武道館の“LiVE is Smile Always~i SCREAM~”にも登場していた、ルート(国道)13号沿いのアイスクリーム屋で働いていた店員だとわかる。あの時のマスコットのアイスクリームモンスター、店内にあったジュークボックスを懐かしみ、あのアイスクリームショップがカクテルバーへと進化して全国展開しているので、大忙しなのだと説明される。壮大だった“~i SCREAM~”の物語、LiSAの13周年を貫くコンセプトストーリーが、このツアーにもしっかり続いていることが楽しい。
朝までパーティしよう!とはしゃぐ店員たちがふと我に返って、今日はLiSA with Oneton New Mensバンドのライブの日だ!と思い出す。そう、ここからは新しいショータイム。色々な曲を“混ぜ混ぜ”して作るSWEETなメドレーショーがスタートする。キラキラ輝くオレンジのドレスを身に纏ったLiSAが、バーのシンガーになって歌った8曲の中には、ワンマンでは披露されていないLiSA単独名義ではない曲、めったに聴けないレアナンバーも。LiSAの原点・Girls Dead Monsterの「Crow Song」、Q-MHzとコラボした「LiVE DiVE MHz!! (featuring LiSA)」、じん ft.LiSA名義で音源化されていた「夕景イエスタデイ」など、オーディエンスがどの曲か気づくたびに、おおっ!と声が挙がる。始めはしっとりとエレガントにスタートしたメドレーショーも、徐々にテンションアップ。ラストの「だってアタシのヒーロー。」では、バンドとLiSAがセンターステージでもはしゃぎ回り、オーディエンスを巻き込んでジャンプ!カクテパーティーならではのハッピーなプレゼントだった。
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