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REPORT

2024.12.01

アーティストデビュー6年目を迎えたASCAの“今”を示したライブツアー“ASCA LIVE TOUR 2024 -VIVID-”ファイナル公演を振り返る。

アーティストデビュー6年目を迎えたASCAの“今”を示したライブツアー“ASCA LIVE TOUR 2024 -VIVID-”ファイナル公演を振り返る。

9月27日、神奈川・川崎CLUB CITTA’にて、ASCAのライブツアー“ASCA LIVE TOUR 2024 -VIVID-”の最終公演が開催された。今年2月に発表した最新アルバム『VIVID』を引っ提げた今回のツアーで、大阪・福岡・名古屋・札幌・神奈川の全国5都市を巡り、その間には“Animelo Summer Live 2024 -Stargazer-”にも出演。さらにシングル「FACELESS」のリリースもあり、この夏は怒涛の活動を行ってきた。まるで脇目も振らずひたすら前に進むかのように。アーティストデビュー6年目を迎えた今なお、常に変化を求め、ビビッドに進化していく彼女の“今”を、本公演のレポートを通して追いかけたい。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY草刈雅之

熱くしなやかに。多彩なカラーの歌声で魅せるステージ

今回のツアーには新しい挑戦がたくさん詰め込まれていた。その最たるものが、演奏を担当するバンドメンバーの変化だ。これまでの彼女のワンマンライブを支えてきたAS課のメンバーに代わって、本公演をサポートしたのは森本隆寛(Gt/バンドマスター)と工藤寛丈(Key)の2名。力強く壮大なOvertureが流れるなか、まずは彼らが登壇してスタンバイすると、続いてASCAがステージ中央まで歩み出てきて、「行くぞ、川崎!」と勇ましく煽って「命ノ証」からライブをスタートさせる。立ち上がりから気合いの入りまくったパワフルな歌声は、本公演のタイトルに冠された“VIVID”という言葉通りの目の覚めるような一撃だ。

そこから「一緒に笑顔になっていきましょう」と呼び掛けると「私が笑う理由は」へ。TVアニメ『豚のレバーは加熱しろ』のOPテーマとして、“旅の始まり”をイメージして作られたこの楽曲は、彼女にとっても新境地を切り拓いた1曲。その柔らかで包容力を感じさせる歌が、会場に笑顔の花を咲かせる。楽曲のラストで「やっと会えたねー!」と大きく叫んでファンへの愛を示すと、続いて語り掛けるような歌唱アプローチとクールなサウンドがマッチしたエレクトロニックなナンバー「Maze」を披露。シングル「FACELESS」のカップリング曲で、彼女が近年の作品で積極的に取り組んでいるEDM系の楽曲の最新の成果と言えるだろう。

最初のMCで、秋めいてきた気候に触れつつ「一緒に夏を取り戻しませんか?」と呼び掛けて会場を発奮させた彼女は、「皆さんをヒルトン上海に連れて行きます」と告げ、アルバム『VIVID』に収録された“恋愛三部作”のうちの1曲、BURNOUT SYNDROMESの熊谷和海が楽曲提供およびボーカルで参加した「上海小夜曲(Shanghai Serenade)」を哀切感たっぷりに歌う。続く「Gift of Life」では、平歌部分での乾いたギターの音色と淡々とした歌い口、そこからサビでエモーショナルに色づく展開によって、彼女自身が経験したという“別れ”とそこから得た“ギフト”、別れの悲しみで落ち込むほど大切な人と出会えた感謝の気持ちを表現。マイクスタンドを使ったパフォーマンスも込みで心に迫るものがあった。

その後のMCでASCAは、今年は別れだけでなく、それ以上に多くの新しい出会いがあり、今は「Gift of Life」を作詞した頃とはまた別の境地にあると語る。そんな彼女が「今の私を表している楽曲」と前置きしたうえで歌ったのが、センチミリメンタルの温詞が書き下ろした“恋愛三部作”の1曲「あげる」。“許す”をテーマにしたというこの楽曲での彼女の歌声は、慈愛に満ちていて、どんなことも受け止める温かさが感じられる。きっと彼女は別れと出会いを経て、シンガーとしてだけでなく、人間としても大きく成長したのだろう。

その優しい眼差しから一転、凛々しい表情と共にすべてを掻き消すような力強いハイトーンボイスを聴かせたのが「リインカネーション」。デビューシングル「KOE」のカップリングに収められていた最初期からのレパートリーで、荘厳かつドラマチックな世界観がASCAの原点を感じさせる。さらに梶浦由記提供の「君が見た夢の物語」で激情渦巻く歌声を届けると、バンドメンバーの紹介を挿んで、現時点では未発表の楽曲「最前線」を披露。アプリゲーム「ソードアート・オンライン ヴァリアント・ショウダウン」の新主題歌となる本楽曲は、彼女がこれまで歌ってきた『ソードアート・オンライン』関連曲に連なる疾走感と熱量を感じさせつつ、よりタフでワイルドな要素が強まった印象で、ラップのように言葉を畳みかけるようなパートを含め、今後、ライブの必殺曲として重宝されそうな予感だ。

“過去”じゃなくて“未来”を歌い続けていきたい

星々が煌めくような照明演出を含め、宇宙を駆けるようなスケール感の「リンネ」で観る者を圧倒したASCAは、ここでいったん退場してバンドの演奏タイムに。やがてアルバム『VIVID』のラストを飾っていた、ASCAがiPhonのボイスメモに口ずさんで作詞・作曲した「Departure」の音源が流れ出し、ピンク色の衣装にお色直ししたASCAがステージに再登場。TVアニメ『魔法科高校の劣等生』第3シーズンのEDテーマ「紫苑の花束を」をしなやかに歌い紡ぐ。かつての力強く張り上げるスタイルとはまた違う、朗々とした歌声が会場を包む。そして“恋愛三部作”より阿部真央が提供した「あなたが居ないこの世界でも」。伴奏はピアノのみ。その寂寥とした音色を頼りに、ASCAは静かに、訥々と歌を絞り出す。真っ暗な会場で微かな光に照らし出された彼女の姿が、“あなたが居ないこの世界”の孤独を強調する。歌い終えて胸を押さえると、そのまま闇の中に溶けていく演出も心に残った。

そこから厳しくも素晴らしきこの世界で“瞬間だけを抱えて生きろ”と力強く吠える「カルペディエム」を放つと、このライブ時点での最新シングルとなるTVアニメ『ばいばい、アース』のOPテーマ「FACELESS」へ。同アニメの原作を読み、自分は何者なのかを探す旅に出る主人公に共感を覚えて歌詞を書いたというASCA。鮮烈なボーカルが、彼女自身の生きていく意味を、その場にいるすべてのファンの心に刻み付けていく。

続けて雄叫びのようなハイトーンを合図に「OVERDRIVE」へと突入。限界のその先へとオーバードライブしていくようなパフォーマンスで、オーディエンスを熱狂の空間に連れて行く。そしてライブ本編のラストを飾ったのはアルバム『VIVID』のリード曲「VIVID WORLD」。ASCAはステージを左右に行き交いながらビビッドな歌声を放ち、「川崎、最高じゃん!」「まだまだ声出してけ!」と煽って会場から大合唱を引き出す。この日一番と言っても過言ではない一体感を作り出し、ライブを締め括った。

ASCAコールを受けて、先ほどとは対照的にブルーのツアーTシャツに着替えて舞い戻ったASCAは、ライブの定番となっている阿部真央提供の人気曲「NO FAKE」で再び会場を狂乱の世界に塗り替える。その後のMCで、ライブができるのは当たり前のことではないと前置きしつつ、それを実現させてくれているファンに向けて「本当にご褒美のような時間をいただきました」と感謝の気持ちを伝えるASCA。そして、秋クールのTVアニメ『魔王様、リトライ!R』のOPテーマを担当することを改めて報告する。自分の命に代えてでも大切な友人を守る主人公に触発されて歌詞を書いたというASCAが、この曲に込めたのは「大切な人には笑顔でいてほしい」という気持ち。「私からのラブレター、受け取ってください」と語り、彼女はその楽曲「明日世界が終わるとしても」を歌い始める。疾走感溢れるロックサウンドと熱気をはらんだエモーショナルなメロディ、真っ直ぐな歌声で“君”を命に代えても守ると伝えるASCA。すべての出会いに感謝と愛を込めて。迫真のパフォーマンスで彼女はありったけの想いを伝えた。

そしてこの日のライブのラストナンバーへ。その楽曲は「Pieces」。彼女のデビュー曲「KOE」の“続きの物語”として、同曲を提供したSakuが新たに書き下ろしたナンバーだ。歌唱前のMCで「昔の私は感情にふたをするのがクセで、本当のことを話そうとすると涙が出てきたりとか、思っていることと逆のことを言ってしまったりとか、とにかく素直になれなかったんですよね」と語る彼女。だが、活動を続けていくなかで、ありのままの自分でいいということを、ファンや周りの人たちに気付かせてもらったという。

「私に出会ってくれた皆さん、大切な人に歌を届けていきたい。この気持ちだけは、ずっとあって。私は“過去”じゃなくて、“未来”を、これからもみんなに歌い続けていきたいと思っています」。そんな想いが、これまでの決してたやすくはなかった軌跡と、それでもくじけることなく進んできた一歩一歩の重み、その中で出会った“優しさ”や“愛しさ”が自らの“声”を育み、この先の“未来”に繋がっていくことを歌ったこの楽曲と重なり合っていく。楽曲提供だけでなくAS課のメンバーとしても彼女の活動をそばで支え続けてきたSakuだからこそ書ける、ASCAを象る新たなピース。そして彼女を応援するたくさんの人々の想いのかけらが繋がって生まれた、ASCAの最新の歌声。紆余曲折、様々な別れや出会いを経て、常に変化してきた彼女の今この瞬間の輝きが、この1曲に集約されていたように感じた。

改めて振り返ると、「Howling」や「RESISTER」といったライブ定番曲をあえて組み込まなかったセトリを含め、新しい挑戦が詰まっていた今回のライブ。その意味では、彼女自身の変化と成長をビビッドに切り取った内容だったように思う。だが、これもまた進化の過程に過ぎない。11月にはニューシングル「明日世界が終わるとしても」のリリースを控え、2025年5月には東名阪ツアー“ASCA LIVE TOUR 2025”の開催が決定。ASCAの“終わらない物語”はこれからも続いていくのだ。この先、彼女がどのように変わっていくのか、引き続き楽しみに追っていきたい。

<セットリスト>
01. 命ノ証
02. 私が笑う理由は
03. Maze
04. 上海小夜曲(Shanghai Serenade)
05. Gift of Life
06. あげる
07. リインカネーション
08. 君が見た夢の物語
09. 最前線
10. リンネ
11. 紫苑の花束を
12. あなたが居ないこの世界でも
13. カルペディエム
14. FACELESS
15. OVERDRIVE
16. VIVID WORLD
<アンコール>
17. NO FAKE
18. 明日世界が終わるとしても
19. Pieces

●リリース情報
TVアニメ『魔王様、リトライ!R』OPテーマ
「明日世界が終わるとしても」
11月27日月発売

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL-2630~1
価格:¥1,980(税込)

【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2632
価格:¥1,430(税込み)

<CD>
1.明日世界が終わるとしても
2.I DON’T CARE
3.最前線
4.明日世界が終わるとしても (Instrumental)
5.I DON’T CARE (Instrumental)
6.最前線 (Instrumental)

<Blu-ray>
明日世界が終わるとしても

●作品情報
『魔王様、リトライ!R』

放送情報
TOKYO MX 毎週土曜22:30~
RKB毎日放送 毎週土曜26:00~(初回のみ27:00スタート)
テレビ長崎 毎週木曜25:03~
BSフジ 毎週火曜24:00~
BS日テレ 毎週火曜24:30~

STAFF
原作:神埼黒音・身ノ丈あまる(双葉社 モンスターコミックス)
キャラクター原案:飯野まこと
監督:古賀一臣
シリーズ構成:高山カツヒコ
キャラクターデザイン:保村成
音楽:SUPA LOVE
アニメーション制作:月虹
プロデュース:藍沢亮(Starry Cube)

CAST
九内伯斗:津田健次郎
アク:麻倉もも
藤崎茜:和氣あず未
イーグル:野口衣織(=LOVE)
ルナ・エレガント:鈴木愛奈
田原勇:駒田航
ミンク:鈴木みのり
オルガン:橘美來
霧雨零:熊谷健太郎

●ライブ情報
ASCA LIVE TOUR 2025

2025年5月6日(火・祝)
心斎橋・JANUS(大阪)

2025年5月11日(日)
新栄・シャングリラ(愛知)

2025年5月17日(土)
Veats Shibuya(東京)

「ASCA LIVE TOUR 2025」プレリクエスト先行
受付期間:12月5日(木)12:00~12月15日(日)23:59
https://l-tike.com/asca/

リスアニ!LIVE 2025
2025年1月24日(金)開場17:00/開演18:00(予定)
2025年1月25日(土)開場15:00/開演16:00(予定)
2025年1月26日(日)開場15:00/開演16:00(予定)

ASCAは1月26日“SUNDAY STAGE”に出演!
詳しくは“リスアニ!LIVE 2025”公式サイトをチェック!
https://www.lisani.jp/live/

関連リンク

ASCA オフィシャルサイト
https://www.asca-official.com/

ASCA X
https://x.com/ASCA_and_staff

ASCA 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCKSpe0bX39VZQtRcaQcJ9RQ

TVアニメ『魔王様、リトライ!R』公式サイト
https://maousama-anime.com/2024/

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