REPORT
2024.11.23
2021年11月より始動した多次元アイドルプロジェクト「UniteUp!」。その誕生から3年を迎え、2025年1月にはアニメ第2期の放送が待っているこの「UniteUp!」で、sMiLeaプロダクションに所属する3つのアイドルグループが初の単独ライブシリーズを展開中。その第2弾となるのはコンテンツの中心で輝きを放つPROTOSTAR。世界の空への玄関口にある会場から音を世界へと響かせるべく繰り広げられたドラマのようなライブの様子をレポートする。
TEXT BY えびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 白石達也
世界への玄関口となる羽田空港国内線ターミナルの中にあるTIAT SKY HALLは、アイドルたちの登場を今か今かと待ち望む観客の熱気でいっぱいになっていた。「本日は皆さんの声で“PROTOFESTIVAL”を始めたい」とアナウンスが響き、客電が落とされる。暗くなった会場のスクリーンに視線が集まると、PROTOSTARの「愛のリグレット」のMVの冒頭、音楽番組「ドキドキベストヒット」によってドッキリを仕掛けられた彼らはまだ準備ができていないという。そこで会場一体となって「PROTOSTAR!出番ですよー!」と声をあげると、ステージに大慌ての3人が飛び込んできたのだ。大歓声が沸くなか、「愛のリグレット」の、どこか懐かしくも新しい歌謡ポップが響く。赤、青、黄のペンライトが揺れるフロアに向け、笑顔のPROTOSTARは情感たっぷりに、ポップかつ叙情的なナンバーを歌いあげた。続いたのは「トリプレット」。五十鈴川千紘役の平井亜門がしっとりと情感を込めて歌い出すと、清瀬明良役の戸谷菊之介、そしてこの日、自身が演じる直江万里そのままに金髪となっていた山口諒太郎の柔らかなボーカルが重なり、3人の力強いユニゾンとなっていく。イントロから歓声を浴びた人気のナンバーの琴線に触れるメロディに、オーディエンスはペンライトを振りながら聴き入っていた。
「皆さん!“PROTOFESTIVAL”にようこそー!」と口火を切った戸谷。ステージから客席まで、距離の近さを喜びながら、会場からの歓声に耳を傾ける3人。「声出して楽しんでいってください」と戸谷、「このホールの下にある出国ゲートにまで皆さんの声、聴かせましょう!」と山口、「後ろの後ろまでしっかり見えているよ!」と平井。笑顔を見せながら自己紹介をすると、序盤を振り返る。なかでも「愛のリグレット」のスタンドマイクでのパフォーマンスは、振りをしながら歌声をしっかり届ける手段を3人で模索しながら準備したという話には、会場も感嘆の声を漏らす。即日完売となった彼らの初めての単独ライブ。PROTOSTARだけを観に来たオーディエンスと共に笑顔でいっぱいのMCの瞬間となった。「みんなの声が聴きたい」と声出しを要求すると「それでは諒ちゃん、よろしくお願いします!」とバトンを渡す平井と戸谷。ステージには山口が残された。一瞬、静寂に包まれた会場。その静けさを破ったのは山口の歌声。それだけで会場は割れんばかりの歓声に包まれる。山口演じる万里の、歌い手・EVAN時代の1曲「Partition」を、そのMVと共に響かせた。PROTOSTARとしてとは違い、エモーショナルなミディアムチューンをファルセットも駆使してしっとりと聴かせると、フロアは大きな拍手に包まれた。続いたのは平井。カバー曲を披露してきた歌い手・すず時代の「ゆめゆくの」の、朴訥としたサウンドワールドを情景的なMVと共に響かせると、素直に、飾らない歌声を乗せていく。繊細かつ甘い歌声がフロアを青く染めていった。歌い手時代の楽曲を披露するコーナーの最後に登場したのは戸谷がKIKUNOYUとして歌う「いいの」だ。リズミカルなトラックに柔らかく優しい歌声が乗れば、色鮮やかに発色していく歌。飛躍を遂げる歌い手として日本のみならず海外のファンからも人気を博していたKIKUNOYU。その魅力詰まる1曲は赤いライトが揺れるフロアを暖かく色づけていった。
ソロ歌唱のあとに3人がステージに並ぶと始まったのはアニメ『UniteUp!』の「#02 歌ってみないと」の一場面。菊の湯にやってきた千紘と万里と共に明良が銭湯に入るシーンの生アフレコだった。「えっ!」と息を飲む観客。風呂場独特の響きが再現されるなか、アイドルになることに迷う明良、歌が好きであることと共に覚悟を持った千紘、まだマスクとサングラスで素顔を隠したままの万里が初めて本音で語り合うシーンだ。その3人の心を1つにした大好きなアニメ「クロスファイヤー」について語らうも、アドリブをぶち込む山口に口元がほころぶ戸谷、千紘として冷静に対処する平井、とそのバランス感抜群の様子にファンも笑い声をあげた。その映像から飛び出したようにライブは「吠えろ!クロスファイヤー」から再開。PROTOSTARの3人による劇中のアニソンカバーである1曲を、アニメOP曲らしいアッパーチューンを盛り上げるように赤、青、黄の光が大きく揺れるなか、野球をするような振付と共に楽しませた。歌い終わり「楽しいねー!」と声をあげた戸谷。初めて披露したソロ曲について、山口は「ずっとソロ曲を歌いたいと思っていたので、せっかく歌える機会ですし色々とアレンジを加えてみました」と笑顔を見せると「『ゆめゆくの』は繊細な曲で、綺麗な裏声も含めて雅さを意識して歌いました」と平井。戸谷は「『いいの』は1話のエンディングでもあるんですけど、歌詞に“好きだから なんて言えなくてもいいの”ってあって、それが明良くんらしいなって思って、明良くんと重なっているなと思っていたので、その気持ちを大切にしながら歌いました」と続けた。ソロでの曲の間、それぞれのカラーに染まった会場に感動したという話のあとには「UniteUp!」史上初の生アフレコについての感想を語らう。仲良しの3人が盛り上がる様子に、話を聞くフロアもハートフルな空気に包まれた。
前半戦が終わると「このライブはアニメの時系列に沿っていないか?」と考察を披露する戸谷。続くステージの準備のために3人が奥へと移動すると、スクリーンに映し出されたのはアニメ『UniteUp!』の「#06 伝えないと」のシーン。台風の襲来により停電した渋谷のライブハウスの内部。電気がなく、ネットも繋がらない状況。配信開始予定時刻まであと40分の現場。スマホで配信をして、歌い手としての自分たちを応援してくれた人たちに今の気持ちを伝えたいというPROTOSTARの3人の、決意を込めた瞬間が繰り広げられた。ステージに、あの日の衣装を身にまとった3人が登場し、歓声が沸く。意思表明の瞬間を生アフレコに。会場から涙をすする声。「それぞれ目的も理由も違った僕らですが、sMiLeaプロダクションよりアイドルグループを結成します。その名は……」と明良の語りに続き3人で「PROTOSTAR」と声をあげた瞬間、スクリーンの彼らに同じく会場に照明がつく。満足気な表情の戸谷、平井、山口。「それでは聴いてください」と曲紹介。アニメそのままに始まったのは「YOU」。デビュー前の、顔見せのプレデビュー曲を初々しくも瑞々しいボーカルで歌い上げる。彼らがPROTOSTARになった瞬間の、胸が震えるようなあの瞬間の再現に感動を味わったオーディエンスの、応援の想いを届けるように力強くペンライトを振る姿が印象的だった。ストリングスに彩られ、煌めきあるアイドルソング然としたトラックに3色のボーカルに「歌が好き」という明良、千紘、万里の想いが鮮やかに色をつける1曲を歌い終えると、大歓声と大きな拍手が会場を席捲した。
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