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INTERVIEW

2024.11.21

TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』主題歌「GG」のテーマは“グランジ”!ReoNaが熱くロックを叫ぶ!

TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』主題歌「GG」のテーマは“グランジ”!ReoNaが熱くロックを叫ぶ!

ReoNaのニューシングル「GG」は、デビュー5周年イヤーを終えて6年目に突入した彼女にとって色んな意味を持つ作品になった。まず、彼女がアニメ音楽の世界に足を踏み入れるきっかけになったTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』という大切な作品の第2期OPテーマであること。そして“グランジ”というキーワードのもと音楽的にも新たな扉を開いたこと。ささくれだった音のエレキギターをかき鳴らし、叫ぶように歌の弾丸をぶっ放す、かつてなくロックなReoNaの真意に迫る。

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INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

グランジの精神性を宿した“熱さ”と“叫び”のお歌

――まずは、10月に東京ガーデンシアターで行われた2デイズライブの感想をお聞かせください。1日目は神崎エルザとReoNaによるツーマンライブ「神崎エルザstarring ReoNa✕ReoNa Special Live“AVATAR 2024”」、2日目は26歳のバースデーライブ「ReoNa ONE-MAN Concert“Birth 2024”」でした。

ReoNa それぞれコンセプトが全然違ううえに、各クション、色んな人の想いが詰まっていたライブだったので、終わったあとの反響の大きさ、会場の熱の高さにものすごく安心しましたし、自分でも良いライブができたと思えました。最後に改めて来てくれた1人1人の顔を見たときにはグッとくる瞬間もあって。デビュー5周年のアニバーサリーツアー(「ReoNa 5th Anniversary Concert Tour“ハロー、アンハッピー”」)を経たうえで、東京では日本武道館公演(“ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~”)以来の大きなワンマンライブだったので、色んな思い出が一気に蘇ってきましたし、これだけの人たちとここまで歩いてこれたんだなと思いました。

――1日目は神崎エルザ/ピトフーイ役の声優・日笠陽子さんがMCで参加されて、2人で神崎エルザをステージに顕現させていました。

ReoNa 改めて神崎エルザというキャラクターを日笠さんと一緒に担当させていただいていることがこの上なく光栄で幸せだなと思いましたし、最後にステージで日笠さんに「2人で1つだね」と言っていただけたことで色んな思いが込み上げてきて、私で良かったんだと、本当に嬉しかったし、安心させてもらいました。私と日笠さんのコミュニケーションはもちろん、日笠さんがその場にいて生でMCをしてくださったからこそ、お客さんの熱気や歓声を受けたライブをすることができて、私がずっと言い続けている「ライブは1対1」ということがあの場所でもできたように思います。

――2日目のバースデーライブにはクワイアを含め80名超のミュージシャンが参加して、セットリストも込みでReoNaさんの今までの人生のすべてが詰まっているような公演に感じました。

ReoNa 自分の中身をさらけ出すことに躊躇してしまう瞬間がどうしてもあるのですが、あの日のライブでは「私は今こういうことを言いたい」「こういうふうに届けたい」というものを、すごくナチュラルに形にできたように思います。それはもちろん、自分の今までの人生と赤裸々な事実を優しく温かくお歌にしてくれているクリエイターの方々、それを光で照らしてくれる照明さん、音を出してくれるエンジニアさん、一緒に紡いでくれるミュージシャンさん、スタッフさんがいて、受け取ってくれるあなたがいてくれたからで。2度として同じ歌は歌えないということを今まで以上に感じましたし、改めて1対1で話しかけているような瞬間があった日だったと思います。

――その2デイズライブでも披露されたのが、この度リリースされるニューシングルの表題曲「GG」。TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』(以下、『GGO』)のOPテーマですが、アニメ第1期で神崎エルザの歌を担当したのがアニメの楽曲を歌う第一歩となったReoNaさんとしては、喜びもひとしおだったでしょうね。

ReoNa 『GGO』は私にとってデビュー前のキャリアのスタート地点にあたる作品で、当時は右も左も、なんなら前も後ろもわからないような、何者でもない状態だったところから神崎エルザの歌唱担当のお話をいただいて、毎日「これはドッキリでは?」とハラハラしていたくらいだったのですが、それが現実だということを噛み締めてスタートした6年前から、改めてReoNaとして恩返しできる機会をいただけたので、チーム一同、気合いの入りようや熱量はすごく高かったです。最初に作品サイドとお話をさせていただいたときに、アニプレックスの橋本(渉)プロデューサーから「『SAO(ソードアート・オンライン)』はエモーショナル、『GGO』は熱さ」ということを伝えていただいて。これまで『SAO』でもたくさんの楽曲を歌わせていただいているなかで、そのお歌たちを“エモーショナル”とするならば、今回はReoNaとしての“熱さ”を感じさせる楽曲を作る、というところからスタートしました。

――そのReoNaさんなりの“熱さ”というのは?

ReoNa 最初の時点では、ReoNaに対する“熱さ”のイメージを掴みかねていたところがあって、毛蟹(LIVE LAB.)さんやTEAM ReoNaのみんなでどう“熱さ”を表現するか色々話し合っていたのですが、そのときにrui(fade)さんから「ReoNaさんのイメージとは違うかもしれないけど、いい曲が出来たので聴いてもらえますか」という感じで楽曲が届いたんです。それを聴いた瞬間に、一聴して今までのReoNaにはなかった文脈だけどすごく『GGO』らしい楽曲、あの砂嵐が吹きすさぶピンク色の荒野とカチッとハマって、「この曲しかない」と感じたのが「GG」の最初のデモでした。それは純然たるグランジロックな楽曲だなと思って、そこからこの楽曲の熱さを残しつつ、あくまでReoNaが歌うアニソンとして『GGO』にどう寄り添うか、というやり取りを作品サイドやruiさんと繰り返しやり取りしながら、半年以上かけて完成したのが今の「GG」になります。

――グランジは、この楽曲において重要なファクターになっていますよね。サウンド面だけでなく、歌詞にも“叫べ Grunge”というフレーズや、グランジを代表するバンド、ニルヴァーナの名前などが散りばめられていて。

ReoNa 実は今回、作品サイドとお話しているなかでもグランジというキーワードが出てきていたんです。それで編曲の毛蟹さん(共作)が、ReoNaの楽曲でどうグランジを表現するかを悩んでいた時期があったのですが、その結果、毛蟹さんがグランジの本質はサウンドではなくて“叫び”にあるという答えに到達して。そのキーワードが出てきたときに、TEAM ReoNaとしても、普段は叫ぶことのない私が叫ぶというのは、絶望系アニソンシンガーとしての新しいテーマとしても良いのではないか、という話になったんです。背中を押すでも、手を引っ張るでもなく、とりあえず叫んでみる。例えば、すごくムカムカしているときに、自分が思っていることを代わりに叫んでいる人を見たらすっきりする部分があると思いますし。

――なるほど。そう言われると、確かに「GG」は物理的に叫ぶようなフレーズもありますし、精神性としての“叫び”が表現されているようにも思います。

ReoNa “叫べ Grunge”と歌っていますし、“楽しんだもん勝ち”もそうですが、真っ直ぐかつわかりやすい言葉で心の内側を表現しているので、私も歌うときは叫ぶ心づもりだったのですが、普段叫ぶことがないので、最初の段階では全然上手く叫ぶことができなくて。どれだけこの歌詞で表現している“叫び”を歌でも叫べるか。それは6周年に向けて、この楽曲からもらった挑戦状でもありました。

――その課題をどのように乗り越えていったのですか?

ReoNa すごく単純なのですが、普段叫んでいないからこそ、とにかく叫んで歌い続けるしかないという結論になりました(笑)。たった一瞬だけ出る良い声と歌い回しを、全編でもできるようになるまで繰り返し歌う。ruiさんのスタジオで、「この発音でこのキーを出すにはどうすればいいですか?」という相談を何度もさせてもらいながら何度も歌を録ってもらいました。デモの段階からこれだけ歌ったのは「HUMAN」以来だったと思います。

――ちなみにReoNaさんはグランジロックやその精神性に対して、どのような印象をお持ちでしたか?

ReoNa もちろんニルヴァーナやカート・コバーン、フー・ファイターズのことは知っていたのですが、正直、ジャンルとして意識したことはあまりなくて。でも、今回、掘り下げていくなかで、絶望系と繋がるものがたくさんあることに改めて気づきました。「何を考えて生きていたらここに辿り着くんだろう?」ということが多くて。グランジは生き方の1つでもあると思っていて。その語源でもある「薄汚れている」という理念が世に出てきたことによって、初めて自分の好きの形をたしかめられた人もたくさんいたと思うんです。ちょうど「GG」を制作していた時期に、ボン・ジョヴィのドキュメンタリー(「ボン・ジョヴィ:Thank You, Goodnight」)を観たのですが、そのなかでもニルヴァーナは時代を変えた存在だったという話が出てきてて。

――「GG」の歌詞には、ニルヴァーナの代表作『Nevermind』のタイトルや、カートが遺書に書き残したニール・ヤングの歌詞のフレーズを連想させる“錆びつく前に燃えつきろ”というフレーズもあります。

ReoNa “錆びつく前に燃えつきろ”はハヤシケイ(LIVE LAB.)さんが入れてくれました。そして、“Hello, hello, halo”には私なりにリスペクトを込めました。他にも名曲にまつわる色んな遊びを散りばめていて。実はライブで私がエレキギターを弾く時のエフェクターも、調べて、カート・コバーンが使っていたものと同じ機材を入れてみたりしています。MVに映っているエフェクターボードも私が実際に使っているものなので、興味がある人はぜひ観てもらえたら(笑)。

――作詞には、ruiさん、ハヤシケイさん、ReoNaさんの3人がクレジットされています。

ReoNa 私はFPSを実際にプレイする身として、ゲームの中に銃を持ってダイブすることの楽しさだとかも伝えたくて。実はruiさんもFPSをプレイされる方なので、ゲームにまつわる言葉遊びの部分を一緒に担わせてもらっていて。『GGO』は登場人物たちがあの世界の中のゲームに入って戦うお話ですが、現実世界でゲームにダイブして楽しむ私たちにも重なる言葉、世界中、すべてのゲームユーザーを「楽しんだもん勝ち」と肯定しちゃえるような歌詞にできればという思いがあって。“Run away away away into the geme”、「好きなゲームの世界に逃げていいよ」というメッセージを込めました。

――プラスして『GGO』の楽曲として考えると、ピトフーイ=神崎エルザの精神性に近いものを感じました。

ReoNa そうですね。でも、今回は特定のキャラクターというよりも、『GGO』の世界全体をイメージして書いています。私自身もゲームの楽しみ方が、レンちゃんやピトフーイに近いところがあって。現実にはできないこと、現実にはなれない姿に憧れて、普段はできないことをゲームの中で発散したり、理想の自分や世界にダイブしていくというのは、ゲームをやっているみんなが多少なりとも抱えているものだと思うんです。

――なるほど。ゲームの中の世界だからこそ、死や敗北を恐れることなく“何度でも死に戻れ”や“残弾は気にすんな”と歌えると。でもReoNaさんもゲームではブレーキを踏まないタイプなんですね。

ReoNa 全然踏まないです。前衛タイプなので、シールドは持ちたくないですし、力こそパワーなので脳筋でプレイしています(笑)。

――そういうマインドもこの楽曲を歌うのに役立ったかもしれないですね。プラスして死を恐れることなく全力で生きるという意味では、ReoNaさんのこれまで歌ってきた“生きる”というテーマ性にも繋がってくるのかなと。

ReoNa そうですね。歌い出しから“Hello, hello UnHappyにHello”と歌っていますが、「ハロー、アンハッピー」という言葉は元々、私の日常へのひねくれから生まれたものなのですが、この曲ではその言葉にまた1つ意味ができた気がします。ついてない日もあるし、毎日、自分の思うようにいくわけではないけど、“UnHappyにHello”とひねくれながら残弾を気にせずぶっ放していくと言いますか。「ハロー、アンハッピー」と『GGO』の掛け合わせで生まれたのが「GG」なんだと思います。

――「GG」というタイトルにも色んな意味合いが重なっていますよね。

ReoNa 『GGO』を連想させるようであり、ゲームを終えたときにチャット欄に溢れるスラング(「gg(=good game)」)でもあって。ゲームユーザーにとってはすごく日常的な言葉で、挨拶の1つでもありますし、たまに嫌味で言われる言葉でもあって。この「GG」というタイトルは、思いついた瞬間にこれでいこうとなりました。

ハヤシケイ×ReoNa楽曲の神髄が詰まった「Mosquito」

――今回のシングルには、前回の座談会インタビューでお話を聞いた「私たちの讃歌(ウタ)」(ゲーム「ソードアート・オンライン フラクチュアード デイドリーム」)の他にも2曲のカップリング曲を収録。期間生産限定盤には、ハヤシケイさんが作詞・作曲・編曲を手掛けた「Mosquito」が収められています。

ReoNa この曲はまさに「GG」の制作でグランジを聴き漁っているなかで、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」の歌詞にある“mosquito”をテーマに、ケイさんに楽曲制作をお願いするところから始まりました。ケイさんは今までの私の楽曲でも、(カフカの「変身」をモチーフにした)「ミミック」や、「SWEET HURT」の“落ちた羽虫”、「forget-me-not」の“肺呼吸の深海魚”や“風に上手く乗れない鳥”のように、小さな命について文学的に描くことが多くて、私の中ではそれがケイさんの神髄の1つだと思うんです。今回の「Mosquito」も、このテーマできっとケイさんなら素敵な楽曲を作ってくれるのではないかと思って。いざ楽曲が届いたら、予想どおり期待どおり、ケイさんらしい文学的描写の楽曲になっていました。

――愛が欲しいと願う自分をモスキート(=蚊)になぞらえた歌詞で、望みが叶わないことを知っていながら望んでしまう絶望が描かれています。

ReoNa 「愛されたい」というのは誰もが願わずにはいられないと思うんです。多分、その欲求や願望は必ず持って生まれてくるもので。ただ、自分の欲しい愛の形と、人から与えられる愛の形は、必ずしも一致しない。それでも求めてしまうこと、手に入らないものに焦がれてしまうことの理由を、自分の中に探すほうが簡単だと思うんです。私にとってこの曲はそういうもので。自分の力では変えられないもの、自分の力だけではできないこと。「こうだったら良かったのにな」というものに頼らずにはいられない。人から見たら幸せなのかもしれないけど、その人の中には足りていないものがたくさんあって。人のせいにするのも簡単だけど、自分のせいにするのも簡単というか。でも自分1人だけでは完結することもできない。そしてタイトルが「Mosquito」っていう。

――ReoNaさん自身もそういうふうに感じていた時期があったのですか?

ReoNa ありました。すごく長かったと思います。きっと見渡せばたくさんの愛が落ちていたんだろうけど、自分が求めていたものとは形が違うというだけで、見なかったことにしてしまったり、なかったことにしてしまって。でも、どうしようもなく自分が欲しい形がどうしてもある。それは自己完結や時間の経過では埋まらないもので、あの時埋まらなかった、埋めてもらえなかった自分が、いつまでもずっと心の中で泣いているんです。どんなに時間が過ぎても、そのときに付いた傷がなかったことにはならない。欲しいのに与えられなかったものに対する枯渇感や執着心のようなものは、未だにあるなあと思います。

――レコーディングではどんなことを意識して歌いましたか?

ReoNa ケイさんと相談しながら歌を録っていきました。「SWEET HURT」でも意識していたReoNaの原点、柔らかく温かく歌うからこそ、楽曲の中にある毒を帯びた部分や痛々しい部分がより際立って聴こえてくる、というところに改めて立ち返って、楽器のすごく温かで煌めいた音に身を委ねながら、歌っていきました。

次のページ:作詞からギター演奏まで“ひとりぼっち”で挑んだ「By myself」

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