「まだまだ王道を行きます」──最新の“大西亜玖璃らしさ”を表現した7thシングル「アウフタクト」その制作過程を語る

「夢の世界」をイメージした神秘的なMV

――「アウフタクト」はMVも制作されたので、撮影についての想い出もぜひ聞かせてもらえますか？　白いドレスと音大生風の2パターンの衣装は大西さんも気に入られていたそうですね。

大西　はい。実はそれ以外にも衣装をいくつか用意していただいていて、カラフルなものやかっこいいものもあったんですけど、白いドレスが特にしっくりきたんですよ。白いお花がたくさんあしらわれているのもすごくかわいくて、草木がモチーフのヘアアクセサリーともマッチしていて気に入っています。あと、衣装さんが靴下にこだわりを持っている人で、ベースはシースルーなんですけど、パンプスを履くとレースの部分だけがちょっと見えるデザインになっていて、それがめちゃめちゃかわいくて。

――では、白いドレスのシーンを観るときは少し映像を止めて凝視してもらいましょう。

大西　そうですね。あと、白いドレスでの撮影に関しては、振付がなかったのでどう動いていいのか、緊張してドギマギしていました。窓辺で歌っているシーンも、いつもならカメラに向かって「ウェイウェイ♪」と歌っているので、「うん？なんか物足りないぞ」みたいに感じながらでした。ここの動きも合わせて見てほしいです。

――音大生風の衣装については？

大西　トップスはニットのTシャツみたいな感じなんですけど、襟をつけた方がかわいいということで、襟だけ付けてもらいました。

――楽器の方と一緒にMVを撮るのは初めてですよね。

大西　確かに。「バンドは安易につけない」というのが（プロデューサーの）工藤さんの考えみたいで、それは「ここぞ、というときに持ってきましょう」と言っていました。

――では、そのときを楽しみにしつつ。今回は女性4人によるカルテットが一緒ということで、神秘的で素敵な空間が生まれていましたね。

大西　「夢の世界」のイメージらしいです。音大生の大西亜玖璃が思い描いている未来の大西亜玖璃、みたいな。五線譜をくしゃくしゃ丸めるところは、音大生の私がうまく作曲できなくて……、というシーンで。でも、「いつかきっと！」というイメージですね。

――完成したMVを観ての感想は？

大西　布を垂らしているじゃないですか？　「どういう風に映るんだろう？」って心配していたんですけど、いい感じの壁になっていましたね。白い空間が綺麗でした。あと、キラキラのエフェクトが印象的でした。撮影のときは、カメラマンさんが実際に光る石を持ちながら重いカメラも構えて、目を細めながら撮影していたんです。

――プリズムみたいな小道具で反射させていたんですね。

大西　めっちゃ汗をかかれていました。その仕上がりを確認しながら、監督が光の量について指示を出すんですけど、（それに対しカメラマンが）「こっちは1人でやってるんだよ！」とか言って（笑）。光の加減にすごく苦労していました。

――努力の賜物だったんですね。

大西　だから、完成した映像を観てすごく素敵だな、こんなにキラキラに映るんだ！って思いました。あと、“まだ見ない、未来に行こう”の部分は（5thシングル収録の）「夢で逢えなくても」のMVで“ロックンロール！”をやったときと同じく、唇とセリフ（リップシンク）が合っているか心配だったんですけど、出来上がったMVではちゃんと合っていてホッとしました。

みんなも自分の歌だと思って歌ってくれれば

――続いて、「Fall in you」についてもお聞きしたいんですが、「アウフタクト」とレコーディング時期は離れていたんですよね？

大西　「Fall in you」は、（8月開催のファンミーティング）“おおにし幼稚園”で披露するために、イベントの1週間前くらいに録りました。

――リリースの時期を考えるとまだ余裕はあるタイミングですね。楽曲はそれ以前に決まっていたんですか？

大西　工藤さんからは「あぐぽんは大人っぽい楽曲も歌ってみたいと言っていたけど、次のカップリング曲ではTHE アイドルソングを」「しかも3次元のアイドルが歌っているようなものを歌ってもらいたいです」と言われていて。私もアイドルソングは大好きなのですごく楽しみにしていました。

――3次元の、というのはアニメのアイドルグループではなくて現実のアイドルグループのような、ということですね。なるほど、“I miss you, I miss you”のフレーズ辺りはそういう感じがします。

大西　そうなんです。歌詞がすごくわかりやすくて、みんなで歌えるサビが来たのですごく嬉しかったです。

――ではレコーディングも気分良く？

大西　そうですね。工藤さんが、サビの直前に入っている掛け声の“Yes, I do”について、「ファンの気持ちがこうだったらいいね」「あぐぽんをこうやって肯定してくれたら嬉しいよね」って言っていたんです。そうしたらディレクターの井上さんが「あぐぽん……、Yes, I do！」って親指を立てていて（笑）。それがすごく印象に残っています。確かにここは「Yes, I do！」ってみんなに大きな声で叫んでほしいです。

――自己肯定感を。

大西　上げる感じで。でも言葉数が多いし、音域の高低差もあるので、切り替えが難しいというのは頭の片隅にありました。なので、言葉数が多くて低い1Aは「お経みたいにならないように」と思っていました。イメージとしては、1行ごとに3人くらいずつで歌って、次々と流れるように入れ替わっていくような感じで歌いました。実際に現れるのは全部私なんですけど（笑）。

――大西亜玖璃が9人くらいで構成されるアイドルグループのイメージで。

大西　はい。だから、ライブやイベントでは“Yes, I do”だけではなく、“I miss you, I miss you”から全部、ファンの人が歌ってくださっても良いのかなと……！　「僕も同じ気持ちだよ」という感じで。ぜひ、お経にならないように頑張って歌ってくれたらいいな、って思います。

――大西さんがマイクを客席に向けたらきっと歌ってくれるんじゃないですかね。

大西　1行ごとに（笑）。そんな日があってもいいかもしれないですね。

――あるいは裏技としては、工藤さんたちスタッフと一緒に歌うか。

大西　（拍手）。それはいいですね。

――スタッフとのファミリー感あふれるところも大西亜玖璃イベントの魅力なので。“おおにし幼稚園”でもスタッフやファンと一体化した雰囲気も相まって、細かいところは気にせず楽しく歌えたのが上手くいったポイントだったかもしれませんね。

大西　本当にそういう感じでしたね。それに振付がまだなかったというのもあると思います。昔は、体力がないから踊ると疲れてしまっていたんですけど、今は踊りながら歌った方がパフォーマンス的にはいいんです。私、ずっと棒立ちのままでも歌えてしまうんですよ。

――それは、リズムやメロディを身体でとらず、という意味ですか？　意外に難しいですよね。つい手が動いてしまうこともない？

大西　ないですね。どんなに視線が集中しても、ずっとそれで歌えます。逆に動くのは難しくて。心の中では動いているんですけど、外には出てこないんです。

――あ、心の中ではノリノリなんですね。

大西　ノリノリです。だから、レコーディングは良くても“おおにし幼稚園”ではどうなるのか心配していたんですけど、意外と本番もノリノリで歌えたから良かったです。「できるじゃん、私」と思いました。