INTERVIEW
2024.11.15
放送中のTV アニメ『魔法使いになれなかった女の子の話』EDテーマ「瞬間最大風速」は、夢を諦めずに頑張る人に元気を贈る、いつも明るいhalcaらしいエールソング! 名優・寺島 進が出演したコメディ仕立てのMVの撮影秘話、halca作詞によるカップリング曲「ほんとしょーがない」についてもたっぷり語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 阿部美香
――『魔法使いになれなかった女の子の話』(以下、『まほなれ』)は、クルミ=ミライ(CV:菱川花菜)とユズ=エーデル(CV:山田美鈴)という魔法使いに憧れる正反対な性格の2人の女の子が、レットラン魔法学校の「国家魔法師養成専門学科(通称・マ組)」には不合格になりながらも、普通科に進んで魔法使いを目指す“青春*魔法学園ファンタジー”。絵本のようなかわいい絵柄と明るい学園ストーリーが魅力的なアニメですね。
halca アニメ、すごくかわいいですよね。パステルカラーが使われていて、線も手描きっぽい。お話の中でも主人公達が魔法陣を描いていくのがポイントなんですけど、そういう線の質感なんかも大事にしてるのかなと思いました。お話も前向きでクスッと笑える部分がたくさんあって、温かい気持ちになります。今の放送枠は深夜ですけど、のちのち再放送で日曜日の朝とか夕方とか?の時間帯に流れたら、子供たちもきっと楽しめそうですよね。
――halcaさんが、これまで主題歌を歌ってきたアニメはラブコメ系が多かったので、『まほなれ』のような作品とのタイアップは新鮮ですね。
halca 言われてみれば確かに!こんなにファンタジーなアニメは初めてかもしれないです。元々は小説が原案なので、アニメでは設定や登場キャラクターもちょっと変わっているので、ますます「どんなアニメになるのかな?」という楽しみがあります。
――ちなみに、好きなキャラクターは誰ですか?
halca ミライちゃんやユズちゃんと同じ普通科に通うアスカ=クルマル(CV:林 幸矢)くんです!キョウ=クルマル(CV:小林千晃)くんという双子のお兄ちゃんがマ組にいるんですけど、私、男の子でも女の子でもアニメキャラにおける“双子”が好きなんです(笑)。それにアスカくんとキョウくんの関係性にも、奥に何かがありそうなので、すごく気になります。
――ところで、halcaさんは魔法使いになりたいと思ったことあります?
halca もちろんあります!子供の頃は『プリキュア』や『おジャ魔女どれみ』や『(美少女戦士)セーラームーン』や『東京ミュウミュウ』で育ちましたし、大きくなってからも『カードキャプターさくら』にどっぷりハマっていました!
――大好きですね、魔法使いの女の子が。ではどんな魔法が使いたいです?
halca せっかくだから、どうしても思い出したい人がいる人を助けたいです。人の記憶で一番最初に忘れてしまうことって、ほとんどが“声”や“匂い”みたいなんです。そういう記憶を呼び起こさせる力が持てたらいいな。でも、いつまでも過去の記憶に浸っていても残された人が前に進めなくなってしまうから、そこで気持ちの整理をつけてもらって、前に進むお手伝いをする魔法使いになれたらいいなあ。
――そんな『まほなれ』のEDテーマが「瞬間最大風速」。halcaさんにとっては11枚目のシングルになりますが、どんな曲にしたいと思いました?
halca まずは主人公クルミちゃんの魔法使いへの強い憧れとリンクする楽曲にしたかったですし、作品を離れても何かを頑張っている人を後押しできるような……でも「頑張れ!」と言わない方法で、みんなの背中を押す曲にしたかったです。元々halcaチームで作る曲には特徴があって。例えば「ありがとう」という気持ちを伝えたくても、そのまま「ありがとう」という言葉では表さなかったりするんです。だから今回も、誰かの背中を押したいけど、超熱血な感じじゃない曲を、田中秀典さんに作詞・作曲していただきました。
――頑張り屋のクルミちゃんを応援する曲に。
halca はい。そして、この曲をアニメよりも先に聴いてくれた人や、これからアニメを観ようかなと思っている人たちには「自分も何かを始めてみようかな」と思ってほしいし、「何かをやってみたはいいものの、なんだか上手くいかないな」という人たちにも響く曲にしたかったです。
――タイトルの「瞬間最大風速」のインパクトが大ですが、これは?
halca これは(田中)秀典さんにいただいたデモから、仮で付いていたタイトルです。歌詞は最初、少し恋愛っぽい要素も入っていて、「願い叶えるために何かを巻き起こすぞ!」「自分を奮い立たせるぞ!」という意味での「瞬間最大風速」だったんですけど、歌詞の内容をもっと『まほなれ』に近づけてもらいまして。クルミちゃんはもちろん、色々な経験を今している方にも寄り添う曲にして、タイトルはそのままいただきました。
――halcaさんらしい勢いが感じられますね。楽曲を受け取った時の印象は?
halca デモを聴いた瞬間、この曲に出会った瞬間にもう絶対歌いたいって思いました。
――特に気に入っているところはどこですか?
halca たくさんあるんですけど、1番のAメロ、Bメロでフレーズの語尾が韻を踏んでるところが最高です!
――“憧れって まばゆいサンダー 癖になってく コリアンダー”とか?
halca ですです、ダジャレっぽいんですよ(笑)。秀典さんは、デモに仮歌詞として入れてくれたと思うんですけど、「これ最高なので、ぜひ残してください!」ってお願いしたんです。なんかちょっと面白おかしいところがあるのも、私らしさの1つなので。あと好きなフレーズは1番のサビに出てくる“一度しか使えない 言葉が宿って”というフレーズです。この一文だけで、涙が出そうになるんですよね。恋愛だったらプロポーズの言葉かも知れないし、本当に大事な人への感謝の言葉かもしれないし……。
――halcaさんは、“一度しか使えない言葉”と聞いて、何を思い浮かべました?
halca 「一生のお願い!」ですね。子供の頃は、お父さんやお母さんに何度も使っていた言葉ですけど、大人になったら全然使わなくなりますよね。そこまで「お願い!」って言いたいこと、思うことも減ってきた感じがするから、このフレーズを見た時にハッとして。そういう言葉を持てるのは、素晴らしいことなんだなと思いました。
――レコーディングはいかがでした?
halca 今回は、自分の中でイメージを掴むまでに、すごく時間がかりました。今回は「瞬間最大風速」というタイトルや楽曲のイメージどおり、とにかく勢い良く歌おうと思ったんですけど、その“熱さ”を歌い方ではなくボリュームで出そうとする自分がいて。スタジオには秀典さんも来てくださったので、私もすごく気合いが入ってしまい、「とにかく大きな声を出そう!超フルスロットル、パワー全開でいこう!」と思い歌ってみたら……逆に「あれ?全然勢いが感じられない、なんで?」な歌になってしまったんです。
――全力すぎて、メリハリがなくなってしまったのかも?
halca そうなんですよね。ディレクターさんとエンジニアさんにも、「気合いが入りすぎてボリューム出しすぎかもね」と言われました。そのアドバイスのおかげでようやく自分の声をちゃんとコントロールできるようになって、ホッとしました。ライブもそうなんですけど、「ただ大きい声を出せば勢いがつくわけじゃない!」という、歌の超基本的を改めて思い出すことができて、すごく学びのあるレコーディングになりました。
――疾走感のあるバンドサウンドに負けない、halcaさんらしい歌唱ができたと。
halca はい。すごく気持ちのいい曲になったと思います。あと、圭太さんがアレンジしてくれた凝ったサウンドもお気に入りです。例えば……“風のように走り去った”のところに、風のような音が入っていて砂埃が舞うのが見えたり、サビでは一気に溜め込んでいたものが風に乗って爆発するようだったり、すごく細かい効果音のように楽器の音が散りばめられているんです。本当に魔法のように、色んなものがキラキラ飛び散っているイメージがするんですよね。2番の後のダンダンダーンと音が下がっていくところは、頑張っているのに上手くいかないクルミちゃんが目に浮かぶし、なんだか情けない私にも重なって、自分らしくてすごくいいなと思います。
――そして「瞬間最大風速」で気になったのがMVですね。halcaさんのMVはコミカルなストーリー仕立ての作品が多いですが、今回はhalcaさんが遅刻して、台風並みの強風の中を撮影の現場に向かうというお話でした。
halca はい、もう面白いMVがお馴染みになってきました(笑)。
――しかもその撮影カメラマン役が……なんとあの名俳優の寺島 進さん!MVの最後になるまで顔がわからない仕掛けになっていたので、ビックリしました。どういう経緯で、出演していただいたんですか?
halca 今年の2月に、halcaチームで作戦会議をしてたんです。次のライブはこうしたいねとか、新曲のビジュアルはこういうのがいいね、とか夢のある話を。その時に「瞬間最大風速」のMVの話になって、ものすごい大きい扇風機で風を起こしてもらって、あり得ないものが降ってくる中を走る映像にしようと妄想を話していたんです。その時にチーフマネージャーさんから「誰かスペシャルゲストとして出演していただきたい方はいる?」と聞かれたんですよ。じゃあ「遅刻した先で待ってくれている、どっしり構えてた方がいいかも?」と思ってネットを見ていたら、私の理想の“イケおじ”の寺島 進さんにビビッときてしまって!一度、オファーしてみようと連絡を取っていただいたら、OKをいただけたんです。
――それは驚きですね。
halca そうなんです、私が一番ビックリしました(笑)。
――撮影現場では寺島さんとお話も?
halca はい、すごく気さくな方で!寺島さんの出番まで、私の撮影をしていたんですけど、それも横で見ていてくださって、すごく嬉しかったです。私と寺島さんが会話するシーンも、MVなのでセリフが決まってるわけじゃないんですよ。そうしたら、寺島さんがテストも本番も毎回、違うお芝居をアドリブのセリフでやってくださるんです。しかも私の目を見つめながらなので、「うわーっ」ってずっとドキドキしてました。
――さすがですね。
halca 俳優さんって、本当にすごいですよね。あと、初回生産限定盤のほうに映像特典でMVのメイキング映像が収録されているんですけど、スタッフさんのことも楽しそうにいじってくださるし。みんなと自然体で打ち解ける方法を見せていただいた気がして、そこもすごく勉強になりました!
――ベテランだからこその気づかいですね。
halca そうなんです。撮影が終わった後も、寺島さんのほうから「みんなで記念撮影しようよ!」と言ってくださって。いつか私がもっとビッグになってお呼ばれされる立場になったら、みんなが本当はどうしてほしいと思ってるのかをちゃんと汲み取って、自分から声をかけてあげられるような人になりたい!と思いました。演技されている時も、すごくかっこいいのに、プライベートも本当に素敵な方で。ご一緒できて光栄でした。
――halcaさんご自身の演技については、今回いかがでした?
halca すごい風を浴びている感じで、傘に振り回されるシーンがたくさんあるんですけど、そのよたよたしてる動きは監督さんに褒めていただけました。あとせっかくこういうMVなので、「おっとっと!」と躓きそうになる動きも入れたくて練習してたら、マンガみたいに本当にコケちゃって(笑)。メイキング映像にはもしかしたら入ってるかもなので、そちらもぜひ観ていただきたいです。
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