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INTERVIEW

2024.11.15

『ダンまち』×sajou no hanaの最強タッグ再び!sana、渡辺 翔、『ダンまち』シリーズの志治プロデューサーが、『ダンまち』そしてsajou no hana楽曲を語り合う!

『ダンまち』×sajou no hanaの最強タッグ再び!sana、渡辺 翔、『ダンまち』シリーズの志治プロデューサーが、『ダンまち』そしてsajou no hana楽曲を語り合う!

2024年に入ってsana、渡辺 翔、キタニタツヤのユニットからボーカリスト・sanaのソロプロジェクトとして再始動を果たしたsajou no hana。そんななか10月から放送がスタートしたTVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』のEDテーマ「ハイドレート」が発表された。これまで数々の『ダンまち』楽曲を手がけてきたsajou no hanaが、今回の楽曲で込めた女神・フレイヤの片思いとは――?今回はsanaに加えて「ハイドレート」の詞曲を担当した渡辺 翔、そして『ダンまち』シリーズを手がけるワーナー ブラザースの志治雄一郎プロデューサーも加わって、sajou no hanaと『ダンまち』の関係についてじっくり聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

ソロプロジェクトとしての再始動の中でみられるsanaの“変化”

――ニューシングル「ハイドレート」のお話の前に、現在のsajou no hanaについてsanaさんにお伺いします。今年に入ってsajou no hanaはsanaさんによるソロプロジェクトとなりました。以降はツアーなど精力的な活動を行なっていますが、sanaさんにとってそうした変化はご自身にどんな影響がありましたか?

sana 自分でも変化は感じていますね。今までは楽曲を次々と出していくというスタイルだったんですけど、今年に入ってライブ活動に力を入れるようになってきたのもあって、ファンの方の生の反応みたいなものをすごく感じられるようになりました。

――ファンのリアクションを目の当たりにできるというのがまず大きな変化であると。

sana 配信した楽曲の感想をネット上などでいただくことも多かったんですけど、これまではライブがあんまりできていなかったんですよね。アニメのイベントに出させていただくことはあったんですけど、自分たちのライブというものがなかった。だから今年に入って、「この曲はこういうふうにノってくれるんだな」とか「こういうふうに受け取ってくれるんだな」とか、そういうリアルな反応をもらえるようになって、それが自分の中で一番新鮮かもしれない。

――sanaさんとしてはフロントマンとしてステージを引っ張る役目というのもこれまでとは違う点なのかなと。

sana いやぁ……自分にすごくプレッシャーをかけています(笑)。今までは3人でsajou no hanaが出来上がっていたけれど、今は1人でsajou no hanaの魅力を伝えていかなくてはならない。今までは翔さんとキタニさんに助けてもらっていた部分もあったので、今はそこに甘えずに、ライブでも自分でもっとお客さんを引っ張っていけるようにならなきゃなとも思いますし、楽曲を知ってもらうためにも自分がもっと前に出ていけたらなと思ってもいます。

――そうした、翔さんから見たsanaさんの姿はどう映りましたか?

渡辺 翔 この前のライブも観ました。3人のときのイメージや多分僕が元から持っているイメージというか、それこそ僕、sanaと初めて会ったのは彼女がまだ義務教育中だったと思うので(笑)、そこからのイメージがあるんですよね。で、キタニと僕の中で、sanaという人物は多分少し控えめな部分があったりしたのかな?と思っていたんです。だけど、1人になってからのライブを観ると、「あれ、思っていた人間と少し違うのかもしれないな」みたいな。

――それはsanaさんの成長や変化ということでしょうか?

渡辺 別にどこか抑えていたわけじゃないけれど、1人になるとこういう面が出てくるんだ、みたいな一面をライブで感じて。自分も離れたからこそ見えるところから、それこそ今後の曲とかに対しても新しいアプローチしたいなとか思うようにはなってきていますね。

――sanaさんもご自身の変化というものは感じていますか?

sana だいぶファンの人に心を開けるようになって……(笑)。今までファンの皆さんとの交流みたいなものってなかったので。それこそ今回のツアーを経て、お客さんも楽しみ方とかも変わっていくのを感じていましたし、一緒に成長していける感じもあったので、そういう意味で……本当は最初から心開いていないといけないんですけど(笑)。でもファンの方も私がそういう性格だというのはわかってくれていると思うんです。今はまだちょっと空回りしながらも、そんなところも楽しんでもらいたいですね。

『ダンまち』の様々なシーンに対応できるsajou no hanaの表現の幅広さ

――そうしたなかで今回TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅤ 豊穣の女神篇』のEDテーマをsajou no hanaが担当しました。 これまで『ダンまち』で数々の楽曲を手がけてきたsajou no hanaについて、アニメ制作サイドとしてはどんな印象がありますか?

志治雄一郎 これまでかなりの曲数をsajou no hanaには歌っていただいているわけなんですけど、ちなみに何曲歌っているか覚えてますか?

sana えっと……8曲くらい?いや、もっとかも。

志治 『ダンまちⅢ』からsajou no hanaに入っていただいて、来年発売のゲーム「ダンフル」(「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 水と光のフルランド」)の主題歌「溺愛」で9曲ですね。

sana 9曲!こんなにやらせていただくとは思わなかったなあ。

志治 あと、劇場版(『劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか -オリオンの矢-』)ではsajou no hanaではなくて、sanaさんとして挿入歌の「月鏡」という曲があって。

――sanaさんとしては10曲も歌っているわけですね。

sana sajou no hanaとして関わり始めたのが3期からで、シリーズの途中から「お邪魔します」みたいな感じで恐る恐る入ったのに(笑)、まさかこんな立て続けにできるとも思っていなかったので、いまだに不思議な感じです。

――およそ5年の中で、sajou no hanaと『ダンまち』とで非常に濃密な関係性が築かれていたわけですね。

志治 そこで質問に戻ると、これまで9曲歌ってきていただいているなかで思うこととしては、それぞれ『ダンまち』の様々な側面を切り取ってオーダーしているなかで、そこに対してどんなときも寄り添ってもらえる表現の幅の広さというところがsajou no hanaの魅力なのかなと思いますね。

――たしかに、シリーズの最初から関わっているわけではなく、途中からでもそれぞれのエピソードに応じた楽曲を作ってきたという印象は強いですよね。

sana そうなんですよね。同じ作品でも『ダンまち』はエピソードによって話の雰囲気が結構変わってくるじゃないですか。私的にはそのなかでも1期の『ダンまち』のイメージというのがすごく強かったんですよね。それこそお仕事する前から観ていた頃は1期のかわいいキャラクターがたくさん出てくる印象があって、でも私たちが参加させてもらった3期からは、ベルくん自身も過酷な状況にどんどん追いやられ、向き合わなきゃいけない試練もどんどん大きくなっていく。なので楽曲にもその痛みに寄り添うような楽曲を歌わせてもらっていて、私も「ベルくん大変だな……」と思っていました。

――たしかに、エピソードとして激化していくなか、主題歌を歌うsajou no hanaの役割というものは大きいですよね。

sana “浄化エンディング”という言い方をしていただきますが、作品やベルくんたちにちょっとでも寄り添える優しさみたいなものが伝わっていたら嬉しいなと思います。

――では翔さんはいかがでしょうか。ソングライティングの面でも『ダンまち』という作品はどう映っていますか?

渡辺 僕の中で『ダンまち』には大きい2本の柱があって。それは素晴らしいストーリーとキャラクター、それぞれがめちゃくちゃ強いというイメージで、キャラクターもベルくんだけじゃなくて、「いや、この人数を光らせるのなんて無理でしょ!」みたいなのをやってのけるんですよね。それが魅力的で。その点で曲を作っていて思ったのは、僕はsajou no hana以外でも『ダンまち』に関わらせていただいていますが、やっぱり切り取る場所によって曲が全然変えられるんですよね。

――翔さんは4期での早見沙織さんの「Guide」「視紅」、あるいは外伝の『ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝』でも井口裕香さんに「RE-ILLUSION」を提供されていますね。

渡辺 そういう色んなアーティストさんが色んな曲調で歌っても『ダンまち』に合うというのは、『ダンまち』がそれを全部受け取るだけの魅力が色んなところにある作品だからなのかなと思っていて。そういう面でも楽しい作品だなと僕は思います。今回はこのキャラクターに焦点を当ててこういう曲やってもいいよねとか、もしくは歌う人が変わった場合はじゃあこの人の声でこんな曲もいいんじゃないかとか、そういうのを僕は楽しみながらいつも作っています。それこそ『ソード・オラトリア』の井口さんの曲は、より異世界観を強くということを考えたりしていましたね。

「ハイドレート」で語られる、フレイヤの綺麗だけど綺麗じゃない片思い

――そんななかでの『ダンまちV』ですが、これだけ長いシリーズとなっても導入はすごくわかりやすく、また『ダンまち』の楽しい側面が観られる序盤となりましたね。

sana ここに来ても相変わらずベルくんはモテまくって……いや、わかります。あんな真っ直ぐな目をしていたら、みんな好きになっちゃいますよ(笑)。でもやっぱり4期までがすごく過酷だったから、もう5期の1、2話辺りは癒され度がすごすぎて、ベルくんとシルさんのデートに普通にキュンキュンしたり。

志治 5期になっても評判はすこぶるいいですね。「こういうのが観たかった!」みたいな1期からのファンからの声もありますし、もちろんこれから色々なことがあるんですが、「今は平和だな」と(笑)。

――では今回のEDテーマ「ハイドレート」について聞かせてください。まず、志治さんはsajou no hanaにはどんなオーダーをされたのでしょうか?

志治 いつもオーダーさせていただくときはこうやってお会いして、「今回はこんな話です」というのを説明させていただくんですが、今回の楽曲のテーマは“フレイヤの片思い”という、もうその1点でお願いをしました。今回のお話ってベルとシルのデートから始まって、徐々にオラリオを巻き込む大きな展開に発展していくわけなんですけど、そういうのも含めてすべては片思いという1つの小さな気持ちから始まっている、という根幹の部分がエンディングで流れるというのがすごく収まりがいいような気がしていて。そのなかで曲調としてはシンプルだけど芯がしっかりしているようなイメージの楽曲でひとつお願いします、という。

――なるほど。

志治 もう1つは歌詞についてです。今回はエピソードが進むにつれて少しずつ謎が解け、エンディングを聴いたときに「なるほど、こういう意味もあったのか」と思えるような、見ていくうちに歌詞の意味がわかってくるような仕掛けがあったらいいなと思っていました。発注される方は難しいだろうなと思いつつ、うっかりオーダーしてしまったのですが、実際にその通りの歌詞が上がってきて、脱帽する思いでした。

――それを受けて翔さんは曲をどう作っていきましたか?

渡辺 僕が曲を作るうえでまず一番参考にしたのが、このビジュアルだったんですよ。

――花畑にシルが立っているティザービジュアルですね。

渡辺 はい、この絵に合う、要はミディアムな曲という認識でいいですか?って聞いたうえで、このイラストに一番合いそうな曲調で書いたというのがあって……。

sana ……ふふっ。

渡辺 どうしたの?

sana いや、それが出来上がったED映像がああなって……。

渡辺 ああ、あれにはびっくりしたよね(笑)。

――あのエンディング映像についてはまたあとで聞きましょう(笑)。

渡辺 いずれにせよ、この絵に合う、このバックでかかっているのが「ハイドレート」というのはありました。で、歌詞も片思いというのを聞いて、曲調も綺麗になるだろう。でもそれで歌詞も綺麗な片思いはちょっと僕の中で違和感があって。要はこの片思いは僕は綺麗じゃないと思ったんですよ。もちろんシルのほうは綺麗なんですけど、諸々ひっくるめるとそんな綺麗な片思いじゃないのかなって思っていたので、歌詞はすごく綺麗な言葉でまとめてはいるんですけど、やっぱり片思いというのは相手がいてこそ成立するものじゃないですか。だから、相手のことを気遣ったり、相手の思いに耳を傾けるというか、それが僕は片思いの中の1つの大事な要素だと思うんですけど、「ハイドレート」ではそれを一切排除したんですよ。

――いわゆるベルくんへのフレイヤの思いというのはちょっと綺麗なものだけではないといいますか。

渡辺 はい。とはいえ、自分勝手すぎるふうに見せるのは、それはそれでちょっと違うなと思ったんですけど、その塩梅を探りながら、「これ相手のことを気にしてる要素ほぼないじゃん!」みたいな歌詞にして。だから悪い言い方をすれば一方通行で自分のことしか考えていないみたいな歌詞にしていて、それが一番わかりやすいのは最後のフレーズですよね。“答えわからなくていい”っていう。要はこれ、相手の気持ちがどうでもいいからとにかく好きだみたいなのを入れて終わらせているんですけど、綺麗だけどよくよく見ると……という歌詞にしたいなと。

――まさにピュアネスを拗らせすぎて迷惑をかけてしまうというのが今回のお話らしいですよね。それを受けてsanaさんは「ハイドレート」にはどんな印象を持ちましたか?

sana 私としては、やっぱりフレイヤの女神としての孤独感であり、力があるから、すべてを手に入れられてしまうからこその虚無感みたいなところがあって、そこにベルくんというどうしても欲しい存在があって、でも彼をやっぱ好きになればなるほど、その心がどんどん膨らんでいく。そういう綺麗なのか歪んでいるのかわからないけど、私的には純粋な“好き”という思いを歌に乗せられたらいいなと思い、いつもよりは少し柔らかいニュアンスで歌わせていただきました。

渡辺 歌でわがままさが出る必要はないんですよね。もちろん初めての気持ちというのもあって戸惑っているのもあると思いますし。

――それゆえ話の展開も含めて、歌詞から上手くいかなそうなムードも伝わってくるというか。

渡辺 たしかに上手くいかなそうな感じはちょっと見えていますね。成就しない系ですよね、これは。なんなら仲がいいかすらもちょっとわかりづらいですもんね、この相手とは。

sana 歌詞でも“足りないのは君のせい”って言っちゃっていますもんね。

――その独特の心情というものは歌詞でもそうですが、メロディやアレンジにも表れているのかなと。

渡辺 サビはわかりやすく広がってほしいというのは打ち合わせでも言われたので、どのくらい広げるかは結構悩みました。多分これ、やろうと思えば壮大になったと思うんですよ。でもそこまでいくと歌詞との整合性や、歌うにもそれに合わせてやっぱり広げなきゃいけなくなると考えると、それは違うのかなと思って。なのでメロディは結構広がってるように作っているけれど、アレンジで少し抑えめにして、最終的に整合性をとったメロディになったのかなという気はしています。

――なるほど。たしかに感情を抑えるような静かなアレンジが印象的ですよね。

渡辺 はい。やりすぎないようにというのは考えていました。

――アレンジにおいても繰り返しというよりかは徐々に広がっていくような、まさに話を追うごとに明らかになっていく心情を意識しているのかなと。

渡辺 展開についてはデモでもある程度盛り上がりのカーブはつけていたんですよね。でもアレンジのオーダーした中でも、全体像で綺麗な曲であるんですけど、何か音像のほうで違和感がずっと残っている曲にしたいと。この曲って、何とも言えない違和感があると思うんですよ。

――そうですね。イントロからすでにざらついたノイズ入ったり、1コーラスあとのジャジーなアプローチなどがあったり。

渡辺 そうそう、ちょっとピッチが安定しなかったりとか、聴いた人の印象に残るような引っかかりにしたいというのは笹川(真生)さんにオーダーさせていただきました。

sana そうですね、私もサビまでちょっと抑え込んだ歌い方にしようと思いました。レコーディング当日も「そこまで盛り上げなくていい」みたいに言われたので、自分としては正直「大丈夫かな」と思っていたんですが、実際に完成した音源を聴いたら広がり具合が自分的には心地良くて。

――それだからこそ最後のサビでの、一気に息を吐くようなボーカルが素晴らしいなと。

sana やっぱり前半を我慢していたところがあったので。行きすぎず、でもやっぱりどんどん思いが膨らんでいく様子というのは、最後で込められたらいいなと思っていたので。

渡辺 最後のサビの“どうせ夢なら嘘でも連れ出して”の“連れ出して”が一番強いですよね。本来の出している領域からちょっと下だけど、ここが一番感情が出ているかなって。

――そこにフレイヤの思いが集約されているようにも聴こえて、グッときますね。

sana なのでフルバージョンでも聴いてほしいですね。あとはやっぱり最後の4行がすごく好きで。最後の4行にベルくんへの思いが溢れる感じで、最終的に答えもわからなくなったけど、でもここに全部の戸惑いや好きという気持ちが全部詰まっているから、ここは聴いてほしい!

次のページ:ボーカリスト、ソングライターとしても進化していくsanaとsajou no hana

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