REPORT
2024.11.13
2021年11月より始動した多次元アイドルプロジェクト「UniteUp!」。誕生から3年となり、sMiLeaプロダクション所属の3つのアイドルグループが単独ライブを開催する。そのライブシリーズの幕開けのステージで華々しく音を放ったJAXX/JAXX、その熱い時間をレポートする。台風の影響で荒天模様だったライブ当日も、会場の熱気はそんな“STORM”の目となる、大きなパワーを放った。
TEXT BYえびさわなち
PHOTOGRAPHY BY 白石達也
ざわめきのなか満員となったGARDEN新木場FACTORYを占めるのは期待感――。多次元アイドルプロジェクト「UniteUp!」に登場する3つのアイドルユニットがそれぞれに単独ライブを開催。その幕開けを、バンドアイドルグル―プであるJAXX/JAXXが飾るとあって、開演前から会場は熱を放っていた。フロアの照明が落とされ、スクリーンにJAXX/JAXXのメンバーがそれぞれ映し出されるとオーディエンスから歓声が沸き、そんななかJAXX/JAXXの5名がステージに登場した。
楽器の位置につくメンバー。ドラムに坐した香椎一澄役の馬越琢己、キーボードの前には桂 ほまれ役の下前祐貴、ベースを握る若桜 潤役の坪倉康晴、ギターを持った森ノ宮奏太役の高本 学。正面に立った春賀楽翔役のmasaがメンバー全員と視線を合わせるとフロアを向き、マイクを握り、歌い出したのは「STORM’s EYE」。「ぶちあげていくぞーーー!」と声をあげたmasaを大歓声が迎える。冒頭から観客の歌声も重なり、この日のSTORMをぶっ飛ばすように大きな歌声は塊となって響いた。軽快なビートに揺れるペンライト、馬越や下前と共にクラップするオーディエンスの姿を高本も坪倉も見渡すと満足そうに笑みを浮かべた。リズムに体を揺らしながら、時にフロアにマイクを向けて一体感を楽しむmasaのボーカルも生き生きと躍動していった。
灼熱の空気でいっぱいとなったフロアに切なげな歌とピアノの旋律。2曲目は「ライアー」だ。人気曲だらけのJAXX/JAXXサウンドの中でもメロウな雰囲気と共に愛される1曲は、叙情的なサウンド感を切なくも甘い歌声が染みる。シンガーソングライターとして活動していた「はる賀」こと春賀楽翔が元アイドルグループ「Popping Zoo」のメンバーと共に結成したJAXX/JAXXの曲の中でも、はる賀のカラーを色濃くしながらもバンドサウンドとして昇華された彼ららしさを感じさせる1曲に、ペンライトを揺らしながらじっと聴き入るオーディエンス。時折マイクを向けるmasaへ、ステージで演奏するメンバーと一緒に歌を紡ぐ場面もありながらも、真っ直ぐに視線を向けて耳を傾ける様子が印象的だった。
続いたのは「JOKER」。ジャジーなギターのリフと軽妙なビート、艶あるピアノの旋律が重なって紡がれるJAXX/JAXXの「オトナ顔」。心地良いビート感に揺れる観客の人波。ソウルフルに歌い上げるmasaのボーカルの表現力も相まって、クールながら熱情宿るナンバーが会場の空気をガラリと変える。テクニカルな演奏も存分に聴かせ、コーラスワークでも会場を席捲し、圧巻の演奏を響かせながら視線と呼吸を合わせるJAXX/JAXXのメンバーたち。そこにオーディエンスの視線も絡まり、会場が大きな1つの渦を作っていく。ほかのアイドルとも違う、楽曲をライブの中で完成させていくような、そんな姿を感じさせた。
「改めまして僕たち、JAXX/JAXXでーす!」と全員で声を合わせる。メンバー紹介ではそれぞれが楽器のソロ演奏も聴かせフロアを煽る。楽翔の定番の挨拶「チャオッピー☆」を会場一体となって声をあげるなど、和やかなMCも彼ららしい。「『UniteUp!』ユニットワンマンライブ、一発目任せてもらっています!一発目ってことは、一番盛り上げなきゃいけないよね!?」とmasaの声に「イェーイ!」とフロアも元気に声を出す。もっともっと盛り上げたいと言うmasa。「俺たちのあとに続くPROTOSTAR、LEGITにリスペクトを込めて。聴いてください!」と歌いだしたのは11人全員歌唱曲「ELEVEN (JAXX/JAXX ver.)」。11人とファンの思い出と未来への期待とで紡がれた珠玉ナンバーをバンドの音で掻き鳴らす。叩き出すドラムの音に、指で鳴らす鍵盤の音に、つま弾くベースに、エモーショナルなギターに、想いが乗る。1つ1つのフレーズに、ここにいない6人の想いも宿るのを感じる。5人で鳴らしているのに11人が見えるような、温かな空気が滲んでいくのを感じさせ、UniteUp!の魂宿る楽曲の強さを、JAXX/JAXXはバンドで響かせたのだった。
「SuperStar」と短くmasaが告げ、歓声が起きる。歌い出したmasaに力強いバンドの音が重なるとペンライトが高く上げられる。光の海に浮かぶようにステージから軽やかな音を鳴らすJAXX/JAXX。「俺たちも全部さらけ出すから、みんなもさらけ出せよ!」と叫ぶmasaにオーディエンスも歓声で応える。5人が声を合わせ、声を繋いでいく1曲で、リズミカルな音と跳ねるビートと共に大きく波打つ会場。ラストはmasaが「We are JAXX/JAXX!俺たちがSuperStarだ!」とキメてみせた。
一度暗転すると、キーボードの下前に当たるスポットライト。フロントにはmasaと馬越が座っている。静かにピアノがつま弾かれると、「好きだから、好きにならないようにするね」が始まり、その歌い出しに客席からは悲鳴にも近い歓声があがる。楽翔が「はる賀」時代に歌っていた珠玉曲を、JAXX/JAXXがカバー、それもツインボーカルで聴かせるというスペシャルバージョンだ。静かに言葉を紡ぎ出すように柔らかで真っ直ぐなmasaのボーカルと、masaより少し低く深みある音像で聴かせる馬越のボーカルとのユニゾンで魅了した。
「楽翔くんとmasaは同じシンガーソングライターをやっているのね。JAXX/JAXXの曲も何曲か書いたりして、そのときに言葉を紡いで、メロディに乗せているときに自分の想いも少なからず乗るわけ。そこでみんなに聴いてもらうときに“助けられました”とか“日々のパワーになっています”って言われるの、俺。本当にありがとうね。歌って魔法だなって思う。僕が唯一みんなに届けられる魔法だなって思ったの。だからこの魔法を使えれば、あの子に想いを伝えられるのかなって。そんなクリスマスの1つの願いを歌った曲です。『クリスマスの魔法がつかえたら』」とmasaの語りから始まったはる賀時代の1曲に拍手が湧く。今度はステージにアコースティックギターを手にした高本、そしてmasaの隣に座る坪倉。優しく情景的なギターのフレーズに言葉をつぶやくように歌い出すmasaの伸びやかな高音がフロアを浸食していくと、少しハスキーながら繊細に響く坪倉のボーカルが重なる。まさに魔法のような温かな時間を紡いでいく2色の歌声に、オーディエンスは時折涙を流しながら静かに聴き入った。
「緊張したーーー!」と歌い終わった瞬間に坪倉が声をあげ、静寂の空気が破られる。そこから坪倉とmasaの漫才のようなMC。そしてステージに揃うJAXX/JAXXの5人。「あなた(masa)がはる賀の曲をやるって言ったんじゃない」とこのコーナーのきっかけについて口にする馬越。下前のピアノ1本での演奏について、「滝 竜人さんが提供してくださった曲で、竜人さんのピアノを弾かせていただけて光栄でした」と言う。はる賀の曲のライブを見たかったけれど、プレイヤーとして演奏し、馬越とmasaの2人の歌を聴けたのが嬉しかったという。続く「クリスマスの魔法がつかえたら」については「ギターをずっと弾いてますからね。でも下ちゃんの『好きだから~』がすごく良かったから、次はピアノとアコギで一緒にやりたい」と高本が言うと、会場から拍手と歓声が沸いた。「今回、みんなの歌声も聴いてもらいたいなと思って、はる賀のカバーを提案させていただいたんですけど、すごく盛り上がってくれて本当にありがとう!」とmasa。はる賀の曲のカバーコーナーの最後は5人で一緒にはる賀曲「IN&OUT (JAXX/JAXX ver.)」。グルーヴ感あるフロアミュージック的なジャズナンバーをスタンドマイクで5人横並びとなって歌う姿は、これまた「オトナ顔」。コーラスにユニゾンに、と彼らの絆の深さと強さとを感じさせるパフォーマンスとなった。
「ここで皆さんがびっくりするお知らせがあります。なんとJAXX/JAXX、次で最後の曲になります」というmasaに悲鳴があがる。「まだ始まったばかりだよね」と口々に言う5人だったが、「JAXX/JAXX!」のコール&レスポンスで盛り上がったところでラストナンバー「A.P.P.L.E.」へ。ステージを縦横無尽に移動しながらオーディエンスの表情を確かめ、熱気を煽りながら軽快でポップなナンバーを歌い上げる。大きく揺れるペンライトと「Wow Wow」の駆け声のなか、躍動するビートに跳ねまわった5人はフロアを笑顔でいっぱいにして、初ワンマンの本編を終えた。
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