アニメ音楽に特化した媒体「リスアニ!」と大阪のラジオ局・FM802のラジオ番組「802 Palette(ハチパレ)」による新たな音楽メディア「リスパレ!」が、今聴いてほしいアーティストを独自の視点で選出のうえプッシュするレコメンド企画「リスパレ!チョイス」。その第二弾選出アーティストの中から、今回は、1stアルバム『Crier』で念願のソロアーティストデビューを果たした声優・田中有紀をピックアップ。彼女の声優/アーティストとしてのルーツやアルバムに込めた想いについて話を聞いた。先に掲出したリスアニ!のアルバムインタビューと相互に補完し合うような内容になっているので、ぜひ併せてチェックしてほしい。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――田中さんは今回、レコメンド企画「リスパレ!チョイス」の第2弾アーティストに選出されました。
田中有紀 とても光栄です!「リスアニ!」さんにはソロアーティストとしてだけでなく、「アイドルマスター シャイニーカラーズ」のストレイライトでもお世話になっていて、来年の“リスアニ!LIVE 2025”のステージにも立たせていただくので、すごくご縁を感じています。「ハチパレ」さんはお名前だけ存じ上げていて、今回のお話をいただいて初めて番組を聞かせていただいたのですが、私がまだ知らない新しい楽曲にたくさん出会うことができて、改めてラジオっていいなと思いました。
――普段、ラジオは聞くタイプですか?
田中 学生時代はよく聞いていました。私のおうちではおじいちゃんがずっとラジオを流していて、家に帰ったら、ラジオを聞きながらご飯を食べて、勉強をして、最後は私がラジオのスイッチを切って寝る、みたいな生活を送っていたんです。なので特定の番組を目当てに聞くというよりも、ずっと流れている感じでした。
――ラジオが身近にある環境だったんですね。今回のインタビューではまず、田中さんの活動のルーツについてお伺いしていきます。前回のリスアニ!のインタビューで「誰かの背中を押せるアーティストになりたい」とお話していましたが、そう思うようになったきっかけは?
田中 もともとは単純に歌うことが好きという動機で歌っていたのですが、声優のお仕事を始めた頃に「私はなぜ歌うのか?」ということを改めて考えるタイミングがあったんです。私自身、歌を聴くと何でもできる気がするというか、視野が広がるし、勇気や高揚、色んなプラスの気持ちをもらえると昔から感じていたので、私自身も誰かに歌を届けるのであればその人に元気になってもらいたい、私の歌が勇気のかけらになればいいな、という気持ちが芽生えて。それから「誰かの背中を押せるアーティストになりたい」と思うようになりました。
――田中さん自身も音楽を聴いて背中を押された経験はありますか? ご自身にとって大切になっている楽曲があれば聞いてみたいです。
田中 私は、どんな歌も自分の気持ちを代弁してくれている気がするので、実は全部の歌から元気や勇気をもらいがちなのですが(笑)、その中でも特に出会えて良かったと感じているのが、私の大好きなアニメ『犬夜叉』の劇場作品『犬夜叉 紅蓮の蓬莱島』の主題歌としてDo As Infinityさんが歌っていた「楽園」という楽曲です。歌詞がすごく前向きで、“生きてゆくんだ”という力強い気持ちや、誰もが争いのない日々を願っていることを歌っていて。この曲を聴くとすごく元気をもらえます。
――どんな歌からもプラスの気持ちをもらっているというのは、きっと田中さんの感受性が豊かだからだと思うのですが、興味深い発言です。
田中 本から哲学や生き方を学ぶことはよくあると思うのですが、私はそれを歌からも学んでいるのかなと感じています。
――例えば音楽だけでなく、本や映画といったものからも何かを受け取りやすいタイプですか?
田中 そうだと思います。作品と現実との境界がちょっと曖昧になるんですよね。かなりダイレクトに受け止めてしまうタイプなので、悲しい作品を観ると本当に落ち込んでしまいますし、ハッピーな作品を観ると「私、なんでも出来る気がする!」ってなるので、家族からも「そこまでのめり込まなくてもいいんじゃない?」と言われることがよくあって(笑)。
――その共感や没入しやすい性格というのは、声優・役者に向いていそうな気がします。
田中 役者の友達とお芝居のお話をすることがあるのですが、やっぱりちょっと違うなと思うことがよくあって。もちろん役に対する向き合い方はそれぞれだと思うのですが、友達に「自分の演じる役がなぜその行動を取るのかわからないときは、どういうアプローチをする?」と聞かれたときに、私はあまり「自分の演じる役がなんでこう考えるのかがわからない」と思うこと自体がないので、お互いに「えっ!そういう感覚なんだ?」と驚いた経験がありました。
――それはご自身の演じる役柄の気持ちに入り込める、考えずともなんとなく理解できてしまう感覚があるということですか?
田中 うーん……入り込んでいるというよりかは、その子がそう選んだのであればそれが正解と思える、という感覚だと思います。
――それこそ田中さんが「シャニマス」で担当している芹沢あさひは独特の感性の持ち主ですが、彼女を演じる際も違和感なく演じているのでしょうか。
田中 はい。もちろん「自分は選ばない行動だからおもしろいな」と思う気持ちはありますけど。「えっ!そういう行動をするの?でもいっちゃおう!」という感覚でお芝居をしています。
――前回のインタビューで、ストレイライトでの経験が自分自身を強くしてくれたというお話をしていましたが、そうやってキャラクターの気持ちに共鳴しながら演じているからこそ、影響を強く受ける部分があるのかもですね。
田中 だと思います。やっぱり私は境界が曖昧な部分があるので、演じたあとに「はい!終了」と切り替えるのではなく、あさひちゃんの行動として演じたものが自分の中にもずっと残り続けるから、それが自分の強さとして残っている部分もあるのかなと思って。もちろんあさひちゃんが「私みたいにやってもいいんだよ」と言ってくれるわけではないですけど、私はあさひちゃんと過ごしてきて、あさひちゃんの生き方を見させてもらっているので、それに影響を受けているのかなと思います。
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