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INTERVIEW

2024.11.02

長谷川育美、新曲「milky way」を歌うなかで感じた喜多ちゃんの感情と共感――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

長谷川育美、新曲「milky way」を歌うなかで感じた喜多ちゃんの感情と共感――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』から生まれた結束バンドの快進撃が止まらない。『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:/Re:Re:』が公開された今春から夏にかけて、初の野外ロックフェスへの出演、ミニアルバム『Re:結束バンド』のリリースと立て続け、9月から12月かけては全国のZepp会場を巡る全5公演の初ライブツアー“We will”を実施。そして、早くも届けられたのが、同ツアーに向けて制作された新作EP『We will』だ。

“少し未来の結束バンドのメンバーがそれぞれデモを持ち寄り作りあげた”というコンセプトの本作には、結束バンドのメンバー4人それぞれのソロ歌唱曲を収録。今回は喜多郁代役の長谷川育美に、石原慎也(Saucy Dog)提供の新曲「milky way」の制作エピソードを中心に、最近の結束バンドとしての活動について話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

ロックフェスでの経験、ステージでの立ち居振る舞いについて

――この夏は“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024”(以下、ロッキン)に出演されましたが、いかがでしたか?

長谷川育美 楽しいしかなかったです(笑)。私だけは先に“JAPAN JAM 2024”にも出演させていただいて、そのときが初めてのフェスだったのですが、楽しすぎて完全にフェスにハマってしまいました。なのでロッキンは前日から楽しみすぎてソワソワしていました。当日もすごく天気が良くて、他のアーティストさんのステージも楽しませていただきました。

――どなたのライブを観たのですか?

長谷川 キタニタツヤさん、LiSAさん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんを観に行きました。キタニさんは私たちの前の出番だったのでステージ袖から見させていただいて、“JAPAN JAM”のときに慣れない場所だったので最初はすごく緊張していたのですが、ステージに立つ前にフェスの雰囲気を感じておくのは大事だなと思って、自分の出番前にチラッと見学しに行ったら、演者側も観ている側もすごく自由に楽しんでいることを感じて、自分も楽しくなって、まったく緊張せずにステージができたんです。

――フェスの空気感を掴んだんですね。

長谷川 今回は他のメンバー3人もいてくれたので心持ちもだいぶ違っていて、みんながいてくれるとリラックスできるし、ほかの3人はフェス自体が初なのにすごく堂々としていて、リハよりも良い歌になっていたので、それを観て自分も鼓舞されたところがありました。「私もボーカルとして負けてられないぞ!」と思って(笑)。

――ちなみにLiSAさんやアジカンのライブをご覧になった感想は?

長谷川 LiSAさんは“静と動”で言えば“動”の印象で、パワフルで激しいかっこ良さを感じました。その直後に観たアジカンさんは“静”のかっこ良さと言いますか、決して激しく歌うわけではないけど、ベテランアーティストならではの圧倒的なオーラを感じて、すごい貫録だなって思いました。しかも『ぼっち・ざ・ろっく!』でカバーさせていただいている「転がる岩、君に朝が降る」と「Re:Re:」も当日披露されていて。生で聴くことができてすごく嬉しかったです。

――結束バンドと同日のライブということでセトリに組み込まれたんでしょうね。ステージの立ち振る舞いとしても、参考になった部分があったのでは?

長谷川 実は初ワンマンの“ 結束バンドLIVE-恒星-”をやる前、私はライブの経験がないのでステージでどう動けばいいのかわからなくて、スタッフの方から薦められてLiSAさんのライブ映像を観て勉強していたんです。だから今回、ロッキンで観たときも、ライブを楽しみながらも、じーっと観察しながら見てしまう瞬間があって(笑)。マネするというわけではないのですが、ステージでのパッションを参考にさせていただいています。

――“恒星”は自分も現地で拝見しましたが、長谷川さんはステージでの立ち居振る舞いも堂々とされていた印象です。

長谷川 まだまだ全然です。でも今回のロッキンのときも、キタニさんから「ステージ上の動きが自然でめっちゃ様になってますね」と言っていただけて、すごく安心しましたし、自信になりました。やっぱり「声優さんが頑張っているね」と思われるのは絶対に嫌なので(笑)。

喜多ちゃんとしての感情を乗せて歌うことができた「milky way」

――今回、新たにリリースされるEP『We will』には、長谷川さん演じる喜多郁代の楽曲「milky way」が収録されます。最初に受け取った印象はいかがでしたか?

長谷川 これまで結束バンドのボーカルとしてほとんどの楽曲を歌ってきたなかで、喜多ちゃんのことが書かれた歌詞はこの曲が初めてだと思うんです。「Distortion!!」も喜多ちゃん曲ではありますけど、あの曲は歌詞の内容的に喜多ちゃんのことを書いたわけではないので。だから喜多ちゃんの気持ちが歌詞になっていることが新鮮で、逆に「どう表現しよう?」と思いました。

――結束バンドの楽曲は基本、後藤ひとりが歌詞を書いている設定なので、それを喜多ちゃんとしてどう表現するか、というアプローチだったわけですよね。

長谷川 はい。あくまでもひとりの気持ちを大事にする。だからそこに喜多ちゃんの実感はないんです。でも今回は喜多ちゃんの中から出たものという一面があったので、それなりに喜多ちゃんのキャラクター性を出したいなと思いました。今までは逆にキャラクター性を薄くして、あまり普段の喜多ちゃん感を出さないようにしていたのですが、この曲では喜多ちゃんっぽいニュアンスを出したほうがいいだろうなと。

――その意味では、いわゆる通常のキャラソンのようなアプローチだったのでしょうか。

長谷川 そうですね。結束バンドの楽曲は正直、キャラソンと思って歌っていないのですが、今回は気持ち的にもキャラクターソングとして歌いました。初めての方に楽曲を作っていただいていることも個人的にいいなあと感じているポイントです。今までの結束バンドの楽曲とは、いい意味で色が変わったと思います。

――今回の楽曲はSaucy Dogの石原慎也さんが作詞・作曲を担当していますが、どんなところに今までとの違いを感じましたか?

長谷川 まず歌詞です。絶対にひとりが書かないであろう内容なので、リョウでもないし、虹夏でもない、ちゃんと喜多ちゃんの歌になっていますし、いつもの明るい喜多ちゃんらしさもありながら、途中で喜多ちゃんのちょっと不安な部分、実は内心で思っていることが出ているようにも感じました。作中でもあまり描かれていない、「こういうことも思っていたんだろうな」という部分があって。

――それは例えば?

長谷川 “不安で周りと合わせる自分が少し嫌だった”という歌詞からは、別に嫌でやっているわけではないけど、いつも「こうしたほうがみんな楽しいよね」という感じで、自分の意志があまりないことに少しコンプレックスを感じているのかな?というのを感じました。そうやって周りに合わせることができるからこそ、色んな人と関係性を築いていけるし、それが喜多ちゃんの魅力なので、全然悪いことではないと思うんですけど、私もあまり我が強いタイプではなくて、誰かに「こういうことをやりましょう」と示してもらわないと動けない性質なので、ここは共感できる歌詞なんです。

――そうなんですね。

長谷川 でも、だからこそ、その後の“それが私だからできる事なのかもって 思わせてくれた私の居場所”という歌詞は、喜多ちゃんにも結束バンドという場所ができたんだなと感じて、ちょっと泣きそうになります。歌うときも、初めて喜多ちゃんとしての実感を込めることができ、歌いながら喜多ちゃんとしての感情が出てきて、じわーっと沁みるなあと思いながらのレコーディングでした。

――キャラソン的なアプローチを意識したということは、声音の作り方も普段の結束バンドの楽曲とは違いを付けたのでしょうか?

長谷川 声色に関しては極端にキャラクターに振ることはなかったです。喜多ちゃんはバンドのボーカルで、歌えるという設定の子なので、無理に崩さない方がいいなと思って、 “歌が上手い子”というベースの中に、喜多ちゃんっぽいニュアンスが今までよりも多めに入ればいいなと思いながら歌いました。

――個人的にはいつもよりキラキラした感じを声から受けました。

長谷川 そうですね。でも、そこは意識するというよりも、自然と出たものでやっています。結束バンドの楽曲には、かっこいいものもあれば、「Distortion!!」みたいな楽しい楽曲もあるし、かわいらしい楽曲もあるので、あまりキチンと「この声でいこう」というのは考えないようにしていて、初期の頃は少し調整したりもしていましたけど、今は自分の中に結束バンドとしての歌が染みついているので、自分としては、もうひとつ地声ができたような感覚です(笑)。

――結束バンドのボーカル・喜多郁代としての歌の声帯が、長谷川さんの中に出来上がっていると。

長谷川 そうですね。もし“長谷川育美”として歌ったとしたら、今までの結束バンドの歌とも「milky way」とも全然違う地声があるんですけど、最近は“結束バンド”としての地声が出来上がっている感覚があって、「結束バンドでこういう楽曲なら、こんな感じだよね」というのが自然に歌える感じです。

――全体を通しての歌の感情の作り方はどう意識しましたか?

長谷川 (Dメロ頭の)“好きでいてくれる?”のところまでは、いつものポジティブな喜多ちゃんと言いますか、明るい未来を見ている感じで歌っていて、でも、“好きでいてくれる?”のところから心の内をポツリと言うような感じに、その後からはまた開けていく感じを意識して歌いました。

――特に喜多ちゃんらしさを感じるフレーズを挙げるとすれば?

長谷川 “笑顔はきっと幸せを呼ぶおまじない”は喜多ちゃんだからこそ出てくるフレーズだと思いました。作中でも(伊地知)星歌さんに「みんなが笑っていたら楽しいじゃないですか」と言っているシーンがあって。この子は純粋にそう思って生きているんだろうなと思うと、彼女の良さがすごく出ている部分だなと思います。“魔法のスパイス”もひとりは絶対に書かないワードですよね(笑)。あとは“叶える為にここまで来たんだよね”のところに、ちゃんと「キターン!」を入れてくださってるところも感動しました。

――“たまにはちょっと歪みあったりねすれ違うけど それすら愛しく思えるほら”のところも、ちょっとラブソングっぽい感じがしてお洒落ですよね。

長谷川 ここは、みんなで何かをすることに憧れを持っていた喜多ちゃんが、バンドを始めて「バンドって家族みたいだな」と感じている気持ちが表れている気がしていて、きっとそれまでみんなで意見をぶつけ合うような経験がなかったからこそ、そういう瞬間もキラキラ輝いて見えるんだろうな、というのを感じたので、そういう気持ちで表現しました。

――最後は“もっと夢を見させてあげる”と自信のある感じで終わるところも喜多ちゃんらしいですよね。

長谷川 そうなんですよね。“私が来たんだから じっとよそ見しないで”もそうですけど、この真っ直ぐな自信、ポジティブさは、結束バンドとして今まで歌ったことのないもので、その意味でも今までの結束バンドの楽曲とは全然違います。

――Zeppツアーに向けてのリハで歌ってみての感覚はいかがですか?

長谷川 まず歌うときの体勢が全然違います(笑)。本番ではどう歌うかわからないですけど、リハではマイクを両手で持って、スッと立って歌うのがいちばんしっくりくるんです。結束バンドのステージでは足を広げがちで、前屈みになって歌うことも多いのですが、この曲は体勢の部分から変えないと気持ちがズレてしまうなと思っていて、もしかしたらラフに動いたほうが声が出しやすいのかもしれないですけど、この曲に関してはもはや声が出しにくくてもいいと思っていて、“歌う”というよりも“思いを話す”ようなイメージでやっているので、他の曲とは全然表現が変わると思います。

次ページ:Zeppツアー“We will”と“リスアニ!LIVE 2025”に向けて

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