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INTERVIEW

2024.11.01

水野 朔、新曲「惑う星」で“ロックな山田リョウ”を表現するための挑戦――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

水野 朔、新曲「惑う星」で“ロックな山田リョウ”を表現するための挑戦――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』から生まれた結束バンドの快進撃が止まらない。『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:/Re:Re:』が公開された今春から夏にかけて、初の野外ロックフェスへの出演、ミニアルバム『Re:結束バンド』のリリースと立て続け、9月から12月にかけては全国のZepp会場を巡る全5公演の初ライブツアー“We will”を実施。そして、早くも届けられたのが、同ツアーに向けて制作された新作EP『We will』だ。

“少し未来の結束バンドのメンバーがそれぞれデモを持ち寄り作りあげた”というコンセプトの本作には、結束バンドのメンバー4人それぞれのソロ歌唱曲を収録。今回は山田リョウ役の水野 朔に、大木伸夫(ACIDMAN)提供の新曲「惑う星」の制作エピソードを中心に、最近の結束バンドとしての活動について話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

初のフェス参戦、舞台挨拶ツアー――2024年夏の思い出を振り返る

――まずは今年の夏の思い出についてお伺いさせてください。ロックフェス“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024”(以下、ロッキン)への出演はいかがでしたか?

水野 朔 自分はもともとロックが好きなので、もちろんロッキンも知ってはいたのですが、実際に行ったことはなかったので、まさか初めての参加が出演者側になるとは思わなかったです(笑)。あんなにたくさんの人の前に立たせていただく経験は初めてなので、ライブ前はすごく緊張していたのですが、(長谷川)育美さんは同じ会場で開催された“JAPAN JAM 2024”に出演したときに「全然緊張しなかった」とおっしゃっていて。私も実際にステージに立ったら、自分でも驚いたのですが、野外ステージで開放感があるからなのかあまり緊張せず歌うことができたんです。むしろ初ワンマンの“恒星(結束バンドLIVE-恒星-)”のときのほうが緊張したくらいで。伸び伸びと歌うことができて嬉しかったです。

――水野さんは「カラカラ」を歌われて、ラジオ番組「ぼっち・ざ・らじお!」で青山吉能さんと長谷川さんがべた褒めしていました。

水野 そうなんです!終わったあとに皆さんから「リハでもずっと聴いていたけど、今日の『カラカラ』がいちばん良かった」と言っていただけて。まさかこんなに緊張しそうなステージで、今までの「カラカラ」を上回ることができるとは思わなかったです。

――自分でも良い手応えはあったのですか?

水野 事前リハのときに音程が合わない部分があったのですが、私はイヤモニにあまり慣れていないというのもあって、よぴさん(青山吉能)と(鈴代)紗弓さんに相談したんです。そうしたらよぴさんが「私はイヤモニを片方だけ少し浮かせて歌ってる」と教えてくれたんです。それを本番のステージでぶっつけで試してみたら、音程も合わせることができて上手くできました。

――ちなみに初のロッキンということで、水野さんも他の方のライブを観て楽しんだりしたのですか?

水野 はい、キタニタツヤさんのライブを観させていただきました。キタニさんと結束バンドのステージが同じで、キタニさんは私たちのひとつ前の出番だったんです。なので、少し早めに準備を終えて観させていただきました。キタニさんも結束バンドのライブを観てくださったみたいで。

――用事が済んだあと、ダッシュで観に行ったという話ですね。

水野 はい。「カラカラ」が流れているときくらいにダッシュで戻ってきたというお話で。私たちのステージが終わった後に、キタニさんと結束バンドのメンバーで少しだけお話もさせていただきました。

――他にもこの夏は、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』の舞台挨拶ツアーで各地の映画館を訪問されていました。

水野 私は舞台挨拶を行うこと自体、この作品が初めてだったうえに、普通ではありえない数の舞台挨拶をさせていただいて、本当にありがたかったです。そのなかでも特に印象に残っているのは、ひとりで舞台挨拶をしたことです。(“ぼっち舞台挨拶”)普通ならMCの方と一緒に作品についてお話すると思うんですけど、本当に私ひとりなんですよ。しかも上映前の舞台挨拶の場合だと、ネタバレになるので作品の中身の話をするわけにもいかなくて、「みんな、どこから来たー?」みたいな感じですごくほんわかした舞台挨拶になりました(笑)。

――それはなかなかできない経験だったでしょうね。

水野 他にも私は台湾にも舞台挨拶に行かせていただいて、そこではアニプレックスのプロデューサーの石川(達也)さんと2人で色々お話をさせていただきました。台湾では山田リョウの人気がすごいみたいなんですよ。なんでなのかわからないですけど、もしかしたらキャラクターのビジュアルが刺さったのかなあと思っています。

“ロックな山田リョウ”を全身全霊の歌で表現した「惑う星」

――ここからは新作EP『We will』より、山田リョウの歌う新曲「惑う星」についてお聞かせください。ACIDMANの大木伸夫さんが書き下ろした楽曲ですが、最初に音源を受け取った印象はいかがでしたか?

水野 まず私自身、めちゃくちゃ好きな曲調なんですよ。私がそもそもロック系の楽曲ばかり聴いていて、こういうシリアスな感じのロックな曲調がすごく好きなので、これをリョウとして歌うのがすごく楽しみだな、というのが第一印象でした。でも、実際のレコーディングになると、ちょっと難しすぎるなと(笑)。「カラカラ」もとてつもなく難しかったのですが、「惑う星」はキーの幅がものすごく広くて、低いところから高いところまであるんです。

――しかも今回は基本、地声で歌っていますよね。

水野 「カラカラ」はファルセットを使ってきれいな感じで歌うアプローチができたのですが、「惑う星」は「カラカラ」に比べると“THE ロック”という感じの楽曲なので、ファルセットは使わずに全部地声で歌う方向性でいきましょう、という話になりました。キーが高いところは本当に大変で、個人的には「カラカラ」よりも難しかったです。

――「カラカラ」は少し浮遊感のあるアプローチでしたが、この曲の水野さんの歌声はすごく力強くて、「こんな歌い方もできるんだ!」と驚きました。

水野 ありがとうございます!レコーディングのときに大木さんが来てくださって、少しお話をしたのですが、「カラカラ」を歌っているリョウの声を踏まえてこの曲を作ってくださったみたいなんです。大木さんが満足そうに帰って行かれたというお話を聞いてホッとしました。

――今回は「カラカラ」のようなファルセットを封印したうえで、どのようにリョウらしさを組み立てていったのでしょうか?

水野 話しているときのリョウの声自体がかなりローテンションなトーンなので、低いトーンの部分はリョウさんみのあるウィスパーっぽい歌い方で表現できるのですが、サビになるとどうしても声を張らないといけないので、「カラカラ」のときと比べると、リョウの気怠げな感じをそのまま出すのは難しいだろうなと感じて。ただ、リョウは結束バンドのメンバーの中でいちばんロックが好きだと思うので、方向性としては、喉がつぶれるくらいのロックな歌い方に振って組み立てていきました。

――なるほど。リョウのロック好きな部分と、性格的にブレーキを踏まなそうな感じを表現したわけですね。

水野 はい。なので、喉をつぶしてもいい、という気持ちで歌いました。声優としては絶対ダメな考え方ですけど(笑)。それと、歌詞の中に“月明かりを 食べられたらいいのにな”というフレーズがあるのですが、そこはやっぱり食い意地の張ったリョウの雰囲気を出したくて、歌というよりも少しセリフっぽいアプローチ、ウィスパーめの歌い方で執着心みたいなものを表現しました。草ばかりでなく、今度は月明かりまで食べてしまうっていう(笑)。

――もはや仙人の域じゃないですか(笑)。そういったフレーズごとのみならず、歌詞の全体の内容として、リョウらしさを感じる部分はありましたか?

水野 作品の中に、バンドをやっていたけど一度挫折して、(伊地知)虹夏に声をかけてもらってまたバンド活動するようになった、という描写があったのですが、その意味で「バンドができなくて落ち込んでいるところから虹夏に助け出してもらった」という意味合いが込められているように、この歌詞からは感じていて。なので、この歌詞の中に出てくる“星”は自分の中では“虹夏”のイメージです。

――サウンド面で言うと、リョウの担当楽器であるベースが暴れまくっているのが印象的でした。

水野 そうなんです。しかも、原作コミックでリョウはバイオリンを弾けるという話があったところから、この曲にはバイオリンも入っていて。なのでサウンド面でもリョウの得意分野が詰め込まれた楽曲になっています。歌のレコーディングのときはまだバイオリンが入ってなかったのですが、そこからバイオリンの音が加わったことでさらに雰囲気が変わって。やっぱりリョウは自分の楽曲だから、自分のできることをやりたいように詰め込んだのかな?と想像が膨らみました。

――とても凛々しいリョウを感じられる楽曲になりましたが、作中でもこんなにかっこいい一面を見せたりするんでしょうかね?

水野 いやあ、どうなんでしょう?(笑)。でも、普段のリョウさんとライブや音楽をやっているときのリョウさんとのギャップにやられる人が多いことは感じているので、この曲はライブモードのリョウさんなのかなと思います。喜多(郁代)ちゃんもそのギャップにやられたひとりなので。

――でも実は頭の中はカラカラだったっていう。

水野 そうです(笑)。

――ちなみに他のEP収録曲でお気に入りを挙げるとすれば?

水野 喜多ちゃんの「milky way」もこれまでの楽曲を考えると意外でいいなあと思ったのですが、私的には、虹夏の「UNITE」がロックを感じるのですごく好きです。虹夏がこういう曲を歌うというのも良いなあと思いました。

次ページ:リョウとしてステージに立つからにはかっこ悪い姿を見せられない

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