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INTERVIEW

2024.10.31

TVアニメ『アクロトリップ』ED主題歌をカノエラナが担当!今作に込めた想いを聞いた。

TVアニメ『アクロトリップ』ED主題歌をカノエラナが担当!今作に込めた想いを聞いた。

三大小中学生向け少女マンガ雑誌の1つである『りぼん』で人気を博す『アクロトリップ』が待望のアニメ化!奇想天外のストーリーが小中学生のみならず幅広いファンを掴むそんなアニメのED主題歌「リバーシブルベイベー」を書き下ろしたカノエラナ。水瀬いのりが歌うOP主題歌「フラーグム」の作詞も担ったカノエが感じる『アクロトリップ』の魅力、そしてこの作品に出会ったからこそ生まれた「リバーシブルベイベー」のこと。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

大人にもオタクにも刺さる『アクロトリップ』の魅力をどう楽曲で伝えるか

――「リバーシブルベイベー」はTVアニメ『アクロトリップ』のED主題歌です。まずは作品の印象をお聞かせください。

カノエラナ この作品のED主題歌を担当させていただくことが決まり、まずは資料や概要をいただく前に気になって自分ですぐに本を買って読んだんです。そしたらむちゃくちゃ面白くて、ページをめくる手が止まらない止まらない。それこそ本当に小学生、中学生の頃に出会っていたなら、教科書にクマ怪人やマシロウのイラストを描いていただろうなっていうくらい好きになってしまったので、これは「好き」のテンションのままに楽曲が書けるだろうなということがマンガを読んでいる間にイメージできるくらい刺さりました。

――これまでのどのタイアップとも違う『りぼん』のコミックのアニメの楽曲。低年齢層がターゲットである作品への楽曲であるからこその、『アクロトリップ』ならではの音色や世界観というのは意識されたのでしょうか。

カノエ それが、低年齢層向けとは言いながらも内容的に私の世代にも刺さるなと感じたんです。言い回しもそうですが、キャラクターの掛け合いも大人に刺さるような感じで、しかも私くらいの年代がちょうどいいところなんじゃないかな。オタクにも刺さるような言葉の選び方ですし、キャラクターもポップでかわいいですし、これはわざわざ下の年齢だけに絞って書かなくてもいいのかなと思いました。わかりやすい言葉を選んではいますが、実は全然意識はせずに、展開とかも引っ掻き回して、『アクロトリップ』の世界観そのままの音でいいなと思い作ったので、あまり「低年齢層を意識」ということはなかったかもしれないです。

――アニメ側からのオーダーはいかがでしたか?

カノエ オープニングが優しさで包まれるような空気感で、「いわゆるOPイメージの元気な感じとは違います」と言われていたんです。それなら私がいくべきところはひたすら暗いかひたすら明るいかのどちらかだったんです。『アクロトリップ』を読んで最初に受け取ったメッセージは絶対的に面白いし明るいということでしたし、正義と悪という難しいテーマを扱っているけどめちゃくちゃポップだし、結局は仲良くなれるんだよということもあったので、エンディグだけどめちゃくちゃ明るい曲にしようと思いました。

――音色や音階の意識はどうでしょうか?

カノエ びっくり箱みたいな面白い感じがよくて。おもちゃ箱をパカっと開けたときの驚きや飛び出す絵本のような世界観にしたかったんです。飛び出す絵本も、開いたら開いたでまた別の仕掛けも出てくるような、そこをめくらないとまだ中身がわからないような楽曲の構成というか。メロディ自体がジェットコースターのようになったらいいなという意識はありました。歌詞は簡単だけどメロディは遊びのある感じにしました。ジャンプしたりくぐってみたり。メロディラインでの面白さは出せましたし、アレンジの段階でもそういうオーダーを出させていただいて、ホーンセクションも入れさせてもらいましたし、暗闇の遊園地の中で遊具は光っているけれど誰もいない、というイメージが沸くような、暗い世界観の中の光るものというイメージでオーダーさせていただきました。最初はもっとロックに寄ったアレンジが届いたので、原作のポップな要素を入れないといけないなと思い、Bメロでリンリン鳴るものを入れました。別にメルヘンチックな世界にいったってかまわないので、急に魔法少女が変身したようなテンション感の切り替えでお願いしましたね。

悪の組織と魔法少女の戦い。「正義」と「悪」の戦いの奥で“ひっくりかえる”もの

――アニメで流れる89秒。このなかで歌いたかったのはどんなことでしたか?

カノエ 『アクロトリップ』の、一番メインとなるものが「正義」そして「悪」、それから「好きなものに対しての自分の動き方」という柱があったので、それを入れたいと思ったし、あとは好きなことをやっているときの熱量やテンション感みたいなものを目指しました。

――では89秒の先の世界ではどんなことを歌おうと思われたのでしょうか?

カノエ 最初の勢いでいったところの補完でもあるので、話の続きの世界観というか。Aメロでパンを咥えて走るシーンがあったとして、次は本棚の本を同じタイミングに触れて「はっ!」となるといった古典的でテンプレート的なものを2番では補完して、小技みたいなところをやってきても、別のアプローチでもやってみようと試みたりしながら意外とこねくり回しました。起承転結の、いつもの流れが繰り返されるようなものも好きなので、それを楽曲にも持ってこようと思って、最初に歌う「アイラビュ」を最後にも持ってくるというまとめ方をしています。

――ホーンセクションを軸にし、アコーディオンやピアニカといった鍵盤の音なども散りばめたビッグバンド的な軽快ナンバー「リバーシブルベイベー」の制作時のことをお聞かせください。

カノエ アレンジが仕上がっていく過程はすごく面白くて、公園が遊園地になっていくように飾り付けがされていっているなぁと楽しんでいました。そのなかに自分の声が入るとしたら、どれくらいの芯を作れば目立つだろうかと想像してレコーディングに臨みました。最近は針を刺すように繊細に音を構成していく曲が多かったので、本当に違うアプローチになりましたね。歌うときにも顔の筋肉の別のところを使うところから始まるので、歌手活動初期の頃にしていたような、日本語をちゃんとしっかりはっきり発音することを意識しました。ニュアンスで歌わない。ちゃんと発音すること。セリフはちゃんとセリフとして口にすることや色をつけるところはつけて、普通に歌うところはしっかり歌ってめりはりをつけました。

――トラックからご自身の歌を構築していかれたとのことですが、「ここはハマったな」という会心の箇所を教えてください。

カノエ 最後の“ペロリめくってひっくり返し”のところはサウンドもリズムによってピュッとめくれていく様子を表現していて、そこはめちゃくちゃはまったなと思っています。サビでパーンと跳ねるような爽快感もありますし、最後は拍でトントン進んでいかずに巻き戻ったりして終わっていく破天荒な感じが気に入っています。破天荒さは冒頭からあるのですが、休ませるところがないように遊ぶのはこだわりのポイント+オーダーしたところでもあって。そこにさらにアイデアをもらって作れました。

――カノエさんは、水瀬いのりさんが歌うOP主題歌「フラーグム」の作詞もされています。歌詞についてはどのようなテーマはどういったところに置いたのでしょうか。「フラーグム」との相互作用も含めて作詞のポイントもお聞かせいただけますか。

カノエ 「リバーシブルベイベー」が完成したすぐあとにオープニングの歌詞のオファーがあったんです。作り上げた直後だったので、「リバーシブルベイベー」では補完できなかった魔法少女に対しての憧れや、実際に魔法少女自身はどう考えているのかということ、それからいのりさんのライブを観たばかりのタイミングでもあったので、いのりさんがライブに対して思っているであろうことも混ぜて書いたんです。ただ両曲とも言いたいことは「多分歩み寄れるよ」ということなんです。「リバーシブルベイベー」では表と裏があるけれど休戦しましょうと歌って、「フラーグム」はそれをもっと柔らかく言っている。そこでリンクしていると思います。これまでも根底に力強さが見えているような作品をたくさん担当させていただいていたので、闇成分の濃いものも多かったのですが、『アクロトリップ』に関しては涙を浮かべながら読んでしまうくらい本当に面白くて、めっちゃ好きだ!という感覚から始まったので、歌詞を作るときにもいちいち裏のことを考えなくてもいいかなと思いましたし、ラフに楽しいことを考えつつ、敵のこともあるけど実際には楽しく生きているんだよというところを書けていたらいいのかな、と思う。そんな制作でした。

――実際に歌がついた映像をご覧になっていかがでしたか?

カノエ 1話で流れたのがエンディングで。「オープニングじゃないの!?」とびっくりしました。それがまた『アクロトリップ』らしいなとも感じましたね。裏から見せるなんて!物語的にもいいなって思いました。そこはリンクしているなと思いましたし、逆に1話で見せなかったオープニングが2話で流れたときには、爽やか爽快感で1話の余韻を洗い流していくような感覚がまたよかったです。サウナで整うような感じというか(笑)。

――キュートなMVも話題ですが、撮影はいかがでしたか?

カノエ そこで撮った1枚1枚を繋ぎ合わせてかわいいものを作ろうというコンセプトだったので、カット数も多くて撮影はとても時間がかかりました。ダンスの先生にいただいた振付動画を一生懸命に覚えて、撮影当日も先生に来ていただいて頑張りました。曲自体も楽しいので、自分自身としても楽しんで、いつもよりも表情を動かすことを意識しながら撮影をしましたが、ポップでかわいいものになりました。自分自身が思っているのとは違うカノエラナらしいものになったんじゃないかなと思います。暗い部分や明るい部分のトーンを一定の差をつけて入れられましたし、このMVからカノエラナを知ってもらえる映像になったなと思います。

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