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INTERVIEW

2024.10.30

青山吉能、後藤ひとり初オリジナル曲「夢を束ねて」で“ぼっち”らしさを追及する――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

青山吉能、後藤ひとり初オリジナル曲「夢を束ねて」で“ぼっち”らしさを追及する――結束バンド新作EP『We will』キャストインタビュー

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』から生まれた結束バンドの快進撃が止まらない。『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:/Re:Re:』が公開された今春から夏にかけて、初の野外ロックフェスへの出演、ミニアルバム『Re:結束バンド』のリリースと立て続け、9月から12月かけては全国のZepp会場を巡る全5公演の初ライブツアー“We will”を実施。そして、早くも届けられたのが、同ツアーに向けて制作された新作EP『We will』だ。

“少し未来の結束バンドのメンバーがそれぞれデモを持ち寄り作りあげた”というコンセプトの本作には、結束バンドのメンバー4人それぞれのソロ歌唱曲を収録。今回は後藤ひとり役の青山吉能に、佐藤千亜妃が書き下ろした新曲「夢を束ねて」の制作エピソードを中心に、最近の結束バンドとしての活動について話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創

“正解がわからない”という、後藤ひとりらしいステージの正解

――まずは“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024”(以下、ロッキン)に出演した感想をお聞かせください。

青山吉能 それこそ5月には、同じ場所で開催された“JAPAN JAM 2024”に(長谷川)育美さんが結束バンドとして立っていて、感想を聞いたり映像は観ていたのですが、そのとき想像していた以上の広さだったので、これを「楽しかった!」と言っていた育美はやっぱりとんでもないな人だなと思いました(笑)。そもそも私は、後藤ひとりとしてどうステージに立つのが正解なのか、自分の中でまだわかっていなくて。後藤ひとりがロッキンの舞台で“(ギターを)弾いている”というのは想像がつくのですが、ステージの真ん中で歌っている画が浮かばないんですよね。結局、その悩みを解決しないままステージに立ったので、正直、歌っているときの記憶があまりないんですよ。

――そうだったんですね。

青山 映像を観たら歌っている姿があるので、「あ、私、歌ったんだな」と思ったんですけど、本当に夢みたいというか、「私、寝てた?」っていうくらい記憶がなくて(笑)。でも、結果としてそれが後藤ひとり然としていて、“正解がわからない”というのが、後藤ひとりとしてステージに立つ正解だったのかなあと思っています。それを追い求めている姿勢が後藤ひとりなのかもしれないなっていう。なので、Zeppツアーの“We Will”でも、その場で出たもの、感じたものをそのまま出せればいいかなと思っていて。リハーサルでもあまり固めないようにしています。

――後藤ひとりも仮にステージで歌うとなったときは、戸惑いを抱えたままかもしれないですしね。

青山 そうなんです。ライブステージにおいては、制作サイドからも意外と「こうしてください」という指示がなくて、「間奏は何をしたらいいですか?」と聞いても「感じたまま自由にやってください」という感じなので、「自由にって……」と思いながらやっているのですが(笑)、結果的にそれが良かったと思うんです。振り付けにならない感じというか、もしかしたらそこも『ぼっち・ざ・ろっく!』の音楽を取り巻くこだわりのひとつなのかもしれないなあと思って。なので、私もあまり聞き過ぎずにやっています。

――おもしろいですね。ちなみに自分がステージで歌っている映像を観て、後藤ひとりらしさを感じるものですか?

青山 いやあ、自分は無理ですね。やっぱり私にとっては私すぎるので、どこからどう見ても青山吉能ですし、あの場で後藤ひとりを演じるのも違うなと思ったんです。それはロックフェスの現場でアニメを出しすぎないということで、もちろん結束バンドはそういうバンドなので、アニメの畑からやってきた人間としてアニメを出したい面もあるのですが、例えばキャラクターの声でMCをしたり、アニメを出しすぎるのは違うのかなと思っていて。もっと音楽バンドらしくいたい気持ちがあったので、髪型や衣装も全員キャラに寄せるでもなく、「結束バンドというバンドがフェスに来た」という感じでステージに立つようにしていました。

――あくまでも音楽で表現して勝負すると言いますか。

青山 でも、終わった後に大丈夫だったか心配で「結束バンド」で鬼のようにエゴサをしたのですが(笑)、「後藤ひとりが歌ってた」と書いてくださっている人がいたりして。フェスってスマホを触りながらでも楽しめるわけじゃないですか。なんとなく通りかかった人が足を止める可能性があるなかで、「アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のカバーしてるらしいじゃん?」みたいな温度感の人がたくさんいる場所というのはチャンスで、これをきっかけに結束バンドの音楽が気になってアニメを観てもらえるかもしれないと思いましたし、だからこそのプレッシャーもすごくあったのですが、結束バンドとしてのライブはしっかりとお届けできたのかなと思います。

後藤ひとり初オリジナル曲「夢を束ねて」に込めた“ぼっち”らしさ

――ここからは新作EP『We will』のお話をお聞かせください。今回、後藤ひとりが歌う初めてのオリジナル曲「夢を束ねて」が作られたわけですが、その事実をどのように受け止めましたか?

青山 やっぱり嬉しかったですね。これまで歌わせていただいたアジカンさんのカバー2曲(「転がる岩、君に朝が降る」「Re:Re:」)は、あまりにも楽曲自体にストーリーがありすぎて、それを背負う楽しさもありましたけど、ある意味、自分はそのストーリーに乗っかっているという一面もあって。今回は改めて“後藤ひとりの曲”ということで、この曲のストーリーを自分が作っていかなくてはいけない責任を感じました。

――確かにカバーの場合、どうしても原曲の歌い方に影響を受けてしまう側面はあるでしょうからね。その意味では、楽曲に対するアプローチも今までとは違った?

青山 そうですね。今回、楽曲もアッパーなロックというわけではなく、訥々と歌う印象があって、後藤ひとりの内面というか、あの部屋の“押し入れ感”みたいな湿度を、最初に聴いたときにすごく感じたんです。私もそれを後藤ひとりとして表現したいなと思いました。同時に「初めての私の曲だ」という気持ちもあって。いままでは大先輩の影を追う部分もあったのですが、今回は自分でオリジナルを作っていく試みが楽しかったです。

――実際にAメロの平歌部分は訥々と歌われていますが、それだけでなく、楽曲の展開に合わせて色んな歌の表情を見せてくれる楽曲になっている印象です。

青山 そうですね。訥々としている部分はしゃべりに音程が付いているイメージで歌ったのですが、ザビではあえてファルセットっぽくして、力のない感じを表現しました。まず後藤ひとりは肺活量がないし、体力も体幹もないので、高い音がスパーンと出るわけがないと思うんです。

――確かに。

青山 私、体から考えるのが好きなんですよ。それこそ「肺の大きさはどれくらいなんだろう?」とか。(後藤ひとりは)絶対にそんな動かしたことはないだろうから、吸ってもそれほど空気が入らないだろうし、吐き出す力も無いだろうなと思って。そうなるとちょっと消えていく感じの歌になると思うんです。最後はエッジボイスになっていくところも、息がもたなくて倒れていく感じを表現しています。それは後藤ひとりらしさを考えてのことで、「転がる岩、君に朝が降る」と「Re:Re:」にも取り入れていています。力尽きる感じと言いますか。

――本来のエッジボイスの使い方とは逆ですよね。

青山 そうなんですよ。本当は力強さを出すための技法だと思うんですけど。後藤ひとりのお芝居をするときは濁点の付くような発声をよく使うので、合うと思ったんですよね。ただ、後藤ひとりは抑制キャラなので、この曲も思わず歌い上げたくなるサビなんですけど、あえて抑えて歌っていて。でも、ラスサビだけは下に吐き出すように発散して歌っています。前を向いて「未来は開けていて素敵!」というのではなくて、「もうどうしたらいいのかわからない……どうしたらいいの!」というタイプの発散で。サウンドがかっこいいので、歌っていると思わず楽しくなってしまうんですけど、ライブではそこを「いかんいかん!」と抑えて歌おうと思っています。

――歌詞の印象はいかがでしたか?後藤ひとりらしさを感じるポイントもあったと思うのですが。

青山 これは個人的な解釈ですが、この歌詞を最初に受け取ったとき、アニメ第9話の江の島帰りの電車の光景をすごく思い出したんですよね。(伊地知)虹夏と山田(リョウ)が寝ていて、喜多(郁代)ちゃんと「楽しかったね」ってしゃべっているシーン。

――確かに“茜色に染まるあの日々が”というフレーズもありますからね。

青山 そう。アニメには夕焼けのシーンがあまりないんですよね。昼間か雨か夜のシーンが多くて。あとは何か特定のテーマを歌っているというよりも、日常というか、後藤ひとりの生活を表している感じがしました。それもまた後藤ひとりらしいなと思います。

――「夢を束ねて」というタイトルはどのように捉えましたか?

青山 これはきっとみんな同じ解釈だと思いますが、虹夏、リョウ、喜多ちゃんそれぞれの夢、特に虹夏からは明確に“本当の夢”を教えてもらっている部分があるので、その夢を背負ってもっと結束バンドを大きくしていきたい、そのひとりひとりの夢をギュッと束ねてひとつにしていきたい、という気持ちが込められているのかなと思っています。“夢”という言葉はありふれていて、後藤ひとりが使うには前向き過ぎるかもしれませんが、ありふれているからこそ特別でもあって、“夢”以外に言いようのないものがあると思うんです。そういう“夢”という言葉の持つ自由さに、後藤も改めて気づいたんだろうなと思って。「虹夏ちゃんの夢を叶えてあげたい」と言い切っていますし、それを考えると、今の後藤ひとりは「夢を束ねて」と考えて生きていてもおかしくないし、素敵だなと思いました。

――最後は“La La La…”と繰り返し歌うのもいいですよね。

青山 あの“La La La…”も苦戦したんですよ。後藤ひとりは“La La La…”と歌うわけないと思って。虹夏ならすごくわかるんですよ。でも、そこは自分なりの後藤ひとりの“La La La…”を出せたので、あとは皆さんそれぞれで楽しんでほしいです。

――個人的にはアニメ第7話の後藤が胞子になるシーンを思い出しました。

青山 わかります!私も歌っていて、あのシーンがすごく浮かびました(笑)。むしろあのシーンみたいな“らんらんらら”でもいいかなって思ったくらいなんですけど、今後、ライブでどうなっていくのか。ライブでの後藤ひとりはその場のものを出してしまうので、それぞれの会場でそれぞれのものを楽しんでいただければ嬉しいなと思います。

次ページ:不安が100!? Zeppツアー“We will”に向けて青山吉能が思うこと

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